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2011年06月


☆☆☆☆○
処刑剣 14BLADES 邦題 処刑剣 14BLADES
原題 錦衣衛 14BLADES
制作 2010年 上映 113分
監督 ダニエル・リー 地域 中国
中国の歴史物アクションはあまりハズレがないです。アメリカのカーチェイスやガンアクションとはまるで縁のない世界なわけですが、アクションというよりはダンスを見ているような動きは、リアリティのかけらもないのにそれを許してしまう面白さがありますね。 登場する女性もみんなカッコイイ。
明王朝時代にあった錦衣衛(きんいえい)という秘密警察の指揮官の武器が「14BLADES」。まあ、こんなバカげた武器をよく思いつくわと感心。登場人物の配置や絡め方などよく工夫されていて退屈しません。ヴィッキー・チャオ(趙薇)にももっとアクションさせてほしかったですけどね。


☆☆○○○
赤ずきん 邦題 赤ずきん
原題 Red Riding Hood
制作 2011年 上映 120分
監督 キャサリン・ハードウィック 地域 アメリカ・カナダ
ペローの童話「赤ずきん」に登場するのは狼ですが、ここでは狼男(werewolf)。童話を題材に採った作品はそれをどう料理するのかが楽しみになるわけですが、どうもお話が散漫な印象です。
もう一人の主役となるべき狼男も、なにも魅力を感じるところがない造形です。脚本も撮影も感心しませんでした。


☆☆☆○○
 邦題 クロエ
原題 Chloe
制作 2009年 上映 96分
監督 アトム・エゴヤン 地域 アメリカ・カナダ・フランス
フランス映画「恍惚」(原題 Nathalie...)(2003年)のリメイクだそうで、オリジナルは後から見ました。「恍惚」とはすごいタイトルですね。リメイクの邦題は改善されました......(^_^)
アマンダ・セイフライドという今売れっ子の作品。今月「赤ずきん」に次いで2作目です。先月は「ジュリエットからの手紙」を見ました。制作順ではクロエが一番早いです。「こんにちは」という日本語をしゃべらせて日本へのサービスをした割には日本公開が遅れましたね。今までこの人の演技はよくわからなかったのですが、なかなかイケます。
ジュリアン・ムーアも出演作品が絶えない売れっ子のベテラン。しかも、熟女になってからも平気でパンツを脱ぎ続ける。なかなか勇気がいることです。しかしながら、この二人、どうもミスキャストという気がしてしまいます。
娼婦に嘘があることは最初から見えていて、話の展開も結末も予想がついてしまいます。そういう意味ではサスペンス色は薄い。実際、オリジナルはサスペンスではありません。オリジナルのままアメリカには移植できなかったためにサスペンスに衣替えしたという風情です。
しかし、これが災いしてありきたりな結末になりました。もっと別の未来をこの娼婦に与えることができたら、☆の数を増やせたでしょうに。


☆☆☆☆○
恍惚 邦題 恍惚
原題 Nathalie...
制作 2003年 上映 105分
監督 アンヌ・フォンテーヌ 地域 フランス・スペイン
『クロエ』(2009年)の後に見たオリジナルです。邦題を「恍惚」としたくなる気持ちがわかるキャスティングです......(^_^) やっぱりわからないかな、このひどいタイトルは。
ファニー・アルダンとエマニュエル・ベアール。雰囲気たっぷりです。アメリカがリメイクしたくなるのがわかる出来です。しかし、やはりこれはフランス映画ならではです。
『クロエ』とは異なり、サスペンスではありません。狂気もありません。「ナタリー」という夢を見る話です。


☆☆○○○
いつか眠りにつく前に 邦題 いつか眠りにつく前に
原題 Evening
制作 2007年 上映 117分
監督 ラホス・コルタイ 地域 アメリカ・ドイツ
豪華女優陣の名前に誘われて見ました。特にトニ・コレットを高く評価している yu です。しかし、彼女が活躍する場面はありませんでした。この映画はメリル・ストリープとメイミー・ガマー母娘、、ヴァネッサ・レッドグレイヴとナターシャ・リチャードソン母娘の共演でも話題になった作品なんですが、男が見るにはちょっとしんどい作品なのかもしれません。このキャスティングは女性向きだと理解すべきでした。
しかし、女性でも共感できない人はたくさんいるようにも思える作品です。登場人物たちの行動の裏付けとなる心理がほとんど描かれていないからです。全く舌足らずです。そのため、終わり近くでメリル・ストリープやヴァネッサ・レッドグレイヴが語る言葉はきっと感動的な場面にしたつもりなんだろうけど、ちょっとも心に入りませんでした。自分が原作者だったら、きっと地団駄踏むに違いない。


☆☆○○○
プリースト 邦題 プリースト
原題 Priest
制作 2011年 上映 87分
監督 スコット・スチュワート 地域 アメリカ
韓国マンガが原作の作品。アメリカの好きなバンパイアのお話で、つまらない脚本とリアリティのないCG満載でこんなの面白いわけがない。分かってて見るのは、マギーQが出演しているから。彼女、なかなか作品に恵まれません。主演ではないので、ポスターは彼女のキャラ・ポスターです。
アクションもCGが主体なので、彼女の華麗なアクションもありません。三つ編みだけ楽しみました.......(^^ゞ 日本公開は9月の予定です。


☆☆☆★○
アンノウン 邦題 アンノウン
原題 Unknown
制作 2011年 上映 113分
監督 ジャウム・コレット=セラ 地域 アメリカ
2006年の同タイトル作品がありますが、これはリーアム・ニーソン主演のサスペンスです。ベルリンが舞台になっていて、ブルーノ・ガンツも出演しています。
原作は小説で、ヒッチコックを想起させるような、なかなか面白い設定です。出演陣を眺めてもA級作品なのですが、どこかB級の匂いがしますね。展開も撮影もキレが悪いというか。
ベルリンを舞台にしながらも、絵に魅力がない。記憶が蘇って素早い拳を繰り出す場面は見せ場のはずなのにシーンが暗いままでよくわからないとか、演出にいろいろ問題があります。4つ☆になれた作品なのに、惜しいです。☆3つ半です。


☆☆○○○
アジャストメント 邦題 アジャストメント
原題 The Adjustment Bureau
制作 2011年 上映 106分
監督 ジョージ・ノルフィ 地域 アメリカ
フィリップ・K・ディック原作ですから、期待は高まるというもの。しかし、ハズレも多い。今回は「ただ今調整中」という感じでしょうか。
モノクロ映画を見ていると錯覚を起こしそうな古い演出です。モノクロ時代のSFだったら、それなりに面白かったとは思う。しかし、SFサスペンスとしても恋愛ものとしても中途半端。絵の面白みもない。
調整局の面々に危機に対する切迫感がないために、主人公が逃げても緊迫感に欠ける。ショートカット・ドアの描き方にも工夫がないので、「どこでもドア〜」みたいに気が抜けている。ドアはもっと危険で複雑にすれば、それなりに緊迫感が高まったでしょうに。
小説で楽しむ作品です。


☆☆☆☆○
愛の勝利を ムッソリーニを愛した女 邦題 愛の勝利を  ムッソリーニを愛した女
原題 Vincere
制作 2009年 上映 128分
監督 マルコ・ベロッキオ 地域 イタリア
イーダ・ダルセル。誰も知らない名前。イタリア人の間でさえ、ほとんど知られていなかった名前ですから。
ムッソリーニを一途に愛し、そしてひどく裏切られたのは、その偏執的な性格ゆえだと思わせる言動。だからこそ映画になるわけです。
俳優たちの演技もなかなか見事ですが、やはり監督の演出がうまい。特徴的なのがニュース映像から映画まで多くのフィルムが引用され、これが当時の時代背景を描くだけでなく、物語に重層的にかぶさってくる工夫がなされています。
ムッソリーニの演説はいつ見ても僕には道化師にしか見えないのですが、これはその後の歴史を知っている現代人の感想でしかないのかもしれません。しかし、チャップリンの『独裁者』(1940年)を見れば、やはり当時そう見ていた人もいるんだとわかります。バクテリアの独裁者ベンツィーニ・ナポロニとして登場しています。
政治的なリーダーが必要ない時代。それが平和な時代です。


☆☆☆☆○
Source Code 邦題 日本未公開
原題 Source Code
制作 2011年 上映 92分
監督 ダンカン・ジョーンズ 地域 アメリカ・フランス
ダンカン・ジョーンズの『月に囚われた男』(2009年英)に次ぐSFスリラーです。前作もそこそこ面白かったのですが、今回も楽しませてくれました。タイムトラベルの矛盾を乗り越えるための新しいシチュエーションです。ところがどっこい、やはりそこへ還るかというお話。
この映画の面白さはまさにそこに尽きます。SFスリラーというジャンルの弱点はどういうシチュエーションを設定するかに重点が置かれて、物語の膨らみに欠けてしまう嫌いがあることです。この作品もそこから逃れられませんでした。
絵の面白みに欠けること。爆弾や犯人捜しが単純すぎること。主人公の相手役クリスティーナ(ミシェル・モナハン)が活かされていないこと。
それでももう一度見たいと思わせる映画になりました。


☆☆☆○○
ハンナ 邦題 ハンナ
原題 Hanna
制作 2011年 上映 112分
監督 ジョー・ライト 地域 アメリカ
シアーシャ・ローナン主演です。彼女の作品も知らないうちにいろいろ見ています。先月の『The Way Back』は日本未公開ですけどね。今回は「少女=殺し屋」という流行りのモチーフだから、8月公開が決まっています。
ケイト・ブランシェットを助演に迎えてのアクションものですが、悪いけどお二人共にアクションができる俳優ではないので、それを期待してもだめです。ほとんどゴマカシです。
お話自体もそんなに新味もなく、標準作品になりました。森の中で育ったために蛍光灯もテレビも知らない少女という設定がつまらないというか、物語の進行を滞らせています。冒頭とラストシーンにカッコをつけたぐらいです。ジョー・ライトって、もっといい映画を撮れるはずなんだけど。
彼の作品『つぐない』(2007年)にもシアーシャ・ローナンは出演していました。


☆☆☆☆○
孫文の義士団 邦題 孫文の義士団
原題 十月圍城 Bodyguards and Assassins
制作 2009年 上映 139分
監督 陳徳森(テディ・チャン) 地域 中国=香港
今月は『処刑剣 14BLADES』に続いてドニー・イェン出演のアクション2作目です。しかし、この作品では警官役の彼よりもワン・シュエチー演ずる実業家の心の葛藤が丁寧に描かれています。そして、他の多彩な登場人物の心情もそれぞれ丁寧に描写されています。
そういう意味ではアクションだけの作品ではありませんし、むしろアクションとしてはキレに悪い演出になっているように思います。形式美にこだわって動きが弱いです。
現在の中国や世界の現状を見渡せば、孫文の「革命未だならず」という言葉が浮かび、理想の国をつくるにはどれだけの犠牲を払わねばならないのか、そんなこともふと考えさせる作品です。


☆☆○○○
アリス・クリードの失踪 邦題 アリス・クリードの失踪
原題 The Disappearance Of Alice Creed
制作 2009年 上映 101分
監督 J・ブレイクソン 地域 イギリス
二転三転の逆転劇という触れ込みで見ました。確かにそのとおりかもしれませんが、あの演出で恋人が気がつかないというのはないでしょう。密室で銃を撃てば硝煙の臭いが残るはずだし、大きな銃痕も隠さないとはどういうこと?
ツッコミどころが多すぎる。誘拐の映画なので陰惨な場面を見なきゃならないし、見なきゃ良かった。演じた俳優3人にはこの苛酷な演技にご同情申し上げます。いらんお世話でしょうか.......(^^ゞ


☆☆☆○○
十三人の刺客 邦題 十三人の刺客
英題 13 Assassins
制作 2010年 上映 141分
監督 三池崇史 地域 日本
日本の評論家はおしなべて高評価だったと思います。集団以外の殺陣はなかなかの迫力で見応えがありました。しかし、盛り上がるべき後半には退屈してしまいした。「斬って斬って斬りまくれ!」がキャッチ・コピーでしたが、そればかりでは飽きてしまいます。集団の殺陣では刀を振り回しているだけにしか見えないです。
もっと欠点を上げます。何百人も相手をするならそれなりの計略があるはずです。しかし、その計略がおざなりで描かれない。高所に陣取り弓矢で数を減らすという陣を敷きながら、その優位を捨てて地に降りる愚かさの意味が不明。侍がその誇りにこだわるのは理解できますが、それを度々言葉にするのは侍らしくないです。火を付けた牛の暴走シーンのCGが最低レベル。今時アマチュアでももっと上等でしょう。
とにかく敵の数が多すぎましたね。敵の中を泳いでいるような絵ではだめです。一番の不満は何かかと言えば、魅力的なキャラがいなかったこと。
印象に残ったのは老中と御目付役が会った時の和蝋燭だけです。その大きな炎と揺らめく影の濃淡。これから起きることへの期待を高めてくれたのでしたが......


☆☆☆○○
みすゞ 邦題 みすゞ
原題 みすゞ
制作 2001年 上映 105分
監督 五十嵐匠 地域 日本
映画には伝記物と呼ばれるものがあるわけですが、非常に難しいジャンルだと思います。金子 みすゞは文学のジャンルになるので文芸の香りを漂わせるか、あるいは奇妙な人間関係に焦点を当てるか、それとも彼女が求めた唄心を追うか、切り込み方もいろいろとあるでしょう。しかし、大方の伝記物はそれらの全てを網羅して平凡な作品になるというのが行き着くところ。この作品も例外ではありません。
不自然なほどに作られたシーンが散見されて、映像向きというより写真集向きの絵作りです。「金子 みすゞ」を美しくイメージした作品と言えるでしょうか。


☆☆☆○○
シェルブールの雨傘 邦題 シェルブールの雨傘
原題 Les Parapluies de Cherbourg
制作 1963年 上映 91分
監督 ジャック・ドゥミ 地域 フランス
長年敬遠していた傑作をとうとう見る。敬遠の理由はおそらくセリフがすべてメロディにのっかっていることだと思う。オペラ形式ミュージカル?
大人の映画でしょうか。淡々としています。『ブーベの恋人』(1963年イタリア・フランス)や『ひまわり』(1970年イタリア)のような悲恋でもなし、みんなそれぞれに現実的な範囲内で人生を選択していく物語なので、純愛というよりは多くの人が自分の人生と重ね合わせることができるところが共感を呼ぶのでしょうか。あるいはストーリーなんかどうでもいいのか......(^_^)
ミシェル・ルグランの音楽は悲恋を想起させる重さがあると思うのですが、映画にはそんな重さはありません。俳優が歌ってはいませんので、登場人物の中には声のミスマッチを感じる人もいます。映画というよりは舞台に合う作品のような気がして、映画として傑作ミュージカルとは思えませんでした。
シェルブールの雨傘とは「ずぶ濡れになるほどの恋なんてしないわ」ということかな.......(^^ゞ



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