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「星の王子さま」木星・土星・アルデバランの接近三角形

1941年07月07日



木星・土星・アルデバラン



今回は アニメーションと静止画 です。


天 文 現 象


「星の王子さま」の表紙の三星は?

 2000年12月2日の朝日夕刊にこんな記事が載りました。「星の王子さま」の表紙には11個(※註)の星が描かれていますが、そのうち星形(☆)に描かれていない星が3つあります。この3つの星について、賢治や鑑三の研究者でもある椚山義次さんが星のスケッチをしていてふと気づいたことがありました。それは木星と土星と牡牛座(Taurus)のアルデバランの並びが表紙の3つの星の並びとそっくりだったことです。


フランス語版表紙 2000年11月の3星の配置 新聞記事


 調べてみると、1940年に同じ配置が起こっていたこともわかったというのです。「星の王子さま」にサン=テグジュペリが着手したのは1942年。ならば、サン=テグジュペリはこの配置をスケッチしたのではないかという説です。これはまさしく60年経って同じ並びにならないと気づけないことです。生誕100年の年でもあるし、まさに天の配剤ですね。

 それならば検証してみようということで yu は久しぶりに天文ソフトを取り出してみたのでした。えーと、ここまでは良かったのですが、1940年にアルデバランの近くで木星と土星の接近は確かに起こるけれどアルデバランとはかなり離れていますし、木星と土星も大接近です。1940年のいつ頃なのか情報がなかったのでいろんな日を試してはみたものの、下のアニメのようにアルデバランに一番近づく日時でもこんなにかけ離れています。もちろん配置の形もまるで違う。「もー、やーめた」とうち捨てることとなりました......(^^ゞ



1940年の6月から半年間の惑星の動き
1940年の惑星の動き


 しかし、また気を取り直して違う年もあれやこれやと試していましたら、とうとう見つけました。それは1941年の7月です。そっくりの配置が現れました。およそ1年後にサン=テグジュペリは「星の王子さま」に着手することになるので、その意味では新聞記事よりも日が近く、信憑性は高まったと言えます。新聞記事にもあるように、サン=テグジュペリは仕事上の必要性からだけではなく、天文に関心を持っており、木星と土星の位置も十分把握していたに違いありません。


1941年7月の木星・土星・アルデバランの接近三角形の動き,

1941年7月の木星・土星・アルデバランの接近三角形の動き


 上の画像は1941年6月26日から1ヶ月間の動きです。天球を固定して、5日毎の惑星の動きを追っています。7月を過ぎた頃に『星の王子さまの表紙のように直角三角形の形に並ぶのがわかります。直角に当たる箇所がアルデバランです。2001年にこのページを制作した時はMS-DOSの天文ソフトを使用していて、7月15日としてニューヨークの星空を描きました。しかし、Windows版になって表示が精密になりましたので、2012年の現在描き直すことにしました。より表紙に近い角度はもう少し早い時期だとわかりましたので、今回は7月7日で描きます。

 1941年当時、サン=テグジュペリはニューヨークに滞在しており、そこで見ていたことになります。日本との時差は-14時ですから夜半に東から現れて、高度を上げる間もなく朝日に消えていく感じで見えたはずです。アニメーションはニューヨーク時間で2時20分から4時までになります。夏ですから夜明けが早く、高度角も15度以下ですから街中で観察できるものではありません。観望の環境としてはあまり芳しくないと言えます。

 牡牛座は冬の星座ですが、日本はニューヨークよりほんの少し緯度が低いだけですからほぼ同じように見えたことでしょう。ただ、サン=テグジュペリは「星の王子さま」に着手するずっと以前から「星の王子」のイラストを描いており、この表紙がいつ構想されたものなのかは判然としない問題が残ります。また、別ページの挿絵では異なった構図になっていて、この三角形は再現されていません。真偽のほどはやはりわからないです。そもそもこの三角形をなぜ小惑星B-612の背景にわざわざ描き込む必要があるのか、だれも説明することなどできませんからね。

 しかしながら、この問題とサン=テグジュペリが見たかどうかはまた別の問題です。こういう現象を当時の人々が話題にしていたのなら、見ていた可能性は高いと言えます。なお、サン=テグジュペリの詳細については「カムパネルラの切符」の「サン=テグジュペリ」のページをご覧下さい。

 では、当時の三星の接近についてアニメーションでご覧ください。上のアニメーションは赤道座標で見てもらいましたが、こちらは地平座標です。表示される時間はニューヨーク時間になります。星の王子さまもB-612惑星上でこんなふうに見て楽しんでいたのかもしれません。そして21世紀、あなたもいつの日かどこか地球に近い惑星の上で、こんな星の配置を眺めているかもね。




日本・アメリカ・フランス・ドイツ・アルゼンチンの版

※註 表紙の星の数は版により星の数がまちまちです。下の方の星が欠けていたり、フランス語版ではタイトルで星がひとつ隠されてしまっています。yu が持っているフランス語版は2つ欠けています。左端のアルゼンチンではまるで別の表紙です。右端の天体画像は惑星を実際よりもずっと大きくしたもので、サン=テグジュペリはこんなふうにイメージして見ていただろうという想像図です。

3星のイメージ図




 1枚目には下欄に「START]が、最後には「END」が表示されるので目印にしてください。





星の王子さまが見たかもしれない星空

1941年07月07日


New York

星の王子さまが見たかもしれない星空





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