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2015年03月


☆☆☆☆○
イミテーション・ゲーム 邦題 イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密
原題 The Imitation Game
制作 2014年 上映 115分
監督 モルテン・ティルドゥム 地域 イギリス・アメリカ
ドイツ軍の暗号機エニグマを奪取する作戦でフィクションとして描かれたのが『U-571』(2000年)で、こちらは事実を元にしたエニグマの暗号を解くために集まった人々の秘話になります。その中でも主人公になるアラン・チューリングの人生に焦点を当てていて、単なる秘話物ではない深みを生んでいます。そこがサブタイトルの「天才数学者の秘密」となっているのでしょうが、秘密というよりも運命と言いたいぐらいの怖さがあります。
エニグマという無機質なものにやはり暗号解読機という機械で闘いを挑むものの、結局は人間くさい癖から解読のキーを得るという物語の展開のみならず、解読した後にそれをドイツ軍はもちろん味方にも悟られないように画策して、最終的に戦争に勝利できるように戦争の被害をコントロールする、つまりは人々の生死を選別するというナチス思想と共振しかねない局面まで描き出して秀逸です。
暗号で戦争を導くアラン・チューリングと、彼の失った恋と、人生の孤独をベネディクト・カンバーバッチが瞳の光と影で演じています。解読作業の場面とチューリングの個人的な場面がうまく構成されている脚本もいいです。


☆☆☆☆○
妻への家路 邦題 妻への家路
原題 歸来
制作 2014年 上映 110分
監督 張藝謀(チャン・イーモウ) 地域 中国
文化大革命によって強制労働所送りとなっていた夫ルー(チェン・ダオミン)の帰郷と、かつて父を売った一人娘タンタン(チャン・ホエウェン)と、記憶障害になった妻フォン(コン・リー)が織りなす三者三様の愛のかたちを描く作品です。
『かくも長き不在』(1960)は戦場で記憶障害になった夫の帰郷で、『ひまわり』(1970)は戦争に行った夫が記憶障害になって現地で妻を娶っていたという悲劇でした。アメリカドラマの『コンバット』にも記憶障害になったサンダース軍曹が戦場をさまよう話がありましたが、戦争では記憶障害をめぐる悲劇はたくさんあったことでしょう。本作は戦争とは関係しませんが、これもそのバリエーションのひとつと言っていいでしょう。こんなあざとい設定に泣かされてたまるかと始めのうちは思っていたけれど、やはり哀しい物語です。
人生とはそもそも哀しいもので、そこで愛を見つけられた人はいくらか癒やされもすることでしょうが、それが報われない愛であるなら、やはりその哀しさはひとしおです。せめて国家によってそんな目に遭わされないように、歴史の記憶障害に気をつけたいものです。



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