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2012年05月


☆☆☆★○
私が、生きる肌 邦題 私が、生きる肌
原題 La Piel Que Habito
制作 2011年 上映 120分
監督 ペドロ・アルモドバル 地域 スペイン
前半は復讐もの。後半は監禁からの逃亡もの。すっかり視点が入れ替わるところが新味なんですが、それだけでは終わらず、もう少しで哲学的な作品になり得たペドロ・アルモドバル監督作です。
当初は苦手な猟奇ものかとも思えましたが、現実味がないのでそれほど嫌な感じは受けませんでした。なぜリアリティがないのか、また哲学的な側面があるのかについて書いてしまうと、これからも見る人には申し訳ないので控えます。
しかし、残念ながらそれほどの深みを出せなかった欠点もあって、アイデア倒れになってしまった感が強いです。復讐心と愛情で混乱するロベルと、それを受け止めるビセンテの心情が描けていないからです。


☆☆☆☆○
サニー 永遠の仲間たち 邦題 サニー 永遠の仲間たち
原題  Sunny
制作 2011年 上映 124分
監督 カン・ヒョンチョル 地域 韓国
韓国映画はヒット作しか見ていないせいもあるのかもしれないけれど、ドラマづくりがうまいです。コメディも手慣れたもの。日本で最近ヒットした映画って何かと聞かれても思い出せない。検索してみると、2011年大ヒット作として『ステキな金縛り』が出てきましたが、みなさん見ていますか。本当はジブリ作品ぐらいしかヒットしていないのでは?
次から次へとエピソードを織り込んで2時間を飽きさせない。俳優たちもみんな存在感があって、いい。特に高校生のナミ役のシム・ウンギョンがはまり役です。芸能界も厳しい競争社会だから、若い俳優が鍛えられているのでしょうか。
演出が単調ではなく、いろんな手法を取り入れて楽しませてくれます。難を言えば、リーダーの遺産でみんなが救われるみたいなハッピーエンドが痛かったですね。金の力でものを言わせるような場面が他にもありましたが、韓国社会の反映でしょうか。
邦画の『岸辺の二人』(2006年)や『スウィングガールズ』(2004年)なんかも思い出しながら見ました。最近では『ヘルプ 心がつなぐストーリー』(2011年)や『ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン』(2011年)などありますが、やはり友情ものなら今や女性の専売特許です。


☆☆☆★○
ミッドナイト・イン・パリ 邦題 ミッドナイト・イン・パリ
原題 Midnight in Paris
制作 2011年 上映 94分
監督 ウディ・アレン 地域 スペイン・アメリカ
ウディ・アレン作品は好きでも嫌いでもないという感じですが、この作品はいい。婚約者についてあこがれのパリを訪ねた作家が、1920年代に迷い込んで著名な芸術家たちと夜を過ごすというファンタジーで、今までにありそうでなかった作品です。
ウディ・アレンの面目躍如たる脚本で、特にヘミングウェイなんてカッコ良すぎ。監督インタビューで自分は説教したがるところがいけないと反省していましたが、確かに「黄金時代」についてピカソの愛人アドリアナを諭すのはやめておいた方が良かったと思います。ファンタジーのままそっとしておいてほしかったです。
彼の作風である自分を茶化すのも健在で、この作品はそもそもがスノッブの趣があるわけですが、そういうところを突くのも忘れていません。それにしても、やはりパリという街は「すごい」としか言いようのないところですね。
主人公ギル役のオーウェン・ウィルソンはいい役を貰いました。役が出過ぎず、夢見心地のほんわかした演技で良かったです。美術館ガイド役として、フランス大統領夫人のカーラ・ブルーニも出演しています。


☆☆☆★○
 邦題 危険なメソッド
原題 A Dangerous Method
制作 2011年 上映 99分
監督 デヴィッド・クローネンバーグ 地域 ドイツ・カナダ
カール・ユングとジークムント・フロイトという精神分析家と、、最初は統合失調症の患者で後にやはり分析家となるザビーナ・シュピールラインという女性をめぐる話ですが、精神分析の夜明けの時代を描いたものでもあります。しかし、欧米では有名人であっても、心理学に関心のない人にはなんの話かよくわからないので、日本公開は期待薄だと思います。
期待せずに見ましたが、思ったよりは面白かったですね。ザビーナ役のキーラ・ナイトレイは難しい役どころ。観客であるこちらも彼女の演技を見ていて、その難しさは伝わってきましたね。はっきり言えばうまくいっていません。ユングとフロイトの対立の種となった超心理学のような分野については、ユングの研究ぶりにまったく触れられていないのも不満です。表面的な議論だけで片付けてしまっています。
研究の黎明期であると同時に、映画で描かれる時代は第1次世界大戦の前後です。ナチが台頭するのはずっと後ですが、フロイトとザビーナはユダヤ人でしたから、フロイトはイギリスに亡命することになるし、ザビーナは娘たちとともに故郷ロシアでナチに射殺されています。この事実は最後に字幕で出ます。こうした大きな時代の流れが描かれないので、心理学が私的な範囲に収まるメッソッド(方法)であるようにも思えてしまい、やはりユングの思想が浅く見えてしまいます。クローネンバーグらしくない素直な演出でした。


☆☆○○○
バッド・ティーチャー 邦題 バッド・ティーチャー
原題 Bad Teacer
制作 2011年 上映 92分
監督 ジェイク・カスダン 地域 アメリカ
タイトル通りの話です。教師としてのサイテーぶりが笑えないです。朝日朝刊の「ののちゃん」というマンガに出てくるいいかげん教師の藤原先生みたいな笑いではありません。先生失格じゃなくて、人としてひどすぎます。キャメロン・ディアスはこの役によくはまっていますけれどね。


☆☆☆★○
ファミリー・ツリー 邦題 ファミリー・ツリー
原題 The Descendants
制作 2011年 上映 115分
監督 アレクサンダー・ペイン 地域 アメリカ
これはいかにもジョージ・クルーニー向けの作品です。コメディあり、メロドラマあり、社会性ありの作品。妻が昏睡から死へと向かう時間を、カメハメハ大王からの祖先からの遺産である原野の売却問題と、妻の不貞という予期せぬ事態と向かい合いながら、家族とドタバタしながら過ごす姿を描いたものです。ハワイの気分なのか、どことなくゆったりした展開です。原作はカウイ・ハート・ヘミングスというハワイ出身の作家なので、部分的に事実が潜り込んでいるのかも。
家族は居心地がいいばかりでもないし、悪いばかりでもないし、それでも血が繋がっているだけでなんか繋がっている変なもんです。正しくは血統ではなく、子ども時代の記憶の共有だと思いますけれども、生きていく寂しさを紛らわせてくれる隣人なんでしょうか。ラストシーンで3人が言葉もなくカウチのスペースを譲り合い、同じ器から食べるシーンが良かったですね。


☆☆★○○
ROCK YOU! [ロック・ユー!] 邦題 ROCK YOU! [ロック・ユー!]
原題 A Knight's Tale
制作 2001年 上映 132分
監督 ブライアン・ヘルゲランド 地域 アメリカ
中世ヨーロッパ騎士道のロック風コメディかと思いましたが、見当はずれでした。音楽にロックを使っているだけのことで、物語はいたって古風。ブライアン・ヘルゲランド監督はそもそもは脚本家。面白いものも、つまらないものも書いている人で、今回はつまらない方でした。話はコメディ風味はありますが、かなりマジなんです。そして展開がご都合主義なので白けます。邦題がまったくの見当はずれなわけで、原題のように「a fairy tale お伽噺」の類いです。
ブルーレイで見ましたが、TV放送では40分カットされていました。この作品は長すぎですが、TV放送はカットしすぎですね......(^_^) ジュースティング(馬上槍競技)というのがどういうものなのかよくわかったのが収穫です。


☆☆○○○
センター・オブ・ジ・アース2 神秘の島 邦題 センター・オブ・ジ・アース2 神秘の島
原題 Journey 2: The Mysterious Island
制作 2011年 上映 94分
監督 ブラッド・ペイトン 地域 アメリカ
『センター・オブ・ジ・アース』(2008年)の続編です。前作もあまり面白くなかったですけれど、ますます面白くなくなった感じです。ジュール・ヴェルヌが下敷きになっていますが、ストーリーが子どもだましレベルなのでどうしようもありません。
ツッコミどころだらけといよりは、つっこめないところがないです。こういう作品は俳優までバカに見えてしまいます。舞台セットやCGは頑張っているのに、その努力がかわいそうです。エンディングクレジットのCGが一番楽しめました。


☆☆☆○○
バトルシップ 邦題 バトルシップ
原題 Battleship
制作 2012年 上映 130分
監督 ピーター・バーグ 地域 アメリカ
こういう作品はCGだけしか見るところはないだろうなと思って見ます。『インデペンデンス・デイ』(1996年)が空バージョンなら、こちらは海バージョンになります。監督の父親が海軍マニアだけに、予想以上に海軍讃歌になっています。海軍と言えば日本との因縁が深いわけで、日米同盟で日本への観客サービスや、戦艦ミズーリまで持ち出して海軍マニアを楽しませてくれます。
ストーリーはエイリアンの圧倒的な戦力を限定してアメリカの勝ちにしているので、かなり卑怯な勝ち方です。百ある中で一番のツッコミどころは勝てるわけがないのに勝ってしまうところでしょうか。
主人公はやはり能力はあるのに素行が悪い。しかし、危機に直面してヒーロー的活躍をするという定番です。アメリカ人はこういうバカが大好きだね。演技もみんな型通り。つまらない話だから演技のしようもないです。
アメリカも全面戦争する相手がいなくなったので定期的にエイリアンと全面戦争をするわけですが、たまにはきちんとSF的な作品を作ってほしいものです。SF的な楽しみのない荒唐無稽な戦争アクションばかりで飽き飽き。


☆☆○○○
極秘指令 ドッグ×ドッグ 邦題 極秘指令 ドッグ×ドッグ
原題 Operation: Endgame
制作 2010年 上映 82分
監督 フアド・ミカティ 地域 アメリカ
初監督作品のようです。いらなくなった工作員たちを極秘施設ごと葬り去るという単純なストーリーなので、これは演出で見るしかない作品です。ところが演出がダメなんですよ。エレン・バーキンとマギー・Qが出演していたから、そこそこはいくかと思ったけれど甘かったです。
まずは工作員たちが素人っぽい。アクションも謎も見るべきものがなく、血しぶきだけです。裏切り者が裏切る理由も殺しのプロとしてばかばかしい。
マギー・Qはさっさと殺されて見せ場なし。ドラマの主演まで登り詰めましたけれど、結局映画ではチョイ役止まりです。アジア系はやはりハリウッドで活躍するのはなかなか難しいです。大作以外は出演作がみんなつまらないから仕方ないですかね。


☆☆☆☆○
ミンボーの女 邦題 ミンボーの女
英題 Minbo
制作 1992年 上映 123分
監督 伊丹十三 地域 日本
『マルサの女』(1987年)よりもコメディとしてはよく出来ていると思います。『マルサの女』の後だからその鮮烈さは少ないけれど、任侠でヤクザを美化することしかできなかった映画界でヤクザの正体をコメディで描くという画期的な作品で、本来ならその鮮烈さは『マルサの女』を凌いでいます。☆4つ半をあげたいぐらいです。しかし、セリフがまだ磨ききれていない。無駄だったり、野暮なセリフが残念。
任侠もの映画を作るときはその関係筋に挨拶に行かなければならなかった芸能界で、ヤクザは弱いもには強く、強いものには弱いと啖呵(たんか)を切り、コケにして笑うのは余程の勇気がいります。マルチタレントで映画界にどっぷりつかっていなかった彼だからできたことです。
実際、出演依頼を断ったり、あまりわからないまま出演して、完成してから飛び上がった俳優が何人もいたんじゃないでしょうか。公開当時、えらいもんを作ってしまったなあと正直思いました。実際、伊丹監督は襲撃されて重傷を負うことになりました。大滝秀治のセリフなんかもかなり危ないです。よくぞご無事でと思います。ヤクザも映画作品は監督のものだという認識があったということでしょうか。
コメディですからヤクザも戯画化されていますし、警察もあんなに親身に素早く動いてくれるはずもありませんが、ヤクザが見過ごすことができず反撃に出たというところに、この作品の衝撃度が見られるのではないでしょうか。映画が社会に与える影響力は政治よりも強いことを今の映画関係者はもっと自覚してほしいと思いますね。
日本では差別問題をコメディで撮ることが未だにできていません。伊丹監督がこれに目をつけていたなら、きっと面白い作品を僕たちに見せてくれたように思えて、彼がいない映画界をとても寂しく思います。


☆☆★○○
ロボット 邦題 ロボット
原題 Endhiran
制作 2010年 上映 137分(日本) 155分 174分
監督 シャンカール 地域 インド
長いです。インド大衆映画特有のミュージック・クリップが挿入されるので、どうしても長くなります。この形式は日本で言えば昔のアイドル映画でしょうか。どうしてインド人はこういうスタイルが好きになったのか摩訶不思議。
コメディSFというところなんでしょうが、SF色はありません。意外とダークな話なのでコメディ色もあまりないですね。お話はかなり幼稚なので、もっとコメディ色を出してもらわないとついていけません。CGは頑張っていますけれど、やはりかなり荒技です。
ずいぶん褒めている評論家もいますが理解できません。しかし、インドでは大ヒットしたらしいです。作品の冒頭はイケていたので期待したのですが、だんだん眠くなりました。10分ぐらい見ていません.......(^^ゞ 日本バージョンは最短の137分。正解です。


☆☆☆★○
キラー・エリート 邦題 キラー・エリート
原題 Killer Elite
制作 2011年 上映 116分
監督 ゲイリー・マッケンドリー 地域 アメリカ
最近、実話に基づくという作品が多いです。事実が何パーセントなのかは当人にしかわからないので、こういう宣伝の仕方はあまり誠実なやりかたじゃありません。
暗殺の工作員たちの物語ですが、主人公ダニーの設定は恋人の関係も含めて古くさいです。しかし、物語自体は退屈する暇もなく展開していきます。ツッコミどころもありますが、ジェイソン・ステイサム、クライヴ・オーウェン、ロバート・デ・ニーロの3人が全面に出ているので安定感があります。
3人ともに悪役もできる人たちなので、これはなかなかいいキャストだと思います。しかし、ジェイソン・ステイサムは殺しが嫌になって引退していて、こういうキャラは似合わないです。むしろ『セルラー』(2004年)のような悪役の方が似合うと思いますが、最近はちっとも悪役がないですね。ロバート・デ・ニーロもアクションしていますが、好々爺の趣がでてきました。『タクシー・ドライバー』(1976年)や『ケープ・フィアー』(1991年)やマフィアものでエキセントリックな役をやった人も、有名俳優の最後の居場所である好々爺の席にそろそろ落ち着くのでしょうか。ちょっと寂しい。


☆☆☆☆○
王朝の陰謀 判事ディーと人体発火怪奇事件 邦題 王朝の陰謀 判事ディーと人体発火怪奇事件
原題 Detective Dee: Mystery of the Phantom Flame
制作 2010年 上映 128分
監督 ツイ・ハーク 地域 中国・香港
ロバート・ファン・ヒューリックによる探偵小説のディー判事を原案にしたミステリー・アクションです。タイトルが長すぎ。副題だけでも長いです。
紀元689年の唐王朝の時代に、則天武后の即位をめぐる陰謀を題材にとっています。単なる陰謀にはせずに、スケールの大きな映像を見せながら、手間のかかったシーンの連続です。映画制作って、ほんとに大変だなと思えます。
CGがたっぷり使われているので、やはりリアリティの上で不満の残るところもあるのですが、ここまでスケール感が出せればよく出来ていると言うべきでしょう。ストーリー、アクション、情感と、バランス良く作られています。箱庭日本ではこんな映画は作れない、うらやましいという気持ちを込めて☆4つです。


☆☆☆★○
孤島の王 邦題 孤島の王
原題 Kongen av Bastøy
制作 2010年 上映 117分
監督 マリウス・ホルスト 地域 ノルウェー・フランス・スウェーデン・ポーランド
言語はノルウェー語です。キャッチコピーは「人は誰でも、王になれる」なんですけど、違うんじゃないかな。サスペンスに分類されてもいて、これもちがうんじゃないかな。1900年から70年までノルウェーのバストイ島にあった少年矯正施設での暴動をもとにした実話もの。
刑務所ではないので予想したほどひどい扱いではありませんでした。しかし、隔離施設に定番の筋書きで進みます。キリスト教精神に基づく施設にもかかわらず、非人間的であることに矯正されていくことに我慢ならない一部の少年たちの反抗が暴動へと発展していきます。大人ではなく少年たちというところに新味がありはしますが、既視感は否定しがたいところです。まして、少年たちですから、大人の暴力に太刀打ちできません。
実録ものに向かって評価するのはいつも躊躇するところですが、当然これもフィクションに違いないわけなので、☆3つというところですが、少年エーリングの「白鯨」のような創作物語と海氷の割れ目に沈んでいくラストシーンが絡み合って、心に残ったので★が増えました。しかし、ノルウェー王にあんなことを言って大丈夫かと心配になりました。


☆☆☆○○
今宵ひと夜を 邦題 今宵ひと夜を
原題 今宵ひと夜を
制作 1954年 上映 91分
監督 千葉泰樹 地域 日本
八千草薫のモノクロ第2弾。広津和郎の「入江の町」が原作。瀬戸内海の美しい入江の町にある料理屋兼旅館が舞台で、ここで働く女たちの恋愛事情を描いたような作品です。夜には夜這いがあるようなところでもあり、お春(八千草)も狙われていて、若旦那と駆け落ちする算段だったのに裏切られて、よよと泣き崩れる結末が待っています。さすがに今となっては話が古くてついていけません。しかし、登場する女優さんたちがみんないい演技をするので、それなりに面白く見れました。東郷晴子さん、三浦光子さんとか、かつて見たことのある顔だというぐらいの知識しかありませんが、良かったです。
しかし、八千草さんの可愛らしさは別格です。二十二、三歳の頃の作品だろうと思いますが、ほとんど女学生みたいです。劇中では「おぼこ」とか言われていますが、その通りです。『若い瞳』(同年)よりもこちらの方が魅力的です。第3弾はカラー作品を見ましょうか。


☆☆○○○
若い瞳 邦題 若い瞳
原題 若い瞳
制作 1954年 上映 86分
監督 鈴木英夫 地域 日本
モノクロ作品。歴史に残るような作品ではないので、ポスターも見つかりませんでした。つまらない話です。八千草薫でとにかく1本ということで撮られたんじゃないでしょうか。八千草さんは同じ年に『宮本武蔵』にも出演しています。
八千草さんを初めてみたのはTVドラマ『岸辺のアルバム』(山田太一脚本)です。不倫する妻の役でしたが、きれいなおばさんだなあと思ってみていました。夫役の杉浦直樹さんは鬼籍に入られ、子ども役の中田喜子さんも国広富之さんもとうに芸能界を去っていますが、八千草さんはまだ現役。若い時の表情をずっと失わずに持ち続けていますね。大したものです。ジャニス・イアンのテーマソング『ウィル・ユー・ダンス』とともに、心に残る作品になっています。
『若い瞳』は八千草さんの可愛らしい美しさだけの作品ですね。その表情をアップで撮るシーンがたくさんあります。かと言って、彼女の魅力が引き出されている作品でもありません。作品全体が今見るとどうにも古くさいし、セリフも時代臭があって見るに堪えません。


☆☆☆★○
フェイシズ 邦題 フェイシズ
原題 Faces in the Crowd
制作 2011年 上映 102分
監督 ジュリアン・マニア 地域 アメリカ・フランス・カナダ
過去に同名作品がありますが、こちらは最新作。いくら凡庸な邦題でも考えるときには過去作ぐらいチェックしてほしいものですね。相貌失認という記憶障碍をモチーフにしたもので、サスペンスと結びつくのは当然の成り行きです。
殺人を目撃して襲われたときに頭を打って人の顔が認識できなくなった女性が犯人に狙われる話で、これをミラ・ジョヴォヴィッチが演じています。正直言って、こういう弱々しい役は似合わないです。相貌失認を扱うのなら当然「灯台もと暗し」的な展開になるのは推定できるし、逆にそうでなかったら面白くないところなので、もう少し犯人の意外性の点が頑張ってほしかったです。それと耳が聞こえないドクターが登場するのですが、あまりそれらしくないだけでなく、声で人を認識するという視点を導入していくのかなと思いきや、まったくそれはありませんでした。映画では声の違いは全く無視してます。
犯人との対決一本槍のような話ではなく、主人公の周りの人物たちにも視点を当てているのでサスペンス度が下がっています。刑事との恋愛も唐突。そこまで発展するエピソードがほしかったです。悪口ばかりなのに、なぜ☆が3つ半なのかは不思議ですね。これは相貌失認の描き方をうまく扱っていて、時々はっとするシーンがあったからです。ラストシーンもなかなかいい感じで、これなら恋愛にもっと重点をかけて、叙情性を出していたらいい作品になったと思ったからです。そのためにはキャストを変えた方がいいですけどね。



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