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2013年08月


☆☆☆○○
マン・オブ・スティール 邦題 マン・オブ・スティール
原題 Man of Steel
制作 2013年 上映 143分
監督 ザック・スナイダー 地域 アメリカ
原作がコミックでも脇に有名俳優を起用するのはこういう伝統ある作品には定石になってきました。ケヴィン・コスナー、ラッセル・クロウ、ダイアン・レイン、ローレンス・フィッシュバーンなどが出演しています。
いわゆるビギニングもので、やはり自分のアイデンティティに悩むという話。前のシリーズでの『スーパーマン』(1978年)でもマーロン・ブランド、ジーン・ハックマン、テレンス・スタンプ、グレン・フォード、スザンナ・ヨークなどのそうそうたる俳優陣でした。アメリカ人はみんなスーパーマンが好きなんでしょう。
評価は標準作としましたが、面白くなかったです。一言で言えば、過ぎたるは及ばざるがごとしです。話が大きすぎて荒唐無稽度が高すぎます。それが映像にも反映しますから、とてつもない破壊シーンの連続です。疲れます。たぶん百万人ぐらいは死んだんじゃないかと思いますが、暢気にキスなんかやっている場合じゃないです。その割にはロマンス度も低いです。
SFXとかCGではなく、まだ特撮と呼ばれていた頃はそういう映像に飢えていて、中身がなくともそういう絵だけで楽しめましたが、今や過剰すぎる絵の刺激ばかりで、人間がきちんと描かれない作品は見ていても面白く思えません。所詮、コミックが原作だからと諦めるべきでしょうか。


☆☆☆★○
スター・トレック イントゥ・ダークネス 邦題 スター・トレック イントゥ・ダークネス
原題 Star Trek Into Darkness
制作 2013年 上映 132分
監督 J・J・エイブラムス 地域 アメリカ
前作に続いてやはり復讐がモチーフの活劇となりました。SF風味は捨ててアクションのシリーズということのようです。SFより活劇を好むのが多数派らしい。エンタープライズ号ってそもそも戦艦ではなくて探検のための船で、だからこその命名だったんですけどね。シリーズのタイトルだって「宇宙の旅」なんですよ。
今作はオリジナルシリーズの第2作『スタートレックII カーンの逆襲』が踏まえられています。映像を楽しむことはできましたが、エンタープライズ号の艦内もきちんと描いてほしいです。機関室はどこかの工場で撮影しましたみたいな感じで興醒めです。
ストーリーにはいろいろ不満があります。船長の入れ替わりが激しくて、その椅子の軽いこと。責任感が強いように見せかけているけれど、本当はまるで無責任です。もっとまともなに人間が描けないものでしょうか。
クルーの命を大切に考えているようなことを口走りながらも、その行動は多くのクルーの命を危険にさらし、実際多くの犠牲を出しても一顧だにせず、友人であるクルーの命だけは重視するなんていうのはダメでしょ。船長失格も甚だしい。絵空事の物語だからってこれでは感情移入できません。
『ダイ・ハード ラスト・デイ』(2013年)ではジョン・マクレーンが市民から車を奪ってモスクワの街で多くの車を蹴散らして進むシーンがありました。多数の死傷者が出たに違いなく、お前の方が凶悪犯だろ!とツッコミを入れたくなります。いくらアメリカがジコチュウ大国とわかっていてもこういう不遜な態度はまったく不愉快。普通の大人が観賞できるレベルぐらいには人間を描くデリカシーがほしいものです。
ところで、冒頭のエピソードはまるでスポックがグスコーブドリの裏返しに見えました。スポックのキャラは確かに面白いのですが、あまり強調しすぎるのも鼻につきます。けなすばかりになりましたが、頭をカラにすれば宇宙サーカスを楽しめます。
旅の楽しみもSFの楽しみも未知との出会いです。その基本を取り戻してほしい。


☆☆☆★○
スター・トレック 邦題 スター・トレック
原題 Star Trek
制作 2009年 上映 126分
監督 J・J・エイブラムス 地域 アメリカ
TVシリーズも一時期は見ていましたが、ファンというほどには好みのシリーズではありませんでした。映画のシリーズも全部は見ていません。今回は新作の評価が高いので見る前の復習です。この作品も評価が高いのですが、公開当時に見た時はあまり面白くなかったのか、ほとんど記憶にありませんでした。ドリルのシーンぐらいしか覚えていなかったです.......(^^ゞ 我ながら唖然。これでは復習にもならず、予習となりました。
スター・トレックのTVシリーズは面白い回とそうでない回の落差が大きかったです。基本はSFなので、SFがきちんと描かれていれば面白いと言えます。それと敵役がどうも面白くないという不満がいつもありましたね。それはやはり映画にも受け継がれていて、大きく変わった新シリーズでもそれは同じです。そういう意味ではスター・トレックはあまり僕には合わないと言えます。だから、新作にもそれほど期待はしていません。
今作はネロの復讐が動機で始まった戦争になっています。結果的に言えば、カークもスポックも復讐を果たしたことになっています。西部劇と変わらない古さです。だからこそ一般受けしたと言えますけれど、未来物語でもまだ復讐がメインテーマかというのがまずは不満ですね。『スターウォーズ』でも復讐はさんざん見てきたんです。
カーク船長役のクリス・パインはどうも僕のイメージに合いません。若者の成長を描いているのでバカ者風に描きたいのはわかりますが、もう少し知性も見せてほしいものです。ザカリー・クイントのスポックは適役です。ドラマ『HEROES』の殺人鬼サイラーを見ていたのでちょっと不安でしたが似合いすぎです。
ストーリーもあまりSF的でなかったということで、評価は低めです。しかし、映像は頑張っているし、SF映画が氾濫している割には宇宙船が宇宙空間を滑っていく作品はあまり多くなく、貴重です。
僕にとってスタート・レックの魅力はやはりデザインがピカイチのエンタープライズ号が宇宙を滑っていくところです。そういうシーンをいっぱい見せてほしいものです。


☆☆☆○○
スマイル、アゲイン 邦題 スマイル、アゲイン
原題 Playing for Keeps
制作 2012年 上映 106分
監督 ガブリエレ・ムッチーノ 地域 アメリカ
妻子を顧みなかった男が二人の信頼と愛を取り戻す話です。よくある話というか、ありすぎる話です。異色なのは元プロサッカー選手ということ。そのために子どもチームのコーチとなり、おまけに母親たちからの誘惑もあるというところです。共演陣が豪華というのもありますね。
異色さを差し引いたら、まったく定番の展開です。せめてその異色さが何か良い効果を生んでいればいいのですが、まったく中途半端。ありきたりの脚本にこうして有名俳優が集まるのがなかなか理解できないです。主演は『エンド・オブ・ホワイトハウス』(2013年)のジェラルド・バトラー。彼は確かに元プロサッカー選手に似合う。


☆☆☆☆○
ハエ男の恐怖 邦題 ハエ男の恐怖
原題 The Fly
制作 1958年 上映 94分
監督 カート・ニューマン 地域 アメリカ
物理化学者アンドレが発明した物質電送機で致命的な失敗を犯したことから起こる殺人事件を、その罪に問われている妻ヘレンを軸に展開する有名作品です。
オリジナルを見るのは2回目になります。実はオリジナルを見る前にリメイクになるデヴィッド・クローネンバーグの『ザ・フライ』(1986年)を見ています。これも面白かったですが、その後にオリジナルを見たら少々色あせました。それぐらいオリジナルには魅力があります。それを一言で言えば、キッチュということになるでしょうか。それゆえだったか、日本では劇場公開されていません。
ジャンルで言えばSFホラーになるのでしょうが、始めの30分はスリラー風。しかし、どこかのんびりしています。そのために間延びしているのが欠点ですが、それ以降の展開は科学の不条理、恋愛の不条理、殺人の不条理という、タイトルからは予想できない物語になります。その意味でも邦題はひどい。
事件後の妻の反応や最後での警部の過激な行動は納得いかない向きあるかもしれませんが、人間の本質が現れているようで、そこにこそホラーが潜んでいそうです。


☆☆☆★○
タイピスト! 邦題 タイピスト!
原題 Populaire
制作 2012年 上映 111分
監督 レジス・ロワンサル 地域 フランス
1950年代のお話です。タイプライター早打ち競技に目を付けた作品です。今までこういう話がなかったのが不思議。原題は民衆とかいう意味ですが、変なタイトルだなあと思っていたらタイプライターの機種名として登場します。邦題の感嘆符は日本の業界の人はタイトルに使うのが好きですね。ごまかしの感嘆符です。
若い人はタイプライターの実物なんて見たことがないでしょうが、数多ある機械の中でもタイプライターはほんとうに美しいと僕は思っていました。イタリアメーカーですが、オリベッティの黒のタイプライターにはほれぼれした記憶があります。和文タイプライターも使ったことがありますが、これは最低のデザインでした。まあ、文字が多すぎるから仕方ありません。50年代の機種を揃えるのが大変だったそうですが、まだこの時代はデザインが洗練されていません。
主演は7月に見た『レディ・エージェント 第三帝国を滅ぼした女たち』(2008年)に出演していたデボラ・フワンソワです。『マンク 破戒僧』(2011年)も見ましたが、これはあまり記憶にありません.......(^^ゞ タイプは吹き替えなしでやったそうですが、その技のすごさについては映像でしっかりと見せてはくれません。恋愛模様にかなり比重をかけていて、このあたりがいかにもフランス映画と言えましょうか。
アメリカに対する対抗心がむき出しの演出で、最後もフランス万歳で締めたあたり、フランス人はうれしかったことでしょう。楽しく見れた作品ですが、もう少しコメディ度を上げてほしかったですね。主人公がもっとハチャメチャであったら良かったのに。もう少しオシャレ度も上げてほしかった。タイプライターに対する愛がきちんと描けていなかったことも残念。


☆☆☆○○
ザ・タワー 超高層ビル大火災 邦題 ザ・タワー 超高層ビル大火災
原題 타워          英題:The Tower
制作上映 121分
監督 キム・ジフン 地域 韓国
言うまでもなく『タワーリング・インフェルノ』(1974年)をお手本にした作品です。しかし、すでにタイトルで負けています。「そびえ立つ地獄」に「塔」で対抗してもね。邦題はもっと負けてます。避難訓練の広報番組じゃないんだから。
パニック映画は非常に難しいです。基本的にハリウッドから逃れるのが難しいからです。だからハリウッドに学ぶしかないみたいなところがあります。例えば、卑怯者が自ら滅んでいくというのもハリウッドの定番です。
しかし、この作品は『タワーリング・インフェルノ』の基本を押さえてはいるものの、他ジャンルのハリウッド作品からもいろいろなものを取り入れています。全体の展開から音楽の使い方や演出まで。それは同時に既視感につながって、「やっぱりこうなるよね」と展開が読めて感動へとは結びつかない原因にもなります。
演技の下手な人が目立つことも含めて人物像がきちんと描けていないし、消防士の活躍場面の演出が稚拙であったことなど、キム・ジフン監督の前作『第7鉱区』(2011年)と同じような感じを受けます。この作品は『『エイリアン』(1979年)がお手本になっていました。


☆☆☆★○
エンド・オブ・ウォッチ 邦題 エンド・オブ・ウォッチ
原題 End of Watch
制作 2012年 上映 109分
監督 デヴィッド・エアー 地域 アメリカ
ロサンジェルスのパトロール警官コンビの日常をリアルに描いた作品です。ジェイク・ギレンホールとマイケル・ペーニャなので、容貌から言ってもリアルな感じが出ます。そこに僕が嫌いなモキュメンタリー的な撮影法も取り入れてリアル感を増幅させていますが、この撮影方法はあざとく感じられて、僕は逆に嘘っぽく感じてしまいます。
アナ・ケンドリックとナタリー・マルティネスが恋人役や妻役で共演しています。
この監督の脚本だった『トレーニング デイ 』(2001年)はデンゼル・ワシントンとイーサン・ホークの刑事コンビの作品で評価が良かったですが、いやーな話でした。今作の警官はコンビだけでなく、みんな真面目な警官たちです。警官を持ち上げていると言っていいほどです。実際これは『トレーニング デイ 』なんかに比べればずっと事実に近いわけですよね。
警官の日常が主眼ですから、ストーリーはあってないようなもの。最後は悲劇で終わることになりますが、その後に下品な笑い話で締めるところがうまかったところでしょうか。そこに警官の日常のリアルさが感じられました。でもね、アメリカ映画の下品なジョークにはなかなかついていけません。こういう下品さも事実に近いのでしょう。


☆☆☆★○
ホワイトハウス・ダウン 邦題 ホワイトハウス・ダウン
原題 White House Down
制作 2013年 上映 132分
監督 ローランド・エメリッヒ 地域 アメリカ
6月に『エンド・オブ・ホワイトハウス』(2013年)の公開があったばかりですが、同じような企画が同時進行していたわけですね。評価はどちらも同じようなものですが、こちらの方がちょっぴり良かったでしょうか。この監督はやはり長編になります。
しかし、どちらも割り切ってみれば面白いという感じで、ホワイトハウスにこんな甘い危機管理はありえないと思います。もっとシビアな脚本を準備してほしいものです。チャニング・テイタムは甘いマスクなので、いつもアクションは似合わないと僕は思ってしまいます。
政治的なことを言えばオバマ大統領の戦略を支持するような作品です。それに対するテロリズム、あるいはクーデターを描いています。話の展開はいつもの定番で、『ダイ・ハード』タイプです。『エンド・オブ・ホワイトハウス』ももちろんそうでした。
『エンド・オブ・ホワイトハウス』は大統領の息子である少年が登場していましたが、こちらは議会警察官の娘である少女が登場します。人間キャラは動物キャラには負けると言いますが、それと似た構図で子どもをちょろちょろさせる作品は好きになれません。しかし、ジョーイ・キングが演じるエミリーはなかなかいいです。記憶をたどってみれば『オズ はじまりの戦い』 (2013年)で陶器の少女の声を演じていた子です。あれは見事でした。3月にコメントしています。
始めと終わりにリンカーン記念館前のリフレクティング・プール(Reflecting Pool)をヘリで飛行して粋なシーンが作られています。


☆☆○○○
ムービー43 邦題 ムービー43
原題 Movie 43
制作 2013年 上映 94分
監督 スティーヴン・ブリル他11人 地域 アメリカ
下品なコメディが好きなアメリカでも散々な評価です。実際、この企画は『メリーに首ったけ』 (1998年)のピーター・ファレリー監督だそうですからその流れにあります。それを究めたというべきでしょうか。『メリーに首ったけ』 の下品さに引いた人はとてもじゃないけれど『ムービー43』は見れません。
一流俳優たちがこういう作品に出来不出来に関係なく出演したくなる気持ちはわかりますね。普段はいつもアカデミー賞と関連するような演技ばかり要求されている人たちですから。しかし、面白半分の演技ではなく、やっぱり一流です。
これを見て思いだしのが、『007/カジノ・ロワイヤル』(1967年)。これはショーン・コネリーのシリーズとは別物のピーター・セラーズのコメディです。2011年10月にコメントしていますが、大物俳優たちが続々と登場するものの、全くつまらないお笑いで、よくぞ出演したものと思いました。
『ムービー43』はオムニバスを取り入れた展開で、一話目はヒュー・ジャックマンとケイト・ウィンスレットが登場しますが、女性はとてもヒュー・ジャックマンを直視できないでしょう。ケイト・ウィンスレットがその被害者になっています。
メガネと出っ歯の日本人を笑う場面も出てきます。黒人差別も出てきますが、こういう差別問題もコメディにして笑ってしまおうという側面もアメリカ・コメディの一面ですね。


☆☆☆○○
オーガストウォーズ 邦題 オーガストウォーズ
原題 Avgust. Vosmogo
制作 2012年 上映 132分
監督 ジャニック・フェイジエフ 地域 ロシア
2008年にグルジアが南オセアニアに侵攻してロシアと戦争になった南オセチア紛争を背景にした作品です。この戦争の別名が八月戦争です。ロシア作品ですから、視点はロシア側です。
現実の戦争に巨大ロボットが登場するというありえない設定なので、ギレルモ・デル・トロ監督の『パンズ・ラビリンス』(2006年)風の作品かとも推測しましたが、まるで違いました。少年の空想であるロボットは味付け程度で、ファンタジーでもありません。
幼い息子を戦場から救出する母親の物語です。少年のロボット幻想はしだいに母親にも共有されていくのですが、演出があまりうまくありません。戦闘シーンはロシア軍の全面協力というだけあって、大迫力です。これならロボットなんかやめてリアルに徹した演出にした方が感動があったのではないでしょうか。
戦争アクションを続けて3本見てしまいました。8月に見るのは悪人でもなにやら後ろめたいです。TVで戦争ドキュメンタリーを見て懺悔します。


☆☆☆○○
ワールド・ウォー Z 邦題 ワールド・ウォー Z
原題 World War Z
制作 2013年 上映 116分
監督 マーク・フォースター 地域 アメリカ
アメリカではゾンビが徐々に進化を遂げているようで、B級映画からのし上がってきました。ブラッド・ピットがゾンビと戦うことになるとはね。荒唐無稽なゾンビとウイルス・パニックというシリアスドラマが合体したみたいで、変な感覚に陥ります。
この監督の前作は『マシンガン・プリーチャー』(2011年)で昨年コメントしていますが、アクション映画ではなく、アフリカの内戦地域で兵士に仕立てるために狩られる子どもたちを救出するドラマでした。いろいろと考えさせられる作品でした。
今作も一見シリアスそうに見えはしますが、やはり荒唐無稽からは抜け出してはいません。ストーリーは単純だし、危機への対応策がかなり甘いと言わざるを得ません。
この作品のゾンビは今までのもたもたしたゾンビではなく、動きが俊敏です。でも、CGで何でもできるからって、兵隊アリみたいに群れる描写はやりすぎです。その一方で、静かな環境に置かれると不活性となって海草のように揺れています。こうした新たなキャラ設定がこのホラー作品の要になっています。
次から次へと作られるゾンビ映画を横目で眺めていると、いったいアメリカ人にとってゾンビとは何を象徴しているのか知りたくなります。ゾンビ映画はあまり好きじゃないのですが、これからも時々見ることになるでしょう。


☆☆☆○○
パシフィック・リム 邦題 パシフィック・リム
原題 Pacific Rim
制作 2013年 上映 131分
監督 ギレルモ・デル・トロ 地域 アメリカ
ギレルモ・デル・トロの新たな一面が出た作品です。日本の怪獣が好きだったとはねえ。大作ゆえに標準の評価になりましたが、実はあまり面白くなかった。この監督作で記憶に残ったのは結局『パンズ・ラビリンス』 (2006年)ぐらいです。
手の込んだ映像なので制作するのは大変だと思います。どうも3D重視のせいなのか、光跡が残るほどに光が過剰な絵になっています。そのために背景は黒です。つまり、野外シーンではほとんど夜となります。
近頃はCGを多用した破壊シーンももう見慣れて、だんだん退屈になってきましたね。怪物なりエイリアンなり、なにか強大な的と戦う映画のステレオタイプをやはり受け入れていて、登場人物の配置も、ストーリーも、スピーチも、最後の作戦もみんな既視感があります。
じゃあ演出はどうかと言えば、これもまたハリウッドの常套です。デザインもパッとしないし。映画の見所は芦田愛菜さんがハリウッド・デビューした場面でしょうか......(^_^)
5月に見た『オブリビオン』もそうであるように、ハリウッド映画は太平洋戦争で核爆弾を日本に2発落として勝利したという記憶を繰り返し再体験しているような気がします。それは罪悪感の裏返しでもありますが、そういう作品で Kaiju や菊地凛子が準主役で活躍しているというのも皮肉です。
それに被爆国日本が原発事故の収束もできないまま、金の亡者となって原発ビジネスに邁進しているのは喜劇だし、核兵器の非人道性を訴える世界共同声明に背を向けるのは悲劇です。そんな振る舞いはそれこそ怪獣です。
日本中央で暴れている怪獣を沖縄、福島、広島、長崎が批判していますが、こればかりは自衛隊を国防軍にしても退治できないどころか、怪獣を海外に輸出するだけです。ペンは剣よりも強しと言います。日本中央の住民も憲法ぐらいは維持していきましょう。


☆☆☆○○
素敵な相棒〜フランクじいさんとロボットヘルパー 邦題 素敵な相棒 フランクじいさんとロボットヘルパー
原題 Robot & Frank
制作 2012年 上映 89分
監督 ジェイク・シュライアー 地域 アメリカ
近未来SFです。コメディとなっていますが、ほのぼのドラマですね。ポスターからの印象だと、まるでピノキオとゼペットじいさんみたいな......(^_^) 内容はぜんぜん違いますけれど。CGは基本的に使われていません。SF風味は皆無と言っていいでしょう。
元泥棒だったじいさんが息子から介護用ロボットをあてがわれるところから物語は始まります。始まりはやはりお約束のロボット嫌いです。それがどんどん親友のような付き合いに発展していき、おまけに意気軒昂になってロボットと二人で泥棒稼業に復帰することになります。
こう書くとかなり面白そうでしょ?ところが、泥棒の描き方があまりわくわくさせてくれるようにはなっていなくて、ほのぼの感が勝ります。人によってこれはプラスでもあり、マイナスでもありでしょうか。僕はマイナス点です。ロボットデザインはほぼ最低レベルです。
また、ロボットが高性能過ぎてトンチンカン度が低いのであまり笑わせてくれないのです。弥次喜多みたいな面白さがいくらでも出せたのになあ。家族愛でまとめられてしまいました。


☆☆★○○
アイアン・フィスト 邦題 アイアン・フィスト
原題 The Man with the Iron Fists
制作 2012年 上映 95分
監督 RZA 地域 アメリカ
クエンティン・タランティーノがサポートした初監督作品です。見る前から『キル・ビル』(2003年)風なんだろうなと思うところですが、その通りです。しかし、クンフー活劇というのはおこがましいレベルです。
ストーリーがありきたりで、演出が安っぽいです。キャラの造形ができていないので、感情移入もできません。ラッセル・クロウをはじめとして、俳優にやる気が感じられない。ジェイミー・チャンもどう演じたらいいのか戸惑っている感じ。


☆☆☆★○
ローン・レンジャー 邦題 ローン・レンジャー
原題 The Lone Ranger
制作 2013年 上映 149分
監督 ゴア・ヴァービンスキー 地域 アメリカ
『パイレーツ・オブ・カリビアン』はそれほど好きじゃありません。『ランゴ』はアニメになりましたが、面白かったです。今作は『パイレーツ・オブ・カリビアン』より面白いと思います。
しかし、僕はそもそもジョニー・デップのコメディ演技が好きじゃありません。今作もヴァービンスキー監督の過去作同様にコメディタッチですから、そこが気に入らないです。シリアスな展開がある一方で、ご都合主義のコメディタッチが入り込むのでなかなか集中できません。
西部劇では定番な復讐劇と誘拐された家族を取り戻すというモチーフではあるものの、多彩な登場人物と時代背景を取り入れて、ストーリーはよく出来ています。しかし、2時間半はやはり長すぎます。
しかし、この監督の手の込んだ映像は好きです。編集もいいです。『パイレーツ・オブ・カリビアン』も『ランゴ』も、その絵は好きです。今作はもっとシリアスにやってもらっていたら、4つ星になったのですけれど。
ウィリアム・フィクトナーの線の細い悪役ぶりも楽しみました。


☆☆☆○○
ゲーテの恋 君に捧ぐ「若きウェルテルの悩み」 邦題 ゲーテの恋 君に捧ぐ「若きウェルテルの悩み」
原題 Goethe!
制作 2010年 上映 105分
監督 フィリップ・シュテルツェル 地域 ドイツ
ゲーテについて何も知らないなら、「若きウェルテルの悩み」なんて読んでいなかったら、半星である★が増えていました。アレクサンダー・フェーリングもミリアム・シュタインの二人とも瑞々しい演技で良かったのです。深みはありませんがそれは脚本のせい。
高校生で『若きウェルテルの悩み』を読み、その後もゲーテ作品は読みました。彼は科学にも造詣が深く、彼の植物論はなかなか面白かったです。
この作品は邦題を見てわかるように、ゲーテの実体験を描いたのか、それともそれに基づいて書かれた小説『若きウェルテルの悩み』を描いたのかよくわからない話になっています。答えはどっちでもあり、どっちでもなし。つまりは退屈しないように映画用に安易な脚色がされています。事実を踏まえればデタラメと言っても言い過ぎではないです。
そんな紛らわしいことをしてしまっては、ゲーテを冠する意味がありません。それが三つ星にとどまる理由です。映画ではヨハン・ゲーテ、シャルロッテ・ブッフ、アルベルト・ケストナーの三角関係が誰でも理解できるような単純な形で描かれます。しかし、ケストナーが意地悪な人のように描かれるので、シャルロッテの気持ちが理解しにくいものになっている欠点が生まれています。
ケストナーという人物はもっと深みのある人物です。だからこそ奇妙な心理的三角関係が生まれ、継続されたわけで、ゲーテやシャルロッテの心理的な綾も含めて、この「悩み」に人々は惹かれます。そういう物語の面白みの核というべきものが削り落とされたこの作品は企画段階で失敗しています。大人の映画ではありません。
こういう奇妙な関係は昔の日本の作家たちの間でも時々ありましたね。ドラマでは向田邦子脚本の『あ・うん』(1980〜81年)があります。映画化もされましたが、ドラマが絶品でした。向田さんの飛行機事故死でこの続編は中断することになり残念でした。この物語の結末を見たかったです。
「奇妙な関係」と記しはしましたが、それは世間常識であって、ほんとうは人の自然なこころだと思います。



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