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メトロポリス

Metropolis


METROPOLIS

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1926年・ドイツ 上映時間 104分 公開時153分 サイレント
監督:フリッツ・ラング 原作:ティア・フォン・ハルボウ
脚本:フリッツ・ラング、ティア・フォン・ハルボウ
撮影:カール・フロイント、ギュンター・リッタウ 特殊撮影:オイゲン・シュフタン
美術:オットー・フンテ、エーリッヒ・ケッテルフート
出演:ブリギッデ・ヘルム、グスタフ・フレーリッヒ、アルフレート・アベル


 前回とは逆にとても古い作品で、サイレント時代の後期を飾るSF大作です。数年前にビデオを手に入れていたのですが、実は見るのは今回が初めて。なぜかあまり見る気がしなかった。yu が見たのは再編集版で93分ものです。84年に新版がアメリカで作られましたが、それよりも少し長い編集になっています。84年のは色と音楽が付けられて公開されたようですが、この93分ものは耳障りなだけのピアノソロが付けられています。しかし、映像はたぶん原盤により忠実なはずです。完成時には210分あったそうですから、カットで分かりにくい場面もあります。理解が間違っていたらごめんなさい。SF映画ではその解説が間違っていたりすることもままあるような気がします。鵜呑みにしないようにしましょう。(言い訳か)

 2026年のメトロポリス(大都会)は一握りの支配者によって労働者が使役されています。主人公フリーターは社長ジョン・フリータセニの息子で、世の中を知らないまま育ちますが、労働者の娘マリアとの出会いにより労働者の悲惨な現状を知ることになります。マリアは説教師でもあるのですが、危険を感じた社長はマリアを監禁し、人間型ロボットの発明に成功した科学者ロトワングにマリアの身代わりロボットを作るように命じます。

 映画の出だしは映像がとてもいいです。構図が光っています。この都市は地上が支配者たちの街で、その地下には都市を維持するための機械群があり、さらにその下に労働者たちの街があるという3層構造になっています。労働者たちはみんなうつむいてエレベータで2層と3層を行き来する生活です。なぜか女性の労働者は出てきません。暴動が起きてはじめて労働者階級の女性がわんさか出てきます。子どもも労働はしていないようです。また、支配階級の方は主人公と庭園で戯れる女性以外は出てきません。不思議です。そもそもどちらの階級も生活の場面が描かれていない映画なのです。

 18世紀末からイギリスで始まった産業革命ですが、ドイツでは19世紀中頃から始まります。帝政は崩壊し、1919年にワイマール共和国になりますが、第1次大戦の膨大な賠償金に喘ぐことになります。映画完成はヒトラーが首相につく7年前になりますね。映画に描かれた社会は当時の世相を強く反映していたものでしょう。

 映画は新旧のバイブルが下敷きになっています。2列目の右端のシーンはフリーターが機械の操作に振り回されて苦しんでいるところですが、磔刑を連想させます。マリアという名は聖母マリアからきているのでしょうが、役割は洗礼者ヨハネのようであり、「バベルの塔」を引き合いにして(教訓の真意から外れた引用で、こんな解釈あり?と思いますが)我らには設計者と建設者の間を取り持つ人が必要であり、メシアならぬ mediator(調停者)が間もなく現れると説く人物です。

 身代わりロボットが暴動を扇動する場面は、神からモーゼが十戒を授かっている時に信仰を失った人々が乱痴気騒ぎするシーンを彷彿とさせます。暴動で自ら労働者の街を滅ぼしてしまうしまうシーンは「ソドムとゴモラ」でしょう。ソドムとゴモラは、滅んで水中に没した後死海になったといいますが、労働者の街も発電所の破壊により洪水に襲われるのです。

 また、七つの大罪の像が出てきたり(4段3枚目)、ロボットがお披露目で半裸で腰をくねらせて踊ったり、主人公が目を回したりとわけがわからないなあと思っていたら、これはどうもキリストの誘惑みたいなもので主人公フリーターが堕落しそうになったと言いたいらしい。映画では語りませんが、言うまでもなく調停者とはフリーターなのです。なぜロボットが女性として発明されたのかこれで納得。「誘惑」のシンボルなんですね。キリスト教で言うところの悪魔です。これを作り出したのは人間というところがミソですかね。

 2026年という設定ですが、空を舞う飛行機(2段左端)や自動車(最下段左端)は当時のままです。未来都市に複葉機が飛ぶというのもなかなかカルト的です。テレビ電話があるのはなかなか興味深いですね。まだテレビもない時代なのに。他のオブジェも当時とさほど変わらないものが使われているようです。この映画ではロボットが有名ですが、デザインがなかなかです。誘惑者だけのことはあります。

 デザインで言えば、地下のモノトーンの街並みが好きです。構図がキリコの絵画を思い起こさせます。水平と斜めの線で構成された、不気味に静まりかえった街に人影がちょろちょろ。ちなみにキリコ好きです。

 繰り返し見たいと思うほど映画ではないけれど、いろんな面白い絵のある映画です。SF映画史に関心のある人は見なくちゃね。脚本を練り直して今の技術で撮り直したらとても面白そう。頭(支配者)と手(労働者)の相互理解というテーマにはうなずけませんが。役割の固定が階級を生むのだと思ったりします。映画の結末は、労働者の生活が改善されても、社会が変わることを予感させてはくれないものです。主人公はやはりメシアではなく、調停者に過ぎないことを実感させます。数年間見ないで寝かせといた予感が当たったという感じかな。直感は偉大だ!

(2012年追記)オリジナル版からレストアされ、2008年にはアルゼンチンで欠損部分も見つかり、現在ブルーレイで150分版を見ることができるようになりました。発見された部分は傷みがひどくて強い雨が降っているかのような状態ですが、それでもこのページを書いた時よりはずっと見応えがあります。しかも、リストアされた部分については大変きれいなプリントになっています。



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