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2013年11月


☆☆☆★○
オーバードライヴ 邦題 オーバードライヴ
原題 Snitch
制作 2013年 上映 117分
監督 リック・ローマン・ウォー 地域 アメリカ
麻薬がらみの罠にはまって逮捕された息子を釈放させるために麻薬組織に潜入して協力する父親ジョンをドウェイン・ジョンソンが演じています。ドウェイン・ジョンソンは人間離れしているキャラなので一般的にリアリティに欠けるところがあると思っていますが、この作品ではなかなかいい線いっています。
共演者もみんないいので、緊迫感のある展開を生み出しています。自分の息子のためにジョンは危険を冒すわけですが、関係のない男ダニエルの家族まで巻き込むようなこともこともして、その身勝手さがかえってリアリティがあります。またダニエル役のジョン・バーンサルの家族愛とそこから生まれる悲しみをたたえた表情がいいです。


☆☆☆★○
REDリターンズ 邦題 REDリターンズ
原題 Red 2
制作 2013年 上映 116分
監督 ディーン・パリソット 地域 アメリカ
前作よりもキャストにお金がかかっています。これだけのメンバーを揃えるのですから、脚本は標準以上が当然の前提です。前作も今作も良質のアクション・コメディ作品に仕上がってはいるものの、設定も展開も新味はありません。
この設定はあの映画、このシーンはあの映画と思い出しながら見るのも面白いかもしれません。


☆☆★○○
The  Call 邦題 ザ・コール 緊急通報指令室
原題 The Call
制作 2013年 上映 94分
監督 ブラッド・アンダーソン 地域 アメリカ
警察の緊急コールセンターでオペレーターとして働くハル・ベリーを主役にした作品です。今までオペレーターを主役に据えた作品は見たことがありません。着眼点がいいと思いましたが、残念ながらこれを貫徹できない出来になってしまいました。
売れっ子アビゲイル・ブレスリンを誘拐される少女キャシーに迎えて緊張感が並々ならぬ展開です。なにしろ、シリアルキラーなのにトンマな犯人とキャシーの携帯のお陰で、ライブで犯行と抗いが進行していくのですから。
話の筋自体は今時ではとてもシンプルです。隠れ家の秘密なんて誰でもわかるようなもんですが、犯人もトンマなら警察もトンマです。結局主役のジョーダンはオペレーターを離れて行動に出てしまいます。ここから完全に脱線状態。最後のオチもばかげている。まるで落語のような......(^_^)
オペレーターという厳しい仕事を描くかに見えた作品は最後までオペレーター1本で貫くことができず、結局オペレーターを貶めるようなものになってしまいました。シリアスな物語として、オペレーターが最後まで被害者と共に闘い抜く作品という真っ当なことがどうして出来ないのか不思議です。
キム・ベイシンガーの『セルラー Cellular』(2004年)という作品があります。これも電話を使ったもので、見知らぬ男に救援を求めるというものですた。これは面白かったです。だから韓国でリメイクされ、『コネクテッド』(2008年)となりました。これがなお良かったです。


☆☆☆★○
ウォールフラワー 邦題 ウォールフラワー
原題 The Perks of Being a Wallflower
制作 2012年 上映 103分
監督 スティーヴン・チョボスキー 地域 アメリカ
内気な少年の学園サバイバルの話はアメリカ映画ではよくあります。陽気な国民性だから、内気な子の生きにくさは日本の比ではないだろうなあと思います。でも、この作品ではまもなく友人となった兄妹を通じて輪に入ることができて、その友人関係や家族問題が描かれていきます。
この監督は原作者でもあり、原作小説はベストセラーになっているそうな。時は90年代ですけれど、青春の彩りとして使われる『ロッキー・ホラー・ショー』(1975)や歌などはもう少し時代を遡っています。取り立てて目新しい展開があるわけでもなし、ユニークなキャラが登場するわけでもありませんが、ちょっと深刻な問題が描きこまれていて主人公の背景を作っています。
キャラがそれぞれに生き生きとしていて、新鮮味があるところがいいでしょうか。エマ・ワトソンがなかなか魅力的に演じていて、これからも活躍を期待できそうです。


☆☆☆☆○
はなれ瞽女おりん 邦題 はなれ瞽女おりん
制作 1977年 上映 117分
監督 篠田正浩 地域 日本
水上勉原作です。彼のエッセイは読んだことがあるのですが、小説は読んだ記憶がありません。この映画も見たのか、見ていないのかわかりませんが、なぜかだいたい話は知っていました。エッセイで触れられていたのかもしれません。
盲目の旅芸人である瞽女(ごぜ)と正体不明の男の出会いと別れを主にして描いた作品です。瞽女は集団で助け合いながら活動していて、そこから放り出されたものが「はなれ瞽女」です。
カメラが宮川一夫だし、まだ自然が残っていた時代ですからほんとうに美しいです。今ではもうこんな風景は日本のどこにもないのかもしれません。旅芸人ももういませんしね。芸能というものの崇高さもすでに失われているのかもしれません。
岩下志麻が愛らしさを好演しているものの、上品さが抜けきらないところがあってちょっと違和感が残ります。原田芳雄はいい俳優ですが、平太郎の描き方には深みが足りない。しかし、原作の力もあって久しぶりに感動的な作品でした。
人生とは残酷です。飽食している人にはほんとうの美味しさがわからないように、人生も残酷であればあるほど人生の滋味がわかるものなのでしょう。それならば味オンチでいいやと思ってしまう僕です.......(^^ゞ


☆☆☆★○
ミッドナイト・ガイズ 邦題 ミッドナイト・ガイズ
原題 Stand Up Guys
制作 2012年 上映 95分
監督 フィッシャー・スティーヴンス 地域 アメリカ
客を遠ざけるようなひどいタイトルです。ギャング仲間の罪を被って服役していたヴァルと、彼の出所を待ち構えて始末することを命じられている仲間のドクが、ヴァルを殺せずに制限時間まで夜の町を放浪する話です。
見る前までは名優爺さんたちの余興作品かなと思いました。アル・パチーノ、クリストファー・ウォーケン、アラン・アーキンですからね。実はそういう部分もあって、クライムとしての描き方はほとんど子どもだましです。しかし、それゆえに違う趣が出てきます。つまりはお伽話です。
もう一人の古き仲間ハーシュを埋葬する時のヴァルの即興スピーチがいいです。誰もが言うような内容なんですが、その文学的な表現がいいです。脚本はノア・ヘイドル。
監督は端役で活躍している人です。僕が初めて見たのは『マイ・サイエンス・プロジェクト』(1985)です。一癖ある役が多いでしょうか。日本では叩かれた『ザ・コーヴ』(2009)のプロデューサーでもありました。
孫役のアディソン・ティムリンは来年公開の『オッド・トーマス 死神と奇妙な救世主』(2013)に出演しています。オカルト・コメディーでしょうか?


☆☆☆○○
マラヴィータ 邦題 マラヴィータ
原題 Malavita
制作 2013年 上映 111分
監督 リュック・ベッソン 地域 アメリカ・フランス
制作、スタッフ、俳優と豪華メンバーの作品です。FBI証人保護プログラムでフランスに移住してきた一家が元マフィアというところがミソ。これでリュック・ベッソンのコメディときたら弾けた展開を期待するところ。
家族それぞれのエピソードをたらたら連ねてやっとクライマックスの終盤がやってきたかと思えばあっけない幕切れで肩透かし。そうか、これはギャングのファミリー物ではなくて、ただのファミリードラマだったのか。と思い直しても中途半端な出来です。


☆☆☆★○
キャリー 邦題 キャリー
原題 Carrie
制作 1976年 上映 98分
監督 ブライアン・デ・パルマ 地域 アメリカ
オリジナルはどんな感じだったんだろうかと見てみました。ぼんやりした記憶とは違って、やはり念力がかなり描かれていました。しかし、リメイクほどではありません。まずびっくりしたのは教師がクリスを張り飛ばすシーンが出てきてびっくり。アメリカ映画で体罰を見るのはホントに珍しいです。
記憶に残っていたクライマックス・シーンの演出はあまり上手いとは思えませんでした。当時としては新鮮だったと思います。オリジナルは青春の雰囲気というか躍動というか、それがあります。『サイコ』 (1960)からの影響が認められる一方で、『エルム街の悪夢』(1984)への影響があるように思えます。
恐ろしい結末になる作品なのですが、逆に何も起こらなかったら、スーとトミーのしたことがどんな影響をキャリーに及ぼすことになるのか、それもまた怖いです。見たくない展開です。
シシー・スペイセクはクロエ・グレース・モレッツを越える演技です。ジョン・トラヴォルタは間抜けな役をしています。ウィリアム・カットは彼の有名作品よりも僕は『ガバリン』 (1986)シリーズの印象が強いです。シュールな作品でした。


☆☆☆○○
キャリー 邦題 キャリー
原題 Carrie
制作 2013年 上映 100分
監督 キンバリー・ピアース 地域 アメリカ
1976年のブライアン・デ・パルマ監督&シシー・スペイセク主演のリメイクです。クライマックス・シーンしか覚えていませんけれど、何十年も前の作品でも覚えているだけのインパクトがあったと言えます。
リメイクはクロエ・グレース・モレッツをキャスティングしてきたので、なんとかなるのかもしれないと思いましたが期待はずれでした。脚本が悪いのか監督が悪いのか。思春期や宗教やセックスなどが引き起こす心理不安を背景にしながら、人間の悪意が生み出す悲劇を描いた作品だと思いますが、今作は超能力の描写に比重があって、荒唐無稽なサイキックな話になっているような感じです。オリジナルはこうじゃなかったと思うのですが。
時代は現在になっていてスマートフォンが出てきますが、そのほかはオリジナル当時のままの演出です。今時バケツをロープで引っ張っていたずらするような若者がいるでしょうか。ジュリアン・ムーアが母親を演じる必要も、クロエ・グレース・モレッツが主演する必要も感じられない、ごく普通の映画に仕上がっています。


☆☆☆★○
THE ICEMAN 氷の処刑人 邦題 THE ICEMAN 氷の処刑人
原題 The Iceman
制作 2012年 上映 106分
監督 アリエル・ヴロメン 地域 アメリカ
「事実は小説よりも奇なり」で、アメリカは実話物が増殖中です。特にアメリカはそういう話が尽きない国だとは思います。約20年間で100人以上の殺人を請け負っていたとは、いったい警察は何をしていた?というか、まだ捕まっていない殺し屋たちはもっと殺している人もいて、こんなヤツまだアマチュアだと思ってこの映画を見ていたりするんじゃないかと想像してみたり。
特別凝った話の展開があるとか、面白い演出があるとかいうこともない作品です。手慣れた役柄をいつも通りに演じている俳優も何人も出てきて、もう見飽きたなと思う場面もあります。ウィノナ・ライダーもなぜ彼女が起用されているのかわからない、彼女らしさがない役どころです。つまり、この作品は主演のマイケル・シャノンを楽しむことに尽きます。
「アイスマン」は犯行時刻をごまかすために死体を凍りづけにすることからついたニックネームなのですが、この男自身も愛のために自分のどこかを氷付けにして生きてきたことをマイケル・シャノンが暴いています。愛とはなんとも身勝手なものです。


☆☆☆☆○
陽のあたる場所 邦題 陽のあたる場所
原題 A Place in the Sun
制作 1951年 上映 122分
監督 ジョージ・スティーヴンス 地域 アメリカ
見るのは2度目でしょうか。作品の評価以上に僕はこのタイトルが好きですね。一見、社会的階級の差がもたらす悲劇のように見えながら、実は恋愛や良心や宗教を描いているところが同種の作品には見られない特徴です。おまけに主人公がこの上流一族の親戚というのも特殊です。
僕はそんなに出来の良い作品とは思いません。かなり思い切ったカメラの固定はいいところと良くないところがありますし、シーンの切り替わりで使われるクロスフェードはかなり時間をかけて使われ目障りです。
また登場人物の描き込みが足りないので、どの人物も中途半端な焦点しか結びません。その中でも一番わかりやすかったのは死ぬことになる同僚のアリス(シェリー・ウィンタース)でしょうか。
ところが不思議なことに、人物像がはっきりしないためにそれぞれの人物の背景や真意をいろいろ考えてしまうという利点が生まれます。アンジェラ・ヴィッカーズ(エリザベス・テイラー)は女性としての魅力を感じはしますが描かれているのはそれだけ。ところが、それ以外に何があるのか考えてしまいます。イーストマン一家もヴィッカーズ一家も悪い人は出てきません。むしろ、表面的にしか描かれませんが善意があるように見えます。しかし、それだけでもありません。
主人公ジョージ・イーストマン(モンゴメリー・クリフト)もそもそも悪意のある人ではないし、野心さえもほとんど見えない。信仰に篤い親に育てられたものの、彼の中には鬱屈のようなものしか見えない。悪意はあっても殺意はなかったのに死刑判決を下されて、最後にはそれは受け入れます。その罪は良心の罪だったのか、宗教上の罪だったのかと考えれば、この青年の悲劇はひとつには収まらない波紋を広げていきます。
マタイ伝5章27-28節に「『姦淫するな』と言われていたことは、あなたがたの聞いているところである。しかし、わたしはあなたがたに言う。だれでも情欲をいだいて女を見る者は心の中ですでに姦淫をしたのである。」とあります。男ならだれでも姦淫の罪から免れて青少年期を通過することはできません。これが殺意に置き換えられた構図でしょうか。信仰にそむく罪があるとしたら、信仰にもとづく罪もあるということを考えてしまいます。


☆☆☆★○
セブン・サイコパス 邦題 セブン・サイコパス
原題 Seven Psychopaths
制作 2012年 上映 110分
監督 マーティン・マクドナー 地域 アメリカ
タイトル通りの映画の脚本が書けずに行き詰まっているライターが、友だちの売れない俳優のアドバイスで実際のサイコパスたちに会う中で騒動に巻き込まれながらも、脚本が仕上がっていく様子を描くブラック・コメディです。
前半は残虐な描写とパッとしない話であまり面白くなかったのですが、後半からは脚本の力が発揮されてブラック・コメディとは思えない余韻を残す作品になっています。
むしろサイコパスの方が似合うコリン・ファレルがまともな脚本家を演じているのも珍しいです。クリストファー・ウォーケンもそっち系を演じさせたら上手い人ですが、こちらもサイコへと走るのをぐっと我慢して印象深い老人を演じます。サム・ロックウェルとウディ・ハレルソンはそのままです......(^_^)
女性の出番は少なく、オルガ・キュリレンコもアビー・コーニッシュもすぐに消えます。これは作中に作られていく脚本では女性の出番が少ないからです。作中の脚本とこの映画の脚本が連動するスタイルになっています。


☆☆☆○○
2ガンズ 邦題 2ガンズ
原題 2 guns
制作 2013年 上映 109分
監督 バルタザール・コルマウクル 地域 アメリカ
麻薬取締局の捜査官デンゼル・ワシントンと海軍情報部の将校マーク・ウォールバーグが互いの正体を知らずに麻薬マフィアに潜入して起こるドタバタを描きます。二人組が起こす珍道中というタイプです。
二人も潜入捜査していて、おまけに互いの正体を知らないというところが新味なのですが、これがほとんど活かされていません。互いの正体がわかるのをもっと引き延ばして、その妙味を楽しませてもらいたかったですね。しかし、退屈することなく見せてくれるクライム・アクションです。


☆☆★○○
天使の処刑人 バイオレット&デイジー 邦題 天使の処刑人 バイオレット&デイジー
原題 Violet & Daisy
制作 2011年 上映 88分
監督 ジェフリー・フレッチャー 地域 アメリカ
ティーンエイジャーの仲良し二人が殺し屋という設定のクライム・アクションですが、荒唐無稽というジャンルに入れるべきかも。クライム味はほとんどなしで、二人のアクションも『セーラー服と機関銃』(1981)での薬師丸ひろこの「カ・イ・カ・ン」レベルです。
日本公開が遅れたのは面白くないからでしょう。殺し屋としての腕は素人以下の間抜けぶりだし、プロ意識のかけらもないし、ただのおふざけにしか見えません。シアーシャ・ローナンと言えば同年の『ハンナ』(2011)で野生の殺し屋を演じていますが、まるで別人です。
今回の依頼では本人に出会ってみたら自殺願望の男ということがわかり、その男としてジェームズ・ガンドルフィーニが登場します。今夏に急死しましたね。やはり肥満は殺し屋みたいにあぶないですが、この作品ではすぐに殺しにはならず、3人の身の上話につながるような展開になっていきます。
時に深刻なエピソードがはまり込みますが深められることもなく、ピストルから弾倉がはずれて弾丸がこぼれ、あちこちに転がっていったというような、焦点の定まらない作品となりました。盛り上がらないアイドル映画という感じです。


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