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2013年07月


☆☆☆☆○
春香秘伝 房子伝 邦題 春香秘伝 The Servant 房子伝
原題 방자전    英題:The Servant
制作 2010年 上映 125分
監督 キム・デウ 地域 韓国
韓国の古典『春香伝』を別の観点から描いた作品です。チョ・ヨジョンの『後宮の秘密』(2012年)を5月に見てからこの作品も見たいと思っていました。これは『後宮の秘密』よりずっと面白いです。
『後宮の秘密』はヒロインのファヨンが純愛から権力の虜になっていく姿が描かれましたが、こちらは美貌の妓生、チュニャン(=春香)に恋した下男(=房子)バンジャの純愛が描かれます。チュニャンの人物描写は単純なものではなく、逆にそれゆえに共感を覚えます。しかし、それだけにチョ・ヨジョンには少し荷が重かったように見えます。キム・ジュヒョクとリュ・スンボムは良かったですが、下男としてはキム・ジュヒョクは男前過ぎましたかね。
『春香伝』は夢龍が身分を超えて愛し合っていた春香を奪おうとする悪徳府使から春香を救い出そうとする話です。この『房子伝』も当然身分が物語の全体を貫通していて、登場人物たちがそれぞれに「身分」で屈折しています。その屈折の描き方もなかなか興味深いです。
古典的な物語が生まれる背景には、いろんな事実が整理され捨てられていくものであって、その中にこそ人の真実があると語っているような結末は味わい深いです。
永遠に貫かれる愛がある一方で、移ろいやすくて翻弄される愛もあります。人はその両方の間を転がっていくのでしょう。転がる数も転がる先もわからないまま。


☆☆☆○○
終戦のエンペラー 邦題 終戦のエンペラー
原題 Emperor
制作 2012年 上映 107分
監督 ピーター・ウェーバー 地域 日本・アメリカ
マッカーサー元帥の特命を受けて天皇の責任調査することになったフェラーズ准将の道のりをたどる作品です。映画らしく、アメリカで知り合った留学生の恋人アヤの消息を求めるサイドストーリーもあります。
主演はTVドラマ『LOST』のマシュー・フォックス。マッカーサーをトミー・リー・ジョーンズ。似合ってない。5月に死去した夏八木勲も出演しています。
今までにいくつも作られた敗戦前後の映画と異なるのはボナー・フェラーズ准将の目を通して描かれるということだけで、何か新しい歴史観が示されるわけではありません。「敗戦」ではなく、「終戦」とタイトルされているもその証です。アメリカ人には新しい事実を知るという側面はあることでしょう。ハリウッド映画と宣伝されているようですが、アメリカでは限定公開のようです。
ここにあるのはやはりあいまいな日本と、とまどうアメリカ人です。当時の視点をそのまま現在に持ってきてもしかたありません。フェラーズ准将を知ってもらうためだけの作品ではないはずだと思うのですが。


☆☆☆★○
ペーパーボーイ 真夏の引力 邦題 ペーパーボーイ 真夏の引力
原題 The Paperboy
制作 2012年 上映 107分
監督 リー・ダニエルズ 地域 アメリカ
主人公は新聞少年というよりは新聞青年というべき年齢ですが、「ひと夏の体験」ムービーからはみ出す作品になっています。主人公が慕っていた黒人家政婦のアニタが過去を語る設定になっています。時代はまだ黒人差別が厳しい1969年です。
主人公ジャックが経験するのは大人たちの闇の部分で、性と暴力と差別と野心などのあらゆるものです。しかし、その一方で彼を支えるのが誠実な愛の心です。その対象は家政婦アニタと、獄中の男に惹かれる色っぽくてケバいシャーロット。
ジョン・キューザックは完全な汚れ役。こういう役が似合うようになってきました。一方、汚れ役のようにも見えるニコール・キッドマンは心のどこかに天使を宿しているようにも見えます。だけど、あまり役に合っていたとも思えないです。キッドマンは上品さがある人なので、下品はことは似合いません。
物語の牽引役としてミステリーが入りこんではいますが、サスペンス度も低く、ドラマ度が高いです。マシュー・マコノヒーが脇を固めることでザック・エフロンが初々しさを出しています。


☆☆☆★○
31年目の夫婦げんか 邦題 31年目の夫婦げんか
原題 Hope Springs
制作 2012年 上映 100分
監督 デヴィッド・フランケル 地域 アメリカ
コメディというよりドラマです。そのドラマの中に滑稽があるという感じ。セックスレスを含めてふれあいのなくなった夫婦の、妻からの危機感で動き始める再生の物語です。女が不満を訴え、男が受け身というパターンはいつものことですね。
妻はメリル・ストリープで、夫はトミー・リー・ジョーンズ、カウンセリングする医師がスティーヴ・カレルなんですから、そりゃ滑稽なことになります。しかし、邦題の夫婦げんかというような問題ではなく、結婚に希望をなくした妻になかなか寄り添えないと夫という、もっと深い問題です。女性向けのラブロマンスという側面もありそうです。
結婚経験のない僕にはなかなかわからない世界です。そもそも日本人には問題にならないことなのかもしれません。結婚は人生の墓場とは思いませんが、結婚は人生の道場だとは思います。
エリザベス・シューがバーテンダー役で秒単位の出演をしています。


☆☆○○○
宇宙征服 邦題 宇宙征服
原題 Conquest of Space
制作 1955年 上映 80分
監督 バイロン・ハスキン 地域 アメリカ
初見です。ハスキン監督の前作『宇宙戦争』(1953年はSF映画史に残る作品でしたが、この作品は駄作と言わねばならないでしょう。前作は科学的なことなど関係なくていい作品でしたが、これは宇宙旅行することになるのでそういうわけにはいきません。しかし、論理的にも科学的にもツッコミどころばかりでお話になりません。当時の特撮を知るための資料ぐらいにはなるでしょうか。
地球の近くにリング状の宇宙ステーションが浮かび、そこで月行きの宇宙船を建造している場面からスタートします。ステーションの回転速度がかなり速く、強い遠心力でとても人は生きられないと思ってしまいますが、絵としてはなかなか面白いものです。面白いのはここまでですけれど。『2001年宇宙の旅』(1968年)も宇宙ステーションの風景から始まっていましたね。たった13年であれほどに映像が進化したわけで、ちょっと驚きです。
日本でも1955年に公開されていますが、数年前まではGHQの占領下でした。この作品には日本への「思いやり」があって、イモトという日本人が乗員として登場します。月行きの計画は中止され、なんと火星行きに変更になります。無茶な設定です。この時にボランティアが募られ、イモトは手を挙げます。この時の理由がなんともながいセリフで、まるでスピーチです。
前の戦争の言い訳として、日本には資源がなかったからだ、だから、人類のために資源を求めて火星にも行きたいというような話です。そこで日本の窮乏の例としてあげられたのは、紙の家とか、家具もなく床に座っているとか、箸でした。それらはみんな金属などの資源がなかったからだという説明にはさすがに「カチン」ときましたね。
1955年にこの映画を見た日本人も「カチン」ときたことでしょう。こんなに無理解なアメリカ人に占領されて抵抗もおこらずに統治できたのは、やはりアメリカの政策の手際良さよりも日本人がいかに権力に弱かったかを示しているように思えます。
戦争中は天皇を悪用した国家権力に頭を垂れ、敗戦後は相手を変えてGHQに頭を垂れ続ける。強い国家権力を求め、アメリカ様を拝み続ける自民党が優勢な現在もあまり状況は変わっていない気がします。
奇しくも明日は参議院選挙です。金による豊かさよりも、貧しくても幸せがある方角へ一票を投じるつもりです。日本征服されてなるものか......(^_^)


☆☆☆★○
風と共に去りぬ!? 邦題 風と共に去りぬ!?
原題 바람과 함께 사라지다     英題:The Grand Heist
制作 2012年 上映 121分
監督 キム・ジュホ 地域 韓国
『猟奇的な彼女』(2001年)のチャ・テヒョン主演のコメディ風味がある復讐ものです。しかし、陰惨さとは無縁で、銀行強盗みたいな計画犯罪を楽しむような面もあります。しかも、盗みだすのは氷。朝鮮にはこういう氷の文化があったんですね。
舞台は18世紀、氷利権をめぐり左議政の陰謀で無実の罪に問われた者たちが中心となって、左議政の陰謀を暴いていきます。11人の個性的なメンバーをうまく配置して動かし、結末にはオチもつけるという上手い展開になっています。
内容とタイトルとどう関係しているのかよくわかりませんが、これは夏向きの涼しくて楽しい作品です。


☆☆☆★○
天地明察 邦題 天地明察
英題 Tenchi: The Samurai Astronomer
制作 2012年 上映 141分
監督 滝田洋二郎 地域 日本
観測と数理で改暦を成し遂げた安井算哲の活躍を描きます。冲方丁の原作のおかげで、よく出来た話になっています。当時の観測方法を目で見る楽しみもあります。地味な話になりそうなところに、暦勝負というイベントを組み込んで盛り上げる工夫もあります。
でも、星見好きとしては星空や天文のロマンが描かれていないのが不満です。安井算哲だって子どもの頃から北極星ばかりに注目していたはずはありません。明るい星がまばらな北の空を見て喜ぶ子どもなんかいるでしょうか。江戸時代の真っ暗な夜空に輝く天の川をはじめとする星々の美しい風景も見せてもらいたかったものです。北極星と北斗七星だけでは寂しすぎます。
「地」の人間どもの関係に重点がかかりすぎて、「天」や「数理」へのロマンが少なかったのが残念です。暦の解説もほとんどなく、もっとCGを使って視覚的に関孝和などの数理の説明も含めてしてもらえたら知的な満足感も得られたと思います。人間関係へと話が収斂していくのは邦画の特徴ですから、邦画らしくはあります。


☆☆☆☆○
荒野の七人 邦題 荒野の七人
原題 The Magnificent Seven
制作 1960年 上映 128分
監督 ジョン・スタージェス 地域 アメリカ
『七人の侍』(1954年)の翻案作品です。『荒野の七人』は昔はよくTV放送がありました。しかし、オリジナルの『七人の侍』の放送はありませんでした。そもそも黒澤作品はどれも放送されなかったし、ビデオ化も非常に遅かったです。海外のビデオ化が先行したほどです。
『七人の侍』を見るまでは、『荒野の七人』は人気俳優が並んで大作感があり、相当に面白い作品でした。オリジナルは207分という長時間で、しかも翻案ですから比較しても仕方ないのですが、比較するなと言われても無理.......(^^ゞ 
しかし、舞台をメキシコに移してガンマンを活躍させるという翻案はなかなかよく出来ているし、武士ではなくガンマンというキャラに合わせた変更も工夫が感じられます。ただ、上映時間が2/3になったことで、やはりダイジェスト感が否めないし、演出の荒さが目立ちます。
話の筋に無理があったり、ガンマンたちの行き当たりばったりの行動なども映画の面白さを減じています。しかし、一番駆けているのは西部劇としての迫力のようなものかもしれません。盗賊が攻撃をうけて村から逃げ去るシーンはカットを減らして、馬が全力で駆ける姿を追って大迫力です。しかし、こういうアクションの迫力のようなものが他にはほとんど見られません。見えない鉄砲玉に当たって死んだふりだけではね。
それでも4つ星をつけるのは、やはり物語設定の面白さと人気俳優たちを見る楽しさということです。黒澤明監督はジョン・スタージェスに日本刀を贈ったそうですから、それなりに満足したのだろうと推測します。
僕が『七人の侍』に初めて触れたのは中3の時です。NHKのラジオ番組で受験講座があり、その国語の講座でサウンドトラックが全編放送されました。3月末で高校受験もすでに終わっていて、余興として企画されたのでしょう。粋なことをするものです。黒澤監督もこの放送は許可したわけですね。
長い作品なので、テキストに脚本は掲載されていなかったと思います。映画を見ずに聞くという体験は後にも先にもあの時だけですが、とにかく面白かったです。視覚障害のある方にもお勧めします。十分すぎるほど楽しめます。


☆☆☆☆★
俺たちに明日はない 邦題 俺たちに明日はない
原題 Bonnie and Clyde
制作 1967年 上映 112分
監督 アーサー・ペン 地域 アメリカ
傑作と評価の高い作品です。ところが、今まできちんと見たことがありませんでした。犯罪実録物はあまり好きではないからです。悪人と自認しているにもかかわらず、犯罪被害者側の気持ちが引っかかり、心がよどんでしまうからのような気がします。
それでも『明日に向って撃て!』(1969年)など、大好きな作品はあります。『明日に向って撃て!』はアメリカン・ニューシネマの流れの中の一作ですが、その源流に位置する『俺たちに明日はない』はやはり素晴らしい作品でした。
印象に残ったのは画面の切り取り方です。特にクローズアップで、言葉では表現できないフェイ・ダナウェイの様々な表情は心を掴むものがあります。フェイ・ダナウェイはこの作品で認められることになったわけですが、失礼ながら彼女の最高作品となっています。
こういう作品にジーン・ワイルダーが出演していたとは知りませんでした。デビュー作だそうです。後のコメディ作品と芸風はまったく同じです。『俺たちに明日はない』が異色作であることをキャスティングが教えてくれます。
1967年のアカデミー賞ではたくさんノミネートされましたが、助演女優賞と撮影賞だけでした。他には『夜の大捜査線』、『卒業』、『暴力脱獄』、『特攻大作戦』、『招かれざる客』、『くなるまで待って』などきら星が輝く年度でした。日本からは『智恵子抄』が外国語映画賞にノミネートされました。へえ-です。岩下志麻と丹波哲郎です。
この作品の後に『荒野の七人』を見ていたら、ボニー・バーカーとクライド・バロウの生き方は西部劇のガンマンたちの生き方と通ずるものがあるように見えます。しかし、ボニーとクライドは子どものままのガンマンです。


☆☆★○○
サイレントヒル:リベレーション 邦題 サイレントヒル:リベレーション
原題 Silent Hill Revelation
制作 2012年 上映 95分
監督 マイケル・J・バセット 地域 フランス・アメリカ・カナダ
『サイレントヒル』(2006年)の続編です。ゲームの映画化ですが、ゲームはまったく知らず。しかし、前作はそこそこ面白かったです。今作はゲームの側面が強く出ている作品になっています。
出だしが『エルム街の悪夢』(1984年〜)シリーズとそっくり。後は行き当たりばったりの脚本とご都合主義。映画にはなっていません。マネキンが合体して蜘蛛状の物体になっているデザインが面白かったぐらいです。3Dというアトラクションとして楽しむ、あるいは脈絡のない幽霊屋敷レベルです。
主演のアデレイド・クレメンスは『華麗なるギャツビー』(2012年)にも出演していますが、どこに出ていたのかわからず。ミシェル・ウィリアムズに似ているこの人はこれから見かけることになる女優さんでしょうか。


☆☆☆★○
ベルリンファイル 邦題 ベルリンファイル
原題 베를린      英題:The Berlin File
制作 2013年 上映 120分
監督 リュ・スンワン 地域 韓国
韓国製スパイアクションもこなれてきて標準作以上のものを送り出してきますね。ハリウッドに対抗できています。しかし、韓国らしさはあって、韓国という立ち位置ゆえの面白さがあります。主役は北朝鮮スパイです。
タイトル通り、主な舞台はドイツのベルリンになります。英語シーンも多いです。日本でも外交官を主人公にした『アマルフィ 女神の報酬(』2009年)とかありました。舞台はイタリア。珍しく外国が舞台だから「観光」の側面もあった作品です。日本にはスパイものは作れそうもありません。アクションができないし。
日本人はグランドデザインを描くのは苦手ですが、何か目標を与えられるとがむしゃらに突き進みます。高度成長の時代に映画を世界産業にするような計画を持っていたら達成していたでしょうね。原発事故を起こしたから日本の原発はかえって安全というおためごかしの原発ビジネスをする日本と、楽しみを与えてくれる韓国映画と、どちらが国のイメージ戦略として優秀かは比較するまでもありません。残念というよりは悲しいです。「日本人の誇り」を持てというなら、そういう政治をしてほしいものです。
『ベルリンファイル』は大がかりな舞台装置はありませんが、アクションはいいし、銃撃戦の迫力もたいしたものです。ガラス屋根から墜落するシーンの映像は、今までにない新味があって面白かったです。脚本も新味を出そうと頑張っています。こめかみに当てられた銃口のシーンも新鮮。ハリウッド・アクションよりリアリティがあります。
チョン・ジヒョンは守られる妻役でしたので、活躍場所が限られてちょっと残念でした。


☆☆☆★○
パリ猫ディノの夜 邦題 パリ猫ディノの夜
原題 Une vie de chat
制作 2010年 上映 70分
監督 アラン・ガニョル 地域 フランス
フィルム・ノワールと言えばフランス語ですが、パリの夜を舞台に、失語症の少女ゾエを中心に据えて、猫ディノの足取りをたどりながらの犯罪活劇です。映画の趣はやはりフランス映画です。
絵本をめくるような楽しみとそこにいい音楽。それに尽きる作品です。こういうタッチの短編は今までにもたくさん作られていると思うのですが、芸術性にあまりこだわりがなく、これは正味1時間。映画として楽しむアニメとしてはちょうどいい時間です。
アニメは苦手という方にもお勧めです。


☆☆☆★○
バーニー みんなが愛した殺人者 邦題 バーニー みんなが愛した殺人者
原題 bernie
制作 2011年 上映 99分
監督 リチャード・リンクレイター 地域 アメリカ
日本で言えば週刊誌の格好ネタになるような話です。実際は自分が書いた1998年の月刊誌記事を元にした脚本なんだそうです。名誉毀損で訴えられる心配はないのでしょうか。
テキサスの田舎町でみんなから愛されていた善良な男バーニーが、みんなから嫌われていた金持ち老婦人マージョリーを殺した事件のてんまつを、住民へのインタビューを挿入しながら展開していく作品です。事実はどこまでなのかはよくわかりません。
ブラック・コメディタッチではあるものの、見ながらいろんなことを考えてしまいます。まわりに不愉快をまき散らす人がいなくなったら、どんなに清々することか。殺すまでいかなくても、死を望んだことはあるでしょう。ヒーロー物が受ける理由でもあります。
昨日まで褒めたたえられていた人であっても、その人が殺人を犯せば手の平を返すようにののしることもあるでしょう。しかし、この町の人達は愛し続けます。殺した相手がもっと違う人だったら?
歴史を振り返れば、人々から愛されている殺人者はたくさんいます。歴史を振り返らなくても、殺されるべきだと考えられている人も大勢います。人間の世界はとにかくどこか狂っていると思えます。そんな世界の道化師にはにジャック・ブラックはよく合います。
『リンカーン弁護士』(2011年)で弁護士役だったマシュー・マコノヒーは今回は検事役で、いつもとは異なる役づくりをしています。シャーリー・マクレーンが不愉快な老婦人役ですが、どことなく可愛げがあって憎めないです。マージョリーがバーニーに心を開き、バーニーもマージョリーを愛していたことを考えると、実際のマージョリーもそういう人だったのかもしれません。


☆☆☆★○
25年目の弦楽四重奏 邦題 25年目の弦楽四重奏
原題 A Late Quartet
制作 2012年 上映 106分
監督 ヤーロン・ジルバーマン 地域 アメリカ
音楽方面にはまったく疎い僕ですが、こういう映画を見ることは音楽の面白さを教えてもらえるいい機会になります。しかし、俳優というのは大したものだと思います。フィリップ・シーモア・ホフマンなんかは楽器の演奏経験もなかったそうです。
25年も続いている弦楽四重奏団がピーターのパーキンソン病告知をきっかけにチームワークもプライベートも崩壊の危機に瀕しますが、ロバートとジュリエットの娘、アレクサンドラが触媒となって再生している様子を描いています。その過程でいろんな曲が活かされ、特にベートーヴェンの弦楽四重奏曲の第14番が大きなキーとして働きます。
少し中だるみした感じがありますが、俳優たちの演技はもちろん、時々いいエピソードが挿入されたりして楽しめました。クラシックが好きな人には一層楽しめることでしょう。
クリストファー・ウォーケンはアカデミー賞作品の『ディア・ハンター 』(1978年)から見ています。その後つまらない悪役ばかりやっていた時期もありましたが、近年はまた面白くなってきました。キャサリン・キーナーはフィリップ・シーモア・ホフマン主演の『カポーティ』(2005年)で作家のネル・ハーパー・リーを演じていたのも印象的。イモージェン・プーツはこれからの人です。


☆☆☆★○
ワイルド・スピード EURO MISSION 邦題 ワイルド・スピード EURO MISSION
原題 Fast And Furious 6
制作 2013年 上映 130分
監督 ジャスティン・リン 地域 アメリカ
『ワイルド・スピード MEGA MAX』(2011年)と同じ評価ですが、今回の方が面白いかも。脚本は甘いところもありますが、2時間超えを飽きさせない展開です。
今回第1作で死んだはずのレティ役ミシェル・ロドリゲスが復活。クールに決めています。しかし、格闘家ジーナ・カラーノを相手にしてはさすがに子猫のようです。ジーナ・カラーノは『エージェント・マロリー』(2011年)では主演でしたが、やはり俳優としての魅力に欠けるので、これがいい立ち位置なのかもしれません。
アクションは半端じゃないです。ただし、好きじゃない細切れのカットと、好きじゃない夜のアクションが多いのが残念。これだけすごいアクションになると、数秒も続くようなシーンは撮れないのでしょうね。
映画の醍醐味は大画面で奥行きが出ることです(3Dの奥行きはまた別もの)。夜のシーンになると、光源とその反射だけになるので背景が消えて奥行きもなくなります。アクション映画ではこれがマイナス。音響で迫力を出すことはできますが、耳栓をして見たらかなりつまらない映像になっているはずです。
西部劇の決闘シーンでは相対するガンマンの距離感が緊張感を生みます。そして、ガンマンがそれぞれに背負う奥行きのある背景がガンマンの存在を屹立させます。これを薄闇や暗がりでやったらいかにつまらないことか。だからこそ、『真昼の決闘 High Noon』(1952年)でなければなりません。
脚本の甘さが強く出ている最後のどんでん返しはやめて、2時間で収めた方がよかったような気もします。


☆☆☆★○
レディ・エージェント 第三帝国を滅ぼした女たち 邦題 レディ・エージェント 第三帝国を滅ぼした女たち
原題 Les Femmes de l'ombre
制作 2008年 上映 118分
監督 ジャン=ポール・サロメ 地域 フランス
劇場未公開作品です。実話を元にしているとのころですが、邦題ではとても見る気が起こらないですね。安っぽく大げさです。ソフィー・マルソーの名前があったので見ました。ombre とは影です。作品はちっとも英雄扱いしていません。
救出作戦という任務のために集まり、集められた女5人は早々と作戦を成功させますが、その直後、拒否できない暗殺作戦を与えられ傷つきながらも成功に導いていく話です。この背景にはノルマンディー上陸作戦と深いかかわりがあったので、邦題のネタになったようです。『レディ・エージェント』はメンバーの人数は少なくて、囚人は一人しか含まれていないのですが、リー・マービンの『特攻大作戦』(1967年)と通じる雰囲気がありますね。
ソフィー・マルソーがスナイパーというのはどうにも似合わないですが、これは作戦全体にも影響を及ぼしていて、スパイ工作ものとしての緻密さや面白みに欠けます。しかし、戦争の悲惨さや、人の勇気と弱さを描いているところに女性たちを主人公にした意味がありそうです。
当時の写真やフィルムも挿入されます。戦争が立場も男も女も関係なく、多くの人々を悲劇に巻き込んでいく有様を描いた作品でありながら、無意味なヌードシーンが出てくるのは不快です。そのガエルを演じたデボラ・フランソワは『マンク 破戒僧』(2011年)に出演していました。来月は『タイピスト!』(2012年)の公開があります。
作品の中でキャラの変化があり、存在感もあるジャンヌを演じたのはジュリー・ドパルデュー。ジェラール・ドパルデューの『モンテ・クリスト伯』 (1998年)にも出演していました。ジェラールの娘です。俳優一家です。



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