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2012年04月

今月から記事の順番を下から上に変更します。つまり、記事の追加は下ではなく、上に追加していくことにします。ただし、シリーズや関連したものはできるだけまとめて並べます。


☆☆★○○
タイタンの逆襲 邦題 タイタンの逆襲
原題 Wrath of the Titans
制作 2012年 上映 99分
監督 ジョナサン・リーベスマン 地域 アメリカ
前作は☆二つの評価だったんですが、今回は半分増やしました。しかし、やはり面白くない。話が単純でアクションしか見るべきものがないためでしょう。
そのアクションも単純だし、CGはもちろん頑張っているけれど、『タイタンの戦い』(1981年)の時のようなキッチュな面白みがないです。1981年作も同じように話は単純でした。しかし、神話とレイ・ハリーハウゼンのような特撮は似合ったのです。
昨今のSFXはリアルですが、デザインから見ても、まがいものとしても面白さがありません。お伽噺のような作品で使えば、よほどのストーリーがないと話の薄っぺらさが目立ちます。1作目も失敗して、2作目も同じ過ちを繰り返しています。


☆☆★○○
Black & White/ブラック&ホワイト 邦題 Black & White /ブラック&ホワイト
原題 This Means War
制作 2012年 上映 98分
監督 マックG 地域 アメリカ
スパイものがメインのコメディかと思いましたが、コメディがメインでした。『チャーリーズ・エンジェル』の監督なので、そのタッチです。TVドラマの『NIKITA/ニキータ』の制作でもある人ですが、yu は早々にリタイアしたのでやはり合わないようです。
そもそもリース・ウィザースプーンの役が男二人で取り合うほどのいい女キャラとも思えず。恋愛模様とアクションの配色がうまくいっていないし、悪役のティル・シュヴァイガーは何をしに出てきたの?といような可哀相な扱いです。


☆☆★○○
ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン 邦題 ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン
原題 Bridesmaids
制作 2011年 上映 125分
監督 ポール・フェイグ 地域 アメリカ
R15+。話題作りのための下品なセリフのせいでしょうか。女性が見たら面白いのかもしれません。話もセリフもだらだら続くだけでつまりませんでした。
ジル・クレイバーグが出ていてすぐに気がつきましたが、見るのは『結婚しない女』(1978年)以来です。当時かなりヒットした作品です。2010年、出演後まもなく亡くなったようです。死因は知りませんが、20年ばかり以前から白血病だったそうです。


☆☆☆☆○
ウォッチメン 邦題 ウォッチメン
原題 Watchmen
制作 2009年 上映 162分
監督 ザック・スナイダー 地域 アメリカ
2回目です。いつだったか「プリオシン通信」でも触れた作品で理解が進んだ分だけ今回は面白かったです。検索したら2009年と2011年の2回も出てきました。オープニングクレジットの部分しか評価していなかったのですけど。そのせいか邦題を間違えて単数で記していました。今訂正しました.......(^^ゞ この作品は時間のバージョンが3種類あります。今回は一番短い162分バージョンです。それでも十分長いですけどね。
作品の評価ですが、日本では芳しくありません。それはやはりヒーローもので、しかもダークな面を描いているということと、背景のわかりにくさだと思います。静止画の挿入カットでそれが何を象徴しているのかわからないものが依然としてあります。アメリカの歴史だけでなく、ヒーローものの歴史も必要なようです。登場するヒーローたちのうち、DR.マンハッタン以外はどんな活躍をしていたのかあまり描かれていないので、感情移入しにくいというのもあるかもしれません。しかも、DR.マンハッタンは一番感情移入しにくいキャラです。
ザック・スナイダーの『300』はあまり好きな映像でもないし、あれ以降のアップとスローモーション・カットの流行も大嫌いですけれど、この作品のトーンは好きだし、やっぱりボブ・ディランの「時代は変わる」とともに流れるオープニングクレジットが秀逸です。わからない人にはまるで意味のない部分でもあります。この作品に使われている曲はみんな好きだし、使われ方も不満なし。『博士の異常な愛情』などの有名な過去作からのフレーム借用もオープニングクレジットと同じような効果を生んでいます。
時代がピンとこないという声を聞きますが、この作品はやはり時代を描いたものだからしかたありませんね。あの時代の空気を知っている人にはそれほどリアリティのないものではありません。しかしDR.マンハッタンの存在はやり一人飛び抜けているわけで、これが逆に面白みを減じています。絵的にも、筋骨隆々でフルチンで歩き回る幽霊なんか見たくないです。


☆☆☆★○
武侠&nbspWu xia 邦題 捜査官X
原題 武侠 Wu xia     英題:Swordsmen
制作 2011年 上映 115分
監督 ピーター・チャン 地域 香港・中国
映像がなかなかいいし、カットの演出も面白かったです。特に前半の展開が斬新で面白い。ドニー・イェンが武術の腕を隠して強盗犯を叩きのめしたり、その謎を解き明かしていく金城武のシーンが楽しいです。
今までに屋根を走るシーンは山ほど見てきましたが、この作品がいちばんリアルで迫力がありました。拍手ものです。
しかし、後半に入ると今までの新しさはなくなり、先日見た『決闘の大地で』と同じで、暗殺組織との闘いが凡庸になってしまいます。アクションはもちろん一級品でしょうが、片腕で闘うドニー・イェンでは面白さも半減です。邦題は内容にまるでそぐわないです。


☆☆☆★○
ル・アーヴルの靴みがき 邦題 ル・アーヴルの靴みがき
原題 Le Havre
制作 2011年 上映 93分
監督 アキ・カウリスマキ 地域 フィンランド・フランス・ドイツ
アキ・カウリスマキ作品を見るのは初めて。自分には合わないと思っているから。彼の作品は登場人物がほとんど無表情とは聞いていたけれど、この作品もその通りでした。
原題はル・アーブルだけですが、この邦題はいいと思う。なぜかと言えばお伽噺のような雰囲気が出るから。靴磨きは敬虔な職業らしいが、なぜこんなに善意の人たちが登場するのかわからないし、その理由もないのでしょうから、お伽噺と思うしかないです。病床の妻がいるにもかかわらず、不法移民のアフリカ人少年を助けるために捨て身で活躍する靴磨きの老人。そして協力する周りの人々。
みんな無表情なので、まるで人形劇を見ているかのような気分になるので、ますますお伽噺に思えてきます。音楽の使い方もそういう雰囲気ですね。今時ありえないハッピーエンドで、こういう作品はいろんな経験を味わってきた年配向けの映画だと思います。


☆☆★○○
決闘の大地で 邦題 決闘の大地で
原題 The Warrior's Way
制作 2010年 上映 100分
監督 イ・スンム 地域 アメリカ・韓国・ニュージーランド
チャン・ドンゴン主演です。暗殺集団の命令に背き、赤子を殺さなかったことで命を狙われることになった戦士が海を渡ってアメリカ西部の町に流れ着き、そこでならず者たちと闘うとともに暗殺集団も乗り込んできて三つ巴の闘いになるというアクション西部劇です。
定番の話を二つくっつけて、そこに「子連れ狼」の味付けを加えただけですね。新味は西部の町にサーカスがいること。演出は劇画調で、アクションは流行のスローモーション・カットを多用しています。『300(スリーハンドレッド)』 (2007年)以降、アクション作品はこればっかりです。戦士は拳銃ではなく剣を使うのですが、殺陣に見るべきものはありません。ジェフリー・ラッシュがやはりそれらしい役をしています。原題、邦題のとおり、つまらないです。


☆☆☆○○
百万長者と結婚する方法 邦題 百万長者と結婚する方法
原題 How to Marry a Millionaire
制作 1953年 上映 96分
監督 ジーン・ネグレスコ 地域 アメリカ
モンロー・ファンと言いながら、この作品を見るのは初めて。やはりファンの資格はない.......(^^ゞ あまり面白そうな気がしなかったからです。さて、見てびっくり。超大作並の前奏があって約6分。そこからやっとオープニングクレジット。96分の作品ですよ。当時はシネマスコープの大作だったからでしょうか。しかし、俳優以外はまったく金がかかっていないです。マリリン・モンロー、ローレン・バコール、ベティ・グレイブルの三人娘の物語で、ローレン・バコールが中心的な役割です。
大作気取りの割にはいろいろと手抜きがあります。まずはフルオーケストラの前奏はやはり意味不明。野外撮影は背景が写真で俳優も代役です。客がモデルたちに商品の服を着させて品定めするシーンでは3人以外のモデルも全部見せます。その間カット割りもなく、ただ服を着たモデルたちを見せるだけ。またもや意味不明。上映時間の引き延ばし?
時々気の利いたセリフがあるぐらいで、金に貪欲な三人娘が、その意に反してだんだん爽やかな恋に落ちていくという標準的なコメディです。モンローはメガネをかけた時の容姿に劣等感を抱く、ドジな娘役。可愛らしさだけを強調した役でした。当時はスターを見るだけで満足できた時代だからこれでいいんでしょう。


☆☆☆★○
一枚のハガキ 邦題 一枚のハガキ
英題 Postcard
制作 2010年 上映 114分
監督 新藤兼人 地域 日本
そもそも脚本の人なので、やはり脚本の構成はいいです。自身の経験が下敷きになっているだけあって、当時の社会事情にもリアリティがあります。うちの親戚にも長男が戦死してその嫁が次男と再婚している家があります。しかし、銃後の悲惨さを描きながらどこか喜劇的な演出はいいのですが、なにやらセリフに真実味がなく、演技も力みすぎのように感じます。
物語の展開とともに描かれる場面はほぼ民家の庭と家屋内に限られていくので、しだいに舞台劇を見ている趣になっていきます。それゆえセリフも舞台のそれになっていったのでしょうか。一般的に映画の色調は自然のものとはまるで異なります。だから今のテレビは「シネマモード」が装備されているぐらいです。映像はシネマモードでもセリフがそうでないと違和感が残ります。どうもキャスティングも良かったとは思えないです。
キャスティングと言えば『プライド 運命の瞬間』(1998年)で東絛英機役をやった津川雅彦が出演しています。新藤兼人は何か意図があったんでしょうか。
日本の反戦映画と呼ばれるものの大半は、まるで戦争が空から降ってきたみたいに主体がぼかされて描かれます。この悲喜劇ともいうべき作品も同じです。くじ引きで運が悪かった、などというようなことで殺されてたまるかという怒りの一方で、くじ運が悪かったという諦観にも晒されています。数多の反戦映画のひとつのバリエーションの域から抜け出ることはできなかったようです。


☆☆☆★○
キリング・フィールズ 失踪地帯 邦題 キリング・フィールズ 失踪地帯
原題 Texas Killing Fields
制作 2011年 上映 105分
監督 アミ・カナーン・マン 地域 アメリカ
副題がついているけれど、ややこしいタイトルです。『キリング・フィールド The Killing Fields』(1984年)と邦題では1文字違い。カンボジア内戦をテーマにした作品でしたが、こちらはテキサスの殺人多発地帯とも呼べるようなところの話です。副題は邪魔だから嫌いです。自分が付ける時は好きですけど.......(^^ゞ
リアルなクライム・サスペンスは苦手なんですが、クロエ・グレース・モレッツとジェシカ・チャステインという好きな俳優が二人も出ていては素通りすることができませんでした。
やはり映像はリアルですが、それほど猟奇性を強調しない演出だったので目を背けなくてはならないシーンも少なく良かったです。そんなところは誉めるところではないでしょうけど.......(^^ゞ 実際映画としての面白さには欠けるだろうし、何かを訴えるような作品でもありませんでした。
それでも二人の女優は言うまでもなく、サム・ワーシントンもジェフリー・ディーン・モーガンも良かったですよ。ただ、どこに焦点が当たっているのかがよくわからない作品でしたね。
クロエ・グレース・モレッツはやはり『ヒューゴの不思議な発明』(2011年)のような作品ではなく、孤独感の漂うような役がいいですね。刑事ブライアンとの情がもっと通い合うようなシーンがほしかったです。


☆☆☆★○
オレンジと太陽 邦題 オレンジと太陽
原題 Oranges and Sunshine
制作 2010年 上映 106分
監督 ジム・ローチ 地域 イギリス
1970代まであったイギリスの児童移民の事実をソーシャルワーカーのマーガレットがその被害者や親に共感しつつ、明らかにしていく過程を描いた作品です。養護施設にいた子どもたちやその親を騙して13万人もの子どもをオーストラリアなどの植民地へ送り出していたわけです。そこにはオレンジもサンシャインもなく、あったのは奴隷のような扱いの労働と虐待でした。教会までかかわっていたという事実にびっくり。
国家が行う非人間的な行為には時々戦慄させられますが、これも政治家や役人という人間が考え出したことです。養護施設にいる子どもを国民とは見なしていなかったということなんでしょうね。
過去を暴かれるのを怖れる人たちや信じない人たちからの攻撃は世の常です。マーガレットは被害者の苦しみと加害者や批判者からの攻撃に心身ともボロボロになっても、自分がやらなくてはだれがやるのだという信念に突き動かされながら怖れを乗り越えていきます。
マーガレットの家族、被害者側、加害者側とそれらを取り巻く人々にも目配りしながら、マーガレットの努力だけを描いていないところがいいです。しかし、社会にはこういう触媒になるような人が必要なんですね。主演は『戦火の馬』(2011年)でナラコット家の妻役だったエミリー・ワトソン。制作順でいけば、この作品の後が『戦火の馬』です。いい役者です。


☆☆○○○
犬神家の一族 邦題 犬神家の一族(2006年)
英題 The Inugamis
制作 2006年 上映 135分
監督 市川崑 地域 日本
横溝正史シリーズの1作で、市川崑監督の76年作をリメイクしたものです。自分の作品をリメイクするというのはなかなか理解しがたいことです。前作は失敗であったという表明になってしまいます。
横溝さんの原作はほとんどリアリティがないように思えてしまいますが、物語の設定そのものが面白いので映画向きですね。しかし、リアリティがない分、演出する方は苦労することになるはずです。ところが、その苦労が見えないわけです。
ポスターを見てわかるように豪華キャストが売りの作品になっています。しかし、冒頭の棒読みセリフの深田恭子はしかたないとしても、『どら平太』(2000年)でも書きましたが、やはり他の俳優までセリフがまるでダメです。セリフばかりではなく、出てくる名優たちまでおでんがいっぱい作れるぐらい次から次へと大根ぶりを見せてくれるので唖然とします。完成後、俳優たちはこの作品を恥ずかしくて見ることができなかったのではないでしょうか。もちろん、周りに影響されずにきちんと演じきった俳優もいますけれど。
タバコの吸いすぎのせいなのか、とにかく監督の演出で俳優がボロボロになってしまった、呪われた作品です。まあ、悪いのは監督ばかりではなく、自力で演技できなかった俳優側にもあります。


☆☆☆○○

ピッチブラック 邦題 ピッチブラック
原題 Pitch Black
制作 2000年 上映 108分
監督 デヴィッド・トゥーヒー 地域 アメリカ
デヴィッド・トゥーヒー監督の『アライバル-侵略者-』(1996年)の4年後のSF作品。見るのは2回目です。『マンイーター』のラダ・ミッチェルつながりで見ました。『マンイーター』のような生物パニックものの後で見ると、こういう凶暴なエイリアンに襲われるというSF作品が、生物パニックものとなんら変わりがないことがよくわかります。『マンイーター』への出演オファーの時にラダ・ミッチェルも「またか」と思ったんじゃないかな。
タイトルどおりの真っ暗闇がモチーフになった作品です。墜落した惑星で長い日食の暗闇の中で光に弱い飛翔怪物に乗員が襲われるというホラーですが、定石通り一人ずつ殺されていきます。物語の設定はなかなか面白いのですが演出に難があったように思います。この怪物の生態や攻撃ぶりはツッコミどころがたくさんあって、ほとんどリアリティがありません。それにもかかわらず☆が3つなのは終わりの方で少し新味があるからです。
ヴィン・ディーゼルのリディックが助けにはいかずに自分一人で逃げようとするのはいいです。そう簡単に改心してもらっては困りますからね。結局、助けに戻ってしまうのですが、ここはもうひと工夫ほしかったですね。ラダ・ミッチェルのキャロリン・フライの結末もいいです。しかし、この時のリディックの反応がだめでした。「おれのために」なんてしゃべったらダメじゃん。
キース・デヴィッドのイマームは信心深い男なのですが、神に裏切られるような目にあってばかりいてリディックにバカにされているのですが、最後には神を見るのです。彼はそう思ったかどうかは知りませんが、少なくとも観客はあるところに神を見るのです。これこそ★がひとつ増えた理由です。 これは監督を代えて2時間ぐらいでじっくり描いたらいい作品になるかも。


☆☆○○○
マンイーター 邦題 マンイーター
原題 Rogue
制作 2007年 上映 92分
監督 グレッグ・マクリーン 地域 アメリカ・オーストラリア
普通は見ない生物パニックもの。しかも、巨大ワニというつまらないヤツが相手です。この監督は『レッド・ヒル』(2010年)の監督で、これは面白かったです。そして、この作品はB級のくせにキャスティングがちょっと豪華。ラダ・ミッチェル、サム・ワーシントン、ミア・ワシコウスカとか。主演のマイケル・ヴァルタンはTVで活躍している人らしいです。
これは何かあるかなと思って見たわけですが、何もありませんでした。先にあげた3人はたいして活躍していません。サム・ワーシントンはちょっと出てきてさっさと食われてしまいます。しかも、食われるところも撮ってもらえない扱いです。
後で調べたら2007年作品で、サム・ワーシントンはまだ『ターミネーター4』 (2009年)にも『アバター』 (2009年)にも出演していない頃の古い作品でした。なぜ今頃公開なのでしょう。こんな端役をやっていたんですね。ミア・ワシコウスカも売れる前。どうりであどけない顔立ちでした。しかし、サム・ワーシントンはこんなつまらない役をやっていて、よく出世できましたよね。巨大ワニの生態より不思議です。
ワニが餌を貯蔵するなんてことはあり得ないと思うし、あまり怖くないし、話の筋も映像も面白いところがないし、ええとこなしでした。オーストラリアの自然も楽しめるかと思いましたが、最初だけで、後は画面はほとんど暗いし、探検しないので当てが外れました。B級パニック作品以下でした。
『レッド・ヒル』は劇場未公開。5年昔のDVDにもなっていないこれは劇場公開。やはりキャストの違いでしょうか。配給サイドは不利な情報は隠すのでたまにやられます。公式サイトはまるで新作ほやほや扱いです。ワニには食われなかったけれど、宣伝に食われてしまいました。ちきしょう。くさい邦題はそういう意味だったのか。


☆☆★○○
ジョン・カーター 邦題 ジョン・カーター
原題 John Carter
制作 2012年 上映 133分
監督 アンドリュー・スタントン 地域 アメリカ
傑作だの大作だの大ヒットだのと、映画宣伝は嘘八百だということは周知のことではあるけれど、こういうのは誇大広告として違反にならないのでしょうか。傑作というのは客観的な評価ではないのでまあ許されるとしても、アメリカで大コケしているというニュースからは「大ヒット」は客観的な嘘ですよね。
久しぶりのスペース・オペラだし、ディズニー生誕110年の記念ということで確かに大作なのだろうと期待していたのですが、なんでしょうか、このつまらなさは。監督がアニメ界の人だから、もっと面白い映像が見られるのかと思っていたのに、火星の風景は地球の砂漠と同じだし、登場するCGキャラは見慣れたデザインで魅力がないし、風俗は古代ギリシャやローマのような感じだし、過去の映画からいろいろと摘んで取り出してきたものを並べたようなもんです。
『スターウォーズ』や『アバター』に影響を与えた原作ということですが、映画では逆に特にこれらに影響を受けているようです。原作タイトルが『『火星のプリンセス』(1917年)ですから、スペース・オペラのプリンセスものはもう見慣れているわけで、かなり魅力的なキャラを持ってこないとそもそも厳しいです。これは古い原作を持ち出したことにも一因がありますね。
この半裸で活躍する主人公はどこかで見たことがあるなあと思いました。原作者のエドガー・ライス・バローズと言えば『ターザン』の原作者でもあります。これは火星のターザンだったんですね。火星くんだりまで行ってターザンなんか見たくない......(^_^) しかも、火星にいることがちっとも伝わってきません。
ターザンなら木から木へと飛び移っていくわけですが、火星では「ジャンプ」です。これほど絵にならない能力はありません。ちっともリアリティがないし、バッタが跳んでいるみたない違和感。監督のインタビュー記事を読むと、「アニメならできたのに」と言い訳しています。カーターが火星に飛んで最初は重力に慣れないために転んでばかりいましたが、この作品もそんな感じです。実写映画の重力がわからない監督が躓いてしまったということなのでしょう。


☆○○○○
冬の華 邦題 冬の華
原題 冬の華
制作 1978年 上映 121分
監督 降旗康男 地域 日本
むかし邦画ではヤクザ映画は人気があったので子どものころから何本も見ていて、高倉健の任侠ものも見ているはずだと思いますが、面白いと思ったことがなかったとみえて1本も思い出すことができません。洋画の『ブラック・レイン』(1989年)は覚えていますけれど。
降旗・倉本・高倉のトリオで評価も高そうだったので見たのですが、『あしながおじさん』を取り込んだ任侠ものということですでに話の展開が見えてしまっていますし、やはりきちんと見ることができませんでしした。早送りやスキップで見た感じでは....(^^ゞ....バカな男の美学で人生台無しですというだけのこと。三十年以上前の作品ということを割り引いても、よくある話。
どこが面白いのだろうとネットでレビューを読んでもみましたが、やはりわかりません。傑作と評価している人を何人も見つけました。だから yu は邦画が苦手なんでしょうか。小道具にチャイコフスキーのピアノコンチェルトを使ったり、小林亜星を起用したり、高倉健はやはり娼婦を抱かないし、池上季実子の手紙の朗読はずっと「おすまし」顔だし、脚本も演出もくさいです。クロード・チアリのギターも時代性もあるのでしょうが、作品のトーンに合いすぎて古くさい。
冒頭で、子どもがいるから殺さないでくれという男を殺し、15年間刑務所に入りながらその男の娘を援助し始めるわけですが、終わりではまた子どもがいるから殺さないでくれという別の男を殺して閉じるこの物語は、義理人情の悲しさを描いているのでしょうか。援助された娘からすれば、父を殺した上に自分を騙して善人として援助している許しがたい男です。こういう義理人情に感動を覚えるのであれば、世間はやくざをもっと温かく受け入れるべきではないでしょうか。
やくざの義理人情もので必ず隠されるものがあります。それは彼らの稼業である犯罪です。犯罪こそが彼らの日常であるのに描かれません。極悪な犯罪を描いてもなお共感が生まれるシーンを描くことで映画作品になるのだと yu は思うのですけどね。
主人公の男は刑務所に戻り、今度は無期になるのかもしれませんが、また殺した男の子どもを援助することになるわけですね。こうして「あしながおじいさん」になりましたとさ......(^_^)


☆☆☆★○
アンネの追憶 邦題 アンネの追憶
原題 Mi ricordo Anna Frank  英題:Memories of Anne Frank 
制作 2009年 上映 99分
監督 アルベルト・ネグリン 地域 イタリア
『アンネの日記』(1959年)はタイトル通り、隠れ家生活を描いた作品でしたが、こちらはアンネの親友ハンナ・ホスラーにインタビューしたアリソン・レスリー・ゴールドの「もうひとつの『アンネの日記』」が原作です。アンネの日記とその映画作品については「オードリー・ヘプバーン」のページのアンネ・フランクと『アンネの日記』で触れています。ベルゲン・ベルゼン強制収容所の解説やアンネの年譜もありますから参照してください。
イタリアのTV映画だそうです。ハンナ・ホスラーからの視点で描くのかと思いましたが、父オットー・フランクの視点から描いています。オットー・フランクの自問自答で始まり、それで終わるという形式になっていて、哲学的、宗教的な側面にも光が当てられています。そして、単にナチスの蛮行として描くのではなく、人間の犯す行為として描かれています。アンネの日記を保管したミープ・ヒースはとても勇気のある人として描かれていますが、ユダヤ人を送り出した側の人間にも後ろめたさや躊躇があったことも描き出していました。
好感の持てる構成だったと思いますが、これだと2時間の作品になるだろうと思います。実際すべて駆け足のようになってしまい、それぞれのエピソードを丁寧に描くことができませんでした。TV放送ではもっと長編だったのかもしれません。
登場人物がみんな歴史上の人物となってしまい、生身の人間としての息づかいを伝えることができなかったようです。それは犯罪が人間の過ちとして一般化され、責任の所在が曖昧になってしまったきらいがあるところにもあるように思います。


☆☆☆☆○
マルサの女 邦題 マルサの女
英題 A Taxing Woman
制作 1987年 上映 127分
監督 伊丹十三 地域 日本
監督3作目にしてとうとう生み出した日本映画の新キャラが活躍する作品です。『たんぽぽ』(1985年)に続いてそのエンターテインメントの実力のほどを示して伊丹ブランドを確立、日本映画の歴史に残る作品となりました。
その割には☆の数が少ないと思われるかもしれませんが、これは演技の下手な人がいることと、通俗的な演出が時々現れるからです。コメディには通俗的な演出が必要であることもわかりますが、見たくない通俗性というものもあります。やくざの言動とか、愛人はネグリジェを着ているとか、しゃべりながら乳房をまさぐるとか、相手の車のすぐ後ろを追跡するとか、女性職員を「ちゃん」付けで呼ぶとか、政治家が横やりを入れてくるとか、ああ止まらない.......(^^ゞ
『たんぽぽ』はラーメンが素材でしたが、ラーメン世界にとどめずに食と性と生を絡ませたところが監督らしいところ。今回は金と税金という人間社会の裏も表も見えるものに目をつけて、食傷気味の刑事・探偵物とは似て非なる物語を紡ぎ出しました。この着眼点の素晴らしさに当時の映画人はきっと脱帽したと思います。ただ、働く者の敵のような側面を持つ徴税も、税務署からマルサへ移るにつれ、みんな正義の人みたいな描き方になってしまったのが惜しい。
調査対象の子どもは描かれるのに、主人公の子どもは何も描かれないというあたり、物語の設定に迷いがある感じも受けます。そして、『たんぽぽ』と同様に、金という欲望にひっぱられて性という欲望も引っ張り出されてきています。しかし、どれもあざとくて見たくないシーンですね。
伊丹監督の脚本も演出もかなりいい線いってます。本多俊之の音楽も素晴らしい。その中でも特筆できるのは俳優の使い方がうまいことです。その俳優が持つ才能をぞんぶんに引き出して、俳優を見る楽しみがあります。こういうのは黒澤映画を思い出しますね。
伊丹監督の頂点となった作品だと思いますが、この後も含めて宮本信子という俳優が触媒になった作品で楽しませてくれました。長生きして宮本信子から乳離れできたら、もっと傑作を作ってくれたことでしょう。相も変わらずTVドラマに刑事物が氾濫している現状を見ていると、日本映画の過去に学んでほしいと思います。


☆★○○○
ヴァルハラ・ライジング 邦題 ヴァルハラ・ライジング
原題 Valhalla Rising
制作 2009年 上映 93分
監督 ニコラス・ウィンディング・レフン 地域 デンマーク・イギリス
『「ドライヴ』(2011年)のカンヌ国際映画祭監督賞で、引っ張り出されてきた前作です。『ドライヴ』は2011年の10月にコメントしました。
歴史アクションものかと思ったら大間違い。バイオレンス映像が売りになっているようですが、それ以外は退屈な映像です。中身がないので、バイオレンスしか言及できないのかも。主人公のワン・アイ役のマッツ・ミケルセンが『007/カジノ・ロワイヤル』(2006年)のル・シッフル役でもこのすごみを出してくれていたら、『007/カジノ・ロワイヤル』がもっとよくなっていたかも。ワン・アイはセリフなしです。
「Valhalla」とは北欧神話に登場するもので、戦死した英雄の霊を招くオーディンの神殿です。 yu はバイオレンスが好きじゃないし、面白さがわかりませんでした。


☆☆☆★○
裏切りのサーカス 邦題 裏切りのサーカス
原題 Tinker Tailor Soldier Spy
制作 2011年 上映 127分
監督 トーマス・アルフレッドソン 地域 イギリス・フランス・ドイツ
この監督の前作は「ぼくのエリ/200歳の少女」でしたね。あれは面白かったです。リメイクのアメリカ版の方が好きですけれど。今回は前回の成功のお陰か、いい俳優をたくさん集めました。暗い画面はあまり好きじゃないのですが、これはしっとりといい映像です。ヨーロッパの冬らしく、影のない絵です。
邦題と作品を結びつけるのが難しいですが、スパイ物です。「ぼくのエリ/200歳の少女」もひどいタイトルで、短評で文句をつけた気がするのですが、やはり文句は言い続けます。そうでないとまともにならないから。サーカスなんかちっともキーワードじゃない。むしろ誤解の元です。
作品は静かな展開です。70年代の話になっているので、ちょうどあの時代のスパイ映画の雰囲気も持っていますね。派手な展開もないし、それほど意外な展開もありません。いろんなエピソードをつなぎ合わせて二重スパイを突き止めるという進み方です。そのためにはきちんと話を追っていかないとだめなので、集中力を要求されます。
絵も演出も気に入りましたが、話自体に緊迫感があるとか、盛り上がるとかいうことがあまりありません。派手なスパイ物に慣れてしまったせいもあるのでしょうが、少々退屈感があります。スパイ物というよりは探偵物のような雰囲気ですね。でも、こういうスパイ物がもっとあっていいと思います。


☆☆☆☆○
  邦題 アーティスト
原題 The Artist
制作 2011年 上映 101分
監督 ミシェル・アザナヴィシウス 地域 フランス
作品、監督、主演、作曲のアカデミー受賞作品です。フィナーレ以外はサイレントというだけではなく、スクリーンサイズも音楽もみんなサイレント時代に合わせています。ジャン・デュジャルダンが見せる笑顔が魅力的です。
サイレントからトーキーに移り変わっていく時代の作品はあまり見ていませんが、それでも「ああ、これは」と思うシーンはいろいろありましたね。名シーンをいろいろと取り込んでいます。犬のアギ-を使ったのもチャップリンの『犬の生活』(1918年)などの影響かもしれません。ストーリーは脚本賞を受賞していないように、ステレオタイプと言っていいような展開です。それもたぶん意図的にしたんでしょう。
多くのサイレント俳優がジョージ・ヴァレンティンのような道をたどりました。チャップリンもトーキーを嫌ったので、同じ道をたどったかもしれなかったわけですが、時代がそれを許しませんでした。『独裁者』(1940年)で初めて声を出し、過剰なまでのスピーチの力を見せたのでした。日本では公開されず、アメリカ政府も圧力をかけたと言われています。
過去にもサイレント俳優がトーキーの波に苦しむ作品はいくつもありましたから、普通のカラー作品にしていたら、ただの凡作になっていたでしょう。そこでモノクロ・サイレントのアイデアが浮かんだわけではないでしょうが、サイレントとはもともとそういう芸術形式ではなくて、技術の未発達によって声が奪われていただけのことです。この作品を見ているとしだいに声が奪われている苦しさを感じるようになってきました。ここにサイレントにした意味があったのかもしれません。
しかし、ヴァレンティンはペピー・ミラーの助けを借りてダンスで売る道を見つけての復活です。声を取り戻すことではありませんでした。つまり、 yu の見方は正しくなかったようです。ただ単純にクラシカルな演出で、クラシカルな人の情を楽しむという作品のようです。たった2時間の中で何回も「ファック」という言葉が出てくる過剰なセリフのアメリカ映画の中で、過剰な色彩も過剰な音響もない意味は小さくないのかもしれません。しかし、これが映画の王道だとは思いません。スペクタクルだって映画の宝です。


☆☆★○○
 邦題 キリング・ショット
原題 Catch .44
制作 2011年 上映 94分
監督 アーロン・ハーヴィー 地域 アメリカ
『セットアップ』に続いてブルース・ウイルスが間抜けなギャングボスをやっています。「ボスはもうろくしている」とか言われていましたが、俳優業もそういう感じになってきました。アクションがもう厳しくなってきましたが、まだアクションの脇でいくつもりのようです。『G.I.ジョー』(2012年)では復活するでしょうか。
この作品は寂れたダイナーを銃撃の舞台にして過去のエピソードを回想する話を挿入していく、舞台劇のような設定です。時々使われる手法ですが、当然映画ですから話すだけでなく、回想シーンを映像で挿入していきます。しかし、銃を構えていても撃つ気は全然感じられないわけで、コメディ?みたいな雰囲気も漂わせています。
軽快な音楽の乗りで展開するクライム・サスペンスですが、サスペンスになっているのは時間をシャッフルしていることからくる要素が強くて、ストーリー自体はつまらない。結末も予想通りの展開でした。新味はフォレスト・ウィッテカーが狂った愛情を見せているぐらいでしょうか。
邦題も『キリング・ショット』という、映画館を一歩出たらすぐゴミ箱に捨てられてしまうような紙くずのタイトルだし、暇つぶしにどうぞという感じでしょうか。


☆☆☆★○
ナショナル・トレジャー/リンカーン暗殺者の日記 邦題 ナショナル・トレジャー/リンカーン暗殺者の日記
原題 National Treasure: Book of Secrets
制作 2007年 上映 124分
監督 ジョン・タートルトーブ 地域 アメリカ
前作から3年後の第2作。今回の歴史ミステリー脚本もいいアイデアなんですが、謎解きの弱さがあります。今回は移動範囲が広かったのも面白みをなくしたひとつの原因です。
またエド・ハリスとヘレン・ミレンをキャスティングして俳優陣はパワーアップしましたが、二人ともに活かしきれませんでした。特にエド・ハリスのウィルキンソンの役柄が悪人でもないし善人でもない中途半端な位置にとどまったために、全体に停滞感が漂います。
このシリーズではニコラス・ケイジの魅力はあまり出ていないですね。助手的役割のジャスティン・バーサの方のいじけキャラの方が光っています。そのためか、3作目は作られないようです。


☆☆☆☆○
ナショナル・トレジャー 邦題 ナショナル・トレジャー
原題 National Treasure
制作 2004年 上映 131分
監督 ジョン・タートルトーブ 地域 アメリカ
探検家と助手と美女が、敵役と争奪戦を繰り広げるというお決まりの設定で演出も新しくはないですが、世界の辺境で冒険するのではなく、都会の街中で冒険するという新しさが光った作品です。知的なゲームという側面が強いです。
人がほとんど死なないのもいい。だれも死ななかったらもっといい......(^_^) 人の命は地球よりも重いなんて言うバカな冒険活劇を見てみたい。
3回目はTV放送ですが、たぶんノーカット。解説字幕付で大変わかりやすいですが、目障りでもあります。謎解きはよく練られた脚本で飽きません。トリニティー教会地下の木造階段はよくできた美術でした。ただ、謎がスラスラと解かれるスピード感も悪くはないのですが、観客にも考える時間をくれと思うし、もう少し違うエピソードも取り込んでゆったりするシーンがあっていいかとも思います。建国の歴史観光も出来てお得な、そしてやはり良きディズニーらしさを感じる1本です。
ダイアン・クルーガーは魅力的な人に撮ってもらっています。彼女は監督に感謝したんじゃないかな......(^_^) ニコラス・ケイジはおでこが光るだけ。クリストファー・プラマーは公開当時には老けたなあと思いましたが、今回は若いなあと思ってしまいました。光陰矢のごとし。音楽は時間のマジックですが、映画もやはり同じです。
来週次作も見るつもりですが、評価は落ちるんですよね。2010年にまた同じ制作&監督&主演で組んだ『魔法使いの弟子』もいまひとつでした。



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