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2015年01月


☆☆☆☆○
おみおくりの作法 邦題 おみおくりの作法
原題 Still Life
制作 2013年 上映 91分
監督 ウベルト・パゾリーニ 地域 イギリス・イタリア
エディ・マーサンがはまり役です。原題通り、静かでほとんど動きのない映画です。身寄りのない死者を送るのが仕事の民生係ジョン・メイの日常と、解雇前後の仕事ぶりを描く作品です。
邦画の『おくりびと』が作法と遺族の気持ちを重視したものだったとしたら、こちらは死者を重んじたものと言えるかもしれません。それゆえに邦画タイトルのような「作法」というのはふさわしくないです。ぼくが名付けるなら「民生係のアルバム」でしょうか。ジョン・メイの行動は死者を送るときにその人のアルバムを持たせてやりたかったからだと思うし、死者たちがジョン・メイのアルバムに収まるのもこの男の静かな人生を象徴するものとして意味深いものがあります。
それだから、死者たちが見送るラストシーンには違和感が残りました。やはりジョン・メイのアルバムで閉じてほしかったものです。91分は内容とぴったりの上映時間でした。


☆☆☆○○
ビッグ・アイズ 邦題 ビッグ・アイズ
原題 Big Eyes
制作 2014年 上映 106分
監督 ティム・バートン 地域 アメリカ
大きな瞳の悲しげな子の絵「BIG EYES」シリーズの作者マーガレット・キーンが夫の口車に乗せられて作者を夫に譲り、自分は影の絵描きになるという実話が下敷きの作品です。こんな画家がいたとは全く知らなかったです。
確かに魅力的な絵で、「ビッグ・アイズ」から作風を変えた絵は僕にはもっと魅力的でした。そういう魅力的な映画になったかと言えば、これがありきたりなドラマであまり面白いとは言えない。そういう時代だったんだからこういう展開で仕方がないのかもしれませんが、飽き足らない。
夫のクリストフ・ヴァルツ、妻のエイミー・アダムスともに適役で、求められた役柄をきっちりと演じていますが、それが逆にありきたりで新鮮味がないです。クライマックス・シーンとなる裁判はただの茶番なので、盛り上がることなく終わってしまいました。本当の裁判はどんなふうに推移したのか知りたくなりました。
ティム・バートン風味の強い作品にした方が面白かったのかも。


☆☆☆○○
スパイ・レジェンド 邦題 スパイ・レジェンド
原題 The November Man
制作 2014年 上映 108分
監督 ロジャー・ドナルドソン 地域 アメリカ
『追いつめられて』 (1987)の監督です。あの作品では助演のショーン・ヤングがスカートをまくってキュートでしたが、この作品ではオルガ・キュリレンコが美脚を披露しています。
邦題はすぐにスパイ物とわかりやすいですけれど、陳腐ですね。「11月の男」なら渋くていいと思うのですが、邦題はわかりやすく、安っぽくを絶えず目指しているようなので、もう少し原題重視の方向にしてもらいたいものです。そうでないと作品までアホっぽく思えてしまいます。『バス男』(Napoleon Dynamite)が好きな人なんか可哀想でした。さすがに今では『ナポレオン・ダイナマイト』と改題されてディスクになっています。
さて、本題。ピアース・ブロスナン主演なのでどうしても007と比較して見てしまいます。あのような華麗さはなく、あれほどのアクションもないので地味な印象は拭えません。それは一向に構わないのですが、いま流行の身内のスパイ同士の闘いと腹黒い政治家という図式に新味はまったくありません。007とは違うスタイルでいくなら、物語設定も斬新なものにしてほしかったものです。
正月映画向きではなかったけれど、正月が終わったあたりで見る映画としてはいい感じでしょうか。標準的な娯楽作としては不満はありません。


☆☆☆○○
ネレトバの戦い 邦題 ネレトバの戦い
原題 Bitka na Neretvi
制作 1969年 上映 144分
監督 ヴェリコ・ブライーチ 地域 ユーゴスラビア・西ドイツ
アメリカ・イタリア
CSで見ました。おそらく数十年ぶりの再見。TV放送で見たのですが、僕の中ではシルヴァ・コシナが泣きながら銃を撃つシーンが記憶に鮮明に残る名作となっていました。そういうシーンは確かにありましたが、記憶に残すべきほどの作品ではありませんでした。
戦記という側面があるのでしかたないのかなと思いつつも、一貫した人間ドラマがなく、かろうじてダニカという女性兵士(シルヴァ・コシナ)の兄妹愛が一本通っているぐらい。エピソードのちょん切り具合がひどく、編集が大雑把。そこでIMDBで調べてみると175分になっています。 ということは短縮版ということなのでした。allcinemaでは133分になっています。CS放送では正味144分でした。
TVで見た時はたぶん前後編の2回で放送されたのだろうと推測します。このCS放送では戦闘シーンばかりで、爆弾の迫力はともかく、人間の倒れ方がステレオタイプなので興醒め。演出もカットもだめです。しかし、いつかきちんと全編を見たいと思います。
撮影時、シルヴァ・コシナはすでに三十半ば。しかし二十ぐらいにしか見えないです。オーソン・ウエルズがつまらない役で出演していて、若きユル・ブリンナーとフランコ・ネロが男前です。なんの話やら。


☆★○○○
君よ憤怒の河を渉れ 邦題 君よ憤怒の河を渉れ
制作 1976年 上映 151分
監督 佐藤純弥 地域 日本
高倉健は何を演じても高倉健なのであまり関心がありませんが、文化大革命後の中国で大ヒットした作品ということで一度は見てみたかったものです。しかし、びっくりするほどひどい出来でした。これは監督にとってもキャストにとってもスタッフにとっても恥ずかしいだけの作品ではないでしょうか。しかし、それだけにヒットした理由がわかる気がします。これぐらい権力に対する怨を描いて、リアリティもドラマも捨て、ハチャメチャな展開をする映画を、失笑ものの中野良子とのラブシーンも含めて中国人は見たことがなかったのでしょう。馬鹿げたエンターテインメントに徹するスカッとする1本だったのだと思います。もっとも中国版がどのように編集されたのかはわかりませんけれど。
映像は古くさい。音楽はむちゃくちゃ。特撮は稚拙の二乗。人物造形もストーリーもでたらめ。無駄に長編なので、無意味なシーンが頻出します。『新幹線大爆破』(1975)が大ヒットした後だったから、だれも監督に削れと言えなかったのでしょう。あるいは全編ボツにするべきで、どの部分を削れと言う気がしなかったのかもしれません。



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