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銀河鉄道の夜 ガイド


青い表内の1〜4までの章タイトルはそれぞれページ内の概説にリンクしています。レモン色の項目は別ページにリンクしています。まずはこのページで概説をご覧になってから他のページに飛ぶことをお勧めします。


1. 原作の構成2. 原作の資料3. 原作の考察
 原稿推移の概要 比べっこ『銀河鉄道の夜』 銀河鉄道の夜はいつか
 初期形と最終形 草稿 『銀河鉄道の夜』 銀河鉄道の夜はどこか
  銀河鉄道の夜の改稿表 銀河に鉄道を敷く方法
  銀河鉄道の桟橋 カムパネルラの行方
  銀河鉄道の夜の星空案内 カムパネルラはだれか
  銀河鉄道の夜の植物案内 ジョバンニの苹果
  星めぐりの歌の星空案内 かほると呼ばれた子
  銀河鉄道の席パズル ブルカニロ博士のテレパシー
  天の川はどっちに流れる  

4. Gifアニメーション 銀河鉄道ツアー
場面の設定参考文献制作の経緯使用天文ソフトツアー




1.原作の構成

 「銀河鉄道の夜」は生前未発表であり、完成稿はありません。原稿は第1次稿から第4次稿まで残されていますが、一般的には初期形(第3次稿)と最終形(第4次稿)という二つの原稿形態で読まれています。ただし、第1・2次稿は一部残るのみで、第3次稿は2箇所の欠落、第第4次稿は1箇所の欠落があります。しかし、物語が中断する形での未完ではありませんから、一応はまとまった形で読むことができます。

 賢治の死後に残された原稿が未整理だった時代は、第3次稿と第4次稿が混在したり、第4次稿の原稿位置が異なったりしていました。現在は第3次稿と第4次稿は別の物語として読まれるべきものとされていますが、それは作者の意図ではなく、まずは第4次稿を読み、それを補完するものとして第3次稿を読んだ方がいいと思います。

 ストーリーがはっきりせず、テーマも難解で児童向きの物語ではないという評価もありますが、まあその通りでしょう。生前に出版されて編集者がかかわっていたなら相当な改稿を求められることになっていたとも思います。しかし、子どもから見たら、子ども向きであろうがなかろうが、余計なお世話です......(^_^)

 第3次稿は初期形と呼ばれ、大正末には成立していたようです。最終形と呼ばれる第4次稿は昭和6年頃(1931)にまだ手を加えられていたと思われます。角川文庫(改訂版)に収録されているものがほぼ第4次稿のままで、新潮文庫(新編)はわずかに改変があります。どちらの文庫も旧版は第3次稿も取り込んだ折衷版のような形です。もちろん、どれもが仮名遣いは現代に改められています。

比べっこ『銀河鉄道の夜』  文庫についての詳細は「プリオシン通信」の「銀河鉄道の桟橋」ページを参照してください。初期形を読みたい方は「宮澤賢治全集」等をご覧ください。

 また、本サイトの比べっこ『銀河鉄道の夜』草稿『銀河鉄道の夜』でも読むことができます。主題をも含むかなりの変更点があります。

 大きな相違点は初期形ではブルカニロ博士の催眠テレパシー実験だったものが、最終形ではジョバンニの生活から語られて、地上の物語が大きく書き加えられ、ブルカニロ博士が消失したことです。ここには作者の考えが継承されている部分と、変化してしまった部分があって、わからない部分を安易に初期形で補っても解決できない難しさがあります。それが別の物語として扱われる理由なのでしょう。


最終形の構成 初期形の構成
1.午后の授業 なし
2.活版所 なし
3. なし
4.ケンタウル祭の夜 ケンタウル祭の夜
5.天気輪の柱 天気輪の柱
6.銀河ステーション 銀河ステーション
7.北十字とプリオシン海岸 北十字とプリオシン海岸
8.鳥を捕る人 鳥を捕る人
9.ジョバンニの切符
  地上へ帰還してからの話が追加される。
ジョバンニの切符


上記の表よりも詳しい原作の改稿表や第1〜4次稿の原文テキストの比較 = 比べっこ『銀河鉄道の夜』については別ページに掲載しています。




2.原作の資料

原作のテキストとその相違一覧表や読書の助けになるデータを提供しています。

タイトル内容収録場所
比べっこ 『銀河鉄道の夜』第1次稿から第4次稿までの原稿を並べてその異なる箇所と内容を表示しています。銀河鉄道ガイド
草稿 ;『銀河鉄道の夜』賢治の直筆原稿によるテキストを第1次稿から第4次稿まで読むことができます。銀河鉄道ガイド
銀河鉄道の夜の改稿表第1次稿から第4次稿までの物語の変容過程を一覧にして眺望します。銀河鉄道ガイド
銀河鉄道の桟橋未完成作品ゆえに生じた新潮文庫と角川文庫の相違について触れています。プリオシン通信
銀河鉄道の夜の星空案内第1〜第4次稿に登場する天体や難語について解説し、物語構成について考察します。銀河鉄道ガイド
銀河鉄道の夜の植物案内物語に登場する植物について解説し、物語構成について考察します。プリオシン通信
星めぐりの歌の星空案内「銀河鉄道の夜の星空案内」から「星めぐりの歌」と「双子のお星さま」だけを切り出し、画像を追加して解説します。『双子の星』のテキスト全文も掲載しています。星の旅
銀河鉄道の席パズル第3次稿以降と第2次稿以前の席位置を明らかにすることで、改稿に及ぼした影響を探ります。プリオシン通信
天の川はどっちに流れる「左の岸」を図示して川の流れと遡上を眺め、博士が眼を送る先を考察します。プリオシン通信




3.原作の考察

下記の考察記事がサイト内にあります。

タイトル内容収録場所
銀河鉄道の夜はいつか物語が設定している月日や時刻を考察し、時間にまつわる謎を解きます。銀河鉄道ガイド
銀河鉄道の夜はどこか賢治がイメージした舞台がどこであったか考察し、舞台と物語の密接な関係を解きます。銀河鉄道ガイド
銀河に鉄道を敷く方法銀河鉄道軌道がどのようにして設定されたのか、その謎を解きます。銀河鉄道ガイド
カムパネルラの行方妹トシを失った悲しみを中心に物語のモチーフを考察します。プリオシン通信
カムパネルラはだれかさまざまな登場人物の謎を探り、物語の構成とテーマを考察します。プリオシン通信
ジョバンニの苹果改稿によりどのようにジョバンニとカムパネルラにリンゴが渡ったのか、なぜ食べなかったのかを探ります。プリオシン通信
かほると呼ばれた子日本人名家族の背景と、家族という観点から改稿の流れについて考察します。プリオシン通信
ブルカニロ博士の
テレパシー
ブルカニロ博士の実験を推理して初期形を読み解きます。プリオシン通信




4.銀河鉄道ツアー

バーチャル「銀河鉄道ツアー」ツアーの対応ブラウザは Internet Explorer (インターネット エクスプローラー)のみです。ディスプレイ解像度は1024×768pixels以上。BGMのためMIDI音源が必要になります。

ツアーへのリンク

 バーチャル「銀河鉄道ツアー」は物語のすべての筋を追ったものではなく、基本的には銀河への旅立ちとそこからの帰還に焦点を当て、星空案内をするものです。銀河とあまり関係のない部分には触れていません。しかし、原作では直接星に触れていないものの、背景として星空が想起できる部分についても描くことにしました。したがって、「2.活版所」・「3.家」・「8.鳥を捕る人」の3章を除く章立てになっています。

 「午后の授業」には一部 「2.活版所」の冒頭部分がいれてあります。これは学校の校庭場面が「活版所」に入り込んでいるためです。

 「4.ケンタウル祭の夜」については原作には星空への言及がありませんが、ジョバンニの背景にはこのような星々が見えていたことが理解できます。西の空低く火星が明るく輝き、北の空には北斗が大きく見えていたわけです。

 「2.活版所」と「3.家」については「花巻の黄昏」を見ながら、想い起こしていただければ幸いです。言うまでもなく、「花巻の黄昏」は原作にはないもので、「2.活版所」と「3.家」を描くことができないため、その時間を埋めるものとして挿入してあります。

 ツアーの展開は第4次稿を基として、第3次稿も一部取り込んでいます。第3次稿で取り上げた部分は有名なブルカニロ博士(黒い帽子の大人)の言葉です。この部分がなくなったことで作品の完成度は高まりましたが、作品の意図が透けて見えるところでもあります。また、物語の前後に付加した章には「銀河鉄道の夜」以外の作品からも引用がしてあります。

 天体の解説については、原作で触れられていなくても有名なものは途中で寄り道をして取り上げています。賢治がこの作品を書いている時の背景にはこれら馴染みのある天体があったに違いありません。

 このツアーは1990年に制作したため、科学的な間違いが生じています。それは「銀河ステーション」の章で、白鳥座61番星が地球から2番目に近い星だという解説です。今ではかなり順位を下げています。しかし、賢治の時代ではやはり2番目でした。


銀河鉄道の夜の星空案内

(銀河鉄道の夜の星空案内から:縮小図)

歳月の経過とともに科学的な情報も更新されます。2012年には「銀河鉄道の夜の星空案内」で再考しました。その結果、新しい発見もあり、「ツアー」の説とは異なる考えになった箇所もあります。エンターテインメントではなく、知識と考察を求める方はそちらを参照してください。

また、2007年にアップした「『銀河鉄道の夜』とはいつか」で導き出した時刻とも合致していません。20分以下の差が生じていますが、ツアーの画面への影響は地上部分のみで、しかも軽微です。



全25ファイル 440画面

とびら 1931年9月6日23時00分 花巻 南十字座方向
1枚目は賢治の兄妹像手帳に記されたもの(原文のまま)
2枚目以降のことばは「農民芸術概論綱要」より抜粋
タイトル 全天 1日20時30分−2日01時30分
午后の授業 1931年8月1日14時49分−15時37分 西向・高度16°
(星座図パート 1日20時00分 全天・拡大-白鳥座付近 )
花巻の黄昏 1931年8月1日18時24分−20時37分 西向・高度27°
ケンタウル祭の夜 1931年8月1日19時39分−19時50分 西向から北向へ・高度28°
北斗七星・ケンタウルス座
天気輪の柱 2日20時00分−20時30分 北向・高度46°
北斗七星・夏の大三角・琴座
銀河ステーション 20時30分−  白鳥座
白鳥の停車場 北の石炭袋・アルビレオ
鷲の停車場 鷲座
休憩 「青森挽歌」より引用
青い森の中の三角標の駅 琴座・孔雀座
小さな停車場 射手座 「星めぐりの歌」の詞は、子どもたちやカムパネルラが口笛で吹くが詞は出てこない。「双子の星」から引用。 蠍座・鷲座・小犬座・蛇座・オリオン座・アンドロメダ座・大熊座・子熊座・インディアン座・鶴座・ケンタウルス座
南十字 南十字座・牡牛座・南の石炭袋
牧場の丘 22時00分−  南向・高度46°  蠍座・北斗七星
エンドタイトル 1日21時30分−23時50分  全天と各章の中心星座
ことば 「春と修羅」序より引用
Kenji 1933年9月21日13時30分(賢治逝去) 白鳥座方向
記号 初期形原稿に記されたもの
賢治挨拶 「春と修羅」序より引用  「やまなし」より引用


北十字  「銀河鉄道の夜」は賢治の天文知識を活かしながら書かれたものであって、実際の星空を背景に見事に構成されています。実際に旅行されてみると楽に理解できることと思います。例えば、出発地点に、北十字・北の石炭袋・太陽系からの2番目に近い星(現在は科学的誤り)を、帰還することになる地点には、南十字・南の石炭袋・太陽系からの最近星を配して、賢治は銀河で対句を楽しんでいたようです。壮大な文学的表現だと言えないでしょうか。但し、どの恒星・星座に相当するのか判然としないものもあります。これらの問題も含めて、本番組はすべて yu の解釈によるものであって、必ずしも賢治が想定していたものとは限らないことをご了解ください。

銀河鉄道軌道図  旅の最初に表示される銀河鉄道軌道図をご覧になると、鷲座から琴座へと進むときに、どうして白鳥座方向へ戻るかのような軌跡を描くのか疑問に思われることでしょう。これは参照している図法の違いに因ります。賢治が軌道を設定するのに使ったのは星座早見盤です。星座早見盤の独特な湾曲図面(正距方位図法が多いらしい)で見ると、軌道が南十字方向へと進んでいることが理解できます。登場する全ての星座に当てはまるわけではありませんが、賢治が軌道を設定する基本にしたことは間違いありません。星座早見盤で確認してみてください。詳細は左フレームのメニューの「「銀河軌道とは」のリンク「銀河に鉄道を敷く方法」で画像を使って解説します。

 初期設定は1931年8月1日、岩手県花巻にしてあります。なぜ場所が花巻なのかについては左フレームの「『夜』はどこか」から「『銀河鉄道の夜』はどこか」ページを参照してください。「1931年」については『銀河鉄道の夜』の最終形(第四次稿)が主として書かれていた年と考えられるからですが、月日につていは1990年の作成当時はまだ研究も進まず、資料も少なかったために、便宜的に設定しました。しかし、「天気輪の柱」からは2日の設定になっています。これは「タイトル」の作成時に2日まで夜空を回して、その後1日に戻すのを忘れていたためです。なんと、10年間この錯誤に気づきませんでした......(^^ゞ そんなこんなですが、この設定で天体の表示は原文と一致していますから、問題はありません。まあ、これは物語ですから、そんなことはどうでもいいことです。ここはイーハトーヴォです。

 2005年夏、改めて月日を調べ直しました。結論を言いますと、『銀河鉄道の夜』の日は8月20日です。yu はそう決めました。また、「牧場の丘」の章の時刻設定については第四次稿に合致していないことも明らかになりました。時間の謎解きに関心がある方は左フレームの「『夜』はいつか」のリンク「『銀河鉄道の夜』はいつか」をご覧ください。ネット環境がすっかり変わったこともあり、いつかフルアニメーションの新ツアーを修正した日付と時刻で作る気持ちでいます。

 なお、「星めぐりの歌」は、『銀河鉄道ツアー』の中でも演奏されますが、きちんと聞きたい方は、CDブック『賢治の音楽室』(小学館)やアニメ『セロ弾きのゴーシュ』(DVD)を参照してください。ネット上でもmidiファイルなら簡単に手に入れられます。楽譜は『賢治の音楽室』や「日本の詩歌18・宮澤賢治」(中央公論社)等に掲載されています。他に楽譜本で編曲されたものもあるようです。最後に参考文献をあげておきます。

 「校本宮澤賢治全集」筑摩書房 「星の手帳vol.49」河出書房新社 「宮澤賢治第4号」洋々社 「国文学第27巻3号」学燈社 「SKYWATCHER」立風書房 「カラー天文百科」平凡社 「全天星雲星団ガイドブック」「全天恒星図2000年分点」誠文堂新光社 「天文観測図鑑」河出書房新社


制作の経緯と天文ソフト

「超高速天文シミュレーション」  銀河鉄道はMS−DOS版アスキー社「超高速天文シミュレーション」(プログラム著作:田中憲明・haru-k)を用いて制作してあります。もとは1990年にこのソフトを自動運転するスクリプト(SCR)ファイルを制作したのが始まりです。SCRファイルを用いることで、全自動のプレゼンテーションが可能になるのです。

 この「銀河鉄道の夜」は約40分にわたる番組として地方BBSにアップしたことで他のBBSにも転載され、プログラム著作者の目にも触れたようですが、あらためてこの素晴らしいソフトへの感謝を申し上げておきます。なお、「午后の授業」と「ケンタウル祭の夜」は2000年8月に追加しました。

 超高速天文シミュレーションはその後StellaNavigatorへと発展し、現在はWindows版となっています。スクリプト言語についてはバージョンによって大きな変更があります。



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