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2012年10月


『危険なメソッド』(2011年)は12年6月にコメントしています。
『声をかくす人』(2011年)は11年9月にコメントしています。


☆☆☆☆○
アルゴ 邦題 アルゴ
原題 Argo
制作 2012年 上映 120分
監督 ベン・アフレック 地域 アメリカ
79年のイラン革命に伴って起きたアメリカ大使館人質事件での大使館員を救出する作戦の全容を描いていますが、その作戦が前代未聞というか奇想天外だったために評判となった作品です。
ベン・アフレック作品の評価は僕はあまり高くないです。しかし、これは登場人物たちがよく描けていると思います。特に映像は特筆もののリアリティで、時間も空間も超えたものに仕上がっています。
しかし、僕はそれほどハラハラドキドキはしませんでしたね。そういう場面や演出は使い古されたものです。そして、大使館員たちの隠れ家での受忍生活や映画スタッフを演じるための奮闘ぶりをもっと丁寧に描いていれば、脱出での緊迫感が高まったでしょう。2時間という長い作品ですが、実話であることを強調するあまり、映画の筋とは関係のない政治情勢がかなり描かれていて、それに時間を割いています。
つまり、これはアメリカ人に向けてこんなことがあったのだということをアピールしたいという気持ちがあって、アメリカでは他国よりも高い評価を受けることになるでしょう。


☆☆☆○○
ザ・レイド 邦題 ザ・レイド
原題 Serbuan maut
制作 2011年 上映 102分
監督 ギャレス・エヴァンス 地域 インドネシア
インドネシア作品が世界公開というのは珍しいのではないでしょうか。ブルース・リーの『死亡遊戯』(1978年)みたいに上層階へと闘いを進めていく多人数版かと予想してみましたが、そんなのではありませんでした。
脚本はあまり面白くありません。かなり大ざっぱな展開です。攻撃を仕掛けるSWATがあまり弱すぎて、冒頭からガックリ来ます。ここで銃器を一掃して、拳闘試合の始まりという算段ですね。
売り文句のとおり、「シラット」という武術のアクションがこの作品の眼目です。映画でアクションと言えば聞こえはいいですが、要するに暴力を振るうだけのことです。この作品ではまさにアクションと言うよりは、バイオレンスと言った方がいいです。
動きが見えないくらいの早業を見せるシーンとか、動きのリアルさとかで、売り文句に嘘はないと思いますが、ちょっとやり過ぎの感もあり。きっと撮影にも苦労していると思います。しかし、どんな新しい武術が出てきても、ブルース・リーが現れた時のような驚きはもうありません。バイオレンスとしての凄みではなく、彼のように魅力的なアクション・スタイルはもう出てきそうにありません。


☆☆☆☆○
高地戦 邦題 高地戦
原題 고지전       英題:The Front Line
制作 2011年 上映 133分
監督 チャン・フン 地域 韓国
韓国でこの映画が作られ高く評価されているのなら、韓国と日本はいつか竹島問題を乗り越えられるはず。しかし、単なる領土問題として捉えることなく、隣国としても併合した過去からも日本と深い関わりを持つ国の悲しみを知っておきたいと思います。
戦争の悲惨さと、理想の甘さと、エンターテインメントがごちゃまぜになった印象の作品なのですが、ツッコミを入れる暇を与えないエピソードの流れの良さで戦争の無意味さを描き出しています。
大戦後、ドイツが東西で分断されたように日本も東西に分断される可能性があったのに、日本ではなく、日本の支配から解放された朝鮮が南北に分断され、そして同じ民族同士で戦争をさせられた悲劇は日本人の理解を越えています。朝鮮人が戦争をやっている間、日本はそのお陰で経済復興をしていく歴史の展開はこれまた皮肉としか言いようのない辛さです。
南北の兵士が互いに戦争の意味がわからないままに高地で攻防を繰り広げ、やっとの停戦の知らせに一時的に喜んだのも束の間、停戦発効までの12時間後の国境線決定までに高地を確保せよとの命令が下り、多くの兵士が死んでいきます。
しかも、敵は南北に分かれているだけではなく、味方同士での戦いも描かれます。それがフィクションであっても、どんな戦争でも起こっている現実だろうと思います。日本でも軍隊内の毎日の鉄拳制裁で誰が敵なのかわらなかったと話すおじいさんがいました。日本人同士でも多くの殺し合いがあったと思います。
脚本も演出もよく出来ています。しかし、主演ではないイ・ジェフンが一番輝いていました。竹島をめぐって日韓どちらかの国民が一人でも死んだら、それは両国ともに負けです。


☆☆☆○○
シャドー・チェイサー 邦題 シャドー・チェイサー
原題 The Cold Light of Day
制作 2012年 上映 93分
監督 マブルク・エル・メクリ 地域 アメリカ
邦題どおりの、これと言って見所のない水準作です。いつもどおりのCIA内の陰謀と裏切りの話で、はめられた諜報員ブルース・ウィリスの家族が拉致され、運良く逃れた息子ヘンリー・カヴィルが活躍するという変化球です。
素人が工作員を凌ぐ活躍をする作品はいくらでもあります。しかし、これは素人らしく初めはパッした活躍を見せず、少し現実味を出しています。銃とカーチェイス主体のアクションなので、肉体派のアクションでもありません。
人物の配置がすっきりしていないこと、陰謀のつまらなさ、悪役のシガーニー・ウィーヴァーの魅力のなさ、展開のまずさ。無駄や悪いところがいろいろ目につきます。しかし、居眠りしないレベルには達しています。
アメリカ映画界ではCIAというのは陰謀の巣窟みたいなところで、いつもCIA職員同士で戦っています。CIA職員はきっと憤慨しているでしょうね。


☆☆☆★○
アメイジング・グレイス 邦題 アメイジング・グレイス
原題 Amazing Grace
制作 2006年 上映 118分
監督 マイケル・アプテッド 地域 イギリス
18世紀のイギリスで奴隷貿易廃止法案に尽くしたウィリアム・ウィルバーフォースの政治家人生を描いた作品です。『アメイジング・グレイス』という讃美歌を書いたジョン・ニュートンの背景も初めて知りました。奴隷貿易船の船長をやっていたことのある牧師だったとは。ウィルバーフォースは宗教家を目指した時期もあり、ジョン・ニュートンの助言を受けています。この作品は奴隷貿易廃止法案からの二百周年記念として制作されたそうです。
植民地からの搾取だけなく、欧米は奴隷によっても富を得ていたという負の歴史を抱えているわけですが、それは今でも人の命よりも豊かな生活を求め続ける僕たちへ負の遺産として受け継がれています。どこでもドアが実現して、遠くの地獄が自分の庭の前にまでやってこないと世界は変われないのでしょうか。
映画はウィルバーフォースの足取りを地道に描いていきますから、エンターテインメント性は低いです。登場人物たちのそれぞれの思いはよく描かれています。ただ、議員周辺の富裕な階層が舞台になっているために、当時のイギリス社会で奴隷がどう働かされていたのか、民衆はどういう考えだったかが間接的にしか描かれないので、奴隷貿易廃止法案の全体像が見えてこなかったのが残念です。最後に『アメイジング・グレイス』の冒頭の一節を引用します。
Amazing grace how sweet the sound
That saved a wretch like me.
I once was lost but now am found,
Was blind but now I see.
「wretch」 とは悪党というような意味です。ジョン・ニュートンは救われたのでしょうか。


☆☆☆★○
思秋期 邦題 思秋期
原題 Tyrannosaur
制作 2010年 上映 98分
監督 パディ・コンシダイン 地域 イギリス
原題と邦題にはかなりの距離があります。邦題よりも原題を信じた方がいいです。自暴自棄になって粗暴になっている男と、信仰に救いを求めるグッド・サマリタンの女が、その立場を交換しながら周りの人々とも繋がっていく話です。
結局は宗教的な救いではなく、人間と人間の狭間に落ちているものから救いを見いだしていきます。共感する力がある限り、人は絶望せずに生きれるのかも知れません。『グラン・トリノ』(2008年)に通ずる要素を持っています。


☆☆★○○
エクスペンダブルズ2 邦題 エクスペンダブルズ2
原題 The Expendables 2
制作 2012年 上映 102分
監督 サイモン・ウェスト 地域 アメリカ
『桃さんのしあわせ』とは打って変わって、老いている暇なんかあるかと言わんばかりの中高年アクションスターの戦争ごっこ、あるいは同窓会のような作品の続編です。今作はシルヴェスター・スタローンが監督を降りたせいかアクション・シーンは改善されています。俳優たちが有名でなかったら☆二つです。若手は『トゥヤーの結婚』 (2006年)のユー・ナンがCIAとして登場しています。
ハイライトの戦闘シーンが冒頭にやってきて、あとはB級アクションの定番を組み合わせただけのつまらない展開です。スターの登場が一番の見せ場ですから、つぎはぎだらけだし、ご都合主義だし、ストーリーなんかどうでもよし。サイモン・ウェストもこれでは腕の見せ場なしです。ちなみに、2年前の前作では☆一つになっていますね。我ながらなかなか厳しい評価です.......(^^ゞ


☆☆☆○○
桃姐 邦題 桃(タオ)さんのしあわせ
原題 桃姐     英題:A Simple Life
制作 2011年 上映 119分
監督 アン・ホイ 地域 中国・香港
原題から英題は一歩踏み込み、邦題は二歩踏み込んだ形になっています。60年も家族のために働いてきたメイドの老後の世話をする話ですが、メイドでなければこの話は成立しなかったかといえばそんなことはないですね。自分が生まれる前からいて面倒を見てくれた人がただの使用人であるはずはありません。
作品が意図したテーマではメイドであることが重要だったのでしょうから、違う見方をしてしまったと思います。結局は老いがテーマになっていて、そこには人情だけが残ったシンプルな生活のしあわせと、何もすることのないシンプルな生活の苦悶があります。しあわせがあったことが桃姐さんには幸運だったと言えるでしょうか。そして、その幸運を招く鍵を握っているのはだれかということです。
映画はドキュメンタリー風の撮影と演出です。老人ホームの情景はかなりリアルです。特に何か事件があるわけでもなく、淡々とよくある日常の風景が流れていきます。そんな A Simple Film でたっぷり2時間ですから退屈しました。アンディ・ラウは演技をしなかたっと語っていましたが、それぐらいシンプルです。桃姐さんのディニー・イップはしっかり演技しています。中国・台湾では大ヒットしたそうです。中高年が身につまされたのではないかと思います。


☆☆○○○
ウィッチマウンテン 地図から消された山 邦題 ウィッチマウンテン 地図から消された山
原題 Race to Witch Mountain
制作 2009年 上映 98分
監督 アンディ・フィックマン 地域 アメリカ
『星の国から来た仲間』(1975年)のリメイクとは知らずに見ました。もう記憶にほとんどありませんが、あまり面白くなかったような印象だけが残ります。ディズニーの子ども向けSF作品は面白くないのが基本ですね。
SF的な趣向がすべてチャチ。追いかけっこだけで終わる作品です。ディズニーのファミリー向け作品では追いかけっこが主体になっているのがかなりあります。やはり子どものニーズに合わせているのでしょうか。大人向けでもアクション映画の大半は追いかけっこですけどね。
ドウェイン・ジョンソンにとっては普通のことですが、アナソフィア・ロブはこんな手応えのない作品はつまらなかったことでしょう。『ソウル・サーファー』(2011年)ではいい役をつかみました。弟役のアレクサンダー・ルドウィグは『ハンガー・ゲーム』(2012年)に出ていました。フリードマン博士役のカーラ・グギーノは2009年の『ウォッチメン』での初代シルク・スペクター役をしていましが、この人はいつも脇役として印象的です。


☆☆☆★○
決死圏SOS宇宙船 邦題 決死圏SOS宇宙船
原題 Journey To The Far Side Of The Sun    別題:Doppelgänger
制作 1969年 上映 102分
監督 ロバート・パリッシュ 地域 イギリス
『妖星ゴラス』つながりで見ました。2回目でしょうか。日本では劇場公開されなかったSF作品です。『サンダーバード』(1965年)や『謎の円盤UFO』(1970年)で知られるジェリー・アンダーソンのプロダクション作品。円谷英二も『サンダーバード』の制作現場を見学に行っています。しかし、この作品はスーパーマリオネーションではなく、生身の人間が演じる初作品です。1969年と言えば、アポロの月着陸成功があった年です。
邦題は明らかに『ミクロの決死圏』(原題: Fantastic Voyage 1966年)の影響ですね。原題の別タイトルのドイツ語でドッペルゲンガーになっているので、どういう作品かネタバレ状態です。
太陽をはさんで地球と正反対に位置する惑星の発見が端緒となって、そこへの探険とミステリーを描くものです。日本では1972年に淀川長治さんの「日曜洋画劇場」で放映されたのが最初です。
タイトルバックがスタイリッシュでいいです。期待感が高まりますが、ストーリー展開は今ひとつで、ツッコミどころもたくさんあります。このSF設定は面白いですが、描くのはなかなか大変だと思います。そのため話をふくらませるのが難しいせいか、ロケットの発射などの手続きをきちんと描くことでSF的な絵の面白さに応える作りになっています。今となってはそんな場面が長すぎて少々退屈しますけれど。
ミニチュア技術がやはり見事ですね。汚れやカメラの動きなど工夫を凝らして臨場感を高める努力がされています。音楽もあの手この手です。ロケット発射台が爆発するシーンは爆発のさせ方にも感心しました。 『妖星ゴラス』にモニターが出てこないことを書きましたが、この作品でも出てきません。やはりTV電話は出てきます。
翌年放映されることになった『謎の円盤UFO』の出演者たちが何人も登場しています。ストレイカー役のエド・ビショップはヘアーカラーも髪型も違っていました。TVで放映されることが少ない作品ですが、DVDが発売されています。


☆○○○○
妖星ゴラス 邦題 妖星ゴラス
英題 Gorath
制作 1962年 上映 88分
監督 本多猪四郎 地域 日本
ゴラスというのは怪獣つながりの命名のような感じです。『トリゴラス』という長谷川集平の怪獣絵本があります。地球の6千倍ある質量の恒星の軌道が地球と交差するという「ディープ・インパクト」系のSF作品です。しかし、サイエンスの気配は微塵もありません。監督は東京大学理学部天文学科に考証を依頼したそうですが、信じがたい。
恒星が彗星のようにやってくるなんて。IMDbサイトには a giant meteor という解説になっています。コメットさんでもなく、ただのメテオ、流星ですよ。さすがに恒星とは信じてもらえなかったようです。
土星へロケットで行く冒頭シーンからお話にならないSFぶりです。そこへこの危機を脱するために地球を40万キロ動かすという作戦が始まります。重水素を使った核融合ジェットのようなものらしい。そんな日本の提案に外国から放射能は大丈夫かと心配されています。この暢気さが原発事故につながっているわけです。地球が動くぐらい噴射したら、地球が燃えてなくなるでしょう。
当時の人々は地球を40万キロ動かすというアイデアをどう受け止めたのでしょうか。薄氷を踏むようなバランスで生命が保たれている軌道を動かすなんて。40万キロと言えば、月です。月は楕円軌道で、地球からもっとも離れた地点が約40万キロです。映画では一切言及なしです。というか、月はゴラスに吸収されてしまうのです。それ以前に地球上の生物は死滅しているはず。月だけでなく、重力の影響が変化して太陽系は大混乱です。
特技監督は円谷英二。日本が誇るみたいによく円谷特撮は賞賛されています。ミニチュア技術はなかなかのものと思いますが、他はひどいもんです。飛行艇が着陸するときに土埃も上げなかったり、無重力シーンでは吊っているピアノ線らしきものも見えています。 宇宙シーンはおもちゃ丸出しです。
テレビ電話が出てきますが、宇宙船内も地上の施設もモニターは一切出てきません。ブラウン管はあっても映すべきソフトがなかったのでしょう。船長が宇宙船外を見る時はなぜか潜望鏡です。「計算機」はあっても、星図に定規で線を引いて進路を考えています。ガガーリンが飛んだのは1961年ですから、宇宙旅行というものがどういうものなのか日本人には理解できなかったのかもしれません。
SFの魅力がまるでない作品になってしまっているわけですが、演出もでたらめ。本筋とは関係のエピソードがいくつも挿入されるので、話が途切れます。ゴラスが最接近している瀬戸際でさえ、パイロットの記憶喪失が治るという何の関係もないエピソードがはまりこんで、キョトンとしてしまいます。
マグマという意味不明な怪獣、青春映画みたいな歌の合唱など、まるでギャグ漫画のような展開ぶり。これを東宝のトップスターたちが演じるという妖作です。ちなみに、はやぶさ号が登場しています。


☆☆☆○○
ザ・ライト エクソシストの真実 邦題 ザ・ライト エクソシストの真実
原題 The Rite
制作 2011年 上映 114分
監督 ミカエル・ハフストローム 地域 アメリカ
悪魔払いは exorcism ですが、rite は単に儀式という意味です。『エクソシスト』(1973年)のような扇情的な作品ではありませんが、起こる現象としては類似しています。
この作品は悪魔払いのテーマとしては異色で、悪魔払い云々よりも、信仰心の薄い神学生が家族の問題を乗り越えてどう信仰心を培っていくのかについて比重がかかっています。キリスト教における悪魔が信仰への導き手であることをあらためて教えられるような展開です。
エクソシストであるアンソニー・ホプキンスがデーモンに乗り移られ、それと新米が闘うというのはあまり説得力がなく、アンソニー・ホプキンスの熱演も浮き気味です。エクソシストの一例を見させてもらったという感じでしょうか。お二人とも実在の神父で、今も活躍中だそうです。


☆☆☆★○
脱走特急 邦題 脱走特急
原題 Von Ryan's Express
制作 1965年 上映 117分
監督 マーク・ロブソン 地域 アメリカ
脱走ものと言えば『大脱走』(1963年)ですが、こちらもそこそこ面白い作品です。見るのは3回目ぐらいです。イタリアの敗戦で収容所に置き去りにされた連合軍捕虜が集団で脱走するものの、所長を見逃したためにすぐに捕まります。そして、ドイツ軍に列車でドイツへと移送されていく途中で列車を乗っ取ってスイスへ逃げ込むという話です。
『大脱走』に動くサスペンスを付け加えて列車ものにしたのがミソです。アメリカのフランク・シナトラとイギリスのトレヴァー・ハワードの対立が硬軟の対処の違いを出しています。この作品の工夫はここまでで、あとはぱっとしません。
映画に急行ものはいろいろありますが、これは貨物列車なので急行とは言えないし、邦題の「特急」はやりすぎです。コメディ色が入っていることもありますが、演出にほとんどリアリティがありません。登場するキャラに魅力的な人がいないことも大きな欠点です。
ラストシーンだけはいい絵になっています。だから、ポスターにも使われています。


☆☆☆○○
SAFE セイフ 邦題 SAFE セイフ
原題 Safe
制作 2012年 上映 94分
監督 ボアズ・イェーキン 地域 アメリカ
タイトルは形容詞ではなくて名詞で、金庫です。ロシアン・マフィア、チャイニーズ・マフィア、汚職警官たちが三つ巴になって大金の争奪戦を繰り広げるアクション作品です。これに金庫のナンバー暗号を記憶させられた少女メイの争奪も繰り広げられ、ジェイソン・ステイサムがその少女を守る役割を演じます。
汚職やマフィアが絡むストーリーに新味はないというか、B級の王道で荒唐無稽です。少女メイが覚えさせられた暗号の謎解きもあっけない結末でした。少女の面倒をみながらジェイソン・ステイサムが大暴れという作品です。これも大いに既視感のあるところ。しかし、ジェイソン・ステイサムの過去作品の中でもかなりアクション度が高いです。というか、それしかないとも言えます。2百人ぐらい死んでいそうです。


☆☆☆★○
キック・オーバー 邦題 キック・オーバー
原題 Get The Gringo
制作 2012年 上映 95分
監督 エイドリアン・グランバーグ 地域 アメリカ
エル・プエブリートというメキシコの刑務所は実在していたんだとか。刑務所というよりは自治区というようなところ。市民が入り込んで住んでもいます。脱獄以外のことは何でもあり。ここにマフィアから強奪した大金を警察に奪われて投獄された正体不明のドライバーが、そこに住んでいる母子を守りながら金を取り戻して脱獄するという、少々変わった話です。
メル・ギブソンは一時アクションを卒業したかと思われました、まだやるつもりですね。しかし、激しいアクションはもう似合わないです。クライム・アクションですが、彼の持ち味であったコメディ色も入っています。
ドライバーの正体がよく見えないので、メキシコの混沌とした雰囲気と合わさって、変な味わいがあります。それが長所でもあり、欠点にもなっていてリアリティが欠け気味です。


☆☆☆★○
推理作家ポー 最期の5日間 邦題 推理作家ポー 最期の5日間
原題 The Raven
制作 2012年 上映 110分
監督 ジェームズ・マクティーグ 地域 アメリカ
原題はエドガー・アラン・ポーの詩「大鴉」からで、この企画もそれにインスパイアされたものなのでしょう。「推理作家ポー」よりもエドガー・アラン・ポーの方が通りがいいのでは?暗闇作品ですので目が疲れます。
実在した人物を使った作品はそれだけでポイントが高くなります。ポーが生まれたのは1809年で、1849年に謎の死を迎えます。事実である謎の死の経過を踏まえて、彼の作品が悲劇を生み、自らの死を招いたという展開になっています。つまり、犯人にほぼ振り回されっぱなしで終わることになるので痛快さはありません。それを目的とした作品ではないということです。
事実との絡みや犯人の設定など、よく工夫してある脚本です。犯人と同じく、エドガー・アラン・ポーの作風を模倣した手法を取っています。エドガー・アラン・ポーのファンにはなかなか面白いのではないかと思いますが、そうでもない人には映画的な見所が少なかったという気がするのではないでしょうか。僕はファンではないので、この場面はあの作品を踏まえているというところの見逃しがあったのではないかとも思いますが、この場面は見逃せないなと思わせるシーンがほしかったですね。演出があっさり味です。


☆☆☆☆★
別離 邦題 別離
原題 Nader and Simin, A Separation      英題:Nader and Simin, A Separation
制作 2011年 上映 123分
監督 アスガー・ファルハディ 地域 イラン
たくさん受賞している作品です。公開時は一種の離婚ものと思い込んで、あまり好きなタイプの映画ではないと敬遠しましたが、こんなドラマは見たことないです。作為というものが見えません。
冒頭の家庭裁判所での夫婦の言い争いを正面からずっと長回しするカメラから始まって、ラストシーンの夫婦が離れて黙って座っている長回しシーンまで、実に作為的な構図であるにもかかわらず、そんなことを微塵も感じさせません。
俳優の演技はもちろん映り込むものすべてがリアルです。登場人物の配置から話の流れまで実に巧み。映画の中のそれぞれのエピソードはたいてい既視感があるものですが、この作品はそういうことを感じさせません。謎は謎のままだし、解決できないものはやはりできない。現実の人生そのものです。これは反芻する映画です。
そして、今まで生きてきた自分の人生の中で、やはり僕たちも何度もこういう立場に立ったことを思い出し、反芻することになります。邦題はもうすこし綾をつけてほしかったです。



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