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時計じかけのオレンジ

A Clockwork Orange


A CLOCKWORK ORANGE

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71年・英 上映時間 135分
制作・監督・脚本:スタンリー・キューブリック
原作:アンソニー・バージェス 撮影:ジョン・オルコット
音楽:ベートーヴェン、ロッシーニ他 シンセサイザ:ウォルター・カーロス 
美術:ラッセル・ハッグ、ピーター・シールズ コスチューム:ミレナ・カノネロ
出演:マルコム・マクダウェル、パトリック・マギー、ウォーレン・クラーク


 キューブリックをとりあげるのは2回目になります。暴力があふれた映画は嫌いなので2度と見たくない映画なのですが、映画としての魅力に溢れているためとりあげざるをえない作品です。今や暴力があふれた映画などありふれたものですが、「時計じかけ」はとても嫌な描写なのです。キューブリックはやはり怖い。怖いと言えば、被害者になる小説家のパトリック・マギーの顔もかなり怖いです。

 時代は近未来になっており、4人の非行グループが暴力とセックス(概ねレイプ)に明け暮れていますが、横暴なリーダーである主人公アレックス(マルコム・マクダウェル)は仲間から反逆されて警察に捕まり投獄されます。刑務所では聖書を読みながらキリストをむち打つ夢想をしたりしていて相変わらずなのですが、政府が始めた攻撃性を絶つ洗脳実験に、すぐ釈放されるという理由で自らモルモットを買って出ることになります。底流には「自由意志」の問題があるのですが、この映画はテーマよりも映画というものの面白さ、あるいは怖さを追求しているような気がします。結末は意外なものではありませんが、皮肉を利かせています。

 例によって音楽の使い方が秀逸です。カーロスのシンセサイザがとてもいいし、「雨に唄えば」のメロディにのせて、ダンスしながら無抵抗の男を蹴り続けたり、ベートーベンの第九がいろんな場面で重要な役割を果たしています。映画を見終わった後で、これらのシーンを音楽と切り離す努力をしなければ、えらい目に遭います。

 この映画のもうひとつの特徴は隠語がたくさん使われていることです。yu が見たビデオではその語の字幕に下線がつけてありました。頭は「ガリバー」らしい。また、絵になるシーンがいたるところにあります。コスチュームや美術なども「近未来」という幻想に似つかわしく、マルコムの容姿もぴったりはまっています。こんなわけで見るのは今回で3回目になります。たぶん死ぬまでにはもう1回見てしまいそうです。いや、もう見ないぞ。

 先に近未来の設定と記しましたが、71年の映画ですから現在から見れば過去になっていると言っていいでしょう。登場するレコード店はやはりレコードばかりが並んでいますし、アレックスが第九を聞くときも、使われるメディアはマイクロカセットです。怠学や浮浪者狩り、その他の風俗もすでに経験した、あるいは現在経験しているものです。映画の通りに時代は進んできました。コンピュータによる国民データの管理から国家への忠誠を求める法案まで出てきた現在、この国でもこんな映画が出てきてほしいものです。政府による洗脳もすでに始まっているとあなたは感じていますか。いいえ、ずっと昔から続けられているのです。


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