プリオシン海岸  プリオシン通信

彼岸花

真夏日の十五夜


 
カラス、最後の見晴らし


記録的な猛暑でしたが、ようやく秋が来たらしい。「夏よ、さらば」と言いたいところですが、年々僕の好きな秋が短くなり、「秋よ、さらば」と悲しくなる。

晴れた十五夜はきれいな月が見えましたが、ふーふー暑い日で、エアコンと十五夜では、ヒマワリとそうめんでも供えたくなります。

成熟前のぶどう 生前、父が趣味で育てていたハウス葡萄。巨峰の藤みのりで素人にはなかなか育てるのが難しい。伐っていいという遺言だったけれど、見事な木になっていたので伐れず。「オヤジ遺産」と名付けて、かれこれ四年面倒を見てきました。

上の写真は成熟前のぶどうですが、当初はこんな立派なのがたくさん出来たんです。しかし、去年から病気が出てしまい、高額な薬剤も散布して頑張ってみましたが、とうとう今年はほぼ全滅。これは暑すぎるのもあるんだろうと思いますね。熱帯で葡萄を作るのは素人では無理。ということで、葉が落ちたら伐採することに決めました。

今月の冒頭写真はいつも悪さをしているカラスですが、カラスがとまるこの木も道が拡張されることになり、伐採されました。カラスのお気に入りの見晴らしはこれが最後になりました。

先日の朝日夕刊トップ記事に、スーパーのイオンが葬儀の明朗会計をうたったら、全日本仏教会が「仏教本来の精神を踏みにじった」と怒ったため、イオンはHPからお布施の目安を削除したとのこと。あほらしい。

イオンは8宗派約600の寺院の紹介もしていて、つまりはこれらの寺院の僧侶と提携しているわけです。

全日本仏教会には批判の声が寄せられているらしいけれど、朝日新聞の読者投稿でもやはり僧侶批判しか出ていなかったです。そもそも朝日の記事自体が仏教会を批判する意図がみえみえでした。

僕は去年の10月に「ホトケの耳に念仏」を書いて、伝統的な仏教教団が「仏教本来の精神を踏みにじっ」ていることを書きました。やはり、生きている人間の現実に目を伏せていることが今回の騒動の元ではないかと思えます。信者は高額の「お布施」を求められ、僧侶から返ってくるのは寺院には頭を「お伏せ」なさいという姿勢です。

高い所に在る人は人々の暮らしを見渡す責任が生じると考えるのは、低地に生きる者の勘違いでしょうか。しかし、黒い袈裟(けさ)を羽織ったカラスのごとく、僧侶もいつまでも高みの見物ができると勘違いしていませんでしょうか。

うちの近所のじいさんたちは「葬式に来てもらえないと困るから文句いえんわ」と言って苦笑しています。僕らの世代以降は葬式に宗教はいらないと考え始めているから一向に困らず、そのうち「そうし木」という金のなる木も伐採されますよ。

「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」という諺がありますが、「坊主憎けりゃカラスまで憎い」となりませんように。そもそもこの諺の由来はどこにあるのでしょうか。どうもやはり江戸時代からのものらしく、「ホトケの耳に念仏」に記した背景がありそうですね。そうでなければ、僧侶を足蹴にするような、こんな表現の諺は普及しませんもんね。

僕は、母の葬儀としばらくの間の法事を済ませたら、檀家から抜けると母に伝えてあります。仏教が好きなのに、仏教徒でいたくない悲しさ。いつの日か、「寺よ、さらば」。

彼岸のこの時期には彼岸会があり、お寺には斎米(ときまい:昔はお米でしたが、今はお金)と修繕費を納めました。お寺には彼岸よりもお寺を支えている此岸を大切にしてほしいと願います。

周公 周公の言葉から「愛は屋上の烏(カラス)に及ぶ」という諺が生まれています。ある人を愛する者はその家の屋根の烏まで愛す、というような意味らしいですが、僕も本当はお寺の屋根のカラスを愛したいのです。

今年は彼岸が過ぎても彼岸花があまり咲きません。彼岸花が咲かないくらいですから蝉も異常でした。例年なら庭の蝉の大音量に昼寝もできないほどですが、今年はひっそり。

鈴鹿の国方言研究会が昭和初期の旧鈴鹿郡での虫の呼び名を調査しています。旧鈴鹿郡とは現在の亀山市と鈴鹿市の大半が含まれる広い地域です。僕が住んでいるところは旧鈴鹿郡の地域ではありませんが、まあ近辺なのでそんなに違いはないでしょう。下図は「鈴鹿の国方言研究会」のサイトから引用させてもらいました。
http://www.justmystage.com/home/suzukahogen/

アブラゼミの主な呼び名の分布

アブラゼミの呼び名は29種類もあり、エキキチ(鳴き声から)、ボンゼミ(時期から)、カッパ(雨合羽から)、オカネ、ガラ、ガンガン、ゲジ、ジャゴ等だそうです。僕はひとつも聞いたことのない名称です。子ども時代もアブラゼミと呼んでいました。当時老人が何と呼んでいたかはさすがに記憶にありません。

カブトムシは19種類。ツノカブト、ツノマタ、ウシグソメクリ、クソカブト、キク、ゲンジ、ドネ等。

調査地域は旧郡内の78集落とその隣接14集落ということです。これだけ名称がたくさんあると、近畿を中心に放射状に広がるという方言周圏論とかいうような、そんな規則性はないですね。女性が嫁として言葉を運ぶ可能性とかあるやもしれません。

この入り組んだ分布図を見ると、隣の集落へ行けば別名になるのが珍しくなかったと言えます。現在はマスコミがすべて統一してしまいますから、全国どこへ行っても共通の名称になってしまいます。しかし、まだ昭和初期にこんなに別称があったとは驚きです。

少し昔まで、言葉は上から降ってくるものではなくて、自分たちの口で発するものだという世界が厳然と存在していたことを見せつけられている気がします。

彼岸花 昔、こちらでは彼岸花をだれもが「したまがり」と呼んでいましたが、今や老人でも「彼岸花」となりました。世界の複雑化とともに言葉は飛躍的に増えて、毎月次から次へと新語を覚えなければならない現代人。「昔の人はやっぱり偉い」なんておきまりのことを言う気はさらさらありませんが、実は昔はもっと言葉がたくさんあって、豊かな言語生活を送っていたことは間違いなさそうです。

今日は陽射しの強い日ですが、吹く風が気持ちいいです。僕らは風の呼び名をいくつかしか使いませんが、昔の人がどれだけの風を知っていたか想像するだけで、はるか彼方までどんどん世界が広がっていく想いがします。そして、その果てには彼岸花が咲いていたことでしょう。

十五夜にすすきと団子や里芋などを供える風習も、いまや物語の中の風景のようになってしまいました。しかし、この昔の方言の豊かさは、比喩ではなくて、昔は本当に「ものがたり世界」が存在していたのだと教えてくれています。

からーす、なぜ鳴くの? そこにはものがたりがあったからです。


先日、「プレシオスの鎖」に「天上のアイスクリーム」を追加しました。なんと「プレシオスの鎖」を更新するのは10年ぶり。また更新する時は来るのでしょうか.......(^^ゞ こちらに時間を取られたので、今月の通信はさっさとおしまいにします。今月も冗長な話になったので、「さっさ」でもありませんね。 えっさほい、さっさ。


【今月の映画】

暑さが少々やわらいだので、見る本数も増えました。

『ソルト SALT』
『ソルト SALT』
2010年 100分 アメリカ フィリップ・ノイス監督

これは「ボーン」シリーズの女版のような趣なんですが、雰囲気がシリアスな割には話の筋が大風呂敷になっていて、昔の007のように荒唐無稽。そして、アクションもまるでスーパーガールみたいに超人的なので、リアリティがほとんどない。「ボーン」みたいにシリーズ化するかのような終わり方でしたが、次回は設定を考え直した方がいいのでは?

『オーケストラ! LE CONCERT』
『オーケストラ! LE CONCERT』
2009年 124分 フランス ラデュ・ミヘイレアニュ監督

こちらではシネコン上映はなく、小さな映画館上映でした。期待の映画で、そこそこいい線をいけるはずの話だったのですが、不満が残りました。人情話に比重がかかりすぎて、偽楽団の成りすましの面白さがあまり描かれませんでした。
楽団員があまりにいい加減で「リハーサルなし」、楽器がなくて借りてきた楽器で初めて触って演奏するなど、あまりにもリアリティをないがしろにし過ぎ。コンサートの成功も白々しく思えます。そういう意味で日本語タイトルは偽りあり。
演奏練習の葛藤をもっと丁寧に描いてほしかったですね。こういうディテールがしっかりしてこそ人情話も活きるはず。11月にDVDが出るそうです。

『プリンス・オブ・ペルシャ/時間の砂 Prince of Persia: The Sands of Time』
『プリンス・オブ・ペルシャ / 時間の砂
Prince of Persia: The Sands of Time』

2010年 116分 マイク・ニューウェル監督

期待しないで見ましたが、なかなか面白かったです。冒険活劇のキャラ配置も定番で新味はありませんが、手慣れた展開で楽しませてくれます。しかし、ラストが安易でズッコケそうでした。きちんと締めてほしかったですね。

『13F(サーティーンス・フロア)THE THIRTEENTH FLOOR』
『13F(サーティーンス・フロア)
THE THIRTEENTH FLOOR』

1999年 100分 ジョゼフ・ラズナック監督

少々昔のSF作品です。設定は『ダークシティ』に似ていますが、宇宙人ではなくてコンピュータのバーチャル・リアリティによる世界の話です。『ダークシティ』よりも面白いかもしれない。どことなくヒッチコックの匂いがする。でも、映像には『ダークシティ』の面白さはありません。特に世界の果てに辿り着く場面は見せ方も、その描き方も手抜きとしか思えないような映像。ひとつの山場なのに不思議です。DVDで見られるようです。

『エクスペンダブルズ The Expendables』
『エクスペンダブルズ The Expendables』
2010年 103分 アメリカ シルヴェスター・スタローン監督

中高年のアクション・スターが勢揃いしたスタローンの監督作。アメリカ映画の1ジャンルとも言うべき傭兵部隊のお話。かつての同じようなB級映画と変わり映えしない。スタローンよ、いつまでやってる? 殺しまくるのを見ていて疲れるだけ。皆さん、スタローンに頼まれて仕方なく出演したんだろうな。それとも最近仕事にあぶれている?
ブルース・ウィリスとシュワルツェネッガーは顔見せのみ。ジェット・リーはええとこなしで、これはきっと本人も愉快じゃないでしょ。 expendable とは消耗品。この映画の邦題は『消耗品そのまま』にすべきでした。
近頃のアメリカのアクション映画は俳優がアクションをやらず、カメラがアクションをする。アップでカメラを振り回して撮影し、細切れのシーンを畳みかけて編集。どんな動きなのかさっぱりわからない。なるほど、これなら爺さんでもやれるな。

『ナイト&デイ Knight and Day』
『ナイト&デイ Knight and Day』
2010年 110分 アメリカ ジェームズ・マンゴールド監督

スパイ・アクション映画ですが、アクションが主になっているコメディという軽いノリです。案外楽しめましたが、派手な割にはインパクトのない映像でした。トムもキャメロンもそれなりのお年。キャピキャピやるにはちょっと厳しい。

『アイアンマン2 IRON MAN 2』
『アイアンマン2 IRON MAN 2』
2010年 124分 アメリカ ジョン・ファヴロー監督

冒頭のシーンから嫌な予感。無駄な時間を過ごしました。ミッキー・ロークが蛸みたいで憐れ。泣ける。



『終着駅-トルストイ最後の旅 The Last Station』
『終着駅-トルストイ最後の旅 The Last Station』
2010年 112分 独露英 マイケル・ホフマン監督

若者は知らないトルストイかもしれない。やはり映画にするなら家出シーンだよね。だからこそ知らない人が見ても面白くないかもしれない。トルストイよりも妻のソフィアに焦点を当てていますが、どろどろではなく軽妙なタッチ。文句なしのヘレン・ミレンです。
我が敬愛するトルストイだけど、理想主義はいろんな被害者を生みます。鳩山さんも賢治もご同様。ちなみに言語は英語です。やはりロシア人が英語というのは違和感あります......(^_^)



このページのトップへ


プリオシン海岸トップへ