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2014年08月


☆☆☆☆○
バルフィ! 人生に唄えば 邦題 バルフィ! 人生に唄えば
原題 Barfi!
制作 2012年 上映 151分
監督 アヌラーグ・バス 地域 インド
聾の青年を主人公とした恋愛コメディドラマです。上映時間が短くなってきたインド映画ですが、これはやはり長めです。予想とは違った展開で新鮮でした。
音が聞こえないということから演出にサイレントの手法をたくさん取り入れています。そのせいかキートンやチャプリン映画からのネタもあり、『街の灯』(1931)からもシーンをまるごと再現している場面もあります。考えてみれば主人公の放浪者が恋したのは盲目の花売りの少女でした。「バルフィ!」は立場が逆転し、同情のかけらもありません。
しかも、出会った二人(バルフィとシュルティ)の恋愛だけでは収まらず、自閉症のジルミルというもう一人の女性が登場してきてからは主人公目線よりも二人の女性からの視線へと物語を移していくあたりも面白いです。副題に「人生」という言葉が見えますが、舞台は1970年代で、現代から過去を俯瞰するというよくあるスタイルではあるものの、人の幸せというものを考えるにはやはり長い時間が必要であるのかもしれません。シュルティに決断を迫る最後のシーンは秀逸。


☆☆☆☆○
めぐり逢わせのお弁当 邦題 めぐり逢わせのお弁当
原題 Dabba        英題:The Lunchbox
制作 2013年 上映 105分
監督 リテーシュ・バトラ 地域 インド・フランス・ドイツ
インドの弁当箱を初めて見たのは『スタンリーのお弁当箱』 (2011)です。でかいのびっくりしました。子どもたちが主役のこの作品は評価が高かったですが、僕には引っかかるところがあって今ひとつでした。
『めぐり逢わせのお弁当』はまた驚きのインドの弁当事情です。僕が子どもの頃は「インド人もびっくり」というのが流行りましたが、逆にインド人は未だにいろんなびっくりを見せてくれます。今作は目の付け所がいい。しかし、それだけではなく、映画でしかできないような演出が冴えています。いいえ、舞台にしても面白そうです。
夫との仲が冷めてしまった主婦イラと、妻に先立たれた早期退職間際のサージャンとの間で取り交わされる手作り弁当と空弁当と手紙。きっかけは弁当の誤配。そして、この二人に一人ずつ助演者をつけて人物像を浮き上がらせるとともに、物語に色彩をつけていきます。間違った列車でも正しい場所に着くことがある、というような箴言めいた言葉もいいけれど、この物語の終わり方がいい。


☆☆☆★○
ライズ・オブ・シードラゴン 謎の鉄の爪 邦題 ライズ・オブ・シードラゴン 謎の鉄の爪
原題 狄仁傑之神都龍王
英題:Young Detective Dee: Rise of the Sea Dragon
制作 2013年 上映 133分
監督 ツイ・ハーク 地域 中国・香港
『王朝の陰謀 判事ディーと人体発火怪奇事件』(2010)の前日譚です。今作タイトルからは「ディー判事」が消えてしまい、これではシリーズとしてわかりにくいです。英語タイトルは前日譚とわかるようになっていますが、これは「Young Sherlock Holmes」(ヤング・シャーロック ピラミッドの謎、1985)由来でしょうか。これはあまり面白くなかったです。
さて、本作の設定は665年。前作は689年でした。やはり則天武后の下での活躍になりますが、立場は高宗の皇后。前作も面白かったけれど、今回も脚本がよく練れていて面白いです。不満も前作と同じで、CGを使いすぎて絵が安っぽくて興醒めするところがあります。今回は荒唐無稽度が前作よりも高いので尚更目立ちます。アクションの迫力もCGのせいで台無し。CGに頼らない絵づくりをしていれば、もっと楽しめる作品になったのに残念です。
同監督の『ドラゴンゲート 空飛ぶ剣と幻の秘宝』(2011)もCGのせいで破綻していましたが、これでいいと思っているわけですね。花魁インの使い方も美女というだけで、魅力に欠けます。
伝奇ものとしても楽しめる一方、中国では難しい社会批判のにおいも漂っていて、いろいろと欠点はあるものの、見て損はなし。



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