プリオシン海岸  プリオシン通信

星のいのち、鳥のいのち

上を向いて歩こう


雲間の金環日食
雲間の金環日食


恥ずかしそうな金環日食

先月に話題にした5月21日金環日食の観測結果はご覧の通り。リング状になる瞬間を見ることはできませんでした。雲ばかりでまるで見えず、金環食になる直前にやっと秒単位で見えただけでした。楽しむどころではありません。日本の空は天体観測にはやはり向きません。

日食中の月の影 左の画像は日食中の地球に落ちた月の影です。思っていたより影が暗いです。そして、地球の北半球には一面の雲が出ています。

天体観測していた時代も3回に1回晴れれば良い方で、たいていは準備が無駄になりました。現地で雲が出てくるなんてことも普通のことですからね。しかも、観測の主目的は撮影だったため雲はできるかぎり排除したかったので、天体観測を続ける上での大きなハードルになりました。そして体力の衰えとともにハードルはどんどん高くなるばかり。

ハッブル宇宙望遠鏡 もうひとつはハッブル宇宙望遠鏡の登場です。ハッブルが撮影した写真を見て、天体写真を撮るのが虚しくなりました。それはプロとアマチュアの垣根どころではない差でした。相手は大気圏外で撮影しているのですからね......(^_^)

今月6日の金星の太陽面通過は朝の早いうちは曇でしたが、その後は晴れてよく見ることができました。僕たちが見られるのは太陽にシミがある程度の感動ですが、これも太陽観測衛星「ひので」なら、こんな絵(下右画像)を見ることができるわけですね。金星に縁取りが見えるのは金星大気による光の屈折だそうです。

金星の太陽面通過      太陽観測衛星「ひので」の可視光・磁場望遠鏡で見た第2接触前の金星

プロが高価な機材で撮ったものはもちろんいいけれど、自分で撮ったものには愛着が湧きますから上の金環日食画像みたいに機会があればやはり撮影してしまいます。そんな愛着もハッブルには負けてしまったということですね。生きているうちに宇宙へと行けるかもしれないと期待した子ども時代は遠くに去り、宇宙はますます遠くなった昨今でもあります。

普段音楽はほとんど聴かないと何度も書いていますが、僕は耳よりも目の楽しみが強いみたいです。でも、林の近くで耳を澄ますと10種類ぐらいの鳥の声が聞こえてきて、聞き惚れます。芸術としての音よりも、自然の音が好きなようです。とは言っても、勉強しようという気がないので、鳥の声が判別できるのは数種類の声だけです。

そして、見る楽しみが星から遠ざかり、今はもっぱら鳥へと移ってきているわけですね。これは自分の部屋が2階になって鳥と目が合う機会が増えたことも大きい。この季節はたぶん鳥が一番活発になる時期です。今春ははじめてハクセキレイがうちで子育てをしたので、この観察報告をします。子ども時代の夏休みの宿題、アサガオの観察みたいなものです。


ハクセキレイの観察

ハクセキレイ うちの庭で始めて目撃したのは去年(2011年)の7月です。プリオシン通信でも写真を載せました。そして、この5月に時々バルコニーの手摺りに留まるようになり、変だなあと思っていました。そしてそのうちに巣作りが始まったのです。

書籍で調べるとハクセキレイの繁殖が三重県で始めて観察されたのが85年でした。ハクセキレイはツバメのように渡りをする鳥で北日本で繁殖していたのですが、南下が始まっているのです。まずはセキレイについての基礎知識から始めます。

セキレイは全長16〜22cm。みなほっそりした体つきの鳥で,細いくちばしと長い尾が特徴です。ぱっと見は配色の異なるツバメみたいなものですね。どちらもスズメ目です。小型昆虫類を食べています。

草原、原野、河原、湖畔、林縁や渓流などに棲んでいて、水辺を好みます。ツバメと大きく異なるのは、飛んでいるよりも地上を走ったり歩いたりしている時間が圧倒的に長いことです。蝶が飛ぶみたいに波状に飛行して、着地している時は尾を上下に振ります。

俊敏な動きが得意なのは、この尾を振る動作にあるようです。振る反動を利用しているのと、僕の仮説ですがジャイロのように姿勢の安定に貢献しているのではないかと思えます。波状飛行するということは飛行中も尾を振っていることを 示しているとも思います。日本に生息するセキレイを簡単に紹介します。


日本に棲む主なセキレイ5種 (スズメ目セキレイ科)
名称ハク
セキレイ

セキレイ
セグロ
セキレイ
ツメナガ
セキレイ
イワミ
セキレイ
特徴後頭部から背にかけて黒色ないし灰色、胸が黒い。額と顔は白く、黒い過眼線がある。背面青灰色で白い眉斑があり、下面は黄色い。雄は繁殖期にのどが黒くなる。背、頭部、顔、首から胸が黒く、額からつづく白い眉線(びせん)がある。少し小型。頭上が灰青色で,腹が黄色い。背面がオリーブ褐色で、胸に2条の黒帯がある。この種だけ尾を左右に振る。
棲息地北日本の海岸で繁殖していたが、南や内陸に広げている。湿地、海岸、河原。川では下流部。九州以北で繁殖。低山帯から高山帯までの山地の急流や、低地の清流。川では上流部。日本固有種。九州地方から北海道までの平地から低山にかけて、おもに河川の中・上流域。北海道北部の草地で繁殖。渡りのとき通過するものも多い。西日本でときどき繁殖する。常緑広葉樹林や松林、農耕地。


セキレイの繁殖は種類によって多少の違いはありますが、抱卵と育雛(いくすう)の期間はそれぞれ半月のようです。つまり、抱卵を始めてから巣立つまで約1ヶ月ということです。産卵は5個前後です。今回のハクセキレイの場合を検証してみます。

庭に度々姿を見せるようになったのが4月中旬です。バルコニーに留まるようになったのが、25日。この時巣作りも確認。抱卵に気づいたのが5月14日。育雛を発見したのが26日。4羽でした。巣立ちが6月4日。滞在期間を合計すると1ヶ月半になるわけですが、僕が気づくのに遅れている可能性を勘案すると、抱卵と育雛の期間も同じ長さで、たぶん半月はかかっていない勘定でしょうか。

ハクセキレイの子育て期間 (日付は事実ではなく確認日)
4/25 (19日) 5/14 (12日) 5/26 (9日) 6/4
営巣 抱卵 育雛 巣立ち


営巣の期間がずいぶん長いです。たぶん抱卵に気づくのが遅れたためだと思います。もっとも営巣に気づくのも遅れているはずですから、最大で数日遅れたとすると、営巣期間は半月を超えるのかもしれません。育雛については気づくのに遅れたとしても最大2日だと思います。雛の育ち具合を見ていたので、巣立ちの早さに驚きました。歩いて巣立つのかもしれないと思ったほどです。

他のサイトの記録を読むと1日に1個ずつ卵が増えたとあり、そうすると早生まれと遅生まれではずいぶん巣立ちまでの日数が異なってきます。大雑把でいきましょう.......(^^ゞ


ハクセキレイの巣抱卵雛
ハクセキレイの巣抱卵
「怪しい者ではございません」

「両親はいま留守です」

巣は玄関の庇で深さ15cmの樋の中です。雨が降れば当然巣の下部は濡れることになります。お椀型の上部から下部へと裾広がりのがっしりした巣で、綿毛のような羽毛が表面に敷かれていました。巣立った後、糞はまったく見当たりません。

ふだんハクセキレイは単独でしか見たことがなかったので、いつも単独行動しているものと思い込んでいましたが、ハクセキレイは集団行動するそうです、ハクセキレイは一夫一妻で子育てをしますが、夫妻で目撃することはやはり少なかったです。目撃することがあっても、他の鳥のように寄り添って並んでいることはなく、かなりの距離を取っていました。これは子育てなんかしていませんよという撹乱なのでしょうか。

営巣も抱卵も夫婦で行い、育雛中の夜間は雌が巣に入るそうです。あまり怖がらせるのはいけませんから、観察は控えました。ツバメのように観察しやすい巣ではありませんから、観察はなかなか大変です。親鳥がいない間を見計らって巣を覗いたら、4羽が大きな口を開けましたが、すぐに「違う」と気がついて縮こまりました。ツバメとは異なって、雛の鳴き声はかなり静かです。警戒心がずっと強いのだろうと思います。


ハクセキレイはベビー食をつくる

虫の団子をくわえたハクセキレイ 育雛を始めてからも口に藁(わら)をくわえているので、巣の修繕でもするのかと思いました。しかし、いつも藁をくわえているので勘違いに気がつきました。それはカゲロウ類の団子だったのです。何匹ぐらいが団子にされているのかはわかりませんが、かなりの本数の脚が見えます。

ハクセキレイは採餌後に巣へと直行しません。かなり離れた屋根の頂点に下りて周辺に敵がいないかしばらく見渡します。自分が見られていないことを確認したら、屋根の縁まで歩いていきます。それから巣へと直線的に飛ぶのではなくて、地面すれすれまで下降してから急上昇して巣にたどり着くのです。

これはすべて巣のありかが発見されないようにする工夫なのでしょう。セキレイはスズメほどには警戒心が強くないので、ここまでやるとは思いませんでした。 スズメの巣

ちょうど隣家でスズメが繁殖しています。スズメは巣がすっかり隠れるように作りますが、僕が見ていても巣に入っていきます。少々躊躇している様子はうかがえますけどね。左の画像は梁にかけられたスズメの巣です。かなり長期にわたって出入りしているので、育雛が1度とは思えません。同じ巣が使われることがあるのでしょうか。

虫団子をこね直す ハクセキレイはあたりをうかがっている時間がかなり長いです。5分ぐらいは平気でいます。警戒心が解けない時はもっと長居します。この時に餌を嘴(くちばし)から屋根へ落として、ばらけた虫をまた拾って団子にしているのでした。

他の鳥もこういうことをしているのでしょうか。1匹ずつだとばかり思い込んでいたのでこれはびっくりしました。雛はこんな高栄養なものを食べているから成長が早いのでしょう。この団子を夫婦で一日中せっせと運んでいます。ただでさえ寿命が短いカゲロウがやっとの思いで水面から舞い上がったら、パクッ。カゲロウに合掌。

なぜカゲロウと断定できるのかと問われれば、わかりません。水辺で水面から舞い上がる虫を捕っているはずだし、双眼鏡で観察した時にはカゲロウのような羽が見えたことがありました。ところが、虫をくわえた画像を見てわかるように羽が見えません。どうも羽を取り外しているようなのです。

栄養がないからなのか、かさばって雛の喉に詰まる危険があるせいなのか。これはもう立派なベビー食です。

ジョン・テニエル絵『犬と肉』
ジョン・テニエル絵
それにしても、この時期に水辺で湧き上がるカゲロウ類を捕まえるのは簡単なことでしょうが、次々にどうやってくわえているのでしょうか。

イソップ童話の『犬と肉』みたいに、くわえていた虫は川面に落ちてしまわないのでしょうか。画像のように口いっぱいどころか顔いっぱいにくわえた状況ではさすがに無理ですよね。


ハクセキレイを飼い慣らす

危ないタイトルを書いています。ここで「飼い慣らす」とは『星の王子さま』用語での意味です。野鳥を行政の許可なく捕獲したり飼育することは法律で禁止されています。しかも許可が下りる可能性があるのはメジロとホオジロの2種だけ。もちろん申請料がいります。

これは2003年の「鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律」の施行からです。僕は同僚が拾ってきてしまったスズメの雛を育てたことがあり、「電信局」でも話題にしたと記憶しますが、あの頃はまだ可能でした。現在でも病気やケガ等の一時飼育なら1ヶ月以内という条件で可能だそうです。

動物はかわいいです。しかし、拘束して飼うのはやはり「かごの鳥」ですから、「可愛い」が「可哀そう」になってしまいます。鳥に翼があるのはまさに大空を駆けるためです。翼をもぎ取ってはなりません。翼を奪われた鳥は鶏のような運命をたどることになります。

人間が鶏から受けている恩恵はどんなに鶏に感謝しても足りないぐらいです。それを「鶏は三歩歩くと忘れる」とバカにするのはまったく罰当たりなことです。2009年10月の通信で取り上げましたが、バカなのは鶏を知らない人の方です。そして、「三歩歩くと忘れる」のは僕の方です。近頃、ますます記憶の減衰が激しい.......(^^ゞ

まあとにかく、互いの自由意思で仲良くなるのは「カラスの勝手」です。

今まで玄関から庭に出た時にハクセキレイがいると、ちょっと飛び立ってからまた地面に降りて6、7メートルの距離を取っていました。子育てを始めてからは庭の向こうの建物の屋根に留まっていました。育雛が始まって数日後ぐらいからケーブルTVの引き込み線に留まるようになります。これはバルコニーのすぐそばにあります。

そして、ケーブル線からバルコニーの手摺りに移り、そこを伝って玄関の方へ向かいます。僕は部屋の中から見ています。椅子に座った僕の正面あたりまで来て目が合うと、またケーブル線へと戻ります。こちらが知らん顔をしている時はしばらく部屋をのぞき込んでから「大丈夫だな」と歩いてきます。

歩くのがほんとうに好きな鳥です。


手摺りで右往左往するハクセキレイ
1羽のハクセキレイを4枚合成 舞台上で踊るかのよう

意地の悪い家主なので、手摺りを歩いていくとじっと見てやります。向こうもだんだん慣れてくるとケーブルまで戻らずに、手摺りの上で行ったり来たりして、「私は何もしていませんよ」とアピールします。困って右往左往しているようで笑えます。ほんとに意地悪です。

一往復ぐらいすると立ち止まってまた部屋の中を覗きます。そこで顔を横に向けるとテクテクと歩いて行きます。さすがに横目で見ていることには気づきません......(^_^)

ハクセキレイのモデル顔 こうしてこちらが覗いたり、向こうが覗いたりを繰り返して、信頼関係?が深まっていくのです。当初ベランダに出ると飛び立って離れた屋根へと避難していたハクセキレイは、いったんは飛び立って避難してもすぐにケーブル線まで戻ってきて、写真を撮りたければどうぞというみたいなモデル気取りになりました。近づける距離は2メートルまで縮まりました。僕の古いデジカメでここまで撮れたのはこのお陰です。

ハクセキレイの足跡 左の画像はハクセキレイの足跡です。屋根を歩いたり、ケーブルに留まったりした跡でもこんなに泥がついています。水辺にいたことの何よりの証拠ですね。

このハクセキレイ一家を家族で見たことは一度もありませんが、今も時々姿を見せます。いろんな鳴き声にも耳慣れて、声で近くにいるとわかるようになりました。実は今も窓から見える屋根で鋭く鳴いています。

契りを交わすスズメ 近年はスズメが半減したと聞きますが、うちのまわりにはたくさんいます。昨日もロミオとジュリエットみたいに、バルコニーで契りを交わすスズメがいました。

毎年のように何かの鳥の家主になっていると、親鳥は自分の子鳥で、雛が孫鳥のように思えてきます。勝手に子や孫にするなと彼らは憤慨するかもしれないけれど、糞害されることもないのでいいのです。人間の家族を作らなかった僕はこうして鳥の家族を持ったのでした......(^_^)

もっともこの家族の寿命は短くて、野生ならスズメは1〜2年。セキレイはその倍ぐらいです。スズメはほぼ1年で誕生、自立、友情、恋、子育て、死をみんな経験していくんですね。

星のいのちは億年単位。人のいのちは年単位。鳥のいのちは月単位。虫のいのちは日単位。僕の記憶は分単位。


メメント・モリ

屋久杉への宇宙線の影響を調べたところ、西暦774〜775年の1年間だけ炭素14が通常の20倍もあったというニュースが今月初めにありました。超新星爆発か太陽のスーパーフレアか何なのか原因は不明だそうですが、いずれにしても宇宙の呼吸を感じます。

有名な超新星爆発の残骸が牡牛座の「かに星雲」で、これは爆発が1054年に観測されています。ただし、地球からの距離は約7千光年です。距離がほぼ正しいとしても8千年も昔のことです。


かに星雲大マゼラン雲
かに星雲大マゼラン雲


最近では1987年2月23日に可視光で観測された「1987年超新星A」というのがあります。これは大マゼラン雲の中であった爆発です。こちらはもっと遠い星で、約16万年昔の光ということになります。たぶん映画『スターウォーズ』の時代よりも古い......(^_^)

オリオン座 そして、いま噂されているのがオリオン座の1等星「ベテルギウス」です。冬の大三角の1角をなす、オリオンの肩にある少し赤い星です。画像では左上の星です。

直径が太陽の千倍、質量が20倍の大きな星です。これが星の晩年である赤色超巨星になっていて、爆発の兆候になる収縮が始まっているとか。640光年という近いところにあるので、これが爆発すると日中の空に輝く星になると言われています。光が届くまで640年かかるので、すでに爆発しているかもしれないとも。

若葉茂れる初夏を過ぎ、もう夏ですが、ばか者ではあってもすでに若者ではなくなっているので、光溢れる季節の中でもその影の中にひそんでいるものを見つめてしまいます。野生に放つ直前に死なせてしまったスズメの雛のことも、この時期になるといつも思い出します。去年若くして亡くなった知人もこの季節に去りました。

メメント・モリ。  (意味は『フラットライナーズ』を参照)

気晴らしに上を向けば輝く星があり、空を飛ぶ鳥がいます。地を歩くのが好きな鳥もいますけれど。星のように長い寿命には悲しみを覚えませんが、短い寿命は悲しみを運びます。だから人はときどき涙がこぼれないように上を向くこともあります。

鳥も知っている永訣の悲しみは、生きている者ならだれもが向き合わなくてはならない悲しみです。昨日は沖縄慰霊の日で平和の礎(いしじ).の前で泣いている方がいましたが、やはり何十年経ても遺族の涙は涸れません。

せめて永訣の悲しみが生きているものすべてへとかしがれる如雨露(じょうろ)となることを願うばかりです。この梅雨も猫と犬が騒いでバケツをひっくり返したみたいな豪雨になることなく、生き物への慈雨となりますように。

ハクセキレイがおもてで呼んでいます。

2012-06

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