「シネマ短評」のトップを表示します


2012年9月


☆☆☆★○
新幹線大爆破 邦題 新幹線大爆破
英題 The Bullet Train
制作 1975年 上映 153分
監督 佐藤純弥 地域 日本
『スピード』のコメントに『新幹線大爆破』を傑作と記したのですが、今回見たら時代を考慮しても甘めの四つ☆ぐらいで、傑作ではありませんでした。それで『スピード』のコメントも修正を入れました。昔見た時は面白かったのですが、目が肥えたせいかアラが目につきます。
これも脚本の面白さが第一ですけれど、犯人と警察がともにお粗末さを競っているような塩梅で感心しません。監督の演出もパッとしません。結局、設定の面白さしかなくて、きちんと細部が詰め切れていないですね。犯人逮捕のためのニセ情報を流すという工夫は面白いのですが、そのきっかけ作りのために爆弾解除の書類がある喫茶店を偶然の火事で燃やしてしまうという展開はあんまりです。運転士の千葉真一が「そんなバカな」と絶句していましたが、僕も同感です。
犯人は1分で解除できると話していたのに、実はそんな簡単なことではなく、国鉄側が特別な措置を取らなかったら爆発していたことも腑に落ちないところです。他にもツッコミどころは多いです。
爆弾がある新幹線ではなく、その外部での展開がほとんどという点が面白みを減じているところですね。この点は『スピード』とは逆になっています。アメリカと日本の違いとしては、『スピード』の犯人には人間関係がありませんが、『新幹線大爆破』の犯人には人間関係がすべてと言っていいぐらい濃厚なことです。犯人逮捕にもそれがからみます。
新幹線と言えばスピードを誇っていたわけですが、そのスピードぶりが全く発揮できない作品で、やはりここにも問題があります。どこかでそのスピードが効果を出すシーンもほしかったですね。
両作品に通じて言える欠点は観客を納得させるだけの犯人の動機が見えないということでしょうか。ということで、☆は3つ半になってしまいました。しかし、日本映画としては珍しいエンターテインメント作品で、この作品を企画したことは大いに評価します。


☆☆☆☆○
スピード



新幹線大爆破
邦題 スピード
原題 Speed
制作 1994年 上映 115分
監督 ヤン・デ・ボン 地域 アメリカ
幾度も見ています。今回は地上波放送。何回でも見たい作品は結局地上波で放送する時に見ることになりそうです。とうぜん時間制限で短縮版に編集されることにはなります。かつて一度だけですが、ある映画のどこかカットされているのか皆目検討がつかず、オリジナルと見比べたことがあります。すべて秒単位でどうでもいいカットが細かく切られていました。わからないはずです。侮れない編集だと思いました。
駄作は全編が無駄なカットですが、面白い作品は無駄が削ぎ落とされて凝縮されます。『ターミネーター4』は無駄がいろいろあったので、今月放送された時はかえって良くなっていたのではないでしょうか。もちろん無駄なシーンがあって引き立つ作品もたくさんあるわけですが、テレビマンの編集はなかなかです。
この作品はアクション映画としては『ダイ・ハード』(1988年)以来の面白さで大ヒットし、ヤン・デ・ボンが撮影畑から監督にデビューした成功作です。しかし、このあと監督として大成したかと言えば、中途半端に終わってしまいました。その理由はこの作品にも見えます。それが☆4つ半にできないわけでもあります。
どの作品でも成功作は脚本なのでやはり脚本がよく出来ているし、監督がカメラをわかっているのでカメラ位置が非常にうまいと思います。映画とはウソを楽しむことですが、この作品はウソがうまい。冷静に考えれば、バスが速度低下で爆発してしまえば犯人は金を要求できなくなるわけで、こんな仕掛けは犯人にとってはリスクにしかなりません。しかし、観客はそのウソに乗っけられて楽しめるわけですね。こういう巧いウソがあちこちにあります。しかし、同時に下手なウソもあります。
バスが途中で15mも切れている高架道をジャンプするのは白々しいウソになります。もう少し時間に余裕を作って警察にジャンプ台を作らせるべきでした。そこがまた緊迫感を生み出して面白くなるわけですよね。主人公ジャックのキアヌ・リーヴスが一人で計画を練って活躍するというのがダメです。もっとサポートする側に活躍させていれば、表裏の両面から緊迫感を高め合う相乗効果が生まれます。『ダイ・ハード』を意識しすぎです。
それは相棒であるハリー(ジェフ・ダニエルズ)が犯人宅を急襲する場面も同様です。爆弾魔の家を無防備に急襲するなんてあり得ないわけで、そこをどうやって料理していくのか、バスでの攻防と平行して丁寧に描くべきでした。
犯人役はもともとはジェフ・ダニエルズが演じることになっていたそうですが、デニス・ホッパーに変更されました。デニス・ホッパーが爆弾魔をやるというのは新鮮でこれは良かったですね。最後の列車でのでたらめな行動ぶりが残念でしたけれど。今までの周到な計画ぶりが破綻してしまう展開でした。袋の鼠になってしまう地下鉄でどうやって逃げる算段をしていたのか、僕たちはわからないままです。こういうところのウソが下手としか言いようがありません。
そんな欠陥がありながらも、キアヌ・リーヴスの精悍さやサンドラ・ブロックのキュートさ等、他にもいろいろ魅力のある作品です。こんな修羅場にあってもサンドラ・ブロックが時々笑顔を見せるウソはもちろん許せるウソどころか、魅力のあるウソです。タイトルもうまいです。スピードを落とすことで危機を脱するのではなく、スピードを上げることで危機を脱するという逆転の発想が新鮮です。でも、それをきちんと描けなかったのが残念。バスのジャンプがあり得ない動きであったように、電車の暴走シーンではミニチュア感が全面に出てしまっています。
ところで、時速50マイルは翻訳では時速80キロになっています。実際確認してみたら約80467m。ぴったりです。世界ではほとんどメートル法なので、きちんと考慮にいれているのかもしれません。この作品は定期的にTVで放送されますが、日本にも『新幹線大爆破』(1975年)という作品があります。やはり時速80キロ以下で爆発するという設定でした。


☆☆○○○
エレベーター 邦題 エレベーター
原題 Elevator
制作 2011年 上映 84分
監督 スティーグ・スヴェンセン 地域 アメリカ
エレベーターという密室からのサバイバルです。みんなで協力し合ったり、いがみ見合ったりという定番の筋書きに、爆弾が一個入り込むという設定です。
乗客の一人ひとりの個人的な背景に社会問題も描こうとしたところに新味がありますが、深みがありません。サスペンスとしても、緊張感がなく、救出する動きがまるで見えない等リアリティにも欠けます。低予算に見合ったレベルの作品です。


☆☆☆○○
エージェント・マロリー 邦題 エージェント・マロリー
原題 Haywire
制作 2011年 上映 93分
監督 スティーヴン・ソダーバーグ 地域 アメリカ
この監督作品はたいていあまり面白くないので、期待しませんでした。結果はやはりそういうことです。マイケル・ファスベンダー、ユアン・マクレガー、アントニオ・バンデラス、マイケル・ダグラスとキャストは豪華です。しかし、それなりの役割は与えられていません。
話も単純です。見るべきはジーナ・カラーノのアクションのみ。女優のアクションではなく、格闘技家のアクションですからその迫力は歴然。ミラ・ジョヴォヴィッチのような作り込まれたアクションではありません。線の細い身体ではなく、堂々たる体格から繰り出されるパンチは本当に痛そう。というか、死んでます。
近頃のスパイものは本道のスパイ行為を描くのではなく、裏切りにあって反撃に出るという筋書きばかりですが、この作品もそういう話です。本当に面白い作品を作ろうという意欲が見られません。ただのルーティーン・ワークです。


☆☆☆○○
ハンガー・ゲーム 邦題 ハンガー・ゲーム
原題 The Hunger Games
制作 2012年 上映 143分
監督 ゲイリー・ロス 地域 アメリカ
『バトル・ロワイアル』(2000年)のパクリと評判の作品です。この作品は見ていないので正確にはわかりませんが、関係ないと思いますよ。原型はローマ時代のコロッセオでの闘技であって、アメリカのSF映画ではこうした独裁国家の殺人ゲームは定番と言えるものです。時代の低年齢化に伴って、子どもたちの殺人ゲームが登場してきたのは必然と言っていいです。しかし、PG12ですから、それほど残虐な場面はありません。
この作品は原作小説がありますが、どうしてこれほどの大ヒットになっているのかよくわからないレベルのストーリーです。3部作の第1部なので、まだ序章です。最後には謀反に繋がっていくのでしょう。
殺人ゲーム作品というのは荒唐無稽な設定で、リアリティがないものです。これもやはりそうです。反乱防止のためのみせしめのためのゲームになっているのですが、まったく説得力がありません。むしろ、反乱を煽っている。2時間を超える長編の割には登場人物たちのキャラや特技が描けていないし、ゲーム中もあまりに無防備で緊張感がないし、ルールは途中で変更されるしでゲームの基本が押さえられていないお粗末さです。序章と考えたらまだ許されるレベルでしょうか。
『ウィンターズ・ボーン』(2010年)のジェニファー・ローレンスはやはりいいです。主演が彼女でなかったらもっと退屈していたと思います。


☆☆☆★○
邦題 ターミネーター4
原題 Terminator Salvation
制作 2009年 上映 118分
監督 マックG 地域 アメリカ
地上波放送に合わせて、ディレクターズ・カット版ブルーレイでホームシアター鑑賞です。ディレクターズ版は不要なシーンが増えただけでした。この作品はもっと削れる場面があります。その一方で伏線を張るための丁寧なカットをほとんど使っていないので、それを見落としてしまう人もかなりいそうです。大抵の作品ではくどいほど「ここは覚えておいてね」と念を押すカットがあるのですが、すっきりです。
この作品の一番の見所はカメラワークでしょうね。短いカットばかりで繋いでいくのではなく、かなりの長回しをしながらカメラの視点を移動していくために、臨場感たっぷりです。これこそやはり映画の醍醐味です。最近の映画はみんなTVドラマのカット手法になってしまっています。
CGの使い方もなかなかうまいです。質感を出すために表面に雨粒を跳ねさせるような工夫等をしていて、かなりリアリティが出ています。ただし、人間に使うとやはり難しく、マーカス・ライトやシュワルツェネッガーのT-800は違和感が拭えません。
作品の欠点はマーカス・ライトですね。この主役の存在自体がシリーズから逸脱しようとしています。また、行動が一貫していないので、スカイネットの企みとして説得力がないし、人間側に立つ動機も不足しています。ラストシーンはT2を想起しますが、なぜ自分の命を差し出すのか、そしてそれでみんなが納得するというのは不可思議です。そういう欠点だらけの存在なのですが、演出はかなり手を入れていて、サム・ワーシントンがその存在の苦悩を繊細に表現しています。
ターミネーター・モデルとしてはT-800に先祖返りしているので、T2、T3と見てきた目にはどうしてももの足りません。スカイネットでの戦いも先祖返りして工場内の戦いとなりますが、第1作と比べても緊迫感がありません。そもそもスカイネットの建物が人間の使用向きになっていることに違和感があります。人間が普通には歩けないような空間を舞台として準備してほしかったですね。
そしていつものことですが、核の被害を甘く見すぎで、おもちゃ扱いしています。この作品でケリをつけてほしかったと思った人もいるでしょうが、タイムパラドックスのために終わりはやってきません。「ターミネーター5」がいつかやってきます。


☆☆☆☆○
ソハの地下水道 邦題 ソハの地下水道
原題     英題:In Darkness
制作 2011年 上映 143分
監督 アグニェシュカ・ホランド 地域 ポーランド・ドイツ
地下水道と言えばまだ聞こえはいいですが、つまり下水道なわけです。そんな汚い画面だし、しかも苦手な暗闇作品になっているだろうし、2時間超え作品だし、敬遠しようかと思いましたが、なにやら面白そうな気配。実際、まったく眠気に襲われることなく見ることが出来ました。光の使い方がうまいので、暗闇が気になりませんでした。今月初めての4つ☆です。
地下水道と言えば、アンジェイ・ワイダの有名な『地下水道』(1956年)があります。もちろんポーランド作品で、レジスタンスの物語でした。こちらはゲットーから逃れてきたユダヤ人たちを地下水道にかくまう話で、実話に基づきます。
下水道修理とコソ泥の兼業をしているレオポルド・ソハが主人公で、コソ泥ですから良心からユダヤ人をかくまうのではなく、金という代償で手助けを始めるのですが、次第に人が変わっていくところが見所になります。タダで何かしてしてやるおめでたい男と思われたくないという台詞がこの男の真骨頂です。彼の妻も夫の変化とともに微妙な変化を見せてなかなかのドラマになっています。
演出といい、演技といい迫真のリアリティです。ポスターになっているシーンはとてもいいです。サスペンス作品にもなっているのですが、この部分が少し弱いです。地下水道の地図も出てくるものの、観客には提示されません。迷路のような水道の利点をどう活かしてかくまうのか、もっと面白い演出ができたはずです。しかし、ドラマ部分は重厚でいい脚本です。夫婦で顔を見合わせて笑うシーンもいいです。
ナチスの相変わらずの残虐ぶりはやり過ぎの感じがしてしまうのですが、ドイツも制作に係わっているのでそうでもないのでしょう。ポーランド人やユダヤ人の暗部も描かれています。日本ではあり得ないことですね。米国アカデミー賞にノミネートされた作品でもありますが、日本でなら売国奴、国賊と非難されて上映できないでしょう。日本人はいつになったら本当の戦争映画を作ることができるでしょうか。
僕たちは中国の愛国無罪を理解することはできません。それと同じで、外国から見れば日本が戦争の罪と向き合えないでいる姿は日本の愛国無罪に見えているのではないでしょうか。


☆☆☆○○
 邦題 わたしたちの宣戦布告
原題 La Guerre est déclarée
制作 2011年 上映 100分
監督 ヴァレリー・ドンゼッリ 地域 フランス
実体験をもとに自ら演技し、監督を務めた難病もの作品です。辛かったであろう経験をもう一度再体験するかのような企画に興味が湧きました。ちょっと変わったタイトルのとおり、一風変わった演出場面が挿入されます。しかし、それほどの新味もなく、日本で頻繁に作られてきた難病ものとそれほど変わった筋書ではありません。結末は異なりますが、ポスターほどに明るい印象はありません。
子どもが幼児なので、本人の心情が描かれることはなく、親であるカップルの心情や身内の反応が描かれます。最後の場面で登場する「この試練は私たちが乗り越えられると神様は知っているから」という一言の台詞のために作られた感がある、ラブストーリーです。


☆☆☆○○
ダーク・シャドウ 邦題 ダーク・シャドウ
原題 Dark Shadows
制作 2012年 上映 113分
監督 ティム・バートン 地域 アメリカ
意外やティム・バートン色は案外薄いです。主役バーナバスのジョニー・デップひとりがその色を滲ませていました。70年代が舞台になっているので、音楽の使い方も含めて当時の演出が活かされています。物語の前半はまあまあの出来だったのですが、後半になってきて物語が壊れだします。話の運び方が散漫と言っていいでしょう。
家庭教師となるビクトリア・ウィンターズの訪問から始まるので、彼女の視点から物語られるのか思いきや、彼女は置いてきぼりでバーナバスの視点へと移動して、魔女アンジェリークとの物語へと入り込んできます。その間にもあまり物語と関係がない脇役たちの話も紡がれるので、いったい僕たちはどこに筋を追っていけばいいんだろうという気がしてきます。
何十本も映画を作っていても、まだこんなお粗末な構成になってしまう映画制作の不思議。ファンタジー・コメディは難しいということでもあります。一人で書く小説家ならこんなことは起こらないのですが。


☆☆☆○○
スリープレス・ナイト 邦題 スリープレス・ナイト
原題 Nuit blanche
制作 2011年 上映 102分
監督 フレデリック・ジャルダン 地域 フランス
よくある話の組み合わせです。刑事がマフィアから麻薬を横取りする。マフィアは息子を誘拐する。マフィアの黒幕は捜査官。現場はナイトクラブという閉鎖空間。この4つです。映像が立ち止まることのないアクションもので、アップ多用でカメラがとにかくブレまくり。ナイトクラブだから暗い場面も多いし、うるさい音楽。僕の苦手なヤツでした。
アクションの迫力はなかなかのものでしたが、ストーリーに新味がないのと、僕の苦手映像ということで評価は標準になりました。


☆☆○○○
バイオハザードV:リトリビューション 邦題 バイオハザードV:リトリビューション
原題 Resident Evil: Retribution
制作 2012年 上映 96分
監督 ポール・W・S・アンダーソン 地域 ドイツ・カナダ
面白くないなあと思いながらも1作目から見ています。もう惰性で見ているだけです。今回が一番の薄味でした。話らしい話もなく、ガンショットとスローモーションの時代遅れアクションがあるだけ。しかも、演出がみんなご都合主義とパクリ。TVドラマの1話のごとし。アンダーソン監督は才能ないです。ゲームとジョヴォヴィッチ人気だけで続けられるようです。だからまだ終わりません。というか、水増しして本数を増やしているだけです。
ところで、レイン・オカンポ役のミシェル・ロドリゲスはいつも男勝りのアクションで脇役として輝いている人です。超大作の『アバター 』(2009年)でも味方役として出演しました。デビュー作『ガールファイト』(2000年)では主演を務めています。実は未見。シリアスなドラマを演じさせたらかなり巧みな気がします。ミラ・ジョヴォヴィッチよりもよほど存在感があります。ちなみにシーシェパードの支持者なので、日本では人気が出ないでしょう。
ルイジアナの服部君銃撃事件からまもなく20年になりますが、この作品中で銃規制支持者を揶揄するような台詞があります。東京を重視している作品にわざわざこんなシーンを入れなくても。監督は気の利いた台詞だと思っているんでしょう。


☆☆★○○
白雪姫と鏡の女王 邦題 白雪姫と鏡の女王
原題 Mirror Mirror
制作 2012年 上映 106分
監督 ターセム・シン・ダンドワール 地域 アメリカ
ファンタジー・コメディとしては標準的な出来具合ですが、物語としての膨らみに欠けているし、コメディとしての面白みもないです。冒頭はCGアニメで物語の設定説明が入っていますが、このアニメの方が面白そうでした。またラストシーンは監督がインドへの郷愁に駆られたのかボリウッド映画で定番の歌と踊りのシーンになります。こん破綻ぶりはコメディだから許されることですけれど、全編をこのノリで通した方が面白かったかもしれないという感じもあり。結局、魔法のりんごの実ではなくて、芯だけ食べさせられたような作品となりました。
しかし、リリー・コリンズの濃い眉毛って今時めずらしいですね。オードリー・ヘプバーンを思い出しました。


☆☆★○○
ディクテーター 身元不明でニューヨーク 邦題 ディクテーター 身元不明でニューヨーク
原題 The Dictator
制作 2012年 上映 83分
監督 ラリー・チャールズ 地域 アメリカ
エディ・マーフィのヒットコメディで『星の王子ニューヨークへ行く』(1988)というのがありました。面白いとは思いませんでしたが、このわけのわからないタイトルの原題が "Coming to America"。『ディクテーター』もその設定で、アメリカに行く目的は異なるけれど、異文化体験というよりは独裁と民主主義という異政治体験をネタにしたブラック・コメディです。チャップリンの『独裁者』(1940年)も当然視野に入っているので、替え玉やスピーチのアイデアが取り込まれています。
下ネタはあまり好きじゃないし、ほぼ想定内の展開でしたので退屈でした。ギャグとシリアスの境がはっきりせず、脇役たちの演技も空回りして見えます。ベン・キングズレーがよく出演したなあと思いました。


☆☆☆○○
凍える牙 邦題 凍える牙
原題      英題:Howling
制作 2012年 上映 114分
監督 ユ・ハ 地域 韓国
乃南アサの同名小説の映画化です。韓国は日本の小説をよく映画化していますね。ウルフドッグを使った連続殺人事件に挑む新米女性刑事と中年刑事が主役になっています。こうしたサスペンスは韓国の方が演出がうまいのでいいです。しかし、それほど面白い設定の話だとも思えず、標準作になりました。
事件とは別に女刑事が邪魔扱いされて、それにもめげずに活躍するという味付けはもう散々見てきたので、またか!という気持ちが作品との距離を遠ざけます。
日本では2回TVドラマになっているようです。確かに、ストーリーがテレビのサスペンス・ドラマとしてレベルだと思います。犬の演技が光る作品でした。
ところで、今公開中の『ウェイバック-脱出6500km』は去年の5月にコメントしています。


☆☆☆○○
ヒドゥン・フェイス 邦題 ヒドゥン・フェイス
原題 La cara oculta
制作 2011年 上映 92分
監督 アンドレス・バイス 地域 コロンビア・スペイン
隠し部屋から覗き見る話では中にいるのはいつも男。しかし、これは女で、しかも隠し部屋に入ったつもりが鍵をなくして自ら監禁状態になってしまうという設定です。この隠し部屋はナチスの残党が南米に逃げ込んだという歴史を利用してのもの。要するに生活できる隠れ家なんですね。家の鏡はすべてマジックミラーになっています。今までにない新しい趣向ではありますが、ツッコミどころはたくさんです。
ストーリーはベルンが浮気した恋人アドリアンにお灸を据えるつもりが、彼は新恋人ファビアナを連れ込み、新恋人はやがて隠し部屋に気づきます。ここから二人の女の確執が始まります。
サスペンス色は薄いのですが、サスペンスにしようという意図が見えます。時間を遡れば謎が簡単に解けるサスペンスはあまり上等ではありません。ベルンが行方不明になった時点から話が始まり、ファビアナがベルンの存在に気づいた時点でまた話が振り出しに戻ります。今度は隠し部屋の中からの視点で観客はまたファビアナがベルンの存在に気づくところまで、すでに見てきた話をまた見せられることになります。これがダメですね。
そんな時間差サスペンスなんかやめといて、最初から内外を同時進行で描いた方がよほど面白くなったと思います。そして確執が深まってきそうなところで急展開して話は終わり。面白いドラマが展開しそうだったのに、結局設定重視のサスペンスだけで終わってしまいました。
近頃ツッコミどころの多い作品がずいぶん目につきます。脚本が出来た時点で素人何人かに読ませて、意見を聞けばいいのにと思ってしまいます。商品開発する時にはモニターは当たり前ですが、映画は芸術だと気取っているのでしょうか。


☆☆○○○
リヴィッド 邦題 リヴィッド
原題 Livide
制作 2011年 上映 92分
監督 ジュリアン・モーリー
アレクサンドル・バスティロ
地域 フランス
バンパイアものです。映画の半分は懐中電灯の照明と言ってもいい、僕の苦手な暗闇作品でした。電気代が安上がりです。
バンパイアものは基本的に耽美を目指すものなのでこの作品はバレエを取り込んでいますが、単なるコスプレに終わっていて巧く使いこなせていません。話も荒唐無稽です。
昏睡状態の老婆が一人住む、森の中の荒れた屋敷にお宝を探しに夜中に侵入していくという設定からして無理があります。どこに隠されているからもわからない宝を懐中電灯1本で探しに出かけるバカはいませんて。誰でも昼間に行きます。
登場人物たちの設定から明らかに母性の陰影を描こうとしているのはわかりますが、ビジュアルに走ると陸(ろく)なことがありません。バンパイアが宙に浮いていたように、作品も宙をさまよっています。
『最強のふたり』に続いてこれもフランスのコンビ監督作品なのですが、ふたりで監督していてもこういう独りよがりの物語になることもあるんだなあと新発見。


☆☆☆★○
デンジャラス・ラン 邦題 デンジャラス・ラン
原題 Safe House
制作 2012年 上映 115分
監督 ダニエル・エスピノーサ 地域 アメリカ
邦題は安っぽい英語になりましたが、作品内容から言えばそういう安っぽいところがあります。原題は安全な隠れ家というような意味なんですが、このタイトルが生きてくるほどにはうまく活用されていません。
CIA物の大半が裏切りをモチーフにしているのではないかと思えるほどですが、これもその1本。誰が裏切り者かわからないようにするための演出がかえってネタばらしをしているようで、底が浅いです。敏腕であるはずのフロストがあまり賢そうでもなく、素人まるだしのようなミスで死にます。結末もかなり安易で、この脚本でデンゼル・ワシントンもよく出演したなという感じでしょうか。
アクションとデンゼル・ワシントンの面構えは一級品なので、甘めの評価にしました。「ジェイソン・ボーン」のシリーズが与えた影響は大きく、映像スタイルはそっくりです。しかし、全編手持ち撮影というのはどうしても好きになれません。


☆☆★○○
地底探険 邦題 地底探険
原題 Jules Verne's Journey to the Center of the Earth
制作 1959年 上映 129分
監督 ヘンリー・レヴィン 地域 アメリカ
ジュール・ベルヌの『地底旅行』(1864年)が原作の地底探険の元祖というべき作品です。子ども時代にテレビで見ているはずですが、記憶にはまるでなし。印象に残らなかったということですね。しかし、ジュール・ヴェルヌの映画化作品はSFどうのこうの言うよりはほのぼの感が漂っていて味わいがあります。
しかし、この長尺の話はかなり無駄が多くて、退屈です。ピアノの弾き語りでまるまる一曲を聴かなくてはならないし、ベタなコメディにも付き合う忍耐がいります。女性を探検に連れて行くために、そのための理屈も描かなければならないしで、原作にはない設定がいろいろと付け加えられています。こういった映画的な脚色がつまらなくしているのでしょう。やはり探検にドレス姿はキッチュな魅力というよりは観客をなめています。
セットにはずいぶん力を入れているのがわかりますが、ツッコミどころが多くて、なかなか物語に集中できません。到着した先のアトランティスにはなんの夢もない。登場人物の設定や配置にも問題があります。
SFがマニア向けで長年評価されなかった理由には、面白い絵があれば荒い脚本や演出でも許されるという甘えがあったからだと思えます。ジェームズ・メイソンがもったいない。ダイアン・ベイカーはまるでいらない。


☆☆☆★○
アイアン・スカイ 邦題 アイアン・スカイ
原題 Iron Sky (Zeljezno nebo)
制作 2012年 上映 93分
監督 ティモ・ヴオレンゾラ 地域 フィンランド・オーストラリア・ドイツ
今月末公開の作品です。言語は英語で、一部ドイツ語です。アメリカを強く意識した作品で、どこの国の作品なのかわからないぐらいです。またSF戦争作品かとも思いましたが、コメディでいろんな国を揶揄しています。戦闘シーンはそれほどありません。
CGがアニメタッチなので安っぽい感じがあるものの、デザインに凝っている絵なので見ていて楽しいです。いろんな作品からの引用やパロディがちりばめられているので、それを楽しむのもありでしょう。特にスタンリー・キューブリック 作品の『博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか』(1964年)を強く意識した演出になっています。
SF的な設定や展開は荒唐無稽です。ナチを笑う一方で、ナチのスタイルやデザインにはかなり魅力を感じているのがわかります。戦後何十年経ってもナチが敵役で常時登場するのはその暴虐性だけでなく、ナチに魅力を感じてしまう大衆がいるからこそです。


☆☆☆★○
最強のふたり 邦題 最強のふたり
原題 Intouchables
制作 2011年 上映 113分
監督 エリック・トレダノ
オリヴィエ・ナカシュ
地域 フランス
コンビで監督と脚本です。よほど協調性がある人たちなんでしょう。冒頭の場面でこの作品がわかる編集になっています。富豪の車いす男とスラム街の健康な黒人が交錯しながら、二人が対立するのではなく友情を育んでいく様を描く作品です。
音楽もよし、撮影もよし、笑顔もよし。主役の二人だけでなく、二人の人生を取り巻く周りの人々も丁寧に描いています。フランスで大ヒットしたらしいです。
富豪のフィリップは初めから前科持ちのドリスに好意を抱き、ドリスもフィリップの言うことを聞かないけれど悪意を持つことがありません。二人が対立するような場面がなく、微笑ましい場面が続きます。フィリップが車いすに乗る前はどんな人物だったのか、ドリスに出会う前はどんな生活だったのかは具体的には描かれません。
意地悪な見方をすれば、フィリップが車いすに乗っていたから、ドリスが街に住む白人でなかったから二人の友情が成立することになったのだという見方もできます。フィリップのドリス以外の介護人に対する傲慢な態度は、単にドリスの人間性を浮かび上がらせるためだけではなく、そこに人間的な弱さがにじみます。その弱さを描くことは作品の意図ではないようで、善意が主眼になっているようです。
しかし、そんな人としての当たり前の弱さから生まれる友情があってもいいわけで、本音がひとつのウリの作品であろうに、本音が描き切れていない感じを受けました。ちなみに実話に基づく作品です。邦題は最悪の類いです。


☆☆☆○○
コロンビアーナ 邦題 コロンビアーナ
原題 Colombiana
制作 2012年 上映 112分
監督 オリヴィエ・メガトン 地域 アメリカ・フランス
リュック・ベッソンが制作と脚本で入っています。彼が好きそうな作品です。アクションにキレがあっていいのですが、物語の設定がありきたりで陳腐。新味はマフィアに殺された両親の復讐のために暗殺者になるという訳がわからないところ。
結局、復讐する相手と同じようなことをやっている自覚がまるでなく、キャラの設定である「スマート」とは逆の愚かさです。アクション以外には目をつぶって見る作品です。ゾーイ・サルダナはなかなか芽が出てきません。



プリオシン海岸トップへ