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2013年10月


☆☆★○○
セイフ ヘイヴン 邦題 セイフ ヘイヴン
原題 Safe Haven
制作 2013年 上映 116分
監督 ラッセ・ハルストレム 地域 アメリカ
追いかける警官と、逃げてきた女と、やはりひっそり暮らす近所の女と、妻を亡くした男の家族。逃げてきた主人公ケイティの新天地での人々との交流を丁寧に描くのを見ていたら、1時間あまり過ぎたところでケイティの秘密が明らかになり、一気に転調。安っぽいサスペンスになってしまいました。そして、最後はファンタジーでまとめています。
作品に統一感がなく、演出も安直。甘いタイトル通りに普通のドラマからファンタジーへと展開すれば良い作品になったものを、DV男を登場させたがために台無しにしてしまいました。追いかけ警官は没にして、女の秘密をもっと深みのあるものに書き換え、近所の女をきちんと描いて、もういちど作り直してほしいものです。そこまで言ってしまったら、全部やり直せと言っているのと同じかも.......(^^ゞ
子役の少女ミミ・カークランドがグッド。


☆☆☆☆○
グランド・イリュージョン 邦題 グランド・イリュージョン
原題 Now You See Me
制作 2013年 上映 116分
監督 ルイ・ルテリエ 地域 フランス・アメリカ
久々に良く出来たトリック映画です。人物配置や展開がよく出来た脚本で楽しめます。出演者たちも多彩で、エンタテインメント作品を見たという気持ちにさせてくれます。マジシャンたちの銀行強盗をエンタテインメントにし、その裏で復讐も遂げるという話です。
ところが、演出にワクワク感の欠けるところがあり、ちょっと物足りなさを感じます。背後で操っていた人物をもうすこし露出させても良かったのではないかという気がします。会話の中でキーになる人物は早くからわかりますが、黒幕はそのキーではないので、なかなかその人物に気づくのは難しいです。この設定はちょっと無理があるんじゃないのという気もしますね。おまけの4つ星です。これで復讐物3連発になりました。映画と復讐心は仲が良すぎる。あぶないです。


☆☆☆★○
デッドマン・ダウン 邦題 デッドマン・ダウン
原題 Dead Man Down
制作 2013年 上映 118分
監督 ニールス・アルデン・オプレヴ 地域 アメリカ
話自体はそれほど新味のあるものではなく、よくある話を組み合わせたような感じです。下の『マッキー』に続いてこれも復讐ものなのですが、もう少し復讐心を掘り下げる試みが入っているのがいいところです。この監督はやはり演出がうまいですね。
家族を殺され復讐のために組織に潜入した男コリン・ファレルと、その男に自分の復讐を強いる女ノオミ・ラパスと、組織を脅す謎の男を捜しながらも家族を持った男ドミニク・クーパーとが入り組んで運命の日を迎えるまでを描きます。登場人物たちの個性がよく描かれていて、ステレオタイプになっていません。
最後の台詞がカッコ良すぎて浮いていたので、もう一工夫ほしかったです。


☆☆☆★○
マッキー 邦題 マッキー
原題 Eega
制作 2012年 上映 125分
監督 S・S・ラージャマウリ 地域 インド
ボリウッド製は3時間はある長編ばかりでしたが、新しい流れに乗って2時間作品です。ですからダンスシーンもほぼありません。ハエで世界制覇を目指しています。
『ハエ男の恐怖』(1958)というSF映画ではハエ男になってしまったことが悩みの種だったわけですが、こちらはハエそのものに生まれ変わったせいかそんな悩みはまるでなく、ハエである利点を活かして復讐を遂げる話です。タイトルもヒンディー語で「ハエ」の意味です。
主人公がハエですから、その活躍する時のネタはほぼ予想がつきますが、そのオチがわかっていてもやはり笑えます。ハリウッドのコメディは下品ネタが多いですが、こちらはそれほど下品にならず、古き良き時代のコメディを思い出します。
美人で心のやさしいビンドゥに恋するジャニがやっと思いを遂げたと思ったら、ビンドゥを自分のものにしようとする悪党スディープに邪魔者として殺されます。ハエに生まれ変わったジャニはビンドゥを守るとともに復讐を果たすためにビンドゥの協力を得ながら決死の戦いに挑んでいきます。
ビンドゥの設定がマイクロ・アーティストになっているなど、面白い工夫がされています。その一方で復讐のための殺人にはジャニもビンドゥもなんの躊躇もありませんので単なるファンタジーとはいきません。
恋と復讐と転生とはいかにもインドらしいです。しかし、何度もハエに生まれ変わるという転生はどうなんでしょうか。ハエは一匹でも人間に対抗できる昆虫であることは確かです。五月蠅(うるさ)いと書くほどですから。


☆☆☆○○
ブロークンシティ 邦題 ブロークンシティ
原題 Broken City
制作 2013年 上映 109分
監督 アレン・ヒューズ 地域 アメリカ
ずいぶんとさっぱりしたタイトルです。マーク・ウォールバーグとラッセル・クロウ対決という触れ込みですが、内容もかなりさっぱりしたもので、右往左往のマーク・ウォールバーグとふてぶてしいラッセル・クロウといういつもの二人を見ることになります。そこに不倫しているキャサリン・ゼタ=ジョーンズとくればもう言うことなし。そんなわけで、もう言うことなしです......(^_^)


☆☆★○○
ゴースト・エージェント R.I.P.D. 邦題 ゴースト・エージェント R.I.P.D.
原題 R.I.P.D.
制作 2013年 上映 96分
監督 ロベルト・シュヴェンケ 地域 アメリカ
この監督はだいたい今ひとつなので期待薄。やはり予想どおりになりました。『メン・イン・ブラック』のゴースト版です。『メン・イン・ブラック』(1997)はオシャレなところがありましたが、こちらはそれがない。面白そうな設定があるだけで中身がないのはどちらも同じ。
監督云々の前に脚本がつまらないから仕方ありません。ジェフ・ブリッジスがしゃべりまくりでウルサイ。話を進めてくれと言いたくなります。こういう設定ならもっとシュールな絵とラブストーリーで盛り上がるはずなんですけれどね。登場人物の動かし方がわかっていないです。


☆☆☆○○
ファントム 開戦前夜 邦題 ファントム 開戦前夜
原題 Phantom
制作 2013年 上映 99分
監督 トッド・ロビンソン 地域 アメリカ
これも実話だと宣伝されていますが、実話をモチーフにしたと言うべきものです。舞台はロシアの潜水艦です。それをアメリカが制作しているわけですから、アメリカを好意的に描いています。
潜水艦ものは敵と戦うものと、艦内での反乱ものとに大別されると思いますが、これは後者です。しかし、戦い自体はあまり重視していない風で、他のエピソードをいくつか取り込んで構成されています。そのため緊迫感があまりない出来になりました。要するに艦内の物語を描けなかったということです。
潜水艦ものは艦長の指示にどんな意味があるのか専門的過ぎてわからないことがよくありますが、これもやはりわからない部分があります。素人にもわかる工夫があるともっと面白くなると思うのですが。
艦長は軍人役が多いエド・ハリス。その中でも一番はやはり『スターリングラード』(2001)のスナイパーでしょうか。悪役も多いウィリアム・フィクトナーは副館長役でいいヤツを演じています。この作品での悪役は『X-ファイル』のデヴィッド・ドゥカヴニー。悪役としては中途半端で、描き方も中途半端。この人の妻はティア・レオーニで、『天使のくれた時間』(2000)が魅力的でした。


☆☆☆○○
死霊館 邦題 死霊館
原題 The Conjuring
制作 2013年 上映 112分
監督 ジェームズ・ワン 地域 アメリカ
すごい邦題です。 SF映画選の『遊星からの物体X』で幽霊屋敷ものの考察をしましたが、ある家族が移り住んだ幽霊屋敷に調査隊が乗り込むタイプの実話ものということになりますでしょうか。最近こういうオカルトものはみんな実話に基づくものばかりになりました。
そうとう大げさな描写になっているものと思われますが、荒唐無稽にならない程度に抑制はされています。それでも笑ってしまう場面はあります。この作品は取り憑かれた家族とゴーストハンターであるウォーレン夫妻の家族という二つの家族愛が描かれている点が今までの作品とは異なるところです。また、幽霊と言っても日本とは異なって悪魔と結びついているので、キリスト教信仰が強調されています。1971年の事件なので、現代よりも教会との結びつきも強かったことでしょう。一部悪魔払いの儀式も出てきますが、教会に依頼するまでの経過が描かれます。
超常現象の演出については過去作で見たようなものばかりで新味はありませんでした。むしろ古風で懐かしさを感じるぐらい。マッチのあかりを使った場面や遊びのかくれんぼ場面など姿を現すまでは怖いですが、正体を現してからはあまり怖くありません。この家族は5人姉妹で、みんなそれぞれに迫真の演技です。怖がりの僕はいつも不思議に思うのですが、こういう作品に娘を出演させる親の気持ちはなかなか理解できないです。欧米の人々にとっては日本人では想像できないぐらい悪魔は怖いはずなんですけれど。
イギリス人は幽霊を怖がらずむしろ楽しむ感覚がありますが、悪魔となると尋常でない恐怖心を示します。日本人とはたぶん反対でしょうね。そう考えると、心霊現象と呼ばれるものは深く人間心理に影響されるものだと思えます。


☆☆☆★○
トランス 邦題 トランス
原題 Trance
制作 2013年 上映 101分
監督 ダニー・ボイル 地域 アメリカ・イギリス
昔は催眠を使った犯罪物は珍しくありませんでしたが、催眠療法の普及とともにあまり使われなくなりました。この作品は名画の盗難計画と恋への執着心などを絡ませながら、催眠を複雑に使いこなすことで面白くしています。もちろん、催眠でこんなことができるわけではないですけどね。
脚本がよく練られているので、ミステリーを解く楽しみもあります。ジェームズ・マカヴォイやヴァンサン・カッセルはいつも通りのキャラなので、ロザリオ・ドーソンの活躍が目を引く作品でした。あまり深く考えずに幻惑されましょう。
『氷の微笑』(1992)ではシャロン・ストーンの股間が話題になりましたが、この作品もドーソンの股間で注目を集めようとするあざとさが見えます。こういう演出も映画のひとつの要素ではあります。
シャロン・ストーンはスタッフ内の試写でポール・ヴァーホーヴェン監督に騙されたことに気づいて監督の顔をはたきましたが、後に必要な場面だったと納得したそうです。あの場面がなかったらヒットしないような作品でしたからね。たかが縦スジ一本でも男には強烈な催眠効果がありそうです......(^_^)


☆☆★○○
続ある愛の詩 邦題 続ある愛の詩
原題 Oliver's Story
制作 1978年 上映 90分
監督 ジョン・コーティ 地域 アメリカ
2011年9月に正編をコメントしていますが、続編は初見です。続編なんてありえないと思っていたから。しかし、キャンディス・バーゲンが何をしているのか見てみたくて。彼女には合わない役でした。
原題からもわかるようにラブストーリーではなくなってしまっているので、「続」ではありません。新恋人マーシーも上流階級ということで、前作よりも階級意識との葛藤に重点が移っていて、オリバーがアイデンティティを確立するまでの物語と言えますでしょうか。
正編では階級問題は恋愛と関連性があったのですが、この作品では資本家をいかに正当化するかという低次元のドラマになっている感があります。
階級から来る自責の念というのは時代のものでもあります。香港の場面で日本企業の看板が目立つのも時代のものですね。ラストは父親との確執から解放されますが、そのきっかけとなったエピソードがつまらなくて、君の悩みはそのレベルだったのかと思ってしまいました。魅力を感じる場面がない作品です。


☆☆☆★○
パッション 邦題 パッション
原題 Passion
制作 2012年 上映 101分
監督 ブライアン・デ・パルマ 地域 フランス・ドイツ
『ラブ・クライム 偽りの愛に溺れて』(仏・2010)のリメイクです。これもオリジナルは見ていません。劇場公開はされなかった作品です。デ・パルマ作品はオリジナルからいろいろと設定を変えたようです。脚本もデ・パルマが書いています。
デ・パルマの演出は好きな方です。この作品も彼らしさが出ています。広告会社で働く女性三人を絡ませた愛憎劇で、レイチェル・マクアダムス、ノオミ・ラパス、カロリーネ・ヘルフルトが演じています。
殺人犯は完全犯罪をもくろむのですが、完全犯罪というにはいろいろとお粗末なところがあります。警察の捜査が通り一遍でようやく成立していると言えますでしょうか。どんでん返しの後の展開も納得しがたい。
ですから、これはやはりデ・パルマ流の演出を楽しむことになるわけです。スクリーンを左右に2分割して見せる手法が使われており、これがなかなか緊迫感があって良かったです。別に斬新でも何でもない手法ですが、今までとはひと味違います。これを評価しました。


☆★○○○
レッド・ドーン 邦題 レッド・ドーン
原題 Red Dawn
制作 2012年 上映 96分
監督 ダン・ブラッドリー 地域 アメリカ
『若き勇者たち』(1984)のリメイク。パトリック・スウェイジなどの若者スターが活躍したオリジナルはたぶん見ていないと思います。侵略したソ連と戦う話でしたが、今回は北朝鮮。そして背後にはロシアがいたという設定。こんな無茶な設定で映画が作れるものかと訝しく思わずにいられませんが、やはり無理。
市街戦が成立するのは小国です。子どもだましの戦争ごっこ。台詞も安っぽくて、俳優も恥ずかしかったのでは? 地球を汚しただけの作品でした。


☆☆★○○
フローズン・グラウンド 邦題 フローズン・グラウンド
原題 The Frozen Ground
制作 2013年 上映 105分
監督 スコット・ウォーカー 地域 アメリカ
近年ろくな作品がないニコラス・ケイジですが、ジョン・キューザックが出るならそれなりかもと思いましたが、やはりダメでした。
これがアンカレッジでの実話ものだとは思いませんでした。1983年に発覚した快楽殺人で不明まで含めると30人を超えるそうです。毎年何人もの女性が犠牲になっていたにも拘わらず、警察は行方不明として片付けていたのでしょう。
拉致監禁して性的暴行後に人間狩りという凶悪さですが、自宅は証拠だらけだったので難しい事件ではありません。脱出できた唯一の被害者少女は過酷な人生を歩んできており、その少女を支えようとする巡査部長との交流を交えながら描く構成になっていて、むしろこっちが主体になっています。
そのためかこの犯人についてはほとんど語られず、妻子ある普通の家庭生活を送りながら凄惨な暴力が生まれた背景は何も語られないことになります。おまけに何か犠牲者の方にも落ち度があったのではないかという憶測さえ生まれかねない演出。最後に犠牲者たちの写真が映されますが、こんな甘い描き方では犠牲者も浮かばれません。人情だけではなく、社会性のある作品にしてほしかったものです。
ニコラス・ケイジとジョン・キューザックは『コン・エアー』(1997年)で凶悪な囚人たちと戦う役で共演しましたが、今回ジョン・キューザックは犯人役です。若い頃は甘いマスクで悪役なんかできそうもありませんでしたが、最近は悪役しかできないような人相になってきました......(^_^)


☆☆☆○○
ランナウェイ 逃亡者 邦題 ランナウェイ 逃亡者
原題 The Company You Keep
制作 2012年 上映 122分
監督 ロバート・レッドフォード 地域 アメリカ
前の監督作は『声をかくす人』(2011)でリンカーン大統領暗殺の裁判という興味深い題材でしたが、いまひとつでした。今作はベトナム戦争反対を訴える過激派グループを題材にしています。彼は政治問題を扱い続けていますね。
今作は主演も務めていて邦題通りFBIから逃げる話ではありますが、なにしろ老体ですから大した逃亡劇があるわけではありません。むしろ、追い求める話です。レッドフォードが昔の仲間をたどって真実を求めて行く話に、新聞記者役のシャイア・ラブーフも絡んでいく展開です。この二人が出会う人々との会話劇で出来ていると言っていいぐらいです。
老人たちの豪華メンバーでキャストを固めていて、さすがはレッドフォードというところでしょうか。冒頭に登場するスーザン・サランドンはかつては過激派だったという役がよく似合います。この人は私生活でも政治的な社会活動をしています。若い時代にはレッドフォードとは『華麗なるヒコーキ野郎』(1975)で共演しているし、そういう意味でもやはり「仲間」です。
しかし、若い世代にはちょっと縁遠い題材です。レッドフォードがぜひ撮っておきたかったモチーフであることはよくわかります。僕の青春時代はまだかろうじてそういう時代の雰囲気が残っていた頃なので、その心情は伝わってきます。しかし、それほどのインパクトがある話でもないので、この長編はちょっと疲れました。
『ドクトル・ジバゴ』 (1965)で美しかったジュリー・クリスティはこの作品でも美人で登場してきます。テレンス・ハワードは捜査官役です。『ザ・レッジ 12時の死刑台』(2011)では刑事。『アイアンマン』(2008)では中佐。『ブレイブ ワン』 (2007)も刑事。お堅い公務員の役が目立ちます。しかし、来月公開の『デッドマン・ダウン』(2013)では悪役らしいです。



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