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2011年08月


☆☆★○○
  邦題 SUPER8/スーパーエイト
原題 SUPER8
制作 2011年 上映 111分
監督 J・J・エイブラムス 地域 アメリカ
ポスターほどには面白くない。いろんな有名作へのオマージュは理解できても、2番煎じを見せられている感は否めず。軍の作戦名が「Walking Distance」。見た感じもそれです。スピルバーグが輝いていた頃への郷愁。
子ども達のキャラがあまり魅力を感じないことと、出てきたものが「あれ」ではがっかり。見せ方も下手くそだ。この作品の中にある様々なシチュエーションは、いろんな映画を見て学んだ監督の学習効果が現れていて、その結果いかにも作為的に見えてしまいます。しかし、エル・ファンニングはこれから売れそうです。☆二つ半。


☆☆☆○○
この愛のために撃て 邦題 この愛のために撃て
原題 A Bout Portant
制作 2010年 上映 85分
監督 フレッド・カヴァイエ 地域 フランス
「すべて彼女のために」の監督の第2作。邦題もこの前作を意識しているのがわかります。しかし、歴史大河ドラマみたいなタイトルだな。主役の看護助手は実際は人を撃ちたくないし、撃たないし。
ジル・ルルーシュは素人っぽさがよく出ていたし、悪徳警官に追われるロシュディ・ゼムの悪役ぶりとその律儀さぶりなど、俳優はみんな良かったですね。
今回の物語の設定はよくある話だし、見たことがあるシーンが多いです。これが一番の欠点。しかも、この作品では陰謀の動機が情けない。
前作のようなシチュエーションの面白さがありません。話の展開も都合が良すぎるためにリアリティに欠けてしまい、邦題にあるような「愛」が輝きません。ラスト・シーンも蛇足です。


☆☆★○○
 邦題 スーパー!
原題 Super
制作 2010年 上映 96分
監督 ジェームズ・ガン 地域 アメリカ
『キック・アス』(2010年)の中年版のようなものかと思ったら、むしろ『タクシー・ドライバー』(1976年)に近い。コミックス風であり、シリアスでもあり、ちょうど上手く織り上げられていたなら、そこそこ余韻の残る作品になっていたかもしれない。
たぶん監督の趣向全開で演出されたんでしょう。織り上げられたものはあちこちほころびが見えている。クレイジーな物語にクレイジーな演出が似合うとは思えない。☆2つ半です。


☆☆☆★○
 邦題 フォーン・ブース
原題 Phone Booth
制作 2002年 上映 81分
監督 ジョエル・シュマッカー 地域 アメリカ
SF映画選で『フラットライナーズ』(1990)を取り上げているジョエル・シュマッカー作品です。ここにもキーファー・サザーランドが出演しています。主演のコリン・ファレルは涙目で出ずっぱり。たいへんな役だけれど、役者冥利につきる役だとも言えます。
タイトル通り、狭い空間で起こる事件を通してのサスペンス・ドラマです。たまにカメラが別の空間に外れているシーンもあるのですが、そういうシーンはみんな没にして、妻も恋人も事件現場に限定して顔見せしてもらったら、もっと面白い展開になったのに惜しい気がしますね。
設定の面白さの映画なので、残念ながら物語の膨らみには欠けます。それを意識してか、81分にまとめたところは賢明でした。☆3つ半。


☆○○○○
エッセンシャル・キリング 邦題 エッセンシャル・キリング
原題 Essential Killing
制作 2010年 上映 83分
監督 イエジー・スコリモフスキ 地域 ポーランド・ノルウェー・アイルランド・ハンガリー
ヴェネチア国際映画祭で審査員特別賞と主演男優賞をもらったそうで。ふーんです。タイトル通り、その言いたいことはわかりますけれど、砂漠と雪原を逃走、かつ食のサバイバルをするだけのことで、退屈。
ついさっき、「タイトル通り」と書きましたが、やっていることはタイトル通りではなく、中途半端です。最後に聾唖の女性に無償の好意で助けられるあたりは、ヒッチコックの『逃走迷路』(1942年)にもありましたね。ヒッチコックの方は盲目の男性でしたけど。
夢や幻想で家族を見るという挿入シーンもありきたり。そんなこんなでリアリティありそうで、結局台無しにしてしまっている中途半端がいろいろ目につきます。主役が叫び以外しゃべらないという奇抜なことをやるなら、そのまえに基本を押さえてほしいものです。


☆☆☆★○
Waking Madison 邦題 日本未公開
原題 Waking Madison
制作 2010年 上映 89分
監督 キャサリン・ブルックス 地域 アメリカ
エリザベス・シューは今回は痴的ではなくて知的な役ですが、主演ではありません。 サラ・ローマーが主演です。解離性同一性障碍のマディソンがいくつも現れている人格と格闘しながらひとつに統合していく過程を描いたものです。
登場人物のだれが実在していて、誰が実在していない別人格かを最後まで明らかにしない展開になっているので、一種のサスペンスにもなっています。まあ、わかりやすい配置ですけどね。
この障碍は映画向きなので今までにもたくさんの映画に取り上げられていますが、過去の作品とは違うアプローチです。この障碍の実相をこの映画がきちんと描いているとは思えませんが、映画としては楽しめます。
サラ・ローマーの演技はなかないいのですが、人格が入れ替わる演技はかなり嘘っぽいので、そのシーンは失敗でした。日本ではそのうちレンタルで見られると思います。☆3つ半です。


☆☆☆☆○
ハリー・ポッターと賢者の石 邦題 ハリー・ポッターと賢者の石
原題 Harry Potter And The Sorcerer's Stone
制作 2001年 上映 152分
監督 クリス・コロンバス 地域 イギリス・アメリカ
ハリー・ポッターの最新作というか最終作の評判が良いようなので、今さらながらシリーズを見始めました。つまり最終作である8作目を見るために1作目から見るという、海外旅行のような長いプランです。映画の制作としては十年がかりですね。
原作は読んでいません。そもそもファンタジーは苦手分野。映画は原作にできるだけ忠実にしようとして2時間半に及ぶ長編になっています。言うまでもなく原作も長編で日本版で462ページもありますから、かなり端折(はしょ)ることになっているはずです。たぶんですが、読者にとってはリスクの高い作品と言えるでしょうか。
同時に大人にとってもリスクのある作品です。児童文学かつファンタジーですから、ステレオタイプの展開や演出は我慢しなければなりません。子どもっぽいなどと愚痴ってもしかたありません。この作品の出だしで、ハリーが叔母一家にないがしろにされるシーンは「白雪姫」を連想してしまい、なんとベタな展開だ、これは棄権な映画?になるかと心配しましたが、最後まで楽しくみることができました。
この作品は『アバター』のような映画です。原作がそうなっているわけですけどね。様々な過去の遺産からいいとこ取りで紡いだ物語。しかも、ちゃんと昔話の伝統を踏まえているから子どもには受けるはずです。だから、『アバター』が大ヒットしたように「ハリー・ポッター」もヒットしました。
人は作品を選ぶことができますが、作品も人を選びます。傑作とされる『星の王子さま』が、ただの子どもっぽいたわごとにしか感じられない人がいても、それは自然なことです。
盛りだくさんのエピソードを2時間半に手際良く詰め込んで、舞台のディテールを映像化した手腕は大したものだと思います。そして、この作品を見て思い出したことは「友情」です。子どもの頃は「愛情」よりも大事なものだったのです。
「大人は誰も、昔は子供だった。でも、そのことを忘れずにいる大人はほとんどいない」 とサン=テグジュペリは記しました。「ハリー・ポッター」もそうやって読者や観客を選びます。
今、2作目まで見ましたが、2作目から6作目まではコメントしないつもりです。8作目まで到達することができたらまたコメントします。今年中にコメントしなかったら挫折したことになります.......(^^ゞ


☆☆☆☆○
ロング・キス・グッドナイト 邦題 ロング・キス・グッドナイト
原題 The Long Kiss Goodnight
制作 1996年 上映 121分
監督 レニー・ハーリン 地域 アメリカ
たぶん見るのは3回目。今回はブルーレイ。ジーナ・デイヴィス作品では一番好きかも。『ダイ・ハード』(1988年)の後発作品と言えるかも知れないけれど、『ボーン・アイデンティティ』(2002年)の先行作品でもあり。
『ボーン・アイデンティティ』はシリアスですけど、こちらの作品はサミュエル・L・ジャクソンを助演にしているので、ファニーな雰囲気もあって緩急のバランスが絶妙。『ダイ・ハード3』(1995年)みたいですね。音楽の使い方も少々オールド・スタイルでこれがまたいい。 タイトルが007シリーズにようにちょっとオシャレで、この感覚が作品自体にも感じられます。もともと下着モデルから映画に抜擢されたジーナはこの作品でセクシーでないスリップ姿を見せていますが、それ以外のシーンではキュートでセクシー。旦那のレニー・ハーリンに上手に撮ってもらいました。
ご都合主義の部分に目がつむれる面白さです。「Life is pain.」と言い放つところがいい。 最近は彼女ともご無沙汰で残念です。アクション作品に出てくれないかな。現在55歳。ギリギリの年齢だ。アーチェリーの有名選手でもあったらしいので、次回はアーチェリーで頼む。


☆☆☆○○
レイン・オブ・アサシン 邦題 レイン・オブ・アサシン
原題 劍雨 Reign of Assassins
制作 2010年 上映 120分
監督 スー・シャオピン、ジョン・ウー 地域 中国・香港・台湾
達磨大師のミイラ争奪をめぐる暗殺組織の話ですが、基本はアクションです。情感を描こうとしてはいますが、アクションの背後に沈んでしまっています。
ジョン・ウー監督の『フェイス/オフ』(1997年)を連想してしまうような細工もあるのですが、全体的に単調で、華のない作品です。
そんなわけで殺陣を見ることになるわけですが、中国の剣さばきに太刀打ちできる国はもうないですね。しかも、いろいろと新しい武器やら剣法を次々生み出してくるので感心。
しかし、これもさすがに見慣れてきているので、昔ほどのインパクトはなくなってきています。ミシェル・ヨーのしなる剣を見に出掛けてください。今49歳。老女になってもアクション続けてほしいものです。


☆☆☆☆○
レッド・プラネット 邦題 レッド・プラネット
原題 Red Planet
制作 2000年 上映 106分
監督 アントニー・ホフマン 地域 アメリカ
2000年の映画ですが、『2001年宇宙の旅』(1968年)へのオマージュなのか、どちらの船長の名前もボウマン(Bowman)です。なぜか評判の悪かった作品ですが、見るのはこれで3回目。面白い映画はまたブルーレイで見直したくなります。
美術もいいし、撮影もいい。脚本は一人では無理だと思えるほどにいろんなアイデアが詰め込まれていて楽しませてくれます。実際、脚本は二人です。
不満を言えばロボット「AMEE」の扱いでしょうか。登場した時から不気味さを漂わせていますから、展開が見えてしまいます。少しは可愛げがあってもよかったし、火星でサバイバルする時に活躍させていたら、もっと存在感がましたことでしょう。 あるいは逆に最後に人間を助けることになるという逆転の発想でいくとかね。実際、ロボットの意に反してですが、それで助かるわけですけどね。
サバイバルものにはひとり卑怯者がいて自滅するというステレオタイプがあります。先月見た『サンクタム』もやはりそうでした。この作品もやはりそうです。こういうのが作品を卑しいものにしてしまうんですよね。この作品の悪評はたぶんこうした問題だけでなく、科学的な背景が理解されていないからだと思えます。逆に言えば、それがきちんとわかるように描けていないということでもありますね。
もう一度作り直してほしいと願う作品です。


☆☆☆☆○
未来を生きる君たちへ 邦題 未来を生きる君たちへ
原題 HAEVNEN
制作 2010年 上映 118分
監督 スサンネ・ビア 地域 デンマーク・スウェーデン
なんとも直截な邦題です。英題が「In A Better World」。これをなぞったタイトルのようです。原題の意味は「復讐」。どのタイトルも違和感が残ります。米アカデミー外国語賞作品です。
子ども世界のいじめ。大人の暴力。民族紛争。家庭の不和。いろんな諍(いさか)いを通じて、個人的な小さな暴力から社会的な大きな暴力までを結びつけて俯瞰する構成になっているのが秀逸。でも、難しい話にはなっていません。対立軸がはっきりしているのでわかりやすい。
映画ではそれなりの結末が準備されているけれど、キリストでもなく、釈迦でもない、普通の人間は絶えず「憎しみ」に囚われて、理想と現実の狭間で格闘を続けます。二人の少年たちが大人になった時にやはり同じ場所に立っていると誰も断言できない、それほどに人間はもろいです。
もろいながらも、葛藤する姿に救いを見いだすしかないのでしょうか。社会的なテーマ性の強い作品なのに不思議と美しい、コントラストの強い風景映像が印象に残ります。


☆☆○○○
マイティ・ソー 邦題 マイティ・ソー
原題 Thor
制作 2011年 上映 115分
監督 ケネス・ブラナー 地域 アメリカ
北欧神話が下敷きになっているからって、ケネス・ブラナーがコミックものに手を出すとは時代が変わったのか、プラナーが変わったのか。地球上の世界と神々の世界の二つが交差して描かれます。
地球上では空から落ちてきた男として少しユーモラスな演出、神々の世界ではシェークスピアの愛憎劇のような展開で、どちらの世界もすでに映画ではよく描かれてきたお話です。そういう意味では新味が全くありません。
神々の世界はCG全開になりますので、幻想的なイラストを見ているかのようで、まるで現実味のない映像になります。ナタリー・ポートマンも存在感なし。浅野忠信の存在感なしは仕方ないですけどね。
原作コミックを知らないからわからないけれど、たぶんコミックのままの映画になったのではないかと思えます。大人の鑑賞向きではないです。


☆☆★○○
猿の惑星:創世記(ジェネシス) 邦題 猿の惑星:創世記(ジェネシス)
原題 Rise of the Planet of the Apes
制作 2011年 上映 105分
監督 ルパート・ワイアット 地域 アメリカ
『猿の惑星』(1968年)から43年。第1作は未だに古びない傑作SFでした。あの時に驚かされた猿のメイキャップも今ではCGになりましたが、CG慣れしてしまった我々には当時ほどの驚きはありませんね。
その時の最新技術も時代とともに消えていくはの必然ですが、惜別の情が残るほどの素晴らしさでした。この作品のCGもよく出来ているとは思います。特にアンディ・サーキスが演じるシーザーの表情は見事です。しかし、全身の動きとなるとはぎこちなさを感じさせます。人間は猿のように身体を動かすことはできないので、たぶんモーション・キャプチャーできないのでしょう。駆けるシーンは特にその動きの荒さが顕著です。まだ未完成というべき出来ですね。猿に演技させなかったのでしょうか?
さて、お話の展開ですが、『猿の惑星』という範疇でなくてもいいようなストーリーです。だから、「オリジナル・ストーリー」と言われているのかもしれません。飼われていた猿たちが智恵をつけて猿としてのプライドを取り戻していくだけのことです。そこにアルツハイマーの特効薬とウイルスという両刃の剣を介在させています。やはり、『猿の惑星・征服』(第4作・1972年)と被る部分があります。
公式サイトのあらすじによると、「人類との壮大な全面戦争へとなだれ込んでいくのだった」とありましたが、まったくのデタラメ。シーザー側は保護施設の猿たちだけで、しかもほとんど素手です。追いつめられた橋の上で闘って勝った後、森へ逃げ込むだけのことです。
『猿の惑星』がらみの映画なので厳しい評価になりましたが、想定通りに進むお話だし、『猿の惑星』の核をなしていた文明批評も薄い。☆二つ半です。


☆☆○○○
ソルジャー 邦題 ソルジャー
原題 Soldier
制作 1998年 上映 98分
監督 ポール・アンダーソン 地域 アメリカ
公開当時見た作品ですけど、なんか古めかしい雰囲気。80年代の惑星移民もの映画みたいな。同監督の前年作『イベント・ホライゾン』(1997年)の方がずっと新しい感覚。
演出がすべて極端だし、話は薄っぺらでありきたりだし、戦争シーンもまるでリアリティがないし、ないなしづくし。あるのは他の映画からのコピー・シーン。
B級TVドラマです。


☆☆☆★○
ハウスメイド 邦題 ハウスメイド
原題  The Housemaid
制作 2011年 上映 107分
監督 イム・サンス 地域 韓国
韓国のカルト的傑作と言われているらしい60年の「下女」のリメイク。韓国ドラマは見ていないのでよくわかりませんが、国柄が出ているような作品には感じませんでした。
冒頭の自殺しようとする女性と商店街でたくましく働く女性たちのシーンが交錯するシーンは今までに見たことがない描き方で期待が高まりました。
残念ながらその後は2時間ドラマによく出てくるような展開となり、メイドが決行する復讐に唖然とさせられることになります。カンヌで話題になったのはこの復讐シーンなんでしょうね。
唖然とさせられたのはその狂気ぶりだけではなく、それだけの狂気が隠されていたことを映画がきちんと描いていなかったからでもあります。唖然とさせるにはそれが必要だったのかもしれません。
この人々の狂気の中で救いがあるのは、少女がメイドを良い人だと言っていたことです。少女だけが正気の人物でした。映画は少女に焦点を合わせて閉じられます。
☆3つ半。


☆☆☆★○
パイレーツ・オブ・カリビアン/生命(いのち)の泉 邦題 パイレーツ・オブ・カリビアン/生命の泉
原題 Pirates of the Caribbean: On Stranger Tides
制作 2011年 上映 141分
監督 ロブ・マーシャル 地域 アメリカ
第1作の『パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち』(2003)が退屈だったのでその後は見ていませんでした。おふざけシーンが多くて、ついていけなかった記憶が.....
今回見たのはペネロペが出たから。彼女が出たらこういうキャラになるという予想通りの演技でした。少しはそれを裏切るようなパートがあってもいいんじゃないかな。しかも、黒髭が登場してからは活躍できる場がなくなっています。
ヒット作だけあって、映像が豪華です。しかし、TVで見るなら面白みは半減以下かもしれませんね。脚本も練り込まれています。今回はあまりドタバタが少なかったような気がします。1作目の時も感じましたが、あまり海原で活躍するシーンがないですよね。キャプテンとして活躍してませんもの。まだシリーズが続きそうな感じなので、これからは海賊やめて盗賊になるのかも......(^_^) ☆3つ半。


☆☆☆○○
ゴーストライター 邦題 ゴーストライター
原題 The Ghost Writer
制作 2010年 上映 128分
監督 ロマン・ポランスキー 地域 フランス・ドイツ・イギリス
ベルリン国際映画祭銀熊賞をはじめ、たくさんの賞をもらっている作品ですが、どうなんでしょうね。監督のネーム・バリューもあるんじゃないかな。
脚本はよく出来ていると思いましたが、大事件が起こるわけでもなく、閑かなサスペンスなので2時間は長過ぎます。途中で退屈しました。
ハリウッドでは主人公がどんな職業でも大活躍してしまうわけですが、これは主役がライターなので、確かにユアン・マクレガー向きですね。あういう地味な展開はリアリティがあるということは言えます。
ちょっと捻った結末でしたが、政治サスペンスにありがちな終わり方。しかもその死を暗示するラストシーンは、目撃者多数と証拠が残るやり方で、CIAとしてはあり得ないです。前任者の溺死とはずいぶん違う。 たぶん「絵」を優先した結果なのでしょうが、あの絵もやはり古臭いのではないでしょうか。
どこかで見た女優だなあと思っていたら、キム・キャトラルが出ていました。ドラマ『Sex and the City』のサマンサ・ジョーンズ役。この映画版は見ていないので、お久しぶりでした。


☆☆☆☆○
スターシップ・トゥルーパーズ 邦題 スターシップ・トゥルーパーズ
原題 Starship Troopers
制作 1997年 上映 129分
監督 ポール・バーホーベン 地域 アメリカ
見るのは3回目。宇宙戦争ものとしてはよくある話と、めったにない話が合わさった変わり種作品です。よくある話は青春ものという点。めったにない話としては敵が昆虫型生物ということ。そしてもうひとつ、これが大きい、シニカルとユーモラスとシリアスが混在していること。
宇宙戦艦ヤマトなどは戦争の美化から逃れられない。しかし、この作品はシニカルな部分を出すことでそこから免れています。というか、戦争を茶化している。戦争場面はシリアスに描いている場面が大半ですが、まったくバカげた戦闘です。むかし日本国民は鬼畜米英と信じ込まされ、戦争が終わってから進駐軍を見たら、なんと角が生えていなかったと驚いた人が少なからずいたという、嘘のような話を思い出します。そういう暗喩が見て取れます。
中原中也みたいに、幾時代かがありまして茶色い戦争がありました、ゆあーんゆよーんゆやゆよん、などと鼻歌を歌ってみたいような、陰りのあるおかしみ。
ただ、そうではあっても地球軍の装備はあまりに貧相です。素手で闘う敵だから、相手に合わせたのでしょうけれど。新兵の訓練施設もかなり手を抜いた作りで、人間相手に戦闘シミュレーションしていたり、??のシーンがたくさんあります。
その一方で、カルメンが艦のテスト飛行で基地から発進するところは、桟橋からギリギリに艦を引き出すのですが、この時の基地の風景と艦と艦内のショット合成が見事で、とってもリアル。左にパンしていくのを見ているのが気持ちいい。ついリプレイしていまいます。
だいたいこの作品は他の場面においても実写とCGとミニチュアモデルの合成が非常にうまく出来ています。TVでは確認できないかもしれませんが、ブルーレイで見れば、細かいところまで動きがつけられていて丁寧に作られていることがわかります。
青春ものとしてみても、ディジーの女心に切なくなります。この作品がシリアスだけで作られていたら、きっと凡百の青春戦記ものと同じになっていたのだろうと思いますが、それを見てみたい気もします。


☆☆○○○
Kynodontas 邦題 籠の中の乙女
原題 Kynodontas (英題:Dogtooth)
制作 2009年 上映 93分
監督 ヨルゴス・ランティモス 地域 ギリシャ
タイトルは「犬歯」の意味です。のっけから言葉の恣意性について例文付きでお勉強させられます。そしてこれがこの映画のすべてです。
言葉の恣意性とは? 「海」と言えばだれでも波が寄せる大きな水たまりである海を想起しますが、この「ウミ」という音とそれが指し示す意味には何の関連性も意味の繋がりもないということです。同じ「ウミ」でも「膿、生み、倦み」といろいろありますし。
この映画に登場する子どもたちには「海」を「カウチ」と理解しています。なぜなら両親にそう教えられたから。言葉だけにとどまらず、世の中のことすべてが両親から与えられた世界観の中で生きているのです。いわば家庭が鎖国状態。空を飛ぶ旅客機も時々庭に落ちてくる玩具なのです。
人間は時々バカなことを考えますが、映画はそういうバカなこと実現するにはいいメディアです。しかし、これと同じようなことが世界中で起きている現実があることも私たちは知っています。
子どもが大人になれば、どの家族でもそれまでの世界は破綻します。では、この家族はどうなるのか? わかりにくかったこの家族の結末はわかりやすい。それが面白くない。



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