プリオシン海岸  プレシオスの鎖


ボルボックスの宇宙

入子





自我の意識は
個人から集団社会宇宙へと次第に進化する
この方向は
古い聖者の踏みまた教へた道ではないか
新たな時代は
世界が一の意識になり生物となる方向にある
正しく強く生きるとは
銀河系を自らの中に意識して
これに応じていくことである

            「農民芸術概論綱要」より



 宇宙はビッグバンから始まったといううわさがありますが、さしずめ生物のたぐいはランソウ類から始まったと言っていいのかもしれません。先カンブリア紀に酸素を放出して生物進化の環境を整え、単細胞から多細胞への進化への道筋をつけたのがランソウ類だといううわさを耳にしたことはありませんか。単細胞のランソウが群体になることによって多細胞生物への道を開いたのです。同時に死ぬことを決める仕組みが組み込まれることになりました。このおかげで、カンブリア紀になると現在見られる動物の先祖がほとんど出そろったのです。そしてボルボックスはこの親戚にあたる緑藻と分類されています。

 下の写真に見られるようにおおよそ200〜2万個の個体がゼラチン質の膜の表層に並び、直径0.2〜1.3mmの群体をつくります。個々の個体は互いにかなり太い原形質糸で連絡しており、1個の葉緑体と2本の等長の鞭毛、数個の収縮胞と眼点があります。浅緑色をし、自力でゆっくり泳ぎまわるので春先から初夏にかけて池や水田で肉眼でも見ることができます。

 実はこの球体の表層に並んでいる小さな球体にもやはり入子(いれこ)のように表層に無数のボルボックスが生息しているのです。そして、またその表層の球体の中にも‥‥。

 宇宙には超銀河団があり、その中に銀河団があり、またその中に銀河があり、それぞれが原形質糸ならぬ引力で連絡をとりあっています。アウタースペースとインナースペースの相似は、わたくしたちの身近にひっそりと無数にたたずんでおり、宇宙を支配する基本のフレームを時にかいま見せてくれたりします。

 賢治が帰依した法華經原子物理学理論の相似を論じた書籍もありますが、彼の湯川秀樹も「荘子」から理論のヒントを得たように、賢治も田園でたわむれながらボルボックスからどんな空想を広げていたことでしょうか。あっ、たわむれていたのではないと賢治さんお怒りですか。


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語の解説



びっぐばん 宇宙は今から150億年前に起こった大爆発によって生まれたとする宇宙起源説で、火の玉宇宙論ともいわれます。生まれたばかりの宇宙は高温高密度状態で、物質は空間的に一様で単調な素粒子からなっていました。それが急激に膨張し冷却する過程で熱核反応によって核融合が起こり、種々の原子核が作られました。熱核反応は宇宙誕生後数百秒で終わり、宇宙は主に陽子と電子からなる熱いプラズマ状態になります。約10万年後、宇宙の温度と密度は十分下がり、電子と陽子は結合(プラズマの再結合)して中性の水素原子を形成し、いろいろな原子ができることになりました。中性化した物質は、相互に働く重力によって、初期に存在した密度のゆらぎはしだいに成長し、ついに銀河、銀河団、超銀河団といった巨大なスケールの宇宙の大局構造を作り、銀河中には恒星が生まれ、現在の宇宙の姿へ進化したと考えられています。当初はそれを裏付けるような観測データが多く提出されましたが、現在は旗色が悪くなってきていると思ってもいましたが、今でもこの説を強化する観測データの発表が続いています。しかし、早晩退場する仮説だと思えます。そもそも人類の短い歴史と比較すれば、宇宙は永遠という長さで存在しており、人類がその始まりと終わりを問うこと自体が無意味であり、証明不可能ではないでしょうか。
らんそう 単細胞または群体をつくる一群の青紫色の藻類。多くはネンジュモ、ユレモのように細胞が1列に並んだ微視的なものですが、スイゼンジノリなどのように群体をつくって、大きさが数mm〜数cmになるものもあります。細胞には明瞭な形の核や色素体がないため、近年では細菌とともに原核生物とされることが多いです。生殖は無性的な分裂により、有性生殖は知られていません。葉緑素のほか、フィコシアニンなどの色素タンパク質を含みます。同化生成物はラン藻デンプンやグリコーゲンなど。淡水にも海水にも生育し、80℃以上の高温度の温泉中に生育するものも知られています。スイゼンジノリなど食用とされるものもあります。先カンブリア時代に大気中に酸素を放出し、地球上に酸化的な環境を作りだしたのはラン藻類であったと考えられています。
ぎんがだん かつては星雲団とも。直径が数千万光年くらいの宇宙空間に、数百から数千の明るい銀河が密集しているもの。たとえば銀河系に最も近いおとめ座銀河団は約6200万光年離れたところにあり、約2500個の明るい銀河が集まっています。銀河団を構成する銀河どうしの力学的相互作用は強く、銀河どうしの衝突、融合も起こり、中心付近の大型銀河はこの結果できたと考えられています。銀河団の銀河間の空間は希薄なガスで満たされていて、かみのけ座銀河団をはじめとするいくつかの銀河団ではX線放射が観測されています。いくつかの銀河団が網目状に集まって超銀河団を形成しているものもあり、これが宇宙の大局的構造と考えられています。
せんかんぶりあき カンブリア紀以前の地質時代をいいます。今から約六億年前まで。
しゅうしゅくほう 淡水産原生動物の体内にある空胞。収縮と拡張を周期的に繰り返し、老廃物の排出と体内の浸透圧を一定に保つために余分の水分を排出する働きをしています。
ようりょくたい 葉緑素を含む色素体。緑色植物の細胞に限って存在する細胞質顆粒で、光合成を営んでいます。直径四〜六ミクロン、厚さ一〜三ミクロンで両凸レンズ型。円盤層状のグラナと基質部分のストロマから成ります。葉緑素による光合成の明反応はグラナ、暗反応はストロマで行われていると考えられています。
そうじ 二つの図形が、その一方を一様に拡大または縮小して、他方と合同にすることができる状態にあること。
げんけいしつし 生体の原形質の細胞膜などの微細な孔や細胞間の空隙を通って糸状にのびたもの。各細胞間における原形質連絡を行なっています。
いれこ 同形で大きさの異なるもの数個を組み合わせ、大小の順に中へ入れるように作った器物。
ほけきょう 大乗仏教の重要経典。妙法蓮華経が正称で、サンスクリット語のサッダルマプンダリーカ・スートラの訳。27章(または28章)からなり、紀元前後、インドで成立したとされます。詩や比喩(ひゆ)や象徴的手法を縦横に駆使した精妙な文体で、すべての法はすべて大乗の現れであり(一大乗)、仏とは永遠の生命そのものであること(久遠実成(くおんじつじょう))を説きます。経典中の王とされました。
そうし 中国、戦国末の思想家。老荘思想の源泉の一人。名は周、字は子休、河南の人と伝えるが、生没年・伝記不詳。著書とされる「荘子」33編(内編7、外編15、雑編11)は荘周学派の論説集で、奇抜な寓言(ぐうげん)で文明を鋭く批評し、人為を捨てて、無為自然に復帰することを説きます。老子の思想を継ぎ、道家の思想を発展させたもので、中国禅仏教の形成など後世への影響はとても大きなものです。
げんしぶつりがく もともと原子の性質と構造を研究する物理学の一部門でしたが、現在では研究分野が拡大・分化して、原子を構成する原子核や素粒子の研究(原子核物理学、素粒子論)や、物質の性質を基本粒子の性質から説明する分野(物性論)をも含めた総称となり、現代物理学の主要部分をなしています。

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