プリオシン海岸  プレシオスの鎖


粘 菌 惑 星

生命の在処






わたくしといふ現象は
仮定された有機交流電燈の
ひとつの青い照明です
(あらゆる透明な幽霊の複合体)
風景やみんなといっしょに
せはしくせはしく明滅しながら
いかにもたしかにともりつづける
因果交流電燈の
ひとつの青い照明です
(ひかりはたもち その電燈は失はれ)


        「春と修羅」第1集 序



 粘菌の世界には生と死、自己と非自己の境界がありません。粘菌は、葉緑体がなく、朽木や落葉、あるいは糞、また高等植物や淡水・海水中の藻類などで生活してます。変形菌とも呼ばれたりすることもありますが、世間では単純にカビ呼ばわりされたりしています。

 粘菌の特徴を上げるとすれば、それはその生活史にあります。種類によってその生活史も異なりますが、一例を上げれば、胞子から発芽するとアメーバ状で流動しながら固体の有機物や微生物をそのまま体内にとり入れて栄養をとります。そして、食べ尽くして飢餓状態にはいると、多数の粘性アメーバが集合して変形体となり、胞子嚢を形成して、内部や外側に無数の飛散しやすい胞子をつくります。この胞子は水分と栄養となるものにふれない限り休眠状態となるのです。

 詳しくは下の粘菌の一例をご覧ください。他の個体のために自己を捧げること、他の個体と融合することになんのためらいもない粘菌は、見方を変えると、そもそも胞子から発芽した個体は本当に個体ではなく、ある個体の一部分であったのかもしれないという気にもさせられます。その一部分であった元の個体もはたして個体なのか、それともやはりその一部なのか、いつまでも境界が見えてきそうもありません。そして、その死も明らかに人間が抱く死の観念とは異なっています。ここには形態形成場(「結晶グリセリンの宣教」ページを参照)がかかわっていて、アポトーシスが誘導されているようにも思われますが、何かもっと違うもの働いています。生と死の境界がどこかにあるのか、それともそこに境界を見ようとすること自体が人の幻想に過ぎないのかもしれません。

 これに近いものとしてシロアリを連想する人がいるかもしれません。シロアリを生物と呼ぶことに人はなんのためらいもありませんが、この粘菌や明らかに無生物と考えられているものにも、実は広範囲に個体と生死の無境界が広がっているのではないでしょうか。

 地球を惑星環境と生命体が一体になった自己調整システムと考えるガイア仮説も同じフレームとして考えることができます。では、もっと大きく、宇宙で繰り広げられる銀河の泡とその弾けは粘菌のフレームと無関係なのでしょうか。地球という未だ知られていない惑星には、粘菌という惑星も同じ場を占めているのです。

クリーム色の語はクリックすると「語の解説」へ跳びます。



粘菌の生活



粘菌の生活_1
粘菌の生活_2



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ムービーファイルですのでデータ量が大きいです。しかし、粘菌の神秘的な動きは一見の価値があります。お暇なときにでもご覧ください。



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語の解説


ほうし 生物の生殖細胞の一つ。発芽して新しい個体になります。陰花植物と、原生動物の一部に作られます。鞭毛・繊毛などの運動性のある遊走子と、それのない不動胞子に分けられています。
そうるい 水中に生育する下等植物の一群に対する慣用的総称で、広義にはクロロフィルなどの同化色素があり独立栄養の生活を営むものをいいます。緑藻類、車軸藻類(緑藻類の一綱として扱うこともある)、黄色藻類、炎色(黄褐色)藻類、緑虫類、褐藻類、紅藻類、藍藻類の八群からなります。
あぽとーしす 細胞が遺伝的な指令に基づいて死ぬこと。アポトーシスを誘導する遺伝子は自殺遺伝子と呼ばれます。形態的には核内のクロマチンが凝集したあと細胞全体が萎縮して、断片化して死にます。このように遺伝的にプログラムされた細胞死は、個体発生における形態形成や体組織の恒常性維持において重要な働きをしているのです。
しろあり シロアリ目(等翅(とうし)目とも)に属する昆虫の総称。社会生活を営むが、完全変態をするアリ類とは異なり不完全変態をし、分類上はゴキブリ類に近い。自然の生態系では植物遺体の分解者としてきわめて重要な役割をもっています。体は軟弱で、乳白色または薄茶色。体長5〜10mmのものが多い。一定の季節に有翅虫(羽アリ)が現れる点でアリの社会に似ていますが、有翅虫の雌雄(女王,王)1対で適所に営巣する点はアリと異なります。女王は卵巣が肥大し、種類によっては数十年間も生存します。兵アリ、働きアリともに雌雄両性がある点もアリと異なりますが、生殖能力のない点はアリと同様です。
がいあかせつ イギリスの化学者ジェームス・ラブロックが生物学者リン・マルギュリスとともに地球の環境は地球生命圏と一体化しており、両者はひとつのシステムとして進化するという仮説を提唱しました。大気の組成や気象現象は生命が生きていくことを安定的に助けるように維持され、逆に惑星環境から生命を取り除けばその環境はまったく別のものになってしまうと説明されます。今では一般に、地球は一個の意志を持つ生命体だと拡大解釈して受け取られている感じです。

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