プリオシン海岸  プリオシン通信

国破紙河在

三重苦の耐えられない軽さ


れんげ畑
れんげ畑


春なのにみぞれが降る日もあった4月ですが、そろそろ春も落ち着き場所を見つけてくれたでしょうか。フレッシュマンたちも居場所を見つけることができたらいいですね。

我が姪もピカピカの小学1年生。放課後は夕方まで我が家で預かっているのですが、たまに僕も歩いて迎えに行きます。帰途、ピカピカくんたちみんなが訴えるのは、「腹ぺこぺこ」。

ある日、姪におやつを出してちょっと2階に上がって降りてきたら、炊飯ジャーからしゃもじでご飯をすくってかぶりついている......(゜o゜;)

おなかが減りすぎて、おやつでは追いつかなかったらしい。それ以来、毎日おにぎりを作ってあげています。よそも同じらしい。

僕たちもあの頃はそんなだったのでしょうか。毎日、学校は楽しい様子です。ずっとそうであってほしいと思います。

前の仕事をやめてからうれしかったことのひとつ、それも相当に大きい「うれしい」は、事務仕事をしなくてもいいこと。この世の様々な仕事の中で一番苦手なものと言えるかもしれません。

肉体労働以外の仕事なら、それに付随する事務仕事は大なり小なりありますよね。提案だったり、記録だったり、申請だったりする事務は、はっきり言って、つまらん.......(^^ゞ

実は学校時代にまともにノートを取ったことがない。本当はノートを取ろうとしても、書けないのです。友だちのノートを借りて整然と書かれてあるのを見ると、まるで美術品を眺めるかのようにしばし見とれてしまう。

特に女の子のノートは素晴らしい。色遣いやアンダーラインだけでなく、囲み記事で先生の発言が挿入されていたりもする、その総合力とレイアウト力。

そんな僕にこの春落ちてきた仕事は書記・会計。人生はうまくいかないのは当たり前。わかっちゃいるけど、やめてくれ〜。

農地・水・環境保全向上対策という農林水産省の事業を自治会役員が引き受けていて、書記・会計が抜けたのでお鉢が僕に回ってきました。昨年一度断った話なのですが、メンバーはパソコンのできる人がいない老人ばかり。

どういう事業なのかわからなかったので、ネットで調べました。

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我が国の農地・農業用水等の資源の適切な保全管理が、高齢化や混住化等により困難になってきていること、ゆとりや安らぎといった国民の価値観の変化への対応が必要なこと、我が国農業生産全体の在り方を環境保全を重視したものに転換していくことが求められていることから、地域ぐるみでの効果の高い共同活動と、農業者ぐるみでの先進的な営農活動を支援する「農地・水・環境保全向上対策」を平成19年度から実施しています。
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役所が書く一文は例のごとく恐ろしく長い......(^_^) ともあれ、そういうことでしたか。上のれんげ畑もこの事業のひとつです。しかし、この対策事業のメンバーはやはり高齢者ばかりなんですけど......(^_^)

かつて我が村の戸数の半分は農業者。この10年で数軒にまで減少しました。農業をやめた家はこの数軒に耕作を委託し、村の田んぼのほとんどを耕作しています。「ほとんど」というのは、すでに耕作放棄地や遊休地になってしまっている田んぼや畑もありますからね。

そして、数軒で広い耕作地をすべて保全管理できるわけがありませんから、以前から田んぼの所有者も年に数度の共同作業を通じて保全管理に協力しているのが現状です。

時代の変化を考えれば、こういう対策は意義があることなのでしょう。しかし数十年後を考えた時、地域の自主性に任せるこの事業がどれだけ有効に働くかはかなり疑問です。

なぜなら、すでに地域の崩壊が始まっているからです。残った数軒の農家も何年続けられるかわかりません。「農業者ぐるみ」はすでになく、その後は耕作放棄地として荒野になるのです。若い世代は交通の便、文化の便を考えて、農村から出て行きます。僕のような独身も僕の未来でもある独居老人もいます。

数十年後には我が村の人口は1/3もいないはず。廃屋が連なる村となるのです。我が家も廃屋。我が家の東西南北の隣家もすべて廃屋。みんな何百年と続いてきた家です。断っておきますが、ここは山奥の村ではなし、海辺の寒村でもなく、広い平野の中です。

地域が崩壊しているのに、「地域ぐるみ」など意味を持ちません。着ぐるみのように実体のないものとなってしまうのです。

ずぼらな僕が幸か不幸か他人からは几帳面に見えるらしく、お陰さまで今までにずいぶん「これは何の罰なんだろうか」と思う事務仕事をずいぶん引き受けてきました。やっと解放されたと思っていただけに、最後こそは意義のある仕事であってほしい。

事業は5年計画で、今年は3年目。あとまだ3年もある......(ToT)

報告書は田舎の爺さんやおっさんがやるとは思えないような細かい書式。行う作業はすべて分類され、大きく3つ、小さく6に分かれます。農道の穴ひとつ埋めるのにも、この分類を行って写真を付けて記録しなければなりません。

しかも、この記録がひとつの様式だけでは済まないのです。日時と時間数と人数の観点から活動を記録するもの、分類の観点から活動を記録するもの、証拠となる写真を主体に活動を記録するもの、というように一つの活動をいくつもの様式で記述しなくてはなりません。そして、言うまでもなくひとつ一つの活動に会計処理が付随します。

ひとつの様式で、日時や人数、活動内容、分類、写真と記述すればいいものを、いくつも様式を分けて、それぞれに重複して同じことを記述しなければならない無意味さ。メンバーから書記・会計が脱落した理由がわかりました。

簡単なものまで複雑化して仕事を増やし、書類ばかり積み上げて、これだけ仕事をしましたと誇らしげにいう人がいますが、これはその友人たちのプランなのでしょうか。しかも、この報告はどんな活動をしてどう予算を使ったかに厳しいだけで、どんな成果を上げたのか書くことを求められていない。

その証拠に、県からも市からも現地を見に来たことは1回もないとメンバーは言っています。報告書で監査を受けるのみなのです。成果を求めず、書類を求める。紙様を拝む一神教のような......(^_^) あるいはひょっとして、農水省のこんな事業など無意味と考えて、そのまま市民に放り投げているのかも。

それにしても危機感のないこの軽さ。畑でチューリップやヒヤシンスを栽培して顰蹙(ひんしゅく)を買っていた宮澤賢治みたいに、田んぼでコスモスを栽培してどんな未来を描こうとしてるのでしょうか?

税金というよりは半分以上借金である国費をこんな一時しのぎの対策で浪費するのではなく、全国で進行している農地の荒廃をどう食い止めるのか、抜本的な対策のために使ってほしい。

この報告書を作るためだけにパソコンとプリンターが予算で購入されていますが、僕は自分のを使うからもう要りません。あー、もったいない。

このどうしようもない仕事のせめてもの負担軽減と思い、日当等の支払いをネットバンキングでできるように口座の変更を役所にお願いすることにしました。

直接の担当者は市の職員。ちょうど他所からも口座変更の希望が出てきているので、さっそく県に相談しますと色好い返事。自宅新築の時は役所の悪口をいろいろ書きましたが、こういう人もいるんですよね。

県の返答は「5年間同じ口座で通してください」とのこと。理由はわからずじまい。

銀行がつぶれても同じ口座で通しますか?口座名義の人が死んでも同じ口座でいいんですね?と僕なら反論するところですが、市の職員は県に逆らえないですから、そのまま引き下がるのでしょう。

口座番号が変わって困るのは振込先の番号を書き換えしなくてはならない手間だけのこと。北川正恭が知事だった時に全国的にその改革が注目を浴びていた三重県ですが、やはりただの役所です。

退職して生活に余裕がある老人なら毎月3時までに銀行に行ってお金を下ろし、在宅を見計らって各家に支払って歩き回ることもできるでしょう。これは農村の環境を支えるための、シルバー人材の活用事業なのでしょうか?

半年に1回の支払いに減らしてはどうかと言えば、毎月やってもらわないといけないと言う。

国の事業で、直接の担当は市。監査は市と県の両方を受けるらしい。結局、県なんか邪魔をしてくれているだけではないかしら。

先日ちょうど日テレ「太田光の私が総理大臣になったら・・・秘書田中。」 で「都道府県をなくします」を放映していましたが、まったく同感です。県庁なんか行かないもん。

"citizen"の訳におおかた「市民」とするのも、その現れ。民衆の運動も「市民運動」。「県」限定でなければわざわざ「県民」なんて言わない。

都道府県職員の方には申し訳ないですが、地方自治体はひとつでいいです。二重の手続きとか、重複事業だとか、天下りだとか、みんな少なくなっていい。どこの管轄だとか責任の所在も明確になります。

町や市よりも広域で問題解決にあたる時は、その時に関係自治体が集まればいい。より現場に近い関係者が集まった方が問題の把握という点だけでも有利になる。

役所はただでも「役所仕事」なのに、市と県で「役所仕事」の二乗になるのです。ここに国まで加わるわけですが、僕らはヘレン・ケラーじゃありません。役所が三層積み重なる三重苦には耐えられない。

今朝の新聞社説には「農業の未来」として鳩山政権の公約「戸別所得補償制度」に触れるとともに、環境保全に役立てるという観点で助成制度を設けたらという提言も書かれていました。社説を執筆するほどの記者もこの対策事業を知らないんだな。

昔の素直な鳥たちは案山子(かかし)を恐れてくれたけど、今や案山子は風流な景観でしかないように、田園も農業対策だけでどうにかなる時代ではもうなくなっている。国会や役場で書類をいじるばかりで、現場を歩かない人たちにはどんな田園風景が見えているんだろう。

僕は日頃イチャモンをつけている罰をこれから3年間受けますが、ピカピカくんたちが大人になって、やっぱり「腹ぺこぺこ」なんて言っていることがないよう祈るばかりです。



【今月のドラマ】

『新参者』

『不毛地帯』 ドラマについて書くのは久しぶりです。昨年から今年にかけては『不毛地帯』を見ていました。全19回という民放ドラマとしては異色です。それだけ力が入っていただけあって、民放でもやろうと思えばできるじゃないのと思いました。演出には不満が残ったものの、学芸会レベルが大半の日本のドラマの中で、珍しい硬派ドラマとして楽しめました。

『新参者』第2話より さて、日曜日の夜の『新参者』。東野圭吾原作の異色ミステリー。東野さんはいつも話の設定がうまいです。この原作に引っ張られて、面白い仕上がりになっています。最後まで楽しませてもらえるよう期待しています。



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