「シネマ短評」のトップを表示します


2013年12月


☆☆☆○○
ハンガー・ゲーム2 邦題 ハンガー・ゲーム2
原題 The Hunger Games: Catching Fire
制作 2013年 上映 147分
監督 フランシス・ローレンス 地域 アメリカ
昨年10月公開されたものの続編になります。監督は交替していますが、この監督作はパッとしない。前作もジェニファー・ローレンスを見るしかないと思いましたが今回も同様。3部作になっているので、今作はやはりまとまりのないつなぎという感じ。
第1部はバトルゲームでしたが、第2部はそこから外れてきています。第3部の反乱への準備編という風に見たものの、主人公のカットニスにはその意識がないので含みのある展開になっています。百戦錬磨の最強チャンピオンたちのバトルという触れ込みは的外れです。
独裁国家にどうにもリアリティがないので、物語に浸ることができません。


☆☆☆☆★
鑑定士と顔のない依頼人 邦題 鑑定士と顔のない依頼人
原題 La migliore offerta
制作 2013年 上映 131分
監督 ジュゼッペ・トルナトーレ 地域 イタリア
これは予想外の収穫でした。邦題が悪いのだもの。タイトルからわかるようにミステリーではあるけれど、そんな謎めいた展開よりも主人公のヴァージル・オールドマンの心情に寄り添うことができる作品です。ジェフリー・ラッシュが演じていますが、彼以外考えられないjほどの適役です。
オークションを仕切るこの老オークショニアは人間嫌いで、女性も苦手。しかし、隠し部屋にこっそりと女の肖像画を収集して至福の時間を過ごしている人物。そこに現れた屋敷に住む若い女性依頼人は広場恐怖症で部屋に閉じこもっていたのですが、ヴァージルの愛情が彼女の部屋の鍵を開けさせることになります。そして、その女も彼の心の鍵を開けることになっていきます。
これは偽りなのか純情なのかと両端に揺さぶられながら、僕らはこの恋物語をヴァージルとともに鑑定することになります。辻褄を考えれば破綻している話でもちっとも気にならない、いえ、だからこそ面白いみたいな趣向があります。見終わってから気になったところがいろいろあるので、もう一度見たらいろんなことがわかって面白そう。
小道具に使われるオートマトン(自動人形)から発想されたであろう、歯車だらけのレストランでヴァージルが何かを期待して待つラストシーンが印象深い。絵も音もいい。


☆☆☆☆○
少女は自転車にのって 邦題 少女は自転車にのって
原題 Wadjda
制作 2012年 上映 97分
監督 ハイファ・アル=マンスール 地域 サウジアラビア
サウジアラビアは女性が車を運転できない国とは知っていましたが、それなら少女が自転車に乗れないのも理の当然と考えるべきでしょうか。映画館のない国で初の女性監督の作品だそうで、だいたいこういう制約の中から生まれるのはなぜか佳作になります。撮影はサウジアラビア国内だそうですが、男女が一緒に働くことが禁じられているために車の中から監督したんだとか。
自転車に乗りたい10歳の少女ワジダは自分で自転車を買うためにいろいろと工夫してお金を稼ぎ、最後には学校のコーラン暗誦コンテストの賞金を狙って優勝するのですが、その下心からお金はもらえずじまい。しかし、自転車に乗ることも、宗教的な因習に忠実でないことにも目くじらを立てていた母の愛や少年アブダラとの淡い恋も描かれて、さわやかで面白い出来になっています。
宗教的にはかなり不純なこの作品を見ると、サウジアラビア国民も宗教的な因習とどう付き合っていくか模索の渦中にあるように見えます。世界を見渡すと宗教は人間を解放するものではなくて、束縛するものとして存在しているかのようで悲しい。力のある者が宗教を利用している例が多すぎます。
この邦題はいいです。ラストシーンを想起させるような希望があります。『少年と自転車』(2011)というのもありましたが、映画では自転車はよく使われていて、『自転車泥棒』 (1948)は言うまでもありませんが、『明日に向って撃て!』 (1969)でのキャサリン・ロスとポール・ニューマンの二人乗りシーンも最高でした。アル=マンスール監督は『自転車泥棒』や『E.T.』(1982)を参考にしたそうです。


☆☆★○○
ブリングリング 邦題 ブリングリング
原題 ブリングリング
制作 2013年 上映 90分
監督 ソフィア・コッポラ 地域 アメリカ・フランス・イギリス・日本・ドイツ
ソフィア・コッポラとはあまり相性が合わないと思いつつも見ましたが、やはり退屈でした。実際にあった事件をモチーフにハリウッド・セレブの無防備な豪邸にお気楽に忍び込んで盗みを繰り返す若者たちを描きます。
まわりの大人たちも含めて今時のお馬鹿さんたちを描いただけの作品で、何か面白い背景があるわけでもなし、盗みのありさまとくだらない言い訳だけ。セレブたちもお馬鹿にしか見えない。それが狙い?


☆☆☆☆○
ゼロ・グラビティ 邦題 ゼロ・グラビティ
原題 Gravity
制作 2013年 上映 91分
監督 アルフォンソ・キュアロン 地域 アメリカ
ハッブル望遠鏡の修理中に起こった他の衛星事故による破片に襲われる危機からの脱出を描いた作品です。出演はサンドラ・ブロックとジョージ・クルーニーだけというシンプルさは期待感が増すというもの。
映像は文句なしの面白さですがストーリーが弱いので、3Dお得意の仮想現実体験映画と言えましょうか。カメラのアングルは縦横無尽で浮遊感を感じさせてくれます。
陶酔してしまう美しさの空間は同時に生物には過酷なスペースであって、そこは死の世界と背中合わせ。それゆえか、主人公の博士ライアン・ストーンは死んだ娘に思いを馳せ、やはり行方不明になったマット・コワルスキー船長と会話を交わします。このあたりは物語に立体感を与えています。
しかし、こんな大ざっぱな行動や機械操作ではたして地球に帰還できるものかという疑問が湧いてしまうところがつらいです。危機があまりにもハイレベルで、ライアンの飛行士としての素人ぶりとマッチしないのです。この種の作品としては短い上映時間なのは、映像作りにエネルギーが費やされて、物語を膨らませるだけの余裕がなかったようです。もっと面白い作品にできただろうにと思えて、少々残念です。
宇宙空間での漂流から宇宙ステーションに逃げ込んだ時にサンドラ・ブロックは宇宙服を脱ぎ捨てて体を丸めて浮かびます。胎内にいるスター・チャイルドのように。『2001年宇宙の旅』を意識しているところがあります。次に宇宙を服を脱ぎ捨てる時は水辺に着水して泳ぎ出す時です。岸にたどり着き、よたよたと岸辺を歩き出します。水から陸へと上がった生物の進化をなぞる描き方はまさに重力への挑戦というテーマを浮かび上がらせます。そして、今や人間の故郷は重力のある世界です。その意味ではこの作品のテーマは「重力」であって、邦題のような無重力ではありません。
この映画には母性を描く側面があるように、『エイリアン』のような闘う女性ではなく、女性らしさを出した演出で、サンドラ・ブロックがそこをうまく演じています。4歳の娘を亡くしたライアンにとって、人生はそれほど素晴らしいものではありません。しかし、船長や娘に励まされて、生きようとします。地球にある重力は生命への負荷であると同時にいろいろな発達を促します。それは人生も同じで、負荷があればこそ日の出が美しく輝くのでしょう。ライアンは自分ひとりだけが生還し、地球の重力と心の重力の二つを背負って歩き出します。


☆☆☆☆○
セッションズ 邦題 セッションズ
原題 The Sessions
制作 2012年 上映 95分
監督 ベン・リューイン 地域 アメリカ
障がい者のセックスをモチーフにした作品です。今までにも娼婦が相手をするという作品はありましたが、これはセックス・サロゲートというセラピストが相手となって交流していく過程を描いています。
でも、それだけではなく、神父との問答や実際の恋も描いています。実話に基づくのだそうですが、登場する人物たちがみんないい人ばかりで、なんとも爽やかな話です。
現実的にはもっといろいろとあっただろうと思いますが、心身一体となって愛を知るということの不思議さや深遠さを描くにはこれで良かったのだと思います。モチーフは障がい者のセックスでも、テーマはだれにも共通する普遍的な愛についてです。ヘレン・ハントもジョン・ホークスも見事な俳優ぶりです。


☆☆☆★○
ブランカニエベス 邦題 ブランカニエベス
原題 Blancanieves
制作 2012年 上映 104分
監督 パブロ・ベルヘル 地域 スペイン・フランス
『白雪姫』というフォーマットに闘牛やサーカスを取り入れたモノクロ&サイレント作品です。今時こういう古風なスタイルで撮影する必要があるのかと思いつつも、やはりこれしかなかっただろうなと思わせられる物語でした。
ブランカニエベス(白雪姫)役の幼女と少女がふたりとも役にぴったりとはまり込むような容姿で絵になっています。サイレント時代のアクションはすごいものがありましたが、この作品では闘牛シーンよりも亡き父親からの愛を重視して描いており、アクション度が乏しいの残念です。もっと華麗な舞いを見せてくれれば、悲しい結末の美しさも引き立ったことでしょうに。それでも、この結末は魅力的です。


☆☆☆★○
キャプテン・フィリップス 邦題 キャプテン・フィリップス
原題 Captain Phillips
制作 2013年 上映 134分
監督 ポール・グリーングラス 地域 アメリカ
ソマリア沖での海賊の横行をモチーフにしたものですが、実録です。船長だけが人質にとられ、海軍も出動しての攻防を描いています。
とにかく、リアルさを追求した演出。カメラも俳優もすべてがそこに収斂していると言ってもいいほど。ただ、音楽だけが過剰に使われていて、心理的に煽ってきます。
さっそくアカデミー賞云々が噂されているようで、確かにトム・ハンクスの演技は申し分ないとしても、作品としては面白みに欠けている感があります。実録を前面に打ち出した演出ということで理解はできるものの、各登場人物の心理的な掘り下げがもう少しあってもよかったのでは。



プリオシン海岸トップへ