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禁断の惑星

Forbidden Planet


FORBIDDEN PLANET

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56年・米 上映時間 98分
監督 フレッド・マクロード・ウィルコックス
原案:アービング・ブロック、アレン・アドラー 脚本:シリル・ヒューム
原作:ウィリアム・シェークスピア「テンペスト」 撮影:ジョージ・J・フォルシー
特撮 アービング・G・リース、ジョジュア・メドゥ
電子的音響効果 ルイーズ・バロン、ビーブ・バロン
出演 ウォルター・ピジョン、アン・フランシス、レスリー・ニールセン、ロビー・ザ・ロボット


 惑星アルティア4へ消息を絶った調査隊救出に向かう超高速宇宙船。隊員は生き残りの博士と娘、ロボット「ロビー」に出会えますが、博士からすぐ立ち去るように忠告を受けます。そこで地球へ判断を仰ぐための通信設備の建設を始めるのですが、巨大な何者かに襲われることになります。名品ロボットRobbyでも有名なSF映画のエポック的な作品で、量子力学や心理学を援用した物語が展開されます。ロビーはキャストとしてちゃんと名前も出てきていますよ。登場する時はおじぎしてます。なんでおじぎ?

 50年代はSF映画の黄金期で、面白いのがいろいろあります。この宇宙船は見事な円盤型ですね。だいたい昔はロケット型か円盤型みたいで。真ん中にコントロール盤があるあたりもよく見かけます。どれが最初だったんでしょうか。スタートレックに出てくる電送装置とよく似たのがありますが、これはどうも超高速から減速する時に体を保護するためのようです。潜水病予防みたいなものですね。そう言えば、どこか内部が潜水艦を想起させます。しかし、これはどう見てもスタートレックに影響を与えていますね。


50年代SF映画ビデオパッケージ群

50年代SF映画ビデオパッケージ群


 この映画の素晴らしいアイデアは、滅んだクレール人が肉体を捨て、精神だけの世界を作り上げようとしていたというところにあります。人間の潜在意識にうごめく怪物をテーマにしているようで、実は底流に肉体と精神の問題が流れているように思えます。賢治なら一度は夢見た世界かもしれません。肉体はとても罪深く、やっかいな代物ですからね。逆に言えば、肉体はそれだけに素晴らしい存在だとも言えますが。

 話も面白いけれど、登場するメカも楽しめます。ロビーなんかかなり細かい細工を施しています。そしてクレールの地下施設。正確には施設ではなく、ひとつのマシンなのですが、これが現在に至るまでいろんな映画の宇宙人の施設のモデルになっていることがよくわかります。SFXもなかなかのものです。ただ、水着というものを知らないアルティアが素っ裸で泳ぐシーンで、ちゃんと水着が見えてしまっていました。編集しっかり!と言いたいところですが、本当はちゃんと水着を着ているんですよと観客に伝えておく必要がある時代だったのかも。

 それぞれのシーンの見せ方がいいですね。ロビーが現れるところの土煙。怪物が階段を上がるシーンなんか上手い。  会話がウィットに富んでいて、これも楽しめます。キャプテン(レスリー・ニールセン)に超ミニスカを咎められたアルティアがロビーに脚が見えないドレスをおねだりするのですが、
  ロビー「放射能予防服ですか」
  アルティア「視線防止」
なんてね。しかし、あのニールセンが真面目に怒って説教するというのは歴史の皮肉でしょうか。まあ、今も真面目にお笑いやっているのでしょうが。ラブシーンまでやっております。でも、どこか間抜けな雰囲気は漂わしていますよ。

 電子的音響効果「ELECTRONIC TONALITIES」という言葉でスクリーンに表示されますが、この言葉に時代が出てます。このいかがわしい音が素晴らしい効果を醸し出しています。この音響なしにこの映画は語れないほどです。

「禁断の惑星」劇場ポスター

 この映画で一躍アメリカの国民的ロボットになったロビー・ザ・ロボットですが、翌年に「宇宙への冒険 THE INVISIBLE BOY」にも出演しています。このロボット人気で作られた映画で、人工衛星を乗っ取るというコンピュータの人類支配を描いた作品のようです。ですから悪役としての登場です。見ていません。アイデアを元にデザインを仕上げたのはボブ・キノシタです。TVで一世を風靡した「宇宙家族ロビンソン」のフライデーもこの人のデザインだそうです。右の劇場ポスターは当時のもので、ずいぶんと恐ろしげなロビーです。映画とぜんぜん違う雰囲気なんですが、この感じが2作目に現れているのでしょうか。DVDなどのパッケージもやはりこの絵を元にしています。

 「プリオシンの電信局」での書き込みによると、「ミステリーゾーン」、「宇宙家族ロビンソン」、「プロジェクトUFO」、「刑事コロンボ」にもゲスト出演しているそうです。フライデーと対面しているロビーを見てみたいもんです。



余談


 この映画の原作というよりは、下敷きとなったのはウィリアム・シェークスピアの「テンペスト The Tempest」(1610年-11年)です。未来を描くのにも古典は有効であるという証左になっています。プロスペローは弟のアントーニオの反逆により、ミラノ大公という地位を奪われ、美しい娘ミランダとともに孤島に追放されています。魔術と妖精エアリエルを用いて、本来のあるべき秩序を取り戻そうと試み、島に流れ着いたナポリ王一族や怪物キャリバンもからみながら、全てが治まると魔術を封印することになります。映画は忠実にこの構成をなぞっていると言っていいでしょう。

「プロスペローの本」タイトルシーン

 「テンペスト」は「テンペスト The Tempest」(79年・英)や「テンペスト Tempest」(82年・米)があります。後者は音楽をツトム・ヤマシタが担当しています。比較的最近では「プロスペローの本」(1991年・英仏)も「テンペスト」が原作です。この映画の監督はピーター・グリナウェイですから、ちょっと異質な感覚です。「Books」とあるように本を縦糸にして描かれています。

 シェークスピアはこの「テンペスト」を書くにあたり、プロスペローのモデルとした人物がいます。John Dee 1527-1608 という人物で、エリザベス朝時代の思想家・数学者・占星術師でした。旧来の魔術を科学の域に高めようとしましたが、一般には黒魔術師と思われていた人です。メアリー女王ならびにエリザベス1世の政治顧問になり、両女王の戴冠式の日付けは彼の占星術により決定されました。晩年は降霊術に凝り、降霊術師ケリー Edward Kelly(1555頃‐?)を通して天使と対話し霊的知識を得たとされています。その著作は薔薇十字団にも影響を与えました。



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