プリオシン海岸  プリオシン通信

ドギー・ランチ

自転軸を傾ける


空の楽譜
空の楽譜


今年のゴールデン・ウイークは記録的な好天だったそうです。例によって僕はこの時期は出掛けません。しかし、出掛けて来る者があります。里帰りというやつです。

今年は姉と姪が親子でやってきました。我が家にいる間、僕は彼女らのお抱え運転手となります。同時に貸衣装屋にもなります。

パジャマはおろか、部屋着も持ってこないので僕の服を貸すことになるのです。

昔から竜巻のように他人(姉弟だから他人ではないですけど)を巻き込む姉には頭を悩ませてきましたが、奈良に仏像を見に行くというので、朝5時半に起きて駅まで送っていくことになりました。

当日歯を磨きながら姉を見ると、セーターの下に趣味のいい柄のシャツがのぞいていたので、褒めてやろうと歯ブラシを止めた瞬間、あれ?と思い当たるものがあります。

それは僕のお気に入りで、襟が変色しないようにめったに着ないようにしていて、ピシッとアイロンがかけてあったシャツと同じ柄。何年も着ていないので忘れていたけど、僕のシャツじゃないか!

いつもこんな調子なのです。しかも、今回はパジャマ用に貸したシャツを黙って持って帰って行きました。どろぼう〜!

3年前の家を壊す時、行方不明の服が何着も出てくることを期待していたのですが、ひとつも出てこずがっかりしました。そして今回姉が帰ったあと、あれ?とまた思い当たるものがありました。

もうおわかりですね。かなり怪しい.......(^^ゞ

竜巻ではありませんが、アメリカでは1978年までハリケーンに女性の名前だけを付けていましたが、歴代ハリケーンの名列に姉の名も入れるべきです。

この連休をはさんでリーマン・ショック以来の急激な株価下落がニュースになっていましたが、根源は言うまでもなくギリシャの財政危機。アテネでのデモの様子も頻繁にニュースで流れていました。

デモ犬「テオドロス」 ニュース映像を見ていると、夜のデモ隊の中に犬がいて吠えている姿が見えます。きっと飼い主に連れられてデモに参加させられているんだろうと思いました。

ところが、共同通信によるとその犬は野良犬でデモ隊といっしょに行動しているんだそうです。しかも、デモに参加している野良犬はこの一頭だけではないというではないですか。

アテネでは2003年から野良犬の殺処分をやめ、狂犬病などの予防注射をし、名札を付けて管理しているのだそうです。その数はいま二千頭。餌場も整備しているらしい。

写真の犬の名はテオドロス。ニュースで見た犬と似ているので、こいつだったのかな。

今年の1月の記事「鯨はほえーる」で鯨類の水銀汚染について触れました。北海道医療大と第一薬科大などのグループの太地住民調査で、月に鯨肉を一回以上食べる人で日本人平均の10倍以上と報道されたものです。

その一方で太地町が調査依頼していた国立水俣病総合研究センターの結果は春に出るということでしたので、この報道を待っていました。そして今月10日にやっと結果が出ました。

夏季調査の水銀濃度 夏と冬の2回調査でサンプル数は1137人。町民の水銀濃度は全国平均と比べて男性は4.5倍で、女性は4.0倍だったそうです。

WHOが定めた神経障害が出る可能性がある基準値の50ppmを上回ったのは、夏季・冬季合わせて43人でした。右の表は読売新聞からのものです。

太地のサンプルは年齢が高めなので少し割り引く必要があるかもしれません。前の大学の調査は月1回以上食べる人なので、当然濃度は高めです。またこの時のサンプル数は50人だったので、平均を出すだけのデータ数ではありません。

どちらにせよ、鯨類には水銀が蓄積されていることが科学的に証明されたことになります。「町の指導で数十人が水俣に行き当地で水銀値を検査してもらいました。結果、なんぼでもクジラを食べて下さいと診察が下されました」と豪語していた鯨肉店の主は訂正した方がよろしいのではないでしょうか?現在このネット店は休業中になっています。

太地町の説明会では中毒症状は確認されなかったことで「安全宣言」が出たかのような安堵感が漂っていたと報道されていました。店主も「中毒被害は出ていないじゃないか」と開き直りますか?朝日新聞によると、水俣病患者の水銀濃度は100〜700ppm程度との調査報告があるそうです。

クジラの竜田揚げ 実はこのニュースが出る二日前に、朝日新聞にある投稿が載りました。前和歌山県教育長の「捕鯨と教育『生命』学べる給食導入」というタイトルが付けられたものです。

2005年から和歌山では小中学校で鯨をメニューに採り入れている。生命への畏敬の念を育み、伝統的な食文化を継承していく契機になるだろうし、深刻化する食糧問題の観点からも鯨資源は有用だから、和歌山に倣って他県でもどうか、という提案でした。動きはすでに近畿各県、東京、神奈川、静岡、北海道と広がっているといいます。不思議なことに捕鯨地がある千葉県(和田)や宮城県(鮎川)は含まれていません。

映画『ザ・コーブ』に触れた時に調べた限りでは、太地では給食での鯨肉メニューは中止になったと思っていました。映画にも登場していた太地町の議員が取り組んだ結果だと思います。

映画では鯨肉の水銀汚染と太地町が日本全国に鯨肉給食を広めようとしていると指摘していましたが、どちらも正しかったわけです。どんどん正しいことが証明されつつあるのが現状です。町長も「来春結果が出るので疑いは晴れるはず」と発言していたわけですが、鯨食と水銀汚染に密接な関係があることが証明されてしまうことになりました。

漁協も映画には間違いがあると言っていましたが、どこが間違っているのかきちんと反論してほしいものです。そして、認めたくないことでしょうが、住民の健康を守ったのは鯨ではなく、『ザ・コーブ』です。

今回もういちど調べ直してみました。太地町の議員は2007年にこの問題に気づきスーパーの鯨肉を分析調査してもらったら、厚生労働省が定める暫定規制値の十倍以上になることが判明しました。そして同じゴンドウクジラが給食に提供されていたことがわかり、これを議会で取り上げることになったわけです。

日本のマスコミが無視するなかで、ジャパン・タイムス The Japan Timesが取り上げ、ロイター通信を通じて世界に報道されたようです。

'The Japan Times' Tuesday, Sept. 4, 2007 The Japan Times has been continuously covering the issue, and its Aug. 1 revelation of the mercury risk in school lunches became part of the reason for Yamashita's news conference Monday.

(2007年9月4日記事から抜粋)

僕も2007年には全く聞いていませんからね。海外で報道されても日本では報道されないという事態が生じ、これが『ザ・コーブ』の下地になったと思われます。1月に書いたように日本のマスコミはやはり「きじも鳴かずば撃たれまい」だったわけです。いまだに給食についてはマスコミから何も情報は出てきません。いったいどういう事情があるのでしょうか。

さっそく和歌山県教育委員会に尋ねてみることにしました。返事は和歌山県教育庁学校教育局から頂きました。ありがとうございました。

投書の通り、2005年から「鯨とともに生きてきた日本人の食文化を子どもたちに伝えていく」という趣旨で始まり、昨年は公立の小学校・中学校・特別支援学校の約70%が給食に鯨肉を使用したとのことです。全ての学校ではないわけですね。

そして使用している鯨肉については、「太地町も含め、(財)和歌山県学校給食会が供給する南極海で捕獲したミンククジラであり、水銀濃度は、国の規定値を大幅に下回っております」とのことです。

2007年に問題となった太地産の鯨類ではなく、まだ汚染度が低い南極海のミンククジラを使っているわけです。太地町の学校も地元産を使っていないことになります。

これで給食の水銀問題への疑問は解決したと思えますか?ここで新たな疑問が生じます。

(仮説1)太地町住民の水銀汚染は太地産の鯨類を食べているから。 → そんな汚染度の高いものが売られていていいのか?

(仮説2)安全と言われる規定値よりも低い汚染度の鯨を食べていたけれど、やはり汚染されてしまった。 → 国の規定値は大丈夫なのか?

厚生労働省はすでに2003年6月から妊婦や妊娠の可能性がある人は大量の摂取を控えるように指導しています。太地町にも学校にも妊婦はいます。11日には厚生労働省も調査に乗り出すというニュースが出ましたが、この汚染源をきちんと見極めるまでは鯨給食を停止してはいかがでしょうか?給食は危険回避する選択の余地がありません。

前教育長は1998年から2006年度まで現職でした。問題化する前に退職されているので水銀問題に関心がなく、この春に調査の結果が出るということも知らなかったのでしょうか。まったく不思議ですが、水銀には何も触れられていません。

教育庁が言う「鯨とともに生きてきた日本人の食文化」という趣旨は、「鯨とともに生きてきた和歌山の食文化」という分にはあまり無理はないと言えますが、太地が誇る古式捕鯨とは縁もゆかりもない南極海の鯨を食べても、それは似非(エセ)文化ではないのでしょうか。タイ米で寿司を食べるような......

前教育長は「日本各地の伝統的な食文化に光を当て、継承する契機となる」と言うけれど、鯨食は和歌山や千葉や宮城ならそうかもしれない。しかし、捕鯨と縁のなかった地域ではまさに当地の伝統食を採用すればいい話というか、そうでなかったら意義がありません。

しかも今はエコの観点から「地産地消」という視点が広まってきています。他地域での「地元の伝統食」とはつまり「地産地消」です。目の前の海や畑でとれたものと、南極という地球の果てから捕ってくるのとでは根本的に違います。

また前教育長は「生命への畏敬」と言う。それが鯨である必要はどこにあるのでしょうか?漁協は太地の鯨(イルカ)漁の撮影を拒否しています。そんな逃げ腰が生命への畏敬を育む教材となるのでしょうか?

太地町議長は「昔は、すき焼きといえばクジラかイルカ。牛肉なんて食べたことがなかった。今でも近所で売っているが、『どうしてもクジラ』ということもなく、買うことはない。町の産業として捕鯨を守らないといけないが、一般町民とは縁遠くなっているのが現実だ」と語っています。

『ザ・コーブ』 これでは町民にさえ縁遠くなった鯨漁を存続させるために学校教育を利用したいという気持ちしか伝わってきません。

そこで僕はひとつ提案します。生命への畏敬を学ぶためのもっと良い食材があるのです。

日本の食糧自給率は非常に低いと言われます。カロリーベースで40%を切ったとか言われます。しかし、これが無意味。そもそもカロリーベースで計算している国は日本と韓国だけということがそれを証明しています。

しかも、日本で1年に捨てられる食料ゴミは約1900万トン(2007年度データ)。このうち家庭ゴミは約1100万トン。2千万トンの食料で7千万人を1年間養うことができるというデータもあるようです。鯨を食べて栄養を摂る必要はなさそうです......(^_^)

むしろ外洋から新たに食糧を掻き集めてくることよりも、国内問題を改善することの方が先にやるべきことではないでしょうか?「もったいない」教育って大事だと思いますよ。それこそが「生命への畏敬」に繋がるものだと思います。

食料が大量に捨てられる一方で、他にも貴重な生命と資源が捨てられています。それは年間で約25万匹の猫、約10万匹の犬です。これを殺処分するだけでなく、学校給食に提供してもらいます。食べ残しを持ち帰る箱をドギー・バッグと言いますが、この給食は「ドギー・ランチ」です.......(^^ゞ

生命への畏敬の念を育むために、ペットを捨てないで責任を持って育てることと、そのいのちを大切にいただくという教育が可能になります。鯨の百倍ぐらいはインパクトのある教育実践になることでしょう。

動物を知能で線引きするのはおかしいと批判している方も賛成してくださるでしょう。極論でしょうか?

上げ馬神事 「鯨はほえーる」で触れた三重県の上げ馬神事ですが、今年は猪名部神社と多度大社でそれぞれ馬が一頭ずつ死にました。多度大社では安楽死とされています。こちらでは去年マスコミに取り上げられてニュースになったので、県も調査を始めています。(画像は産経新聞から)

上げ馬神事は県の無形文化財になっているので、指定継続の可否を巡って審議会が乗り出したのです。しかし、保守的な教育委員会傘下の審議会だけあって、「一般的なアクシデントで問題行為は確認できなかった」と委員の関心は低そうです。

しかし、一般的に馬が死ぬような神事なんだから問題ないと言っているわけですよね。競馬で馬が時々死ぬようなことがあったらきっと改善するでしょうに。

同じく保守の産経新聞の記事タイトルは「三重で上げ馬神事、県の審議委員が視察 1馬転倒死『問題なし』」でした。産経新聞でも揶揄している感じがあります。揶揄だよね?......(^_^)

馬に安全な方法を訴えても、返ってくる言葉は「それなら競馬もできない」、「スペインの闘牛も批判しろ」、「馬肉を食べてもいかんな」というような極論ばかり。動物の命にかかわる議論は極論で反論するのが日本の常道になってしまいました。

競馬は馬自身がやる気満々かもしれない。スペインの闘牛は今や衰退期で、牛をかわすだけのやり方も採り入れられている。競馬・乗馬をやる人の中には馬肉食を嫌う人たちもいる......などと僕も苦しい言い訳をしてもいいのかもしれないけれど、やはり話がちがうでしょ?!と言いたい。

※(2010/7/28追記:カタルーニャでスペイン初の闘牛禁止が決まりました。動物虐待禁止の法で闘牛を除外していた特例を廃止しました)

たしかに捨て猫を食べようだの、捨て犬を食べようだのは極論です。ギリシャの野良犬対策のように、議論の俎上(そじょう)に乗るような反応をしたいものです。ギリシャ人をバカにするな!です......(^_^)

すでに猪名部神社では、壁を低くする、薬物の不使用、叩かない等の改善が始まっています。それでも馬は死んでしまったわけですが、「やるか、やらないか」の二者択一ではなく、できることを探ってやっていけばいいわけですよね。

ニューヨークの観光馬車 4月末、ニューヨークの観光馬車の馬に対して待遇改善の市条例が制定されたそうです。廃止が提議されていたようですが、馬の休息時間や休暇、防寒対策、引退の時期などたくさんのルールができました。人権の街ニューヨークでも、馬権までは考慮されていなかったようで、ようやく端緒についたところです。

大人たちが言葉を投げ合う問題でも子どもたちに議論をさせてみたらきっと常識的な解決法を見いだすはずです。なぜなら、子どもたちは自転軸をずらすことができるからです。世界は人間や自分を中心に回っているわけではないことを知っているからです。

2月のチリ大地震で地球の軸が8センチずれたことで自転が速まり、一日の長さが100万分の1.26秒短くなったそうです。地球でも時代の変化に対応するために自転軸の傾きを調整するのです。大人だって自分軸を傾けられないわけがない。

北極と南極がそっくり入れ替わるような極軸ジャンプではなく、水星のような我が愛しの姉の傾斜角0度でもなく、せめて地球の傾斜角23.4度ぐらいは傾けてみたいものです。この傾斜角のおかげで四季があり、多様な自然の恩恵を僕らは受けています。

人も然(しか)り。耳を傾けて多様な意見を受け入れ、豊かな社会の恩恵を受けたいものです。全国の教育委員会さま、よろしく。


【今月の映画】
ローラーガールズ・ダイアリー
『ローラーガールズ・ダイアリー WHIP IT』
2009年 112分 アメリカ ドリュー・バリモア監督

以前から製作に名前を出していたバリモアだったので、そのうち監督業に出てくるなと思っていましたが、その初もの。ダメだししたくなる邦題からの期待薄ではなく、ピタッとくる英語タイトルのような瑞々しい作品になりました。

日本人にとってローラーゲームは古めかしいスポーツですが、映画の話の筋もステレオタイプで新しいものはありません。しかし、グローバルなアメリカではなく、ローカルなアメリカがそこにあって好ましい。

これからもバリモアには、彼女に似合っているローカルでアメリカらしい映画を期待したいです。懐かしいジュリエット・ルイスが出ています。

ちなみにローラーゲームは和製英語で、正しくは Roller Derby というらしい。映画でもそう言ってます。新聞広告には Roller Girls Diary と出ていました。あれ?確か原題は whip it だったのに...... どうもこれも和製英語らしい。

映画の中でも Derby Girls と言っていました。原作のタイトルは ' Derby Girl '。やはりね。「ドギー・ランチ」みたいな和製英語はできるかぎりやめてほしいです.......(^^ゞ もともとない英語力がますます変になる。


『アリス・イン・ワンダーランド』 『アリス・イン・ワンダーランド Alice in Wonderland』
2010年 109分 アメリカ ティム・バートン監督

今更ですが、「今月の映画」は単にコメントをつけたい映画というだけで、オススメとは限りません。

さて、見たのは2D。『アバター』で3Dは映画として未完成とわかったので、当分3D映画を見る気はないです。3Dを予習で見ておいてから2Dを見るというやり方はあり得ると思います。脳を3D仕様にしておいてから2Dを見るわけです。

どんな効用があるかについては『アバター3D・2D』を読んでください。ただし、3D脳は人を選ぶのでみんなに有効というわけにはいかないようです。

もっとも、2回も続けて見れるだけの映画はなかなかないでしょうから、結局2Dを見るだけに落ち着きますね。

去年末に、「『スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師』のメンバーですからだいたい想像がつきます。期待しません」と書きましたが、的中してしまいました。ティム・バートンがここまで「アリス」という物語をわかっていないとは思わなかったな。

CGのタッチも例のプラスチック粘土系で、せめて「9(ナイン)」ぐらいにすれば良かったのに、文学的香味がまるでありません。

ナンセンスでない「アリス」なんてナンセンス! アリスは筋の通った冒険ファンタジーの穴に落とし込まれてしまいました。

先日、足し算が答えられなくてムスッとした姪が威張って言うには、「わたし、九九を知っとるわあ。二二が四は八」......ヽ(´_`)ノ  ナンセンスなMay。



このページのトップへ


プリオシン海岸トップへ