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2011年10月


☆☆☆○○
親愛なるきみへ 邦題 親愛なるきみへ
原題 Dear John
制作 2010年 上映 108分
監督 ラッセ・ハルストレム 地域 アメリカ
昔は恋愛映画はほとんど見なかったのですが、案外最近は見ています。避けずに見ているというのが正しいかも。アマンダ・サイフリッドの作品が今年はいくつもありましたが、なぜか全部見ていますね。どれもあまりヒットしていないと思いますが。
『ジュリエットからの手紙』に続いてまた手紙物なのかと思いましたが、アメリカではこちらが先に公開されています。
9.11は世界に影を落とすことになったテロなので、アメリカのそれぞれ個人にもいろんな影を投げかけることになったからこういう作品も生まれるのでしょうが、映画ではさらっと描いていてジョンの内心にも深く立ち入らないままです。
第二次世界大戦の時に生まれたらしい "Dear John letter" がモチーフになっているようなので、恋人へのお別れの手紙の前と後を描くのが主眼になっていて、戦場シーンもあまり出てこないでのジョンが命がけで闘っているという感じも伝わってきません。そして、この言葉の背景を知らない日本向けに、この邦題はいつものことながらダメです。
別れることを選択したサバンナの事情に「なるほどなあ」と納得するほどのものもなく、一時期熱かった恋愛も時を経ればこんなもんでしょうみたいに勘違いしてしまいそうです。
この作品のいいところは恋愛よりも父子の愛が描かれているところです。むしろこちらを主眼にした方がいい作品になったと強く思います。


☆★○○○
Attack The Block 邦題 日本未公開
原題 Attack The Block
制作 2011年 上映 88分
監督 ジョー・コーニッシュ 地域 イギリス・フランス
『スーパー8』も面白くなかったけれど、これも面白くない。つまらなさの最大の共通点はエイリアン造形の粗雑さ。『エイリアン』(1979年)が傑作になったひとつの、そして大きな要素はそれをタイトルに掲げたように「エイリアン」の造形でした。
熊のようなエイリアンが空から降ってくるというところから、すでにシュールを超えたバカバカしさが漂いますが、エイリアンらしさは目や口が蛍光色に光ることぐらい。耐えられない粗雑さ......(^_^)
ストリートギャング少年たちとの幼稚な攻防が見所になるのですが、これは卒業制作レベルです。電気の無駄遣い。日本公開はないでしょうから、節電日本には良かったです。
昔はSFを制作するには金も技術も大変でした。今は気軽にSFが作れる時代になって、こういう作品も見ないと傑作SFには出会えないのかもしれません。☆1つ半。


☆☆☆★○
キングダム・オブ・ヘブン 邦題 キングダム・オブ・ヘブン
原題 Kingdom of Heaven
制作 2005年 上映 145分
監督 リドリー・スコット 地域 アメリカ
リドリー・スコットは時々歴史物を扱います。これはまだ見逃していた作品。エレサレム王国をめぐる十字軍とイスラムの攻防を描くものです。
鍛冶屋の若者が主人公になる成長物でもありますが、史実からはみ出さないように作られているのでいろいろと制限がつきます。そのためかその成長の過程はほとんど描かれません。エヴァ・グリーンも思わせぶりな登場をしますが、それに見合うだけの出番はありません。
戦闘シーンも遠景は迫力があって見応えがありますが、近景で闘うシーンになると雑に見えます。つまりは内面を描く劇としては弱い作品です。
シビラがハンセン死病だったと言われるイスラエル王ボードゥアン4世の遺体から仮面を剥ぐシーンがありますが、正直言っておぞましい容貌にされています。これではとても会話が不可能だったはずで、今までのシーンとの整合性がないと思えるほどです。なぜこんなシーンを入れたのか理解できないです。
ボードゥアン4世も賢帝として描かれていますが、この作品で一番かっこよく描かれているのはサラディンです。まるで知らないハッサン・マスードという俳優ですが、いい役もらいました。ちなみに顔の見えないボードゥアン4世を演じたのはエドワード・ノートンです。彼の俳優人生の中で、こんな尊敬すべき人物を演じたのは珍しいことではないでしょうか。顔が出ないというのは皮肉です。
日本人にはあまり馴染みのない歴史ですので、歴史のおさらいをしてから見るとなお面白いのではと思います。戦争というものをどう扱うのか考えさせられる題材でもあります。


☆☆☆○○
ホワット・ライズ・ビニース 邦題 ホワット・ライズ・ビニース
原題 What lies Beneath
制作 2000年 上映 130分
監督 ロバート・ゼメキス 地域 アメリカ
邦題タイトルをなんとかしてくれと思います。日本語にできたでしょうに。ヒッチコック風味の強い作品です。
見るのは2回目かな。すっかり結末を忘れていました。サスペンスでもすぐに結末を忘れてしまうので、映画好きの yu としては何回も見られて好都合ではあります。日常生活は大変ですが.......(^^ゞ
この作品の設定は隣家の配置や交通事故による忘却など、面白い工夫がなされていてなかなか面白いです。ダメなのはミスキャストだったということです。
ハリソン・フォードがどうにも似合わないです。この人は不気味さや怖さのようなものを出せません。しかも、この男ノーマン自体が幽霊みたいに音も立てずに現れたり消えたりするのは、サスペンス・スリラーの定番演出と理解はしていても、まったく不自然です。
ヒッチコックの演出をもっと学びましょう。ミシェル・ファイファーはびしょ濡れで頑張りました。彼女にとって「What lies Beneath」とは水でしたね......(^_^)


☆☆☆★○
Drive 邦題 日本未公開
原題 Drive
制作 2011年 上映 110分
監督 ニコラス・ワインディング・レフン 地域 アメリカ
ライアン・ゴズリングが寡黙な逃がし屋と映画のスタントのドライバーを演じています。夫が刑務所に入っているアパートの隣人である人妻に抱く純愛が、周りの人々の不幸の引き金になっていく犯罪もの。
見る前はライアン・オニールの『ザ・ドライバー』(1978年)みたいな作品かと思いましたが、それほどカーチェイスには力が入っていません。バイオレンスは車の外。そして、どちらかと言えば純愛に力が入っているます。
本来はレース・ドライバーを夢見ているだけあって、逃がし屋もスタントもアルバイト気分のような感じです。不思議な雰囲気の漂う作品で、こういう作品には合わないように思える音楽がかえっていい感じを醸しています。☆3つ半。


☆☆☆○○
フラッシュ・ゴードン 邦題 フラッシュ・ゴードン
原題 Flash Gordon
制作 1980年 上映 111分
監督 マイク・ホッジス 地域 アメリカ
公開当時見た時はクイーンの音楽以外はガッカリした作品です。なにしろ撮影があまりにもチープ。やる気があるのかと思えるほどの演出。どうしようもない。だけど3つ☆。
今見るとまた違う感触があります。わざとやっているんじゃないかという疑いが......(^_^) マックス・フォン・シドーにあんな格好をさせて、アホな演技をさせているのは何かしらの考えがあったのでしょう。
出てくる舞台装置はすべて映画のリアルさではなく、演劇の舞台装置のよう。色彩はケバケバしく、照明は明るいばかりで影がない。帝国への反乱を描くのに、無名の俳優も含めてキャストの数が少なく、群衆と呼べるほどの兵士も住民も登場しない。およそ映画としてのリアルさを徹底的に排除しているように見えます。
ジョージ・ルーカスが『スター・ウォーズ』(1977年)の前に撮りたかっただけあって、主要な登場人物の配置がよく似ています。そして、逆にこの作品が『スター・ウォーズ』の演出の影響を受けているシーンが散見されます。
どことなく『ロッキー・ホラー・ショー』(1975年)のにおいもする。『ロッキー・ホラー・ショー』気分を目指したけれど、洗練された器量がなくてこけてしまったのかもしれない。
そんなわけで、いろいろとよそ事を考えることができ、今回はそれなりに楽しく見れました。80年当時なら☆1つ半だろね。


☆☆☆○○
ゾンゲリア 邦題 ゾンゲリア
原題 Dead & Buried
制作 1981年 上映 94分
監督 ゲイリー・A・シャーマン 地域 アメリカ
『フラッシュ・ゴードン』のヒロインだったメロディ・アンダーソンの繋がりで見た作品。この女優さんは『フラッシュ・ゴードン』で子どもの遊びのようなアクションシーンを見せていましたが、あれは監督の責任ですね。しかし、早々にTVへ移って、日本では見られなくなりました。この作品は『フラッシュ・ゴードン』の翌年ですが、すでに将来を暗示するように活躍する場面はほとんどありません。
またまたすごい邦題ですが、こんなアホなタイトルをよく捻り出すものだなあと呆れるばかり。まったく意味不明。もっとまともなタイトルだったら、作品の評価ももっと上がったのではと思います。先日、原田知世が『バス男』という邦題がイヤでわざわざ原題で『ナポレオン・ダイナマイト』が好きだと話していましたが、バスに乗っているだけでそんなタイトルにされてはたまりません。この映画はまだ見ていないので、また見ようと思います。
さて、この作品の冒頭のシーンはあれっ?と思うような静謐さで始まりますが、すぐに暗転し、シーンはすべてグレーで暗い雰囲気です。スプラッターもののような邦題だったので身構えましたが、あまり大したことがなかったのでホッ。
今では珍しくもない設定ですが、当時はなかなか面白かっただろうと思います。『シックス・センス』(1999年)の肉体版みたいな。しかし、演出が下手。ポスターぐらいのシュールな映像と演出を見たかったですね。


☆☆☆○○
ロスト・アイズ 邦題 ロスト・アイズ
原題 Los ojos de Julia
制作 2010年 上映 112分
監督 ギリェム・モラレス 地域 スペイン
『パンズ・ラビリンス』(2006年)のギレルモ・デル・トロがプロデュースと言うことで見ました。監督ではないので、やはりまったくタッチが違いました。
失明とサスペンスということで、ヘップバーンの『暗くなるまで待って』(1967年)みたいな作品かなと思いましたが、やはり犯人と対決するシーンでは暗闇が味方します。
その対決シーンまではとろとろと同じことの繰り返しみたいな退屈な展開でしたが、最後はいっぺんに目が覚めたかのようにいいシーンになりました。
暗闇にフラッシュを使ったシーンは昔の映画で見た記憶がありますが、これもなかなか斬新な映像になっています。良かったのはここだけですけれど。監督がもっと早く目覚めていれば......
口直しに『暗くなるまで待って』を見たくなりました。


☆☆○○○
SP 革命編 邦題 SP 革命編
原題 SP 革命編
制作 2011年 上映 128分
監督 波多野貴文 地域 日本
TVドラマの評判は耳にしていたので期待したのですが、なんだかなあ。ちなみに映画の前作も見ていません。日本映画はSFと現代アクションは大苦手分野と思っていますが、それを補強する一篇です。
この作品はファンには評判が良いようです。日本の政治家への憎しみを露骨に表現している珍しい作品です。出だしはそれなりに練られて構想されていますが、長続きしませんでした。
主演の岡田准一が冒頭から不審を表すあからさまな睨み顔でかなり不自然な印象を受けましたが、この作品で一番不自然なのは首相を狙っている犯人を余裕で撃てるのに逆に撃たれるシーンの連続。SATたちまで撃つのをためらって自分らが撃たれる始末。素人にも劣る決断力。こんなSPやSATなんて存在するはずありません。
議場内で議員に爆弾のチョッキまで着せて人質に取って立て籠もっているところへSPたった4人でいきなり飛び込んで犯人たちを撃ち倒す無謀さ。犯人の人数も位置もろくに確認せずに、長い筒のライフルでなく、筒の短い拳銃でみんな犯人に命中させて倒してしまうご都合主義。
さすがに何の考えもない襲撃シーンなのでこのシーンを監督は演出することができず、一組ずつ撃つシーンと倒れる犯人をスローモーションで順番に見せるだけでした。ハイライトシーンともいうべきところを映せず、漫画絵でごまかずみたいな。
こんなのおかしいと抗議する俳優さんはいないのでしょうか?真木よう子は仲代達矢に逆らって無名塾を辞めたそうですが、その根性をこういう時にも発揮してもらいたい。みんなで知恵を出し合ったら、なんとかなりますよ。


☆☆○○○
ブリッツ 邦題 ブリッツ
原題 Blitz
制作 2011年 上映 97分
監督 エリオット・レスター 地域 イギリス
アメリカ映画で見慣れているので、ジェイソン・ステイサムがイギリスの俳優だと忘れていました。今回はイギリス英語ですが、やはりいつものステイサムです。
アウトローの刑事はデカ物の定番ですね。しかし、もう古いです。暴力刑事と連続殺人の愉快犯という組み合わせはもう見飽きてます。
見飽きたモチーフで、やはり同じような話の展開なので、新味なしです。あえて言えば、他の警官にも視野を広げているぐらい。結末の演出もよくある手なので、すぐに見当がついてしまいます。古くさいし、後味も悪い。過去作を研究してから映画を作りましょう。


☆☆☆○○
キャプテン・アメリカ ザ・ファースト・アベンジャー 邦題 キャプテン・アメリカ ザ・ファースト・アベンジャー
原題 CAPTAIN AMERICA: THE FIRST AVENGER
制作 2011年 上映 124分
監督 ジョー・ジョンストン 地域 アメリカ
キャプテン・アメリカの名前は耳にしていたけれど、どんなヒーローキャラなのか知りませんでした。超能力を持っていないという点ではバットマン系列ですね。
現代に超能力を持ったヒーローが現れてもあまり驚きがないというか、その不自然さで違和感を感じてしまうというか、そういう意味では昔の時代設定がよく似合います。他のヒーローもほとんどが昔に生み出されていることを考えると、科学技術の発展がヒーローを霞ませてしまったと言えそうです。
主人公スティーブがヒーローになるまでは少々大人向けです。ヒーローになってから戦場で闘うシーンはやはりコミックぽくなります。実写作品なのですが、武器を持たずに盾だけを持ったマスクマンが普通の兵士たちと一緒に駆けているシーンは見ていると、実写とアニメが合成された『ロジャー・ラビット』(1988)みたいに見えてしまう違和感が残ります。
近頃感じることですが、CGがふんだんに使われているシーンというのは面白みが減ります。なぜなら絵ばかりの物語になるからです。この作品の前半部分ももちろん時代性を出すためにたくさんCGが使われているのでしょうが、人間が描かれているので前半が良かったですね。


☆☆★○○
グリーン・ランタン 邦題 グリーン・ランタン
原題 Green Lantern
制作 2011年 上映 114分
監督 マーティン・キャンベル 地域 アメリカ
これもヒーローもの。アメリカ人はほんとにヒーローものがお好き。見ているこっちも同類ですが.......(^^ゞ しかし、アメリカには何百人ぐらいヒーローがいるんだろう。千人単位かも。
グリーン・ランタンはDCコミックスのヒーローの一人ですが、なにやら話が『スター・ウォーズ』の「フォース」や「暗黒面」みたいにわかりにくい。『スター・ウォーズ』が初めて上映された時は「フォース」が「理力」と訳されていたぐらいで、「理力」と言われてもそんな日本語知らないし......(^_^)
とにかく「?」が多すぎます。グリーン・ランタンの中で最強と言われたアビン・サーは逃げるだけでその強さはわからないままだし、アビン・サーを倒したパララックスも地球上での攻撃力を見ていると、いったい強いのか弱いのか、はっきり言ってしまえば弱すぎる。
制作のワーナーは当初コメディ路線で行くつもりだったらしく、修正されてもまだその残滓があるようです。CGコテコテの映像ですが、人間としてというか、人間だからこそというか、亜流スーパーマンの未熟者が活躍する作品のような感じです。
宇宙警察機構のグリーン・ランタンたちとパララックスの総力戦になる大戦争なのに、地球人が一人でやっつけちゃマズイでしょ?と思いますが、やはりそこがヒーローなんでしょうね。最後のシーンは続編へのご案内付き。もう展開が読めるけれど。☆2つ半。


☆☆★○○
カウボーイ&エイリアン 邦題 カウボーイ&エイリアン
原題 Cowboys & Aliens
制作 2011年 上映 118分
監督 ジョン・ファヴロー 地域 アメリカ
日本では映画やドラマがマンガからストーリーを借りてくることが普通のことになっていますが、アメリカも同じように脚本が弱くなってきているのか、これもコミックが原作です。タイトルは原作のままですが、なんか即物的というか、映画の色気を感じないというか、邦題も単数形になっただけです。いえ、日本語には単数も複数もありませんでした。
予告編を見てもわかることですが、ごった煮の映画です。ストーリーの展開もいろんなシーンも、これはあそこで見たことがあるぞとかいうのが満載。時々字幕で「これは○○からの引用」とか「あれは△△を参照」とか入れたら面白いかも。ディスクが発売になったら、そんな特典がつくかもしれない。
強盗、保安官、白人、インディアン、バカ親父等、いろんな登場人物間の軋轢がエイリアンと団結して闘ううちに消えていくというお決まりの展開も、次にはこういうシーンを持ってくるのだろうと見当がついてしまう安直さもあります。感動すべきシーンでもちっとも心が動きません。
エイリアンは光がお嫌いらしく、暗いシーンが多いです。恐怖感を醸すのと、細部をごまかすのに好都合なやり方ですが、最近はこういうパターンが多いですね。裸のエイリアンが高度な科学文明を築くことができるのか、同様にエイリアンの体躯の構造から見て道具を使いこなせるのかとか、いつもの疑問も湧きます。
このエイリアンは強いのか弱いのか、やはりよくわからない生物です。武器も使わないし、疑問だらけ。場面の都合によって強かったり弱かったりするというのが正解でしょうか。制作者の都合が出過ぎですね。『エイリアン』や『プレディター』みたいに、一本筋を通してもらいたい。
最近のエイリアンはリアリティを出すためか、ノイズが乗っているかのように輪郭がはっきりしない感じを受けます。なんだか妖怪のようなエイリアンばかり見せられると、SF作品と呼ぶ気にはなれません。タイトルに「エイリアン」を掲げるのなら、敬意を払ってちゃんとエイリアンを描いてほしいです。
ジョン・ファヴロー監督の前作『アイアンマン2』は yu には最低評価でしたが、今回もダメでした。☆2つ半。


☆☆☆○○
PUSH 光と闇の能力者 邦題 PUSH 光と闇の能力者
原題 Push
制作 2009年 上映 111分
監督 ポール・マクギガン 地域 アメリカ
クリス・エヴァンス主演作品は今月2本目です。超能力ものSFサスペンスです。ダコタ・ファニングとカミーラ・ベルが共演です。二人とも場違いな感じがしないでもないですが、ダコタ・ファニングはいい雰囲気を出しています。
カミーラ・ベルは『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク』(1997年)からずいぶん大人になりましたが、少女をそのまま大人にしたみたい。だから、なんだか彼女のアクションシーンはまったく似合いません。『紀元前1万年』(2008年)の時はもっと少女ぽかったから少しは大人になったのかもしれないけれど。
舞台が香港になっているお陰で、街の雰囲気や敵方のエキゾチズムなどがプラスに働いています。しかし、この作品の設定はよくある話です。展開はまあまあいいのですが、超能力の見せ方があまり魅力的ではないです。他の超能力を扱ったTVドラマや映画と比べるとかなり見劣りがします。
そもそも主役が超能力をきちんとコントロールできないままでいるという弱点のお陰で物語が進行するのですが、同時にそれが最後までパッとしないという弱点にもなっていますね。


☆☆☆☆○
ランゴ 邦題 ランゴ
原題 Rango
制作 2011年 上映 107分
監督 ゴア・ヴァービンスキー 地域 アメリカ
『パイレーツ・オブ・カリビアン』のゴア・ヴァービンスキー監督とジョニー・デップが組んだアニメ作品です。『カビリアン』よりこっちの方が好きだな。デップは声の演技だけでなく、モーション・キャプチャーでの演技です。しかし、人と猿ならともかく、デップとカメレオンがいくら似ているとは言え、どの点と点を対応させたのでしょうか?
まずはCGアニメ表現もここまできたかというぐらいよく出来ています。たくさんのキャラを登場させ、それぞれに細かい造形が施されています。動きの良さはもちろん、静物の描写もよく出来ています。子どもが「こんなこともあんなこともできるよ」と自慢しているみたいにいろんな手を繰り出している。最後のタイトルバックまで手抜かりなし。
子ども向きのコメディ・アニメだと思っていましたが、西部劇のスタイルを採ったのは大人向けのアニメを作るためだったように思えます。シナリオは大人向けです。ストーリーは西部劇定番コースをなぞるのですが、文明批評を織り込みながら今までにない味わいを生み出しています。音楽も楽しい。
子どもが見てもこの作品の良さは半分ぐらいしかわからないでしょう。


☆☆☆☆○
007/慰めの報酬 邦題 007/慰めの報酬
原題 Quantum of Solace
制作 2008年 上映 106分
監督 マーク・フォースター 地域 イギリス・アメリカ
見るのは2回目。『007/カジノ・ロワイヤル』(2006年)の続編です。前作からボンドがダニエル・クレイグになってかなりの変更が加えられましたが、もちろんその路線変更は受け継がれています。
ユーモアなし。荒唐無稽もなし。リアリティが増した分、復讐にも手を染めるような感情をむき出しにします。このシリーズのイギリスらしい上品さがなくなってしまいました。その代わりにグレードアップしてきたのがアクションですね。やはり『ボーン・シリーズ』(2002年〜2007年)の成功に影響を受けたのでしょうか。アメリカのスパイ・アクションの類似作品となってしまったと言えます。
類似ではあるけれど、前作と同様にアクションとしてはトップクラスの設定とカメラワークだと思います。だからこその☆4つ。アクション・シーンからは目が離せないほどですが、アクション以外のシーンでも楽しませてほしいというのがやはり007シリーズのファンの気持ちだと思うのですが。


☆☆☆☆○
  邦題 007/カジノ・ロワイヤル
原題 Casino Royale
制作 2006年 上映 144分
監督 マーティン・キャンベル 地域 イギリス・アメリカ
『慰めの報酬』を見たので前半もおさらいしようということで見ました。これも2回目。長尺ですが、カジノが舞台になっていることもあり、アクション・シーンは控えめです。
この作品の方が過去のボンド・シリーズの香りを引き継いでいる感じです。ヴェネツィア・ロケが入れてあるのもその名残でしょうか。それでもやはり別シリーズと印象づける演出になっています。ダニエル・クレイグというキャスティングだけでそれはわかりますけれど。
パロディの範疇にまで踏み込むコメディでしか映画化されていなかった『カジノ・ロワイヤル』は正統からは欠番になっていた作品で、しかも原作では1作目に当たる作品なので、これが映画化されただけでもファンはうれしいと思います。しかし、公開されるまでは誰も期待していなかった作品でもあります。
続編になる『慰めの報酬』も含めて悪役が今ひとつ活躍し切れない設定になっているのが残念なところですね。ル・シッフル役のマッツ・ミケルセンなんかはいい面構えしているのですが、弱気が見えてあっさり殺されてしまうし、その黒幕も存在感がない。エヴァ・グリーンはいつもの彼女ですが、よく似合っていました。
ボンドが拷問を受けるシーンはリアリティがありません。睾丸を叩かれて声を出したりニヤついたりするような余裕は絶対ありません。声を出すどころか息ができませんから。男ならみんな知っています......(^_^)
最後は愛するヴェスパーの復讐を果たして幕を閉じますが、これを引きずって『慰めの報酬』への暗いトーンへ繋がることになります。


☆☆☆☆○
やがて来たる者へ 邦題 やがて来たる者へ
原題 L'uomo che verra    (英題)The Man Who Will Come
制作 2009年 上映 117分
監督 ジョルジョ・ディリッティ 地域 イタリア
2009年作品ですから公開が遅いですが、いろいろ受賞して公開が決まったんでしょう。第二次世界大戦末期のナチスとパルチザンの攻防の中で起きた、ボローニャ郊外の静かな山村でのマルザボットの虐殺をテーマにした作品です。このあたりの事情は歴史書を紐解かないと日本人にはわかりにくいところです。当時、イタリアは同盟国だったんですけどね。
質素で平和な日常がある一方で殺し合う非日常も迫りつつある中、弟の死で言葉を失っている8歳の少女から見える世界を描いています。イタリアにはネオレアリズモがありましたが、それを彷彿とさせるような映像です。起こっていることを淡々と描いていくこの作品は当時の山村に観客を連れて行きます。
豊かな生活をするために貧しい者からも奪おうとする人間は、貧者に地獄をもたらすだけでなく、一度開けられた地獄の口はあらゆる人間を飲み込んでいきます。それがこの世界の道理であることもわかっているはずなのに、戦争をやめることができません。今日はリビアのカダフィ大佐の死が確認されました。
おびただしい犠牲者を出して、日本もヨーロッパも今は戦争の危険からは遠ざかっていますが、戦争は今も人類の日常です。戦争で一度滅んだ日本もドイツもその後は平和を享受して経済発展しました。両国ともに輸出の恩恵を受けました。今はそれも陰りが出ている状況ですが、輸出するものがないなら、そろそろ平和を輸出してもいいのではないかと思います。


☆☆○○○
007/カジノ・ロワイヤル 邦題 007/カジノ・ロワイヤル
原題 Casino Royale
制作 1967年 上映 134分
監督 ジョン・ヒューストン、ケン・ヒューズ、ロバート・パリッシュ、ジョセフ・マクグラス、ヴァル・ゲスト 地域 イギリス
本家の作品を見たので、コメディ作品も見ることに。これも2回目ですが、ほとんど忘れていました。こんなに豪華キャストだったんですねえ。ざっと並べてみます。
ピーター・セラーズ、デヴィッド・ニーヴン、デボラ・カー、ウィリアム・ホールデン、ウディ・アレン、ウルスラ・アンドレス、ダリア・ラヴィ、ジョン・ヒューストン、シャルル・ボワイエ、オーソン・ウェルズ、ジャン=ポール・ベルモンド、ジャクリーン・ビセット....
スクリーンからすでに去った人がほとんど。この世から去っている人も多いです。
5人が監督して破綻している作品ですが、こんなに面白くないとは。お笑いどころか、おふざけレベル。それでも☆2つにしたのは、有名スターたちが楽しそうに演じているから。内心はどうだったか知らないけれど......(^_^)
ところで、ル・シッフルはこの作品でもあっさりと殺されます。原作を知らないけれど、これは原作に沿っているんだなあと思いました。
それから久しぶりにグラマーな美女たちをわんさか見ました。それで最近はグラマー美女たちが登場する映画はなくなったなあと気づかされました。草食系男子が増えたと危惧される時代ですが、グラマーを目指す女子もいなくなりました。時代はみんなを変えていくのです。


☆☆☆○○
フェア・ゲーム 邦題 フェア・ゲーム
原題 Fair Game
制作 2010年 上映 108分
監督 ダグ・リーマン 地域 アメリカ
まだ記憶に新しいプレイム事件ですけれど、日本ではあまり詳細な報道がなかったのでよく知りませんでした。原作は同タイトルのヴァレリー・プレイムの回顧録と元大使である夫の回顧録『『The Politics of Truth』』です。"Fair Game"を翻訳すると格好の標的という意味の「カモ」。日本人一般はこんな英語知らないので、邦題は困ります。
ブッシュ政権はイラク戦争の正当性のためにフセインが大量破壊兵器を保有していると喧伝していたわけですが、夫のジョゼフ・ウィルソンが情報操作だと批判していたために、政権側がその報復に出たというものです。つまり、その妻がカモにされたわけですね。
夫がなんども「真実」という言葉を口にしていますが、実録物であったとしてもどこまでが真実なのかなかなか判断が難しいです。しかし、アメリカのスパイ物映画でおなじみのCIAエージェントがホワイトハウスにはめられるという事件が起こったことは事実なので、怖ろしいことです。気に入らないヤツを攻撃するためなら何人死んでも構わないという権力者たちは独裁国家だけでなく、民主国家にも存在することを教えてくれました。しかし、今更の知識でしょうか。
主演はナオミ・ワッツ。彼女はこういう役はよく合います。追い詰められて闘う役はいつものショーン・ペン。ショーン・ペンは実生活でも敵が多そうです。
作品はイラク戦争に突き進む前から開戦後までの内情を描くとともに、政権や国民からの攻撃にさらされながら家族の崩壊とも闘わなければならなかった夫婦を描きます。 良くも悪くも実録物の範囲内です。


☆☆☆☆○
ウィンターズ・ボーン 邦題 ウィンターズ・ボーン
原題 Winter's Bone
制作 2010年 上映 100分
監督 デブラ・グラニック 地域 アメリカ
『X-Men:ファースト・ジェネレーション』 (2011年)でミスティークの役をしていたとはなかなか気がつかなかった主演のジェニファー・ローレンス。この作品では17歳の少女役ですけれど、あっぱれな演技。映像もいいです。この監督はまだ2作目だそうです。
登場する人物みんながあまりにリアルで、映画であることを忘れてしまいそう。家族を守るために危険を顧みずに行方不明のヤバイ父親を探す少女リーが主役ですが、これは『トゥルー・グリット』(2010年)の少女マティを思い起こさせます。あれは殺された父親の復讐に立ち上がる14歳の少女でした。どちらも大人にならざるを得なかった少女です。
しかし、復讐することよりも家族を守ることの方がどれだけ大変かは言うまでもなく、この作品はあくまでリアルに迫ってきます。yu の『トゥルー・グリット』への評価はあまり高くなかったのですが、この作品を見たらやはり『トゥルー・グリット』は演技臭が強すぎると思います。
ロクでもない大人ばかり出てくる感じの映画ですが、そんな中に家族愛がひっそりと隠れているのを見つけることができます。映画から離れて思うことは、アメリカという国はほんとうに広い国だなあということ。日本人では想像もできない生活を送っている人がごまんといる社会なんだろうと想像することはできます。これも映画のひとつの効用です。


☆☆☆○○
Trespass 邦題 日本未公開
原題 Trespass
制作 2011年 上映 91分
監督 ジョエル・シュマッカー 地域 アメリカ
この監督作品は案外見ています。SF映画選でも『フラット・ライナーズ』を取り上げました。"trespass"とは「不法侵入」という意味ですが、そのままの作品ですね。アメリカ映画では絶えず作り続けられているジャンルなので、アメリカ人がいかに身近にこの危険を感じているかよくわかります。
なお、同名タイトルの作品が1992年にあります。これは家庭への侵入話ではありません。また、『不法侵入』という邦題でも1992年にあります。こちらの原題は"Unlawful Entry"。異常な警官レイ・リオッタの不気味さが印象に残る作品でした。
さて、Trespass ですが、ニコラズ・ケイジとニコール・キッドマンの共演です。近頃つまらないB級ばかり出演しているケイジはともかく、キッドマンがこういう作品に出るのは少々意外。それだけの何かがある作品なのだと期待してみましたが、普通にB級でしたね。侵入者たちと侵入された家族がそれぞれの事情を抱えていてただの侵入劇になってはいませんが、それは舞台が家屋内になっていることから当然の展開であって、見所になるところはありませんでした。
異常な緊張状態を持続して演じなければならないこの手の作品に出演するのは俳優にとって大変なことですが、キッドマンにその見返りはあったのでしょうか? この前に見たキッドマン作品は『ラビット・ホール』(2010年)。この作品も息子を失う辛い役柄でした。今年5月に短評済み。こちらはお勧めです。ちょうど来月にようやく日本公開になります。悲しみとどう折り合いをつけて生きていくのかというお話です。


☆☆☆○○
セレニティー

ファイヤーフライ 宇宙大戦争
邦題 セレニティー
原題 Serenity
制作 2005年 上映 119分
監督 ジョス・ウェドン 地域 アメリカ
途中で打ち切りになったTVシリーズ 『ファイヤーフライ 宇宙大戦争』(2002年)の映画版で、劇場未公開です。TVシリーズは日本で放映があったのかどうかも知りませんが、人気があったシリーズとのことで見てみました。しかし、どこまでTVで描かれていてどこからが続きなのか、それともまるごとTV版の作り直しなのか、まるでわからないままです。
元々がTV企画なためか、さすがにいろんなシーンで様々な既視感がありますが、映像やアクション等楽しませてくれます。ただ、きっといろんな省略があるためでしょう、この世界の背景がもうひとつわかりにくいのが残念。
同盟政府と独立派との戦いが起こっていた26世紀、同盟による人体兵器操作された少女リバーを兄サイモンが救出し、二人が乗客として乗り込んだ船がかつて独立派の英雄だったマルのセレニティー号。ここから同盟軍の追跡と同盟軍の敵であるリーヴァーズとの闘いに巻き込まれていくお話です。
アメリカではこんな宇宙活劇がTVで見られるのだからうらやましい限りです。日本では映画でもこれだけの質のものは作れません。実際は打ち切りになったのだから、アメリカでも厳しい環境なのでしょうけれど。



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