「シネマ短評」のトップを表示します


2011年05月


☆☆☆★○
The Way Back 邦題 ウェイバック-脱出6500km-
原題 The Way Back
制作 2010年 上映 133分
監督 ピーター・ウィアー 地域 アメリカ
スラヴォミール・ラウイッツ原作『脱出記―シベリアからインドまで歩いた男たち』の実話物映画です。原作がよく出来ているらしく、映画の評判はあまり芳しくなかったのですが、エド・ハリスが好きな yu は見ました。 標準は越えている映画だと思います。
かなり苛酷な撮影であったことは一目瞭然の映像です。これで映画が失敗だったら、スタッフは報われないですよね。
シベリアの強制収容所からの脱出劇から始まりますが、脱出劇はそこまで。その後はまるでインドが目的地であるかのごとく、冒険歩行のような趣になっていきます。
サブテーマに「赦し」があるらしい作品になっているのですが、各々の人物像が深く掘り下げられていないせいか、登場人物たちに気持ちがもうひとつ寄り添えない感じがあります。日本公開は2012年9月になりました。


☆☆☆☆○
新少林寺 英題 Shaolin
原題 新少林寺
制作 2011年 上映 131分
監督 陳木勝(ベニー・チャン) 地域 香港=中国
『コネクテッド』でその手腕は実証済み。タイトルに「新」がつくので、『少林寺』(82年)の続編っぽいですが違います。『少林寺2』(83年)というのもありましたが、これも続編ではなかったですね。「少林寺」ブランドです、ということでしょうか。
見事な少林寺のセットです。お金をかけています。ベン・ハーなどの「改心もの」系列の映画は好きですが、「少林寺」ブランドの期待を裏切らない出来です。索漠としたシーンが続いた後にはジャッキー・チェンで癒しのシーンを挿入してくれるし、上手い展開です。おまけに往年のジャッキーを彷彿とさせる場面も作られており、彼のファンにも目配りしています。映画の基本は活劇だと思っている yu には楽しいひとときでした。
映画でも触れられているように、達磨大師が開祖になった禅のお寺が少林寺です。映画には禅思想も織り込まれていますが、表面的なものであって深みはありません。少林拳で人を殺めてもよいのかどうか、yu にはよくわかないままです。


☆○○○○
ガリバー旅行記 邦題 ガリバー旅行記
原題 Gulliver's Travels
制作 2010年 上映 85分
監督 ロブ・レターマン 地域 アメリカ
ジャック・ブラックのための映画です。ただそれだけ。昔ならストーリーがハチャメチャでもSFXで楽しませることができたかもしれませんが、今時この作品を取り上げるにはそれなりのテーマが必要です。
子どもだましのお話と演出が延々と続き、見事に笑えないコメディに仕上がってしまいました。監督はアニメ畑の人ですね。アニメと実写を混同してます。


☆☆○○○
台北の朝、僕は恋をする 邦題 台北の朝、僕は恋をする
原題 Au revoir,Taipei 一頁台北
制作 2009年 上映 85分
監督 アーヴィン・チェン 地域 台湾・アメリカ
普段なら敬遠するタイプの映画なんですが、ベルリン国際映画祭の最優秀アジア映画賞などの評判で観てみました。でも、やっぱり退屈.......(^^ゞ
日本の映画にはよくある展開です。キャストを日本人に入れ替えたら、そのまま日本映画になります。
この作品が受ける理由はわかります。構成がよく出来ている。ロマンティック・コメディ・タッチの青春群像を台北というステージに上げたのも新鮮味があったことでしょう。男前が一人も出てこないところにも新鮮味がある......(^_^)
この作品のドタバタ・コメディは三谷幸喜風のあざとい演出に似ている。それが一番の苦手。だから、僕は台北の朝に恋をしませんでした。


☆☆☆☆○
キッズ・オールライト 邦題 キッズ・オールライト
原題 The Kids Are All Right
制作 2010年 上映 107分
監督 リサ・チェンデンコ 地域 アメリカ
家族ドラマなんですけれど、R15+指定されているように家族で見れる映画ではないです。生物学上の父をめぐって、子どもたちではなくてレズビアン・カップルの親たち、そして「父」の方がおたおたする話です。
言うまでもなくアネット・ベニングとジュリアン・ムーアのゲイ達者ぶりを見るのがひとつの楽しみでもありますが、アメリカ社会の家族像を少し先取りしたかのような家族設定のこの作品は『クレイマー、クレイマー』(1979年)のように、きっと記憶される家族ドラマになるでしょう。
性と倫理をめぐる急激な環境変化にもかかわらず、まだ家族にこだわる人とはなんなのか。そんなこともふと考えてしまう作品です。


☆☆☆★○
バーレスク 邦題 バーレスク
原題 Burlesque
制作 2010年 上映 118分
監督 スティーヴン・アンティン 地域 アメリカ
音痴な yu はクリスティーナ・アギレラを今回初めて知りました。 シェールを知ったのも音楽からではなく、 『月の輝く夜に』(1987年)を見た時。タイトルがそのものズバリで、ストーリーも大変わかりやすいです。主人公の成功物語とそれが店の身売りを救うという古典的展開。
クリスティーナ・アギレラの可愛らしさとその歌の魅力を存分に楽しんでもらいましょう、という作品です。傑作ミュージカル『キャバレー』(1971)はライザ・ミネリの魅力もさることながら、物語にも深みがあり、評価するなら5つ☆ですが、『バーレスク』は比較する対象にもなりません。
魅力的なシーンがないし、シェールの歌も「どこかに押し込まなくちゃみ」たいな使い方です。『キャバレー』にはキャバレーの魅力がありましたが、『バーレスク』にはバーレスクの魅力が出ていない。あれっ。比較してしまった.......(^^ゞ 歌に免じて☆3つ半です。


☆☆☆☆○
ラビット・ホール 邦題 ラビット・ホール
原題 Rabbit Hole
制作 2010年 上映 91分
監督 ジョン・キャメロン・ミッチェル 地域 アメリカ
ニコール・キッドマンがブロードウェイの舞台から引っ張ってきた作品です。ラビット・ホールとは平行宇宙論を象徴するものです。交通事故で息子を失った悲しみをどう乗り越えていくか、一組の夫婦の歩みをたどる物語です。
終わり近くで主人公ベッカの母が娘の問いに「癒えることはなくても、 押しつぶさるほどの重さが軽くなって、 ポケットに入れて持ち運べるくらいになる」というような、その悲しみを話すように、終幕はそれに向かって歩き出すシーンになります。
喪失をテーマにした映画はたくさん見てきましたが、こういう終わり方をするのは初めてのような気がします。そして、実は上のセリフに続いて母親はもう一言付け加えます。忘れている時もあるけれど、ことあるごとに思い出す辛さは息子が残していったものでもあると......エピローグに共感して☆4つです。日本では今秋公開の予定。


☆☆☆☆○
ノー・マンズ・ランド 邦題 ノー・マンズ・ランド
原題 No Man's Land
制作 2001年 上映 98分
監督 ダニス・タノヴィッチ 地域 フランス、イタリア、ベルギー
イギリス、スロヴェニア
ボスニア・ヘルツェゴビナ
気になりながらも見ていなかった作品。ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争を舞台にしていて、タイトルの意味はボスニアとセルビアの中間地帯のことです。
戦争の不条理を描いた映画は数多(あまた)ありますが、その中でも際だっています。ブラック・コメディとはいえ、笑えないです。
「不条理」とタイトルされた絵画のようなラストシーンは目に焼き付きます。


☆☆☆☆○
トゥモロー・ワールド 邦題 トゥモロー・ワールド
原題 Children of Men
制作 2006年 上映 109分
監督 アルフォンソ・キュアロン 地域 イギリス・アメリカ
西暦2027年を舞台にしたSFサスペンス映画で、人類に子どもが誕生しなくなった世界を描きます。しかし、SF的な近未来映像ではなく、戦場のようなシーンが多い作品です。
SF映画を見る時の楽しみのひとつには作り込まれた映像がありますが、この作品はその意味ではまさにSF映画です。シーンのリアルさが半端じゃありません。恐るべき技術力です。
主演のクライヴ・オーウェンの次に名前が登場するジュリアン・ムーアが始まって30分で画面から退場したり、好々爺のマイケル・ケインが自己犠牲で主人公を助けるというステレオタイプな展開から言っても、ストーリー的な面白みには欠けます。
今ならここまで撮れるぞという腕自慢たちが見せてくれる1本でしょうか。しかし、この安っぽい邦題はなんとかならないかな。見る気が失せる。


☆☆○○○
ジュリエットからの手紙 邦題 ジュリエットからの手紙
原題 Letters to Juliet
制作 2010年 上映 105分
監督 ゲイリー・ウィニック 地域 アメリカ
イタリア旅行でジュリエットの家を訪ねましたが、「ジュリエットの秘書」なんて知りませんでした。それとイタリアの美しい風景を楽しめたことがこの映画の収穫でしょうか。
登場人物が揃った時点でお話は見えてしまったし、実際期待通りに進行するのがロマンティックなラブストーリーの歩むべき道なのでしょう。ヴァネッサ・レッドグレイヴとフランコ・ネロは実際にも夫婦なので、なにか二人のおのろけを見せつけられているかのような、あるいはラストシーンで「ロミオとジュリエット」のバルコニー・シーンを再現するあたりの気恥ずかしさといい、たいていの男どもにとっては面白いとは思えないでしょう。
yu もそんな男どもの一人なので評価が低いです。いつものごとく、邦題にも不満です。原題の「手紙」がすり替えられて、テーマが台無しになっています。映画を見ないで配給を決めているのでしょうか?


☆☆☆☆○
ピアニスト 邦題 ピアニスト
原題 La Pianiste
制作 2001年 上映 132分
監督 ミヒャエル・ハネケ 地域 フランス・オーストリア
『白いリボン』に懲りず、また見てしまったハネケ.......(^^ゞ この映画も長い。ふだんから小説を読んでいる人ならハネケの映画も好きになれると思う。
しかし、yu は日常にあふれる悲劇に立ち会い、あえて更に忌まわしい悲劇を見ようという気にははなかなかなれない。それでもハネケをまた見てしまったのは、それだけの映像力があるからかもしれない。
映画の好きランクから言えば☆1つですが、映画の質ランクは☆4つになってしまう。この映画のラストシーンは見事だと思う。しかし、たぶんハネケはもう見ません。


☆☆○○○
 邦題 アイ・アム・ナンバー4
原題 I Am Number Four
制作 2011年 上映 109分
監督 D・J・カルーソ 地域 アメリカ
最近はSFと他のジャンルが融合したものが増えてきて、純粋なSF映画がなくなってきたような気がします。この作品はエイリアン系列ですが、青春学園ものの要素が大きいし、エイリアンでなくバンパイア系列でも一向に構わないものです。そう。『トワイライト』系です。しかし、『トワイライト』以前の出来です。
TVシリーズのプロローグとしての特別版みたいな印象ですね。話がなかなか動き出さない。終わり近くになってようやくエンジンを始動させて、続きを待っていてね、みたいな。監督自身がどこに焦点を当てたものか考えあぐねている。CGもパッとしません。 出来具合まで「ナンバー4」にする必要はなかったのでは? この夏の公開です。


☆☆○○○
Drive Angry 邦題 ドライブ・アングリー
原題 Drive Angry
制作 2010年 上映 104分
監督 パトリック・ルシエ 地域 アメリカ
ニコラス・ケイジが出演するB級作品にはロクなものがない。ウィリアム・フィクトナーとか役者は揃っているのですが、地獄からの脱走とか、カルト教団の儀式とか、こういう作品に出るのはおやめなさい。ケイジさん。日本公開は8月とか。


☆☆☆★○
アウェイク 邦題 アウェイク
原題 Awake
制作 2007年 上映 85分
監督 ジョビー・ハロルド 地域 アメリカ
ひっきりなしに新作が公開されているのに、なぜか今頃になってから旧作が日本公開の謎。ヘイデン・クリステンセン&ジェシカ・アルバでそれなりに観客は見込まれると思えるのに、制作当時には公開されなかったのは余程の駄作。あるいは、旧作から拾い出すだけの価値があると見直された拾い物。
その結果の立ち位置は両方の中間。面白い設定の映画で、料理の仕方が上手ならおいしくいただける一品になったはず。軽い二人の主演を除いては、良い材料を手に入れたのに、最後の仕上げに手を抜いてしまったという感じでしょうか。
麻酔をしても覚醒しているというアネセシア ・アウェアネス(術中覚醒)からの「アウェイク」だけかと思っていたら、もうひとつ別の「アウェイク」が準備されていました。しかし、同時に「痛み」という壮絶なテーマはどこかに吹っ飛んでしまいました。
昔、骨折の手術で麻酔が効かなかったことを思い出して、冷や汗かいていたから、まあ助かりましたけど。☆3つ半といきましょう。


☆☆○○○
世界侵略:ロサンゼルス決戦 邦題 世界侵略:ロサンゼルス決戦
原題 Battle: Los Angeles
制作 2011年 上映 116分
監督 ジョナサン・リーベスマン 地域 アメリカ
4月公開予定だったのが大震災で公開が延期された作品です。11月に公開予定だそうです。『アイ・アム・ナンバー4』でも書きましたが、これも敵がエイリアンである必要はない映画です。
全編戦場シーンで、それ以外は何もないです。『トゥモロー・ワールド』のような戦場が描けたかと言えばそれもなし。エイリアンの謎解きの面白さも、SF的な関心を呼ぶような設定もありません。
ここにあるのは、流行りの手持ちカメラと細かい編集による、まやかしの臨場感効果、そして海兵隊賛歌です。


☆☆☆○○
サン・ジャックへの道 邦題 サン・ジャックへの道
原題 Saint-Jacques... La Mecque
制作 2005年 上映 112分
監督 コリーヌ・セロー 地域 フランス
遺産相続の条件をクリアするために聖地巡礼の旅に出た3兄弟が中心になるロードムービー。ロードムービーと言えば車がつきものですが、これは当然徒歩です。やはり歩きはいいもんです。関係ないか......(^_^)
この旅の結末は予想通りなんですが、シュールな夢が出てきたり、ツアーの他のメンバーとの触れ合いなど、フランス映画らしくちょっととぼけた雰囲気のある作品です。
だから、リアリティを求められる映画ではありません。時折挿入されるパノラマ的風景がため息ものの美しさです。



プリオシン海岸トップへ