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2015年02月


☆☆☆☆○
プリデスティネーション 邦題 プリデスティネーション
原題 Predestination
制作 2014年 上映 97分
監督 ザ・スピエリッグ・ブラザーズ 地域 オーストラリア
イーサン・ホーク主演のSFということで楽しみにしていましたが、主演というよりも助演というべき役柄になっています。では、主演は誰かと言えば、青年ジョン役の女優セーラ・スヌークです。
「ライフ・オブ・パイ トラと漂流した227日」(2012)は語りの面白さを堪能させてくれる作品でしたが、この作品も前半が青年ジョンの語りで占められています。後半はいよいよイーサン・ホークが動き出して語りの背景となっているタイムパラドックスが描かれていくことになります。
後半は時空警察の話らしくなるものの、そんなことよりも前半の話の方が圧倒的に面白く、後半ではジョンとジェーンの会話場面はなかなかの名シーンです。これは青年ジョンの語りだけを独立させて1本の映画にしてほしいぐらいです。セーラ・スヌークが輝いています。
サスペンスとしては、登場人物たちの顔を映さないことで逆にだれかわかってしまうというパラドックスのために面白みに欠けます。そもそもモチーフがタイムパラドックスですから、なんでもありの伏線が作れることでサスペンス度は低くならざるを得ません。サスペンスよりも映画の色調や「物語り」を楽しんで下さい。ちなみに、ポスターはちっともこの作品の長所を伝えていません。


☆☆☆★○
邦題 アメリカン・スナイパー
原題 American Sniper
制作 2014年 上映 132分
監督 クリント・イーストウッド 地域 アメリカ
アメリカの英雄スナイパー、クリス・カイルを主役にしてイラクの戦場とアメリカの家庭の相剋を描きながら、戦争に深く傷ついていく兵士たちとその家族を見つめる作品です。
題材そのものには少しも新鮮さはありません。兵士でも警官でも暴力と向き合う仕事にはいつも付いてくる葛藤です。今のところ日本ではまだよそ事と言えるかもしれませんが、2010年8月のプリオシン通信で書いたように、イラク戦争では自衛隊でも何十人も死んでいます。戦闘で死ななかっただけです。そしていま安倍さんは戦闘で死者を出すことも厭わない国にしようとしています。このリアルな映像を見ていると、日本人がこんなことに耐えられるはずがないと思えます。
この映画を見ていると銃規制の問題とだぶって見えてきます。銃があるから危ないか、銃がないからあぶないか。強大な軍隊を持つからアメリカ警察をやるか、警察戦争を仕掛けるからテロと戦争がますます拡散するか。
イーストウッドは共和党支持者だそうですが、ここでは戦争について何かを語るわけではなく、戦争の中の個人に焦点を合わせています。そしてタイトルどおり、スナイパーだったアメリカ人という枠を踏み外すことはありません。


☆☆☆☆○
女神は二度微笑む 邦題 女神は二度微笑む
原題 Kahaani
制作 2012年 上映 122分
監督 スジョイ・ゴーシュ 地域 インド
コルカタで起こった地下鉄毒ガス事件を冒頭に置いてから、行方不明になった夫を探すためにロンドンからやってきた身重の女ヴィディヤとそれを助ける警察官のラナの行動を追っていくサスペンスです。しかし、これはインド映画。単なるサスペンスではありません。
コルカタの街のさざめきを切り取っていく映像もいいし、身重の女に雰囲気を合わせたような、とぼけた味わいのある暗殺者や子どもたちの使い方もいいです。その分緊張感には欠けますが、ストーリーがよく練られていて、だんだん面白さが深まり、ラストに効いていきます。
Kahaani は物語という意味らしいですが、邦題の意味は不明。「007は二度死ぬ」のパクリでしょうか。はじめは設定の面白さの作品かと思いましたが、ポスターのようにヒンドゥの女神ドゥルガーを腹の中に隠し持った主人公の仮面劇というべきドラマです。



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