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2011年04月


☆☆☆○○
菩提樹 邦題 菩提樹
原題 Die Trapp-Familie
制作 1956年 上映 105分
監督 ヴォルフガング・リーベンアイナー 地域 西ドイツ
ミュージカル映画『サウンド・オブ・ミュージック』(1965年米)のオリジナル作品です。原作で言えば、マリア・フォン・トラップ著『トラップ・ファミリー合唱団物語』の前編に相当します。オリジナルはミュージカルではありません。大佐は歌いませんし。
『サウンド・オブ・ミュージック』は大好きなんですが、このオリジナルは今まで見ていませんでした。話自体はやはり面白いのですが、『サウンド・オブ・ミュージック』が傑作すぎて、評価は下がってしまいますね。
『サウンド・オブ・ミュージック』は174分の大作ですが、これはせいぜい100分にアメリカ移民受け入れの苦労話まで詰め込んでいるので話がブツブツ切れながら展開していく感じです。
まずは登場人物がきちんと描かれていない不満。子どもの個性はないし、マリアでさえきちんと描けているとは言えない。ちっとも魅力的じゃない。原作の映画化であったとしても、「映画」になったとは言い難い。
この作品を見ると、『サウンド・オブ・ミュージック』がいかに優れたエンターテインメントに仕上げられたかがよくわかります。記憶に残る名シーンがいっぱい。まさにエンターテインメントはハリウッドに任せておけという見本です。


☆☆☆○○
続・菩提樹 邦題 続・菩提樹
原題 Die Trapp-Familie in Amerika
制作 1958年 上映 87分
監督 ヴォルフガング・リーベンアイナー 地域 西ドイツ
前編とも言うべき『菩提樹』がほぼ史実に沿っていることもあり、アメリカでの苦労話を見ることになることがわかっているのであまり見る気はしなかったけれど、やはり後編も見なくちゃね。
前作は登場人物が動いていなかったけれど、ようやく動き出した感じで前作よりも映画になっていました。それでも☆四つはあげられない。
トラップ大佐(事実は少佐)が魅力のない人物として描かれているので、トラップ家は脚本の書き換えを要求したらしいです。『サウンド・オブ・ミュージック』ではそれなりに魅力的な人物として描かれていたと思いますが、『サウンド・オブ・ミュージック』でも不満だったとか。確かに笛で子どもを操るなんて、横暴というよりは間抜けとも言うべき姿は一家に取っては相当なショックだったに違いありません。しかし、脚本変更は拒否されたそうです。
その一方で『菩提樹』シリーズはトラップ家にとってだけではなく、映画としてもトラップ大佐の希薄さが映画の面白みを減じています。
『続・菩提樹』は前作に比べるとかなり歌を聞かせます。しかし、トラップ大佐はやはり最後まで歌いませんでした。これは史実通りなんでしょう。終わりの方で少しミュージカル風の演出が出てきます。この辺りから1959年のブロードウェイ・ミュージカルへとつながっていったのかもしれませんね。


☆☆☆○○
The Mechanic 邦題 日本未公開
原題 The Mechanic
制作 2011年 上映 100分
監督 サイモン・ウェスト 地域 アメリカ
何も考えずにボーとしたい時はアクション映画。だからアクション映画を観る機会が多くなります。ジェイソン・ステイサムの『トランスポーター』(2002年)はそこそこ面白かったですが、その後の彼の映画はどれを見ても同じようなもんです。『セルラー』(2004年)の悪役はかなり間抜けでしたけどね。
ステイサム・ジャンルでは、『アドレナリン』 (2006年)で寝てしまって半分も見ていませんが、彼が出演している映画は知らず知らずのうちにかなり観ています。この作品はチャールズ・ブロンソン主演のリメイクです。オリジナルを見たかどうかは記憶の彼方です。
この映画、やはりいつものステイサムです。『ゴースト/ニューヨークの幻 』(1990年)で悪役を演じたトニー・ゴールドウィン、騙されて殺すことになる恩師役にドナルド・サザーランド、そしてその息子と組むというキャスティングなので、もう話はわかったも同然。アクション映画はこれでいいです......(^_^) 白昼堂々と殺人を犯しても平然と逃げおおせるという暗黙のルールは、未だになじめませんけどね。
実際、この映画の設定では、自分の存在さえ感じさせない殺しがモットーの殺し屋なのに、街中で大暴れするというのは大きな減点です。
ちなみにトニー・ゴールドウィンは『恋する遺伝子 』(2001年)というロマンチック・ コメディの監督もやっていました。容貌に似合わない演出です。


☆☆☆★○
エンジェル ウォーズ 邦題 エンジェル ウォーズ
原題 Sucker Punch
制作 2011年 上映 120分
監督 ザック・スナイダー 地域 アメリカ
この監督作品はほぼ見ているはず。『ドーン・オブ・ザ・デッド』(2004年)、『300』(2007年)、『ウォッチメン』(2009年)。どれももうひとつ。今回のオリジナル脚本作品は、今までの作品の延長線上にあることがわかるものです。
邦題の問題は常に文句を付けているところですが、この邦題では恥ずかしくて映画館に行けません。だれを相手に興業を打っているのでしょうかね。原題は監督の名前(Zack)を引っかけているのでしょうか。スペリングは違うけれど、そう思えるぐらい監督のやりたい放題の作品と言えます。
時代は1950年代。精神病院で5日後にロボトミーを受けることになった主人公が、精神病患者の仲間たちと幻想の世界へ侵入し、脱走を図るという筋書きです。しかし、こんな説明など無意味と言えるような展開を見せます。
秀逸なダンスであろう場面がダンスを一切見せずにすべて戦闘場面へと転換されているという、風変わりな編集というか展開は面白くはありますが、この映画の背景には残酷な現実も描かれているわけで、どう感情移入したものか困惑することにもなります。
監督としては何も整理したくなかったのでしょうが、もう少し交通整理してほしかったと思いますね。CGたっぷりの映像が好きな人には楽しめるでしょう。☆3つ半です。


☆☆☆☆○
あるスキャンダルの覚え書き 邦題 あるスキャンダルの覚え書き
原題 Notes on a Scandal
制作 2006年 上映 98分
監督 リチャード・エアー 地域 イギリス
登場人物のモノローグが入る映画はあまり好きではありません。しかも、この映画のモノローグはかなり饒舌です。それにもかかわらず、面白い。
主役と言うべき二人のジュディ・デンチ、ケイト・ブランシェット以外の登場人物には深みがなく、みんな軽薄に見えます。それでもやはり二人の孤独が、特殊な例ではなく、普遍的な何かを感じさせるのです。
自分にとってはあまり身近な孤独ではない故に興味深く見ることができましたが、身につまされる人には辛い作品になるのかもしれない。原作は小説。きっと読み甲斐のある作品だと思います。


☆☆☆☆★
ブラック・スワン 邦題 ブラック・スワン
原題 Black Swan
制作 2010年 上映 108分
監督 ダーレン・アロノフスキー 地域 アメリカ
インタビューでポートマンがかなり精神的に苦しんだと語っていたので、これは見るべきかやめるべきか悩みましたが、見て良かったです。
ポートマンはデビュー作『レオン』(94年)の時から見ています。この映画はまさに彼女を見る映画です。これでアカデミー主演女優賞をもらいました。見事な成長ぶりですね。
バレエについては知識も関心もないのであまり期待もしていませんでしが、面白かったです。スリラーに分類されているのですが、そういう映画ではないです。スリラーということで敬遠したい人がいたなら、ご心配いりません。
特に最後のセリフが気に入りました。☆4つ半です。


☆☆☆○○
Gunless 邦題 日本未公開
原題 Gunless
制作 2010年 上映 89分
監督 ウィリアム・フィリップス 地域 カナダ
シエンナ・ギロリーが出演しているので見たもの。タイトル通り、ピストル好きのアメリカでは作れない西部劇です。モンタナ・キッドが賞金稼ぎたちから逃げ延びた先がカナダの小さな村。そこでの村人たちとの交流がほとんどの話です。ほのぼのカナダ万歳みたいな演出でした。なぜシエンナ・ギロリーをキャスティングしたのかよくわからないです。もっとはまる女優がいたと思います。


☆☆☆☆○
最前線物語 邦題 最前線物語
原題 The Big Red One
制作 1980年 上映 110分
監督 サミュエル・フラー 地域 アメリカ
アメリカ人気ドラマ『コンバット』の1シーズンを映画化したような作品です。こっちの鬼軍曹は『コンバット』ほどの堅物でも熱血漢でもありませんが。リー・マーヴィンは何をやらせてもうまいけれど、ただの戦争映画ではない、すこしシニカルなこの作品には打って付けの俳優です。しかし、ちょっと老けすぎでは?とは思う。
一貫したストーリーではなく、エピソードの積み重ねで描く物語は yu には苦手分野。エピソードの中には嘘くさいのも混ざっていて、戦争映画というよりは、「昔こんな戦争がありました」みたいな物語性が高い雰囲気を漂わせています。
そうやってリアルな戦争から一歩引くことで見えてくるものもあるはずで、この作品はそれにチャレンジしたんだと思います。だからこそ、見終わった後で記憶に残るシーンは嘘っぽいシーンです。ちなみに3時間バージョンもあるそうです。


☆☆☆★○
カオス 邦題 カオス
原題 Chaos
制作 2005年 上映 107分
監督 トニー・ジグリオ 地域 アメリカ
カオス理論がモチーフになっているクライム・サスペンス。アメリカでは劇場公開されなかった映画だそうで、そんほどにつまらない映画じゃないのですけれど。クライム・サスペンスとしてはよく出来ている方だと思います。
脚本がよく出来ています。ただし、反則技に近い人物が真犯人になっているので、あちこちツッコミを入れたくなるような無理はあります。そして、反則技の出来事まで起こるので、途中で真犯人がわかってしまいます。
超人役のイメージがついているウェズリー・スナイプスの役どころが人間臭くて物足りなさを感じてしまうのはこちらの責任でしょうけれど、主要な登場人物の中の3人の負傷がどれも腕にかすり傷という場当たり的な演出はいけません。そんな奇跡的なことが3回も起こるというのはカオス理論から言ってどうなんですか。もっと細部まで詰めてほしいといことで、☆3つ半。



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